県政報告
令和5年6月定例会(第4号)
2023年6月23日
(主な質疑)
- 午前十時九分開議
◯副議長(いなもと和仁君) ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
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日程第一 諸般の報告
- 2: ◯副議長(いなもと和仁君) この際、諸般の報告をいたします。
本日、知事から追加提出されました議案は、各位のお手元に送付いたしました。
以上、御報告をいたします。
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日程第二 一般質問並びに第八十一号議案令和五年度愛
知県一般会計補正予算から第百号議案副知事
の選任についてまで
- 3: ◯副議長(いなもと和仁君) 次に、第八十一号議案令和五年度愛知県一般会計補正予算から第百号議案副知事の選任についてまでを一括議題といたします。
直ちに追加提出されました第百号議案副知事の選任についてに対する知事の提案理由の説明を求めます。
大村知事。
〔知事大村秀章君登壇〕
- 4: ◯知事(大村秀章君) 皆さん、おはようございます。
議員の皆様方には、六月十九日の開会以来、補正予算案をはじめ各議案につきまして熱心に御審議を賜り、深く感謝を申し上げます。
本日は、佐々木副知事が国へ復帰するため、七月六日をもって辞任することに伴い、その後任者として、厚生労働省政策統括官付参事官、企画調整担当で統計・情報総務室長である馬場利香氏を選任いたしたく、その同意議案につきまして追加提案をいたした次第でございます。
よろしく御審議の上、適切な御議決を賜りますようにお願いを申し上げます。
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〔議案は末尾付録に掲載〕
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- 5: ◯副議長(いなもと和仁君) これより一般質問並びに提出議案に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
伊藤貴治議員。
〔五番伊藤貴治君登壇〕(拍手)
- 6: ◯五番(伊藤貴治君) おはようございます。
それでは、通告に従い、二点お伺いさせていただきます。
初めに、中小企業の障害者雇用に係る支援についてお伺いいたします。
日本の障害者人口は、二〇二二年度版障害者白書によると、身体障害者が四百三十六万人、知的障害者が百九万四千人、精神障害者が四百十九万三千人、複数の障害に該当する人もいるため、およそ国民の七・六%の九百五十万人が何らかの障害を抱えていることになります。そのうちの就労者数は六十一万三千九百五十八人。
二〇一八年度障害者雇用実態調査によると、事業所で雇用されている人の賃金の平均月額は、身体障害者が二十一万五千円、知的障害者が十一万七千円、精神障害者が十二万七千円、また、厚生労働省の発表によると、二〇二一年度における愛知県の就労継続支援B型事業所の工賃の平均月額は一万七千六百五十三円と極めて低い水準にとどまっています。誰が考えてもこれでは生活は成り立ちません。
また、働けるにもかかわらず働いていない障害者は、障害年金などの社会保障に頼らざるを得ません。つまり、税金で生活を維持していることになります。一説によると、一人の障害者に必要な税金は年間約四百万円、四十年間に必要な税金は二億円弱にもなるそうです。働くことができれば、愛知県の最低賃金は時給九百八十六円なので、四十年働くと約一千四百万円の納税者になります。二億円の歳出が一千四百万円の歳入になるのです。
現在、増え続ける社会保障費を国民がどう負担していくのかが議論されていますが、それは雇用創出と切っても切り離せない問題だと考えます。
二〇二三年度の国の一般会計予算百十四兆三千八百十二億円のうち、社会保障関係費は三十六兆八千八百八十九億円であり、一般会計予算の三二・二五%を占めます。例えば、雇用が確保されることでこのうちの一割が削減されれば、三兆七千億ものお金の使途を別に充てることができるようになります。障害者雇用の促進はこれからの日本の大きな可能性となります。
障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる共生社会の実現の理念の下、全ての事業主は従業員の一定割合以上の障害者を雇用することが義務づけられています。二〇二一年四月一日よりこの法定雇用率の引上げがなされ、四十三・五人以上の常用労働者がいる企業は、障害者の雇用の促進等に関する法律、いわゆる障害者雇用促進法により、一定の割合以上の身体障害者または知的・精神障害者を雇用することが義務づけられています。民間企業は二・三%、国、地方公共団体などは二・六%と規定されています。障害者雇用率未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、一人につき原則月額五万円の障害者雇用納付金を納付しなくてはなりません。逆に、法定雇用率を達成した常用労働者数百人以上の企業は月額二万七千円の調整金が支払われ、常用労働者百人以下の企業では四%または六人のいずれか多い数を超えて雇用していると月額二万一千円の報奨金が支払われます。
しかし、進んで法定雇用率以上の雇用を行うところが少ないのが現状です。以前問題になりましたが、中央省庁や自治体での障害者雇用の水増し、本県は問題がないということで安心をしておりますが、法定雇用率の達成が非常に難しいということを表すというものと考えます。一部では、法定雇用率が、雇用促進ではなく、ただの罰則規定になってしまっているという声も聞きます。
現在の法定雇用率は二・三%、愛知県の令和四年の実雇用率は二・一九%、全国平均の二・二五%よりも低い状況になっております。十一年連続の上昇で雇用率は過去最高を更新していますが、障害者雇用促進法で義務づけられている二・三%には届いておらず、全国でも四十三番目という結果になっています。
また、企業規模別で見ると、百人から三百人未満の規模の企業においては実雇用率が一・九一%、四十三・五人から百人未満の規模の企業においては実雇用率が一・六三%と、中小企業はいずれも低い水準にあり、この状況は平成二十二年から続いています。
私が企業を回って話を聞いていきますと、健常者と同じように働くことができる軽度障害者は大企業が採用していってしまう。自分たちは雇いたくても雇えない。その結果、法定雇用率をクリアすることができず、罰則を受ける。また、工場などでは、障害者の雇用のために安全確保や業務の改善を進めなければならないため、コストがかかり、取り組めない。罰金を払ったほうが安いという声も聞こえてきました。
企業は、できる仕事も処理能力も障害によって、また、その程度によって異なることを十分に理解し、障害に合わせた仕事を用意し、訓練し、管理しなければなりません。こうした対応は企業にとって大きな負担になります。慢性的に人手が不足している中小企業も多いため、教育訓練をする費用もマンパワーもなく、余裕もないのが現状です。
ある企業では、ハローワークで障害者の雇用を募集しても、待てど暮らせど応募はゼロ。なぜ応募者が来ないのか、調べてみると、企業の知名度の低さに対する不安と、どんな仕事をするのか分からないからということでした。来てほしくても来てもらえないという状況があります。これでは障害者雇用は一向に進みません。
このような状況の中、法定雇用率が二〇二四年四月から二・五%にさらに引き上げられます。二〇二六年七月にはさらに二・七%に段階的に引き上げられます。これを鑑みると、県内中小企業の障害者雇用を支援する取組を県も強化すべきではないかと考えます。
また、二〇二一年六月、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会が公表した報告書では、障害者就労支援に関する雇用施策と福祉施策の連携強化に関する対応策の具体的な検討の方向性が示されています。これを受けて、政府の審議会で検討が行われており、必要な支援が円滑に提供される基盤整備がされるよう、障害者に関する雇用施策と福祉施策の連携が促されています。
法定雇用率が引き上げられ、雇用施策と福祉施策の連携が促される中、愛知県においては、今年の二月に、知事と愛知労働局局長と連名で、県経営者協会会長はじめ、他主要経済四団体に障害者雇用の確保に関する要請書を手渡したということであります。
また、福祉局と労働局との連携を図る部分では、愛知県と愛知労働局と一体となって、あいち障害者雇用総合サポートデスクを設置していただいております。ここでは、地域の障害者就労と支援機関とが連携し、障害者雇用に取り組む企業をサポートする相談窓口を行っていただいています。計画的に企業に障害者雇用を進めていただけるよう、月曜日から土曜日まで様々な相談体制の下で手厚く事業を実施されています。
また、同ホームページでも実例を多く取り上げ、実際の声、苦労したところなど、生の声を分かりやすく動画を取り入れて紹介したり、なぜ障害者雇用を進めるのか、制度の紹介や受入れ計画の策定、実習から職場定着に至るまで、企業や障害者の方に寄り添った大変分かりやすいものになっております。まさに、知るから始まり、共に進む障害者雇用の実践を行っていただいております。動画のチャンネル登録者数や閲覧者数を見ると、数が伸び悩んでおりますので、もっと周知啓発を行っていってほしいと思っております。
そこで、最初の質問です。
こちらのあいち障害者雇用総合サポートデスクの実績と、障害者雇用に取り組む中小企業への支援をどのように取り組んでいくのかをお尋ねいたします。
障害者雇用の促進を進めていこうとしたときに、これだけではまだまだ足りません。一般就労を望む方、一般就労へ移行することが困難な福祉施設利用者も地域で自立した生活が送れるよう、まだまだ福祉、労働と連携を深めていけると私は考えます。
今後は、テレワークによる在宅就労といった新たな就労分野の開拓や働き方、二〇一三年四月に施行された国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律に基づく、障害者就労施設等が提供する物品及び役務に対する受注機会の拡大、自治体や企業から障害福祉サービス事業所等へ発注される仕事を受注し、事業所に割り振る共同受注窓口の機能の強化も求められると考えられ、こうした取組を着実に実施していく必要があります。
一方で、福祉施策に目を向けると、障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスは、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援と四つのサービスがあります。就労移行支援では、一般就労になかなか結びつかなかったり、一般就労に結びついても定着ができなかったりと、また、福祉的就労の場となる就労継続事業所における工賃は全国的に低い水準にあり、特にB型の就労継続支援の事業所の方からは、常に安定した仕事と賃金の確保に苦心していると話を聞きます。
障害のある人の就労については、障害の状況に応じたきめ細かな配慮が必要であることから、福祉と労働の両面の連携を強化し、就労から職場への定着までの切れ目ない支援を総合的に進めていく必要があると考えます。障害のある人を一般就労へより一層効果的につなげていくためには、労働分野の取組だけにとどまらず、福祉分野から一般企業に対する働きかけも必要になると思います。
そこで質問です。
就労系障害福祉サービスにおけるサービスの提供実績と、労働分野との連携に向けた県の考えについてお伺いいたします。
次に、名古屋コーチンの振興についてお伺いをいたします。
同党の先輩議員である山下議員が令和四年の二月議会で一般質問をされておりますが、時がたち、その後の状況を確認させていただきながら、質問をさせていただきます。
最近では、地方の生産品を売り込むために何でもブランド化が目指され、何がブランドなのかと聞きたくなるところもございますが、名古屋コーチンは、日本三大地鶏の一つで、紛れもなく全国的にも圧倒的な知名度を有する本県を代表するブランドであります。弾力があり味わい深く、お祝い事や記念日の特別なメニューとして召し上がられる方も多いのではないでしょうか。
私の地元春日井市にも名古屋コーチンに情熱を注いでこられた養鶏家がお見えになり、私も中学生のときに職業体験でお世話になり、いろいろと勉強させていただいたことを今でも鮮明に覚えております。交配による種の保存や、いかにストレスをかけないように飼育をするか、座学から始まり、こだわりを持って仕事に当たられる姿に、中学生ながらに名古屋コーチンへの特別感を感じていました。その職場体験を通じて名古屋コーチンの魅力を体感した経験から、今でも特別な日には名古屋コーチンのお肉をいただいています。
名古屋コーチンは、昨年度、文化庁の百年フードにも選定されましたが、地域に根差した食文化であり、貴重な財産であります。
今回、県議会議員になったことをきっかけに、名古屋コーチンのことを改めて勉強しました。
名古屋コーチンは、明治維新で職を失った尾張藩士が明治半ばに血のにじむ努力の末に生み出した傑作であり、現在も地鶏の王様として高い評価を得ています。一九〇三年以降は、県が名古屋コーチンの管理を引き継ぎ、一世紀以上もの長い間、この貴重な遺伝資源をしっかり守っていただいています。全国の地鶏の中でも唯一純粋種として供給がされており、県の畜産総合センター種鶏場が名古屋コーチンの原種をしっかりと遺伝管理しながら維持しているためであり、このことがブランド力を一層高めていると私は考えます。一九〇五年三月十日には、日本家禽協会から国産の実用品種第一号として認定され、現在は、これを記念して、三月十日が名古屋コーチンの日として登録されております。昭和三十年代には、成長が速く体も大きい大量生産に適した外国種に圧倒され、一時は絶滅の危機に瀕しましたが、昭和五十年代後半から、消費者のグルメ志向や本物志向とも相まって、再び脚光を浴びるようになり、ブランド地鶏としてよみがえりました。近年は、高級食材として海外や県外の観光客の需要も高く、観光資源としても重要な役割を担っています。
このような中、市場ニーズの高まりに合わせて、民間における名古屋コーチン生産拡大の機運も高まり、業界から県に対し畜産総合センター種鶏場の生産性向上について要望されたと伺っています。
また、昨シーズン、全国二十六道県で鳥インフルエンザが発生し、八十四事例、千七百七十一万羽の家禽が殺処分されましたように、鳥インフルエンザは養鶏業界にとって脅威であり、当時、種鶏場の鳥インフルエンザ対策の強化についても極めて重要な課題であったことも踏まえ、移転整備の方針を決定されたと伺っております。本年三月二十二日には、名古屋コーチン発祥の地とされる小牧市において、畜産総合センター種鶏場が装いも新たに開場し、生産効率の向上、衛生対策、伝染病対策の強化などを目指して、本格的に始動されたところであります。
こうして振り返ると、名古屋コーチンの振興において県の果たしてきた役割は大変大きかったものと推察されます。
そこでお尋ねをいたします。
県は、これまで名古屋コーチンの生産体制の強化に向けてどのように取り組んでこられたのかをお伺いいたします。
一方、畜産総合センター種鶏場の整備を進めているさなか、新型コロナ感染症により、高級食材である名古屋コーチンの需要は急激に低下をしました。名古屋コーチンを扱っている鳥肉店の店主によると、販売量がコロナ禍以前の五〇%以下に落ち込んだそうです。また、コロナにより、外食産業やインバウンドを中心に長らく不振が続き、名古屋コーチンの需要も思うように向上せず、生産者は生産抑制を余儀なくされ、大変厳しい経営環境であったとお伺いをいたしました。さらに追い打ちをかけるように、二〇二〇年後半から生産コストの大部分を占める飼料価格が高騰し、電気などのエネルギーに係る費用も値上げされ、需要の低下と飼料や光熱水費の高騰の複数の要因により、名古屋コーチンの生産農家はかつてない苦境に立たされました。
本県のブランド地鶏である名古屋コーチンを守るためには、生産農家に対する支援が必要でありますが、県で措置されております配合飼料価格高騰対策支援金は、生産者が経営を継続する上で大変有効な支援であると考えます。しかし、このような支援事業は対処療法であり、長期間継続して支援することは難しく、やはり消費を一刻も早く回復させることが第一であると考えます。
こうした中、本年五月八日から新型コロナ感染症が感染症法の五類感染症に位置づけられ、様々な制限が緩和され、円安も後押しして、海外や県外からの観光客が徐々に増えてきております。今後、海外で人気を博し、高級食材として取り扱われ、地元の食材が地元で食べられないという現象が起きかねないことは心配するところではありますが、この機会を逸することなく、名古屋コーチンの消費をコロナ禍以前の水準まで速やかに回復させることが望まれます。
名古屋コーチンの年間生産量を現在の二倍の二百万羽を目指すと大村知事もおっしゃるように、名古屋コーチンの生産を拡大させるためには、生産農家の安定的な経営を持続させることが前提であり、生産農家の経営を維持するためには、コロナ禍で落ち込んだ消費を速やかに回復させることが最優先課題であると考えます。
そこでお尋ねいたします。
名古屋コーチンの消費を回復させるため、今後どのように取り組んでいかれるかをお尋ねいたします。
以上、二点についてお伺いをさせていただき、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 7: ◯労働局長(大嵜みどり君) 障害者雇用に係る支援のうち、障害者雇用に取り組む企業への支援についてお答えいたします。
法定雇用率の引上げが予定される中、障害者雇用を一層進めるためには、企業が障害者雇用への理解を深めることが重要です。
県では、二〇一九年に国と共同設置したあいち障害者雇用総合サポートデスクにおいて、中小企業等に対し、障害の特性に合った仕事の切り出し方や求人方法、職場環境の整備などの相談に対応するほか、障害者雇用の好事例の動画配信や職場見学会等を実施しているところです。
また、障害者の職場実習の受入れや採用後のフォローまで、企業のニーズに応じた切れ目のない支援や、就労支援機関との連携など、地域とのネットワーク構築にも取り組んでおります。昨年度の利用企業は六百三十六社で、六千三百七十八件の相談が寄せられました。
サポートデスクでは、今年度新たに、障害者の職場定着を促進するため、中小企業等の社員を対象に、障害の特性や配慮に関する知識向上のための企業内援助者養成研修を実施いたします。
また、県独自の制度として、初めて障害者を雇用する中小企業に対して、最大六十万円の奨励金を支給し、障害者雇用を後押しします。
さらに、国と連携して実施する就職面接会において、企業と障害者相互の理解促進とマッチングを支援するとともに、トップセミナーにおいて経営者の意識改革を図ってまいります。
今後も、障害者が社会の一員として活躍できるよう、国等の関係機関と連携し、障害者雇用に取り組む中小企業等を支援してまいります。
- 8: ◯福祉局長(植羅哲也君) 就労系障害福祉サービスの実績と、労働分野との連携に向けた県の考えについてお答えをいたします。
現在、本県では、就労移行支援事業をはじめ、障害者総合支援法に基づく四種類の就労系サービスの全てが提供されており、それらの実績といたしまして、直近の数値である本年二月の利用者数を申し上げます。
まず、就労移行支援事業は、一般企業への就労を希望する方に対し、一定期間、就労に必要な知識やスキルの習得に向けた支援を実施するもので、二千五百六十四人が利用されております。
次に、就労継続支援事業は、一般企業に雇用されることが困難な方に対し、働く機会を提供して、知識及び能力向上のための支援を実施するものでございまして、二種類に分かれておりまして、雇用契約を結んでいただくA型の利用者が六千二百三十人、雇用契約を結ばないB型が一万五千四百四十四人となっております。
また、就労定着支援事業は、障害福祉サービスの利用を経て、一般企業に雇用された後、就労に伴う環境変化によって日常生活に課題が生じている方などに対し、相談支援や企業との連絡調整等を行うもので、千百六十八人の方が利用されております。
次に、労働分野との連携についてでございます。
一般企業への就労を希望する方への支援が関係機関等の適切な連携の下に行われることは、障害のある方の自立と社会参加を推進する上で大変重要であると認識をしております。
このため、就労移行支援事業や就労定着支援事業においては、障害のある方御本人が抱えている就職後の課題や体調管理の状況などを御本人同意の上で就職先の企業と共有いたしまして、支援に生かしております。
また、県といたしましては、就労系障害福祉サービス事業所が労働分野との連携をより深めることができますよう、二〇二一年に相談窓口を設置いたしますとともに、就労支援に関するノウハウのあるアドバイザーをサービス事業所へ派遣するなどいたしまして、障害のある方がその能力に応じた企業に就労していただけるよう努めているところでございます。
今後とも、障害福祉サービスを提供する事業所と企業等との連携を推進し、障害のある方が希望に応じた就労支援を受けられるよう、しっかりと取り組んでまいります。
- 9: ◯農業水産局長(鈴木希明君) 名古屋コーチンの振興についてのお尋ねのうち、まず、生産体制の強化に向けたこれまでの県の取組についてお答えします。
本県では、おいしいかしわ肉を求める消費者の声に応え、県農業総合試験場で、一九八三年に、肉質がよく成長の速い大型の名古屋コーチンを開発して以来、畜産総合センター種鶏場で維持、増殖しながら、民間のふ化場や生産者へひなを供給しております。また、その後、肉だけでなく卵も濃厚でおいしいと評価をいただくようになったため、二〇〇〇年には卵を多く産むように改良した採卵専用の名古屋コーチンを開発いたしました。現在も、より一層能力を高めるよう改良に取り組むとともに、生産農家の収益性を高める新たな飼育技術なども研究しております。
一方、こうした供給体制により、二〇〇〇年代には年間百万羽規模の出荷量を維持してきましたが、関係業界から、高まる市場ニーズに対応し、県のひな供給を一層充実させてほしいとの御要望をいただいたため、二〇一六年度から、名古屋コーチン発祥の地とされる小牧市で新たな種鶏場の整備に着手し、このたび開場に至ったところであります。
新たな施設は、鳥インフルエンザウイルスをはじめとする病原体を施設内に持ち込まないよう鶏舎を密閉型にするなど、防疫レベルを強化し、また、屋根や壁に断熱材を用いるなど、鶏にとって快適な環境を保つことで生産性の向上を図っており、将来的に年間二百万羽の供給を期待する業界からの要望に応えられるよう取り組んでまいりました。
次に、消費回復に向けた取組についてであります。
コロナ禍の影響で需要が減退し、経営が悪化している生産者を支援するためには、出口対策として、消費者の需要を喚起し、速やかに消費を回復させることが重要であります。
このため、県では、一般社団法人名古屋コーチン協会をはじめ、関係者と連携し、一大消費地である名古屋市を中心にイベントや販売促進フェアを開催し、消費回復に取り組んでいるところであります。
去る六月二日から四日には、栄地区で開催されました手羽先サミットにおいて多くの来場者に名古屋コーチンをPRいたしました。また、秋の行楽シーズンや三月十日の名古屋コーチンの日にも、消費拡大イベントや販売促進フェアを開催する予定です。
加えて、名古屋コーチンのイメージキャラクターを新たに作成し、インスタグラムなどのSNSで発信したり、コーチン料理を提供する飲食店マップをウェブで紹介するなど、名古屋コーチンの魅力を高めてまいります。
こうした取組を通じて、県内はもとより、県外や海外からの観光客も視野に入れて、名古屋コーチンの消費回復、さらには一層の需要喚起に努めてまいります。
- 10: ◯五番(伊藤貴治君) それぞれ御答弁をいただきました。
こちらは要望です。
安心して働くことができれば、持てる力を発揮することもできます。障害者雇用の目的は、採用ではなく、その先にある成果を求め、障害者本人も会社も成長すること。企業での雇用を進めるのももちろんですが、就労支援の事業所で働きながら安心のできる職場環境と賃金を得られる環境を確保できないだろうかと考えるようになりました。
県や市での優先調達や業務委託、また、共同受注窓口の設置によって、仕事の切り出しを行っていただいておりますが、現状、仕事を切り出した企業にメリットがありません。特例子会社は親会社との雇用として認められますが、就労支援事業所も親会社が雇用していないだけで特例子会社とほぼ同じ体制です。管轄が国になりますのでここではあまり触れませんが、これらに仕事を切り出した企業の法定雇用率を緩和することができると、共同受注窓口、就労支援事業所、民間もより障害者雇用の促進へと理解が進んでいくと考えます。
法定雇用率が障壁となり、企業側のより積極的な参加が阻まれている。仕事を共同受注窓口や就労支援事業所に投げかけることで法定雇用率の緩和が実現されれば、企業にもメリットが出てくる。年々上がっていく法定雇用率にも対応できるようになるかもしれないということです。一般就労を望む方、また、障害の状況等により一般就労へ移行することが困難な方がいる中で、より柔軟に働くことができる場があれば、障害のある方もより地域で自立した生活が送れるようになります。
二〇二四年度以降、週所定労働時間十時間以上二十時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率において〇・五人として算定できるようになります。こういった労働、福祉両面から障害のある方々や企業が使いやすい環境整備をしていかなくてはなりません。
障害者雇用に関して法律での取扱い部分が大きなものになりますが、実際に障害のある方が生活し、企業も事業を行うのは、地域になります。その状況を吸い上げる地域の声こそが、国に必要なものであると信じています。その声を産業立県である本県が率先して国に届ける、その役割をより果たしていただきたいと思っております。
今まで税金で生活を維持してきた人たちが納税者となって税金として返してくれるようになれば、これが一億総活躍の姿だとも思います。全ての障害のある方が生き生きと自立した生活を送れるよう、本県のサポート体制のさらなる充実をお願いして、私の質問を終わります。
- 11: ◯副議長(いなもと和仁君) 進行します。
高橋正子議員。
〔九十二番高橋正子君登壇〕(拍手)
- 12: ◯九十二番(高橋正子君) おはようございます。
私からは、以下三項目について順次質問してまいります。
最初の質問は、若年女性の東京圏進出に待ったをかける県内就職促進への取組についてであります。
愛知県は日本一の産業県であり、多くの優良企業が集積しています。給与水準も全国トップレベル、東京と比べて平均通勤時間が三十分以上短いところも働きやすさのポイント、待機児童数は東京の五分の一と、女性が働きながら子育てできる環境も整い、働く女性の旅行、行楽をする割合は全国一位、一日当たりの趣味、娯楽に費やす平均時間は全国五位と、充実した暮らしを送っている女性が多く、住みやすさ、働きやすさなら愛知県と女性に向けて発信されるあいち女性の活躍促進応援サイトのPRメッセージに愛知の魅力を感じてほしいものです。
女性の皆さん、ぜひ愛知の企業へと、声高に若い女性の労働力を求める背景には、長年にわたって本県が抱える人口移動の大きな課題があります。
愛知県は、製造業が強いという産業構造ゆえに、男性の転入は相次ぐ反面で、女性が働きたいと希望する三次産業関連の雇用機会が少ない現実があります。だから、大学卒業後の就職時を含む二十歳から二十四歳の若年女性は、モノづくりのイメージが強い愛知では働く場所がないと、東京圏へと転出していく傾向が続きます。
実際に本県の若い女性は少ない。若年人口二十歳から三十四歳の年代に占める女性の割合は、男性百人に対し、女性は八十九・八人と、全国平均九十五・四人を下回り、都道府県別では全国で八番目に女性の割合が低いということです。男女人口のバランスの崩れは、男性の未婚率を増加させ、将来の母親候補人口を逃し、少子化に拍車をかけます。
折しも、本県は我が国屈指の産業県として、若い世代の転入超過で長らく人口増加を維持してきましたが、昨今は二〇一九年の七百五十五万四千人をピークに、三年連続で人口減少が続いています。このまま進めば、地域の活力に影を落とすことは必至だと危機感が募ります。
そこで、長年の懸案であった若い女性の東京圏への転出超過に歯止めをかけたい本県として、今年度から、東京圏へと流出する可能性のある女子大学生に県内企業をPRし、地元就職につなげる取組に力を入れると聞いています。
本県では、女性が元気に働き続けられる愛知の実現に向けて、二〇一三年度からあいち女性の活躍促進プロジェクトを推進しています。これまでに、県内大学の在学生へ、就職の希望先を検討するに当たって重視していることや、若年女性の転出超過について、その要因となる女性の意識や行動の把握、分析のためのアンケート調査も実施してきました。
女子学生の傾向は、育児休業の取得率が高い企業を望み、出産後も長く働きたいと考える学生が多いようです。愛知県内での勤務を希望する学生は、仕事よりも余暇や家庭生活を優先したいなど、ワーク・ライフ・バランスに関する項目が上位で、東京圏での勤務を希望する学生は、仕事を通して自己実現をしたい、常にキャリアアップ、スキルアップを心がけたいなど、キャリア形成に関する項目が上位。働きがいを求めれば、多様なキャリアを実現できる就労環境が整った東京圏へと足を運ぶことも理解できます。
その中で、注目したいのは、二〇二〇年度に県が女子学生を対象に行った働くことに関する意識調査から、女子大学生の八二・三%が、愛知県内の職場で働きたい、四四%、または働いてもよい、三八・三%と答えています。やりたい仕事があれば愛知県で就職を考えたい、地元志向の女子学生も多いことが分かりました。
そこで、以下三点にわたって質問いたします。
一点目として、二〇一三年度から全庁で取り組んできたあいち女性の活躍促進プロジェクトも十年となり、これまで製造業が強い本県の特徴を踏まえながら、働く場における女性の定着と活躍の拡大に向けた施策を展開してきました。しかし、若年女性の東京圏への流出にはどうしても歯止めがかかりません。
そこでお伺いいたします。
若年女性が東京圏へ転出している現状について、本県のこれまでの女性活躍に向けた取組を踏まえて、どのように考えておられるのでしょうか。
二点目として、二〇一五年度から創設している、女性活躍に意欲的に取り組む企業を認証し、社会的評価を高めることで、女性活躍に向けた具体的な取組を促すあいち女性輝きカンパニーには、二〇二二年度までに千二百六十三社が女性が活躍できる企業としてのお墨つきをもらっています。就職活動で企業にアンテナを張る女子大学生にとっては、女性に優しい企業が千二百社以上もあるというのは、耳寄りな情報だと思います。
そこで、あいち女性輝きカンパニーに関する情報を就職活動を行う女子大学生にどのように発信していくのか伺います。
最後、三点目は、本県には実際に、製造業から、若い女性の採用はしづらいとの相談が寄せられています。二〇二二年度、女性役員登用に向けた企業ワーキンググループからも、製造業というと男性の職場であるという性別意識、ジェンダーバイアスによる無意識の思い込み、アンコンシャス・バイアスがあり、女子の採用に結びついていない可能性があるとの声もありました。
一般的に、製造業イコール男性の仕事であるというジェンダーバイアス、性別意識から、製造業には女性の活躍する場がないという無意識の思い込み、アンコンシャス・バイアスが生まれているとすれば、まずはこの意識を払拭することが、製造業が強い本県としては一丁目一番地ではないでしょうか。また、製造業の採用にはイメージ戦略も必要だと思います。
そこで、モノづくり企業のイメージを変えていくことが必要ですが、県としてどのように取り組んでいかれるのか伺います。
次の質問は、愛知の温泉の現状と資源保護の取組についてです。
古くから独自の温泉文化を形成してきた我が国では、しっとりと温泉情緒を満喫できる正統派の温泉を求める一方で、ドライブ気分で出かける立ち寄り湯やレジャー志向の日帰り温泉など、温泉ニーズも多様化しています。温泉の楽しみ方はエトセトラでも、この自然の恵みは限りある資源であることを忘れてはいけません。
今、温泉ブームの側面で起こっていること、それは温泉の持続可能性が危ぶまれる異変が各地の温泉から報告されていることです。
異変とは、温泉の湯量の減少や湯温の低下などで、日本を代表する大分県別府温泉、北海道のニセコエリア、青森県弘前市嶽温泉、長野県千曲市佐野川温泉など、全国各地の名立たる温泉から続々と報告され、源泉の枯渇にもつながりかねない一大事だと、天然資源である温泉の使い方に警鐘を鳴らしています。
国が定めた温泉法では、二十五度以上あればただの地下水でも温泉と認可されることから、千メートル地下では水温も約三十度と確実に温泉を手に入れることができるために、千メートル以上の大深度から温泉の湯脈を掘り当てる傾向にあります。そして、そこに動力装置でお湯をくみ上げるわけですが、自然と湧き出る自噴泉とは違い、人工的に湧出させることで温泉を過剰にくみ上げれば、自然の温泉収支バランスが成り立たなくなり、枯渇という最悪の事態を迎えることとなります。
振り返ること二十年前、温泉開発で過剰な温泉のくみ上げから温泉の慢性的な不足を招き、名湯長野県白骨温泉で入浴剤を添加していた温泉偽装問題が発覚したのを皮切りに、群馬県伊香保温泉や栃木県那須温泉でも、入浴剤を添加したり、水道水や井戸水を沸かした温泉偽装問題が発生しました。さらに、衝撃は、本県でも既に源泉が枯渇していた吉良温泉が、水道水を使用していたにもかかわらず、パンフレットなどに天然温泉と刷り込み、十年間も偽装していた事件です。どれも温泉の使い過ぎで湧出量が減少して温泉資源が枯渇、天然温泉偽装問題へと発展した事件です。
本県では、吉良温泉の温泉偽装問題を受けて、以後、毎年一回、県内全ての源泉及び温泉利用施設に立入調査をするとともに、十年ごとに温泉成分の再分析を指導してこられたことは存じております。
そして、温泉ブームと温泉開発は天然温泉偽装問題の発覚後も止まることなく、二十年経過した今、再び湯量の減少や湯温の低下という日本の温泉の存亡に関わる深刻な事態をマスメディアは報じています。
では、愛知の温泉の状況はどうでしょう。
私は、平成十五年、全国各地で発覚した天然温泉偽装問題を受け、本県の温泉の実態調査と、今後どのように愛知の温泉を守っていくのか、その取組について本議会で質問した経緯があります。
そこで、再び各地の温泉に異変が起きていると報じられる中、以下、愛知の温泉の現状について伺っていきます。
まずは、二点お聞きいたします。
一点目として、天然温泉偽装問題が発覚した平成十五年から令和三年までのこの二十年間の愛知県内の源泉総数と源泉利用状況、総湧出量の推移を伺います。あわせて、この間の現状から愛知の源泉の傾向をどのように解析されるのか伺います。
二点目として、本県では、吉良温泉の温泉偽装問題を受けて、この二十年間、温泉事業者に対して、年一回の立入調査と十年に一度の温泉成分の再分析を指導してこられましたが、実際、愛知の温泉については源泉に変化はあるのでしょうか。
さて、温泉ブームと温泉開発が進む中、温泉法に基づく温泉の掘削や動力装置には都道府県知事の許可が必要となり、本県では、温泉の掘削申請などについて、学識経験者で構成される愛知県環境審議会温泉部会の意見を聞いて許可しています。
一方で、温泉は限りある資源であり、その保護は大きな課題です。
そこで伺いますが、昨今の掘削許可の申請状況はいかがでしょうか。
国のほうで温泉資源保護の対策を円滑に進めるためには、具体的かつ科学的な指針を作成すべきであるとの考えの下、平成二十年十二月に環境省が温泉資源保護に関する指針案を提示、過剰なくみ上げなどで温泉が枯れたり地盤沈下が起きたりするのを防ぐために、知事が新規掘削を原則禁止する区域の設定などの考え方を示したガイドラインをまとめて、平成二十一年三月に各都道府県に通達しています。
そのガイドラインを受けて、本県では、掘削などの原則禁止区域としては、地盤沈下防止の観点から、名古屋市内及び尾張西部などの地域において、一定の口径を超えた井戸は原則設置できないこととなっています。また、既存源泉から五百メートルを超えないと掘削許可申請も出せないことになっています。
全国各地の温泉で湯量の減少、湯温の低下など、源泉の疲弊が相次いで報告されている中で、温泉は自然が与えてくれた限りある貴重な資源です。
そこで、この項目の最後の質問です。
愛知の温泉資源を守る立場の当局として、持続可能な温泉に向けての今後の取組について伺います。
最後の質問項目は、高齢化する県営住宅への単身学生入居についてです。
昭和三十年から五十年代にかけての高度経済成長期、急増する人口に住宅不足を補うために次々と建てられた公営団地、かつて、盆踊りや夏祭りの団地を挙げての行事には、近隣町内からも大勢が参加し、コミュニティー活動が盛んでした。しかし、今では、築四十年、五十年と経過した建物の老朽化に空き部屋の増加、何よりも入居者の高齢化により団地内の地域社会としての活力が失われつつあります。本県県営住宅も例外ではありません。
本県の県営住宅総戸数は、二〇二三年四月一日現在で五万七千四十九戸、そのうち入居戸数は四万四千五百十七戸で、入居率は七八・一%、契約者の年齢層を見ると、六十五歳以上の方が契約者となっている割合は五一・八%で、半数を上回っています。さらに、単身で入居している高齢者も年々増加し、六十五歳以上の単身者入居率は、この四年間で三・四%も増えて、二三・四%に。七十代、八十代の独り暮らしの高齢者も見受けられ、問題視される孤立死への不安が頭をよぎります。
本来、公営住宅では、共同生活を営む上で入居者が自主的に運営する自治会の役割が大きいのですが、この自治会も、入居者の高齢化で、自治会役員の担い手不足、団地内の清掃や草刈りなど地域コミュニティーの維持困難など、自治会活動が停滞し始めている住宅も現れています。
このように、公営住宅の自治会活動の滞りが課題となっている中で、今、近隣大学の学生に格安家賃で入居してもらい、自治会活動に参加して、地域コミュニティーの手助けをしてもらう取組が、東京都の都営住宅をはじめ、全国の自治体で広がっています。
こうした公営住宅への学生の入居は、公営住宅の目的である住宅に困窮する低額所得者の入居が阻害されない範囲内で、地域の実情に対応した公営住宅の弾力的な活用を図るための地域対応活用計画に基づく目的外使用として認められ、自治体と大学が協定を締結して、取組を実施しています。
東京都では、二〇二二年に近隣の大学と協定を締結、入居の条件は自治会に入会して活動すること、学生が、清掃や草むしりなどに参加するほか、月一回、資源ごみの回収にも当たっているということです。学生たちが自治会活動に参加することで、地域コミュニティーが活性化され、住民にも好意的に受け止められ、世代を超えた交流の中で人の役に立てるのもまた楽しいと学生たちは口をそろえているとも聞いています。学生にとっては、一般の住宅よりも安い家賃で大学の近くに居住でき、自治会は若い力を発揮してもらえるので、互いにウィン・ウィンと、各地で大学と協定を結ぶ自治体の評価も高いようです。
東海四県内では、三重県のほか、名古屋市、四日市市でも学生が入居できるよう大学と自治体の協定締結がなされ、例えば三重県では、鈴鹿大学、鈴鹿大学短期大学部と二〇二〇年三月に協定を締結しています。対象となる県営住宅は津市河芸町にあり、入居者は五割を割り、高齢者が多く、空き家は四、五階など高層階に目立ちます。駅からも遠く、スーパーも近くにないため、自動車を所有していないと生活には不便で敬遠されがちな物件です。
一方、鈴鹿大学の学生にとっては、大学周辺に賃貸物件がなく、下宿探しにも苦労しているとの声を聞き、河芸町のこの県営住宅は大学から三百メートルの立地だったことで、県から大学へ県営住宅への単身学生の入居を持ちかけたところ、大学側に歓迎されて、スムーズに決まったということです。
現在は、運動部の学生が入居し、自治会活動にも貢献。三重県では、空き家の状況を見て学生の入居枠を増やしていきたいということです。
そこで質問です。
住民の高齢化や空き室の増加で公営住宅の自治会活動の停滞が課題となる中、全国で地域のコミュニティー活性化が期待され、大学生の県営住宅への入居について本県でも検討すべきと考えますが、御所見を伺います。
以上、三項目にわたり質問をいたしました。当局の明快な答弁を期待し、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 13: ◯県民文化局長(伊藤正樹君) まず、若年女性が東京圏へ転出している現状について、本県のこれまでの女性活躍に向けた取組を踏まえてお答えをします。
本県では、二〇一三年度に女性の活躍促進プロジェクトチームを発足して以降、女性が元気に働き続けられる愛知を目指して、あいち女性の活躍促進サミットの開催などによる女性活躍に向けた機運の醸成や、時間外勤務の縮減、男性の育児参加促進などによるワーク・ライフ・バランスの推進など、様々な取組を実施してきました。
そうした中、本県が女子大学生に対して行ったアンケートでは、将来働きたい業種について回答が多かったのが、教育、学習支援業、医療、福祉、サービス業等であり、本県の主要産業である製造業を希望する方は少ないという結果になっております。これは、製造業の現場では力仕事が多いといったイメージや、女性は理系より文系の仕事に向いているといった固定観念があることが影響しているものと考えております。
今後は、製造業においても、商品開発、マーケティング、広報等、様々な仕事があることを知っていただくとともに、固定的な性別役割分担意識を解消し、性別にとらわれずに進路や就職先を考えていただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。
次に、あいち女性輝きカンパニーに関する情報を就職活動を行う女子大学生にどのように発信していくかについてお答えします。
本県では、女性活躍に取り組む企業や就職を考える女性を応援するために、二〇一五年度に開設したあいち女性の活躍促進応援サイトにあいち女性輝きカンパニーの認証企業名を掲載し、二〇一九年度からは、認証企業を業種や所在地、従業員規模で検索できる機能を加えました。この検索ページは、サイト全体の閲覧数の四六%と約半数を占めており、あいち女性輝きカンパニーへの関心は高いと考えております。
今年度は、新たに、あいち女性輝きカンパニーの女性の管理職比率や男女別平均勤続年数など、女性の活躍度合いを表す数値等を掲載するとともに、カンパニー各社からのメッセージを掲載するなど、その魅力を発信する場となるようサイトを充実してまいります。
さらに、女子大学生があいち女性輝きカンパニーを取材して作成した動画をサイトに掲載したり、女子大学生とあいち女性輝きカンパニーとの交流会を開催する予定であります。
今後は、あいち女性輝きカンパニー各社の具体的な取組内容と、その職場で生き生きと活躍している女性の姿を女子大学生に知っていただけるよう、情報発信にしっかりと取り組んでまいります。
次に、モノづくり企業のイメージを変える取組についてお答えします。
本県の主要産業である製造業等の経営者からは、女性を採用したくても応募者が少なく採用できないといった声を伺っております。
こうした現状を踏まえ、本県では、昨年度県内三地域において、県、市、商工会議所と地元企業を交えて、中小企業の製造業等における女性活躍について意見交換を行いました。そのうち、大府市にある製造業の企業からは、SNSを活用して女性の社長が自ら会社の取組を紹介するライブ配信を行ったり、あいち女性輝きカンパニーのロゴマークを掲載した横断幕を使って社員を募集した結果、ホームページの閲覧数が三十倍に上がり、女性からの問合せが増えるなど、大きな反響があったという事例が紹介をされました。女性の人材確保に効果的な取組事例であり、今後も中小企業向けに開催する女性活躍促進セミナー等で広く紹介していきたいと考えております。
また、本県では、二〇二一年度から、若い世代が性別にとらわれずに進路や就職先を考えていただけるよう、中学、高校、大学等に出向いてキャリア講座を開催しています。講座では、女性がモノづくり企業で働く事例等を紹介しており、昨年度は十五の学校で二千八百二十三人に受講していただき、工業系の仕事は男性というイメージがあったが、性別は関係ないと思ったといった感想もいただいております。
今後も、女性の採用に効果的な取組事例や、製造業で女性が活躍している事例を積極的に発信し、モノづくり企業で活躍する女性がさらに増えていくように、しっかり取り組んでまいります。
- 14: ◯環境局長(川村正人君) 本県の温泉に係る御質問のうち、まず、県内の源泉の総数の推移についてお答えをいたします。
二〇〇三年度に百十四本であったものが、二〇二一年度には百三十五本となっております。この間に新設が二十九本、廃止が八本あり、差引きで二十一本増加しているところでございます。
次に、源泉の利用状況ですが、百三十五本のうち、実際に利用されているのは九十三本であり、自噴で利用されているものは十四本から九本に減少している一方、動力によりくみ上げて利用されているものは六十八本から八十四本に増加をしております。
次に、総湧出量につきましては、二〇〇三年度に毎分一万八千五百四リットルあったものが、二〇二一年度には毎分一万六千六百五十二リットルと、約一〇%減少している状況となっております。この減少については、温泉事業者に対して聞き取りを行ったところ、利用状況に応じてくみ上げる湯量を調整しているということでございまして、温泉資源の減少等によるものではないと捉えているところでございます。
次に、本県の温泉源泉における変化についてでございます。
本県で全ての温泉事業者を対象に年に一回実施しております立入調査において、湯量、温度のほか、十年ごとに事業者が実施する温泉成分再分析の結果などについて聞き取りを行っておりますが、この二十年間において、湯量や温度、成分などに大きな変化は見られておりません。また、温泉事業者から、温泉成分の変化や源泉の枯渇に関する相談なども受けていないところです。
こうしたことから、本県においては源泉に目立った変化はないものと考えております。
次に、昨今の掘削許可の申請状況についてでございます。
ここ二十年間における掘削許可の総申請件数は四十九件であり、不許可としたものはございません。この間最も多かった二〇〇三年度には九件の申請がありましたが、全くなかった年度もございます。ここ数年は、年間ゼロから二件程度で推移をしており、昨年度の申請は二件となっております。
また、新たな掘削による周辺の源泉の湯量の減少や温泉成分の変化は確認はされておらず、温泉資源の保全上、特に問題がなかったものと考えております。
最後に、持続可能な温泉に向けた今後の本県の取組についてお答えをいたします。
議員御指摘のとおり、温泉は貴重な資源であり、将来にわたって持続的にこの資源を確保できるよう、適切な利用を図る必要があると考えております。
このため、本県におきましては、環境省が示しておりますガイドラインに基づき、温泉資源の保護を進めてまいりました。さらに、温泉事業者による湯量、温度等のモニタリングの徹底を図り、そこから得られた情報を蓄積することで、各源泉の状態の把握に努めているところであり、今後大きな変化の兆候が見られた場合には、直ちに保全策を検討することとしております。
今後も、温泉資源の保護と適正な温泉利用の確保に向けて、温泉の新規の掘削許可やくみ上げ用の動力装置の設置申請につきましても、学識経験者等で構成される環境審議会温泉部会の専門的な見地に基づく御意見をお聴きしながら、慎重に審査をしてまいります。
- 15: ◯建築局長(纐纈知行君) 県営住宅への目的外使用による学生入居についてお答えします。
県営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的として、県が国の補助を受けて建設しております。また、県営住宅の管理は、公営住宅法に基づく管理代行者である愛知県住宅供給公社が行っておりますが、住宅共用部の清掃などにつきましては、入居者が組織する自治会にその役割を担っていただいております。
近年、公営住宅の自治会活動については、入居者の高齢化による担い手不足が全国的な課題となっており、一部の自治体では、地域の実情に対応した公営住宅の弾力的な活用を可能とする国の地域対応活用の手法を用いて、学生が公営住宅の空き住戸に入居し、自治会活動に参加する取組を実施しております。
本県の県営住宅におきましても、入居者の方への満足度調査の回答の中で、高齢者が多く、敷地内の清掃や草刈りが大変であるといった御意見をいただいており、高齢化が進む県営住宅において、本来の対象者の入居を阻害しない範囲内で学生の入居を認めることは、自治会活動の担い手確保による活性化につながるものと考えております。
こうした学生入居の取組を進めていくためには、学生に過度な負担をかけず、学生が主体的に自治会活動に参加できる環境づくりや、地域活動への参加意欲のある学生の継続的な確保が重要であります。
そこで、まずは、大学が近接し空き住戸のある県営住宅の自治会に対して、学生受入れの意向と学生に期待する役割の調査を行うとともに、大学側に対しては、県営住宅への入居のニーズの有無などについて聞き取りを行ってまいります。その上で、県住宅供給公社と連携し、他の自治体の事例も参考にしつつ、地域対応活用による学生入居について、具体的な検討を進めてまいります。
- 16: ◯知事(大村秀章君) 高橋正子議員の質問のうち、若年女性の東京圏流出に関する県内就職促進の取組について、私からもお答えをいたします。
議員お示しのとおり、本県は二十歳代全般の就職期にある女性の東京圏への転出が多いという状況になっております。
このため、本県では、これまで若年層をターゲットとした愛知の住みやすさの発信やUIJターン希望者の就労支援などと併せて、あいち女性輝きカンパニーの認証制度や、女子中高生の理系分野への進路選択支援、女性起業家の育成など、女性が活躍できる職場づくりや就業機会の拡大に取り組んでまいりました。
このうち、あいち女性輝きカンパニーについては、昨年度までに千二百六十三社を認証いたしまして、あいち男女共同参画プラン二〇二五に定める二〇二五年度までの認証目標数千二百社を前倒しで達成いたしました。女性活躍の輪を広げていくためには、今後もあいち女性輝きカンパニーの数を増やしてまいりたいと考えており、今年度中に目標数をさらに引き上げて県内企業に働きかけてまいります。
あいち女性輝きカンパニーに認証された企業を業種別に見ると、本県は日本一の産業県ということもあり、製造業と建設業で認証企業数の半数近くを占めております。認証企業では、女性が使いやすい器具、設備等の導入や作業工程の見直しを行ったり、仕事と家庭の両立を支援する制度の導入などに積極的に取り組み、女性が働きやすい環境が整備されております。
今後は、本県のモノづくり企業におきましても女性が活躍できる仕事がたくさんあることを若い女性にもっともっと知っていただけるように、あいち女性輝きカンパニーのPR、そして魅力発信に引き続きしっかりと取り組んでまいります。
- 17: ◯九十二番(高橋正子君) それぞれ御答弁いただきまして、知事からも御答弁いただきました。
若年女性の東京圏への転出に歯止めをかける取組について、知事の答弁からも、これまで以上に力を入れて取り組んでいただけるものと思います。
私からは各項目について要望させていただきます。
多様な活躍機会を求める若年女性にとって、県内に製造業以外に選択肢が少なく、このことが東京圏への転出の主因になっているとこれまで言われ続けてきました。製造業に特化した産業構造である本県としてはこれもまた否めませんけれども、製造業に対する女子のイメージは、モノづくり企業は男性中心社会なので女性が長く働く環境が整っていないのではないかとか、女性はスキルアップできないし、やりがいを見いだすのはちょっと難しそうかななどが本音のようです。まさにそれこそがアンコンシャス・バイアス、無意識の思い込みであります。
今は、女性ならではの視点や感性を発揮し、女性消費者をターゲットに、付加価値の高い製品開発や販売、広報など、女性力に頼って自社の魅力を発信し、イノベーションを起こすモノづくり企業も急増しています。ですから、若い女性に向け、一律の製造業のイメージを払拭するには、企業サイドの独自の発信力やさらなる工夫も必要かとも思います。
二〇一八年に本県が実施した若年女性の東京圏転出入に関する意識調査では、若い女性が愛知県に定着するために必要なことについて、半数の女性が口をそろえたのが、仕事と育児の両立を支援する企業などの制度や職場環境の整備と答えていますので、女性が活躍できる企業、あいち女性輝きカンパニーの周知にはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。意外に、若年女性の皆さん、このカンパニーの存在は御存じありません。
そして、本県の女子大学生の八〇%以上が地元で就職をしてもいいと思っているわけですから、製造業でも女性が活躍できるステージがあるということを、東京圏へと足を向かないように、ふるさと愛知で働く魅力をぜひとも発信していただけますよう期待しております。
続いて、愛知の温泉の現状についてであります。
今は全国の温泉地で湯量の減少や湯温の低下など源泉の疲弊が相次いでいる中でも、愛知の温泉は大丈夫ですよと、今太鼓判をいただいたと思っています。これも、県当局が、温泉事業者に温泉資源を適切に使用してもらっているかなど、これまで二十年間、目を光らせていただいている結果だと思います。
ただ、愛知の温泉も源泉数はこの二十年間で二十一源泉増えているものの、自然と湧き出る自噴泉は五源泉減少していますし、源泉の六割強が湧出量は動力装置での湯のくみ上げに頼っているわけですから、当然、温泉をくみ上げ過ぎると慢性的な温泉不足につながりかねません。年一回の温泉事業者への立入調査は温泉のSOSをいち早くキャッチできると思いますので、継続的な取組をよろしくお願いいたします。
最後の県営住宅への単身学生の入居についてです。
県営住宅の入居者の高齢化が課題となる中で、これまで入居できなかった単身学生に自治会に入会してもらって、地域のコミュニティーのお手伝いをしてもらう、その代わり家賃はお安くしますよという仕組みが全国で広がっていますので、愛知県でも検討できませんかと質問しました。全国でも幾つかの実施事例もあることから、実施の可能性としてはありかと思っていましたが、いただいた答弁はかなり前向きなものでした。
今後は、対象となり得る県営住宅や協定を結んでもらえそうな大学の選定など、マッチングを実現するためのプロセスを一つずつ踏んで前へと進めていただくわけですが、県営住宅、そして大学、双方に実施できる条件がそろわないと難しい案件なだけに、そんなに簡単にはできないかもしれません。時間と労力も要ると思います。でも、新しい県営住宅の形として私は大いに期待できると考えておりますので、積極的な取組をお願いし、私の発言を閉じさせていただきます。ありがとうございました。
- 18: ◯副議長(いなもと和仁君) 進行します。
杉浦友昭議員。
〔六番杉浦友昭君登壇〕(拍手)
- 19: ◯六番(杉浦友昭君) それでは、通告に従い、まず初めに、衣浦大橋周辺の渋滞対策について質問いたします。
知多地域は、北部に国際拠点港湾である名古屋港、東部には重要港湾である衣浦港があり、さらに、常滑市の沖合には空の玄関として愛知県と世界各都市を結んでいる中部国際空港といった社会経済活動を支える重要な社会基盤が充実しており、中部国際空港の第二滑走路の整備や、名古屋方面からのアクセスとなる西知多道路の整備が進むなど、今後も発展が期待される地域となっております。また、南部においても、農業、漁業が盛んであるとともに、恵まれた自然を利用した観光レクリエーション地域として憩いの場となっており、多くの観光客が訪れる地域でもあります。
その中で、私の地元半田市は、知多半島の中央部に位置し、知多地域を南北に貫くこの地域の大動脈である知多半島道路や南知多道路と、中部国際空港へ連絡する知多横断道路が通る交通の要衝であるとともに、古くから天然の良港として知られる衣ケ浦を背景に、海運業や醸造業などで栄えた臨海部には衣浦港が整備されており、陸海空の広域的な交通の利便性が高く、知多地域の中心都市となっております。
また、衣浦港とその周辺地域では、モノづくり愛知を支える自動車産業をはじめ、火力発電、バイオマス発電等のエネルギー産業、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区に指定された航空機産業など、日本経済を支える多様な産業が集積しているほか、江戸時代から明治時代の重厚で情緒あるたたずまいが残る半田運河沿いの醸造文化や、今年のゴールデンウイークに四年ぶりに本格的に開催され、大村知事も来られた亀崎潮干祭をはじめとする山車祭りなどの多くの歴史的、文化的な地域資源もあり、産業や観光のポテンシャルが高い地域となっております。
特に三百年以上続く伝統があり、二〇一六年にユネスコ無形文化遺産に指定された亀崎潮干祭が行われる亀崎地区は、半田市が景観に配慮すべき景観形成重点地区に指定しており、潮干祭の山車の引き回しが映える町並みの形成などを目指し、道路の美装化と併せて、市道亀崎線の無電柱化も進められるなど、祭りの魅力や活力を中心としたまちづくりに力を入れている地域であり、県内外から多くの人を呼び込もうとしている地域であります。
今後もこの地域のポテンシャルを生かし、国際交流の発信地であるとともに、社会経済活動を支える重要な社会基盤が充実する知多地域と自動車産業の世界的な拠点である西三河地域が連携し、さらなる発展につなげるためには、南北に細長い衣浦港を渡る東西交通の確保が極めて重要であります。
衣浦港の東西を結ぶ道路としては、中央部に半田市の中央ふ頭西地区と碧南市の中央ふ頭東地区を結ぶ衣浦トンネル、北部には半田市と高浜市を結ぶ衣浦大橋があります。
まず、衣浦トンネルについてですが、このトンネルは、一九七三年に開通し、その後、港湾の取扱貨物量の増大や周辺道路の整備の進展に伴い、二〇〇三年に新トンネルが開通し、二車線から四車線になっております。地元からは、無料化や低料金化ができないのかとの話をよく聞きますが、建設に要した費用を返済する期限である償還期限が二〇二九年度であり、未償還額も残っていることから、現時点での無料化や低料金化は難しいのが現状とのことでした。現在は、料金所での現金支払いによる時間を短縮し、交通を円滑にする取組として、回数券の利用率を向上させるため、衣浦トンネル料金所以外にもコンビニエンスストアなどで回数券を販売していると聞いております。それ以外にも、料金所での支払い時間を短縮する方法として、支払い方法のキャッシュレス化が挙げられますが、キャッシュレス化に係る設置費用などを勘案すると、導入は大変厳しいと伺っております。
今後、技術革新が進み、安価な導入が可能になることで、キャッシュレス化が進むことを期待します。今後も引き続き、様々な検討をすることで、利用者への利便性向上を進めていただきたいと思います。
次に、衣浦港の北部にある国道二百四十七号の衣浦大橋は、衣浦湾の東西の臨海地区における港湾物流機能の確保だけではなく、知多地域と西三河地域を結び、本県の経済活動を支えるとともに、広域的には東三河・西三河地域から中部国際空港へのアクセスとして重要な役割を担っており、本県の発展には欠かせないものであります。
この橋は、一九五六年に日本初の海上の橋として開通したトラス橋であり、夢のかけ橋とも東洋一長い橋とも言われた橋長六百五十メートルの橋で、橋の中央で東西のトラスの形状が異なる特徴のある橋でありました。その後、高浜市側の埋立てにより、橋を短くする工事が行われ、現在は約四百メートルの橋となっております。また、開通当時は二車線、対面通行の有料道路でありましたが、その後、無料の橋として開放され、利用率が年々増大し、交通混雑が著しくなったことから、その対策のため、一九七八年に南側に新橋ができております。
現在は、トラス橋は二車線の東行き、新橋は二車線の西行きとして利用されております。一九八五年には、一日当たり約二万台の交通量であったものが、現在では四万台を超え、約二倍以上に増大しております。さらに、物流や通勤車両などの集中により慢性的に交通渋滞が発生しており、地域の主要渋滞箇所にも指定されております。
こうしたことから、県では、コスト、効果及び実現性を考慮した渋滞対策の検討を行っていると聞いており、順次対策が進められております。
これまでに、二〇一七年度、高浜市側の衣浦大橋東交差点において、交通の円滑化のための南北交通の立体化を図る高浜高架橋の整備や、併せて実施された半田市から刈谷方面に向かう左折車両を信号に制御させることなく通過できるようにする左折フリー化などの交差点改良が終わっております。半田市側の衣浦大橋西交差点においても、交差点を西側に拡幅し、半田市街地から高浜方面に向かう右折車両の通行を円滑にする改良工事が終わっており、その効果として、高浜市・刈谷市方面へ向かう交通の渋滞が緩和され、所要時間がかなり短縮されたと、地元の方も喜んでおります。
さらに、今年の三月には、高浜市から半田市街地方面へ向かう左折専用橋が開通したところであります。施工に当たって、橋梁下部工事では、半田市側の海岸堤防部に下部工を造るため、護岸として使われている大きな石を砕くために特殊な機械を使用したそうです。また、河川や川の中に橋脚を造るためには、工事用の桟橋を使用するのが一般的ですが、多くの船舶が往来する港の中の施工であり、その航路を確保するため、桟橋が設置できないことから、クレーン付台船を使って設置した海の上の作業ヤード上で工事を行い、工事用の資材も船を使い搬入するといった工事を行ったそうです。さらに、橋梁上部工事では、工事ヤードが狭いため、陸上の架設ができないことから、海からの台船を使った架設工法になったそうです。岸壁のある工場で大きなブロックに組み立てた橋桁を台船に乗せ、橋梁の位置まで運び、潮の満ち引きを利用して架設する工法であり、今回は、工期を短縮するために、船の上に橋桁を上げ下げするジャッキも活用し、三か月程度を要するところ、一か月に短縮することができたと聞いております。こうした苦労もしながら、渋滞対策が着々と進められていることに、大変感謝しております。
一方で、半田市から高浜市に向かう車線については、開通後六十七年が経過しており、幅員も狭く、建設当時よりも現在の車両サイズが大きくなっていることから、多くの大型車が橋の上で隣り合わないよう、お互い譲り合いながら通行しており、その速度調整が渋滞の原因にもなっております。このことから、企業や地域住民はこの橋の架け替えについても大きな期待をしております。
また、半田市側の衣浦臨海工業地域では、既存工場の大規模な拡張などにより交通量も増加しており、臨海工業地域への入り口となる亀崎町六丁目交差点を先頭に、現在も朝夕のラッシュ時には渋滞が発生しております。この渋滞を避けるために、住宅が密集する狭い生活道路に迂回していく車が多く、通学路もあり、危険な状態となっており、地域住民からも対応を求められております。
このような状況を受けて、地元の半田市では、臨海工業地域の企業を交えた勉強会を開催し、通勤車両を減らすためのシャトルバスの利用を促進したり、通勤者の集中を避けるために各工場の始業時間に時差を設けるなどして、ソフトの対策を進めており、半田市においても、臨海部では交通円滑化のための企業の進入路付近での右折帯設置など、道路改良を進めるとともに、新たに、JR武豊線を越え、臨海部へのアクセスとなる都市計画道路環状線の整備を半田乙川中部土地区画整理事業の中で進めております。
こうした企業や半田市の取組と一体となり、今後も衣浦港周辺地域のさらなる発展を支えていくために、衣浦大橋周辺の渋滞対策を着実に進めていかなければならないと考えております。
そこでお尋ねします。
衣浦大橋周辺の渋滞対策について、現在の状況と今後の取組についてお伺いいたします。
続きまして、県立中高一貫校における入学者選考について御質問いたします。
中高一貫教育につきましては、一九九八年に学校教育法の改正により制度化され、公立学校でも導入が可能となりました。今年の一月十六日に策定された愛知県中高一貫教育導入方針によりますと、中高一貫教育導入の狙いはチェンジメーカーを育てることとしております。
チェンジメーカーとは、現在の社会は加速度的に変化し続けており、将来の予測が極めて難しい時代において、様々な人と協働しながら、答えのない課題に対して失敗を恐れずにチャレンジし、社会に変化を起こす人のことであります。このようなチェンジメーカーを育て、愛知から日本や世界を切り開き、支えていこうとするものであります。
本県では、導入する様々なタイプの中高一貫校では、ゆとりある計画的、継続的な教育活動を通して、一人一人異なる個性を持つ子供たちの可能性を最大限に引き出し、伸ばす学びを進めていくとされております。
中高一貫教育の実施形態としましては、三種類あります。一つ目は、中学、高校が一つの学校として一体的な教育を行う中等教育学校、二つ目は、高等学校の入学者選抜を行わず、同一の設置者による中学校と高校を接続する併設型、三つ目は、県立高校と市町村立中学校が教育課程の編成や教員、生徒間の交流等の連携を深める形で中高一貫教育を実施する連携型であります。
愛知県では、これまでに、田口高校、福江高校及び新城有教館高校作手校舎の三校において、地元中学校と連携型の中高一貫教育を行っております。
全国の状況につきましては、併設型中高一貫校が増加傾向にあるとお聞きしました。現在、四十一都道府県において、公立の併設型中高一貫校、または中高が一つの学校となる中等教育学校が設置されておりまして、これらが未設置となっているのは愛知県を含めた六県のみであります。
本県における中高一貫校の設置につきましては、昨年七月二十六日に、探求学習を重視するタイプの第一次導入校として、私の母校であります半田高校をはじめ、明和高校、津島高校、刈谷高校の四校が決定されました。その後、今年一月十六日には、第二次導入校として、豊田西高校、西尾高校、時習館高校の三校が決定されました。また、探求学習重視型以外の学校についても、不登校経験のある生徒の能力、可能性を引き出す学校として日進高校を、地域を支える人を育てる学校として美和高校を、AI、データサイエンスに興味、関心を持つ生徒の能力、可能性を引き出す学校として愛知総合工科高校への導入が決定されました。さらに、三月二十八日には、外国にルーツのある生徒を対象とした衣台高校が決定され、中高一貫教育導入方針に基づく導入校は合わせて十一校となりました。
現在、愛知県中高一貫教育導入方針に基づき、第一次導入校の四校については二〇二五年四月、第二次導入校の七校については二〇二六年の四月の開校に向けて準備が進められているところであります。
愛知県中高一貫教育導入方針には、中高一貫教育の導入の経緯が記載されておりますので、その概要について少し触れさせていただきたいと思います。
愛知県では、二〇一五年三月に策定した県立高等学校教育推進基本計画、この計画は、一般的に高等学校将来ビジョンと呼ばれておりますが、この将来ビジョンの中で、併設型中高一貫教育校について研究するとされておりましたが、当時、具体的な進捗はありませんでした。
そうした中、二〇一六年度から全日制の県立高校の欠員が徐々に増加し、二〇二一年度には欠員数が二千六百人を超えました。また、中学校の卒業見込者数においても、二〇二一年の七万人から二〇三五年には五万七千人へと約二割減少することが見込まれるなど、県立高校を取り巻く状況が大きく変わってまいりました。
こうした状況の変化を踏まえて、二〇二一年十二月、県立高等学校再編将来構想が策定され、県立高校の魅力化、特色化、再編に向けた取組が進められることになりました。この再編将来構想の策定に当たっては、県立高等学校長や市町村教育委員会教育長などの関係者の方々による幅広い意見交換が行われ、その中で、併設型の中高一貫校の設置について提案があったことや、先ほども少し触れましたが、併設型中高一貫校または中等教育学校が未設置となっているのは愛知県を含めた六県のみである状況も踏まえて、中高一貫教育制度の導入の可能性について検討が始まったとされております。その後、二〇二二年五月に、教育関係者による中高一貫教育導入検討部会が設置され、本県における中高一貫教育制度の導入について本格的に検討が進められ、検討部会における委員の方々からの幅広い意見やパブリックコメント制度により募集した県民の皆様からの意見も踏まえながら検討が重ねられ、導入校が決定されました。
本県は、併設型中高一貫校の設置については、全国的に見ますと後発となりましたが、全国初となる明和高校の併設中学校における音楽コースの設置や、日進高校の中高一貫校に不登校特例校を設置することなど、一人一人異なる個性を持つ子供たちの可能性を最大限に引き出し、伸ばす学びを進めていく狙いの下、私自身、愛知らしい中高一貫校であると感じているところであります。
今年度、教育委員会では、四月には第一回県立高等学校再編将来構想具体化検討委員会を、五月には第一回中高一貫教育具体化検討部会を開催し、第一次導入校における入学者選考方法、導入校ごとの教育内容や教職員配置、また、学校給食の提供方法や部活動の在り方など、具体的な内容についての検討が本格的に始まっております。
中高一貫教育導入校十一校のうち、探求学習重視型の七校については、いずれも地域の中心校であり、地域の期待も大きいと思っております。
そのうちの一校であります、私の地元、半田高校では、日本経済団体連合会の会長を二名輩出しておりまして、東京電力御出身の第七代経団連会長平岩外四氏と東レ株式会社御出身の第十三代経団連会長の榊原定征氏の二人であります。また、小学四年生の国語の教科書全てに掲載されるごんぎつねの作者、童話作家の新美南吉さんも卒業生です。
そして、二〇一八年度には、半田高校の前身の一つである愛知県立第七中学校が開校してから創立百周年という記念すべき年を迎え、半田高校の同窓会組織である柊会、PTA、学校の三者が一丸となり、記念事業が行われ、大正十三年に建てられた旧武道場の七中記念館の改修工事が竣工し、常時使用できる未来型の教室として生まれ変わりました。
前身である旧制の愛知県半田高等女学校、愛知県半田中学校、半田市立高等女学校等を合わせて、卒業生は三万五千人を超え、県内はもとより、国内外にわたり様々な分野、地域に多くの人材が輩出されています。私自身も、必死に勉強した入学試験や、在学中には多くの学びと経験を得たことを懐かしく思うとともに、卒業生として誇りに思います。
現在、半田高校では、将来国際的に活躍できる科学技術関係人材の育成を図ることを目的としたスーパーサイエンスハイスクールの探求的な学びを実施しておりますが、中高一貫教育の導入により、中学校段階から探求学習が実施され、半田高校がさらに魅力ある学校となることを大いに期待しているところであります。
中高一貫校においては、中高六年間でゆとりある計画的、継続的な教育活動を行うことで、一人一人異なる個性を持つ子供たちの可能性を最大限に引き出し、伸ばす学びを進めていくことができるため、私を含めた多くの方々がその開校を待ち望んでいるところでありますが、一方で、小学校の子供を持つ保護者の間では、入学者選考の方法について関心が高まっており、大手学習塾では、早くも併設中学校に合格するための対策クラスが開かれておりまして、小中学校の関係者からは、受験競争の過熱化や低年齢化を危惧する声も聞かれます。今年度開催された第一回県立高等学校再編将来構想具体化検討委員会や第一回中高一貫教育具体化検討部会においても、会議の委員の方からは、受験競争の過熱化を危惧する意見があったそうです。
私も、これから本県の中高一貫校を受験しようと考える児童や保護者の皆様ができる限り不安を感じないように取り組んでいく必要があると思い、さらに関心が高まった次第であります。
そこでお尋ねします。
県立中高一貫校の入学者選考はどのような狙いの下で行うのか、また、今後どのように小学校の児童や保護者の皆様に情報提供していくのか、お伺いいたしまして、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 20: ◯建設局長(中島一君) 衣浦大橋周辺の渋滞対策についてであります。
知多地域と西三河地域を結ぶ衣浦大橋周辺においては、慢性的な渋滞に対応するため、将来の交通見通しも踏まえ検討した渋滞対策について、段階的に進めているところであります。
これまでに、交通の円滑化を図るため、衣浦大橋に近接する東西の交差点改良や、衣浦大橋の西行きの交通容量を拡大する左折専用橋の整備が完了しており、現在は、衣浦大橋の東行きの交通容量を拡大するため、トラス橋の架け替えの検討を進めております。
昨年度までに、近接する現在の西行きと東行き橋梁の間に新たな橋梁を設置し、トラス橋を撤去する計画として設計を取りまとめたところであります。今年度は、施工時の交通の切り回しや、衣浦大橋西交差点に、将来、南北に接続する都市計画道路衣浦西部線との交差形状などについて、公安委員会との協議を調え、早期事業化に向けた準備を進めてまいります。
今後は、新たに整備した左折専用橋の効果や、半田市が進める都市計画道路環状線による交通分散の効果を検証し、さらなる交通円滑化に向け、衣浦大橋周辺の都市計画道路の見直しを含めた道路ネットワークの強化について、半田市と共に検討を進めてまいります。
引き続き、知多地域と西三河地域の交流や産業活動を支えるため、衣浦大橋周辺の渋滞対策にしっかりと取り組んでまいります。
- 21: ◯教育長(飯田靖君) 県立中高一貫校の入学者選考の狙いと、児童や保護者への情報提供についてお答えをいたします。
初めに、入学者選考の狙いについてでございます。
今年一月に策定をした中高一貫教育導入方針におきましては、探求学習重視型の中高一貫校では、探求的な学びに必要な資質や能力をはかることを狙いとして、適性検査としての筆記試験や面接による入学者選考を行うこととしております。
適性検査では、小学校教育で身につけた知識や技能に基づいて、思考力、判断力、表現力、課題解決力など、探求的な学びに必要となる力を総合的にはかってまいります。議員御指摘のように、受験競争の過熱化や低年齢化を心配する声もお聞きをしておりますので、過度な競争を招かないよう、特に高度な知識やテクニック、知識の量を求めるような出題は行わないことといたします。
また、面接におきましては、例えば、六年間、探求的な学びを続ける意欲や、多様な考え方を尊重しながら物事に取り組もうとする共感力、問いを立て課題を発見する力などの資質や能力について見ていくこととしております。
次に、児童や保護者への情報提供についてでございます。
県立中高一貫校における入学者選考について広く知っていただくため、まずは、七月末頃を目途に、中高一貫校に来てもらいたい児童のイメージや、適性検査や面接の狙いなど、入学者選考の概要を公表いたします。その後、十月には実施日程を含めたより具体的な内容を公表してまいります。
こうした内容を踏まえまして、十一月には第一次導入校である明和高校、津島高校、半田高校、刈谷高校の四校について、入学を希望する児童と保護者を対象とした説明会を学校ごとに開催いたします。この説明会では、これまでに公表をした入学者選考に関する情報に加えて、各学校のカリキュラム、部活動、学校給食などの具体的な内容について、直接児童や保護者にお伝えをしてまいります。また、十二月頃に適性検査のサンプル問題を公表する予定としております。
県立の併設型中高一貫校の設置は、本県初の取組となりますので、様々な機会を設けて、県立中高一貫校が目指すものや学校の概要について、関係者の皆様にしっかりとお伝えをし、児童や保護者が適切に進路を選択できるようにしてまいります。
- 22: ◯六番(杉浦友昭君) それぞれ御答弁ありがとうございました。
御要望させていただきます。
まずは、衣浦大橋周辺の渋滞対策の取組状況をお聞きし、トラス橋の架け替えなど、着実に取り組んでいただけていることが確認でき、大変心強く感じております。こうした取組により、衣浦大橋周辺の交通の円滑化が図られ、本県の経済・産業力の強化、そして観光交流を交えた魅力の向上にもつながるものと期待をしております。
引き続き、衣浦大橋のトラス橋の架け替えの早期事業化に向けて取り組んでいただくとともに、地元半田市ともよく調整し、衣浦大橋周辺の道路ネットワークの強化についてもしっかりと取り組んでいただくことを要望します。
次に、県立中高一貫校における入学者選考についてでありますが、十一月には、第一次導入校の四校について、入学を希望する児童と保護者に対して、学校ごとに説明会を開催するとの答弁をいただきましたが、都合により説明会に参加できない方や説明会開催以降に入学を希望する方もおられると思いますので、説明会での内容をホームページに掲載するなどして、広く県民の方々に周知を図っていただくことを要望して、私からの質問を終わります。
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- 23: ◯三十九番(山田たかお君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 24: ◯副議長(いなもと和仁君) 山田たかお議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 25: ◯副議長(いなもと和仁君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
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午後一時十分開議
- 26: ◯議長(石井芳樹君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
佐藤英俊議員。
〔四十六番佐藤英俊君登壇〕(拍手)
- 27: ◯四十六番(佐藤英俊君) 通告に従い、二つの項目について質問をいたします。
初めに、愛知県の少子化対策の進め方についてです。
二〇二〇年九月、国連児童基金、ユニセフは、レポートカード16という報告書を発表しました。これは、子どもたちに影響する世界、先進国の子どもの幸福度を形作るものは何かと題し、OECDまたはEUに加盟する国々の新型コロナウイルス感染症発症前のデータを用い、子供たちの精神的幸福度、身体的健康、スキルの三つの側面から考え、それぞれを二つずつの指標で分析してありました。精神的幸福度については子供の生活満足度と自殺率、身体的健康では子供の死亡率と肥満率、スキルについては学力と社会的スキルでした。
これらの指標による子供の幸福度総合ランキングで最も順位の高い国は、オランダ、デンマーク、ノルウェーでありました。日本は三十八か国中二十位でした。しかし、分野ごとの内訳を見ますと、日本は両極端な結果が混在するパラドックスとも言えるものでありました。
まず、精神的幸福度について、日本は何と三十八か国中三十七位でした。生活に満足していると答えた子供の割合が最も低い国の一つで、生活全般への満足度をゼロから十までの数字で表す設問で六以上と答えた子供が六二%とワースト二位で低く、自殺率も平均より高く、その結果、精神的幸福度は低いランキングとなりました。
次に、身体的健康については、日本は一位でした。日本の子供の死亡率はとても低く、これは、効果的な医療保険制度を有していること、また、五から十四歳の子供の主要な死因が事故であることから考えると、日本が安全面でも優れており、事故から子供を守れていることを示しています。肥満率については、多くの国でその割合が急増していますが、日本は二位以下に大きく差をつける一位であります。
そして、スキルについて、日本は二十七位でした。学力の指標である数学、読解力で基礎的習熟度に達している子供の割合がトップファイブに入ります。しかし、一方で、社会的スキルを見ると、すぐに友達ができると答えた子供の割合は、日本はチリに次いで二番目に低く、三〇%以上の子供がそうは思っていないという結果でした。ここにも両極端な傾向を示す日本のパラドックスが見てとれます。
また、レポートカード16では、より多く外で遊ぶ子供のほうが幸せであるという結果が示されました。外遊びの機会は子供の幸福度に関係します。日本の都市部にはあまり遊ぶ場所がありませんが、都市計画の中で何を優先するのか、子供の当たり前の活動である遊びをどう位置づけるか、行政の考え方が子供の幸福度を左右するとも思われます。
レポートカード16は三年前に報告されたものですが、現在進行形の大きな課題であります。
先日、厚生労働省は、二〇二二年の人口動態統計を発表しました。昨日、中村竜彦議員の一般質問にもあったように、一人の女性が生涯に産む子供の推定人数、合計特殊出生率は一・二六で、七年連続で前の年を下回っており、過去最低であります。しかし、昨年の子供の自殺者数は五百十四人と過去最高となりました。加速する少子化の中で子供の自殺者数が過去最高というのは、どう理解すればいいのか、危機感が募るばかりであります。
国は、子ども・子育て政策の課題として、若い世代が結婚、子育ての将来展望が描けない、子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある、子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在するを挙げています。また、基本理念として、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造、意識を変える、全ての子育て世帯を切れ目なく支援するとして、次元の異なる少子化対策の実現に向けて、子ども・子育て政策の強化を図っています。
そして、今回、子供政策の司令塔となるこども家庭庁を二〇二三年四月に設置しました。こども家庭庁は、省庁の縦割りを排し、これまで組織の中でこぼれ落ちていた子供に関する福祉行政を担うとしています。今回成立したこども家庭庁設置法などによれば、総理大臣直属の機関として内閣府の外局に設置され、こども政策担当の内閣府特命担当大臣を置いて、各省庁などに子供政策の改善を求めることができる勧告権を持たせるとしています。
そして、担当大臣の下にはこども家庭庁長官が置かれます。そこに、内閣府の子ども・子育て本部や厚生労働省の子ども家庭局などが移管され、三百五十人規模で職員が配属されました。民間や地方自治体との人材交流も積極的に行うとしております。
庁内には、有識者をメンバーとするこども家庭審議会が設置され、子供や子育てに関する重要事項や、子供の権利、利益を擁護するための調査や審議が行われます。子供の意見を政策に反映させるため、直接意見を聞き取ることも必要に応じて実施するとしています。
また、今回の法律には、五年をめどに、組織や体制の在り方を検討し、必要に応じて見直す規定も盛り込まれています。その時々の時代の求めに応じて臨機応変に組織を変えるとしています。
今回、このように、国はこども家庭庁を設置し、組織、体制を大きく変えて、歯止めの利かない少子化に対し、子供を真ん中に社会全体から様々な課題に取り組んでいます。
そこで伺います。
国は、こども家庭庁を設置しましたが、愛知県としてどのように少子化対策を進めていかれるのか、当局の見解をお伺いします。
次に、高齢者の移動支援であります。
後期高齢者、七十五歳以上の人口増加が進んでおります。一九七〇年に六十五から七十四歳の前期高齢者は約五百十六万人、七十五歳以上の後期高齢者は二百二十四万人と、それぞれ総人口の四・九%と二・一%でしたが、二〇二〇年には六十五から七十四歳が千七百四十二万人、七十五歳以上はそれを上回る千八百六十万人に増加していました。それぞれ総人口の一三・八%と一四・七%に上昇していました。さらに、二〇四〇年には団塊ジュニア世代と呼ばれる人口の多い世代が皆、高齢者となるため、前期高齢者は千六百八十一万人、後期高齢者は二千二百三十九万人に膨らみ、総人口の一五・二%と二〇・二%となり、合わせて三五・四%の見込みであります。
ちなみに、二〇二〇年時点で六十五歳以上の高齢者人口が既に四割に達している市区町村は、全国で四百以上となっています。
高齢者の家庭環境も大きく変化しています。移動に関して大きく影響を与えているのが、子と同居している高齢者世帯の減少であります。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、六十五歳以上の高齢者がいる世帯の家族構成は、一九八六年時点で、未婚の子と同居や三世代同居が全体の過半数を占め、単独世帯や夫婦のみ世帯は合わせて三割程度でした。しかし、二〇一九年に、単独世帯と夫婦のみ世帯の合計が全体の約六割に上がりました。同居する子がいれば買物や病院まで送迎を頼むこともできますが、それができない高齢者が増えています。単身高齢世帯は、今後もさらに増えると見込まれています。
また、それに伴い、高齢ドライバーの人数も増え続けています。警察庁によると、七十五歳以上の運転免許保有者は、二〇〇二年には百七十五万人でしたが、二〇二〇年には五百九十万人に増加しています。
七十五歳以上のドライバーが起こした死亡事故原因で多いのは、ハンドルやペダル操作の操作不適や安全不確認であります。二〇一九年に、東京・池袋で八十歳のドライバーの運転により母子が死亡した交通事故で、高齢者が運転を続ける危険性に関する認識が社会的に広がりました。警察庁によると、同年、運転免許証を自主返納した人は当時として過去最高の六十万人に上り、うち七十五歳以上は三十五万人でした。
返納件数は年々増加しています。各都道府県警も、高齢ドライバーに自主返納を促すため、運転免許証の代わりに、身分証明書として使用できる運転経歴証明書を発行したり、自治体がクーポン券を発行したりしていますが、まだまだ多くの高齢者の方々は運転免許証を保持しておられます。
高齢者で運転を続けている人の中には、返納すると移動手段がなくなるため、どうしようもなく運転を続けている人が多く、今後も七十五歳以上の人口は増加するため、高齢者がマイカーを手放しても生活できるように、地域の移動手段を確保することが喫緊の課題となっております。
しかし、近年、従来の地域公共交通の衰退が顕著であります。モータリゼーション、人口減少などの影響で、地方を中心に鉄道やバスの利用者は減少し続けてきました。乗客減少により、事業者の減便や路線縮小を余儀なくされると、利便性が悪化して、さらに利用者が減るという悪循環に陥っています。
そして、さらに、公共交通の維持を難しくしているのが、バスやタクシー業界などのドライバーの高齢化と人手不足であります。
総務省の労働力調査二〇二〇年によると、バスやタクシー運転手を含む道路旅客運送業の就業者のうち、五十五歳以上の就業者割合は六五・二%に上り、全産業平均三一・二%を大きく上回っています。また、令和二年国土交通白書によりますと、二〇一九年の自動車運送業の有効求人倍率は三・一〇倍で、全職業平均一・四五倍の二倍以上となっています。ほかの職業に比べて労働時間が長いことや、年間所得が低いことが要因となっていると考えられています。
このような公共交通の衰退にさらに拍車をかけたのが、二〇二〇年前半から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大であります。在宅勤務や宅配、ウェブサービス等、働き方や生活様式が変容していることから、感染状況が落ち着いた後も乗客は完全に戻らないという見方が広がっています。要するに、新型コロナという予期しなかった事態により、将来起こると予測されていた公共交通のさらなる乗客減少がより早く到来したと言えます。
従来型の鉄道、バス等による公共交通維持が困難になる中、それらを補う手段として、二〇〇六年に創設されたのが、マイカーによる輸送を認める自家用有償旅客運送制度であります。道路運送法では、自家用車を用いて他人を有償で輸送することは禁止されていますが、公共交通空白地域において、例外的に地域住民等の輸送を認める制度であります。このパターンとは別に、公共交通空白地域ではなくても、一人で電車やバスに乗降することが難しい身体障害者や要介護・要支援認定者等を対象に、自家用車による輸送を認める福祉運送パターンもあります。それぞれのパターンで、第二種免許を持っているプロのドライバーだけでなく、地域住民も、第一種免許のほかに、大臣認定講習を受講すればドライバーとなることができます。ドライバーが受け取ることができる対価は、燃料費など実費の範囲とされています。
ただし、自家用有償旅客運送を新たに導入する際には、自治体と地域の交通事業者、そして住民らで組織する地域公共交通会議や運営協議会で協議が調うことが条件とされています。そのため、これまでは、市町村が導入を検討しても、タクシーよりも利用料が安いことなどから、地域の交通事業者が反対して頓挫するケースもありました。
そこで、政府は、二〇一九年に閣議決定した骨太の方針の中で、市町村等が交通事業者等に運行管理を委託する協力型の制度を整備することを盛り込みました。交通事業者にも導入のメリットを持たせることで、地域公共交通会議等での反対を防ぐと同時に、輸送の安全性も高めるというものであります。さらに、観光客も利用することを明確化する方針で打ち出されるとともに、ドライバーの対価についても、タクシーの半額を目安という規定が緩和されました。
国は、そのほか、市町村が運営主体となるコミュニティバスやデマンド交通など、多様な移動手段を活用して、地域の公共交通ネットワークを維持するように促しています。二〇二〇年、法改正により、市町村の策定が努力義務とされた地域公共交通計画においても、自家用有償旅客運送やスクールバス、福祉輸送など、多様な移動手段についても必要に応じて盛り込み、地域の持続可能な旅客運送サービスを確保するように求めています。
さらに、近年、注目が高まっているMaaSについて、地域の交通サービスの利便性を向上し、高齢者等の移動手段確保につながる可能性があるとして、普及を促進しています。
また、高齢者の介護予防や生活支援において、高齢者が一定の自立を保ちながら自宅で生活していくためには外出を支援する必要があるという観点から、新たな事業も始まりました。それは、介護予防・日常生活支援総合事業と呼ばれ、介護保険では訪問型サービスDに分類されます。これにより、地域の住民やNPO、自治会等が移動支援の取組を行う場合に、一定の条件を満たせば、市町村が介護保険事業の財源から補助金を交付することができるようになりました。例えば、高齢者の通院や買物などに付き添う場合や、高齢者サロンや体操教室などへ送迎する場合であります。具体的に利用できる行き先や補助額等は、市町村が決定いたします。ただし、実際の訪問型サービスDを行うかどうか、また、事業内容をどう設計するかは、市町村の裁量に委ねられています。市町村が総合事業の中で実施していなければ、地域の団体が移動支援の取組を行っても、介護保険の財源から補助金を受け取ることはできません。
訪問型サービスDを活用した移動支援について、総じて見ると、市町村のスタンスは積極的とは言えません。
厚生労働省が二〇二〇年度に実施した調査によると、介護保険財源を用いて移動支援の取組に補助を行っているのは六十二市町村であり、回答した千七百四十一市町村のうち僅か三・六%にすぎませんでした。しかも、この割合は過去三年でほとんど増えておらず、二〇一八年度は二・四%、二〇一九年度は三・〇%でありました。
以上、高齢者の移動支援が問題になっている背景や、国、自治体の取組を考察しましたが、これまで、地方の公共交通が衰退してきたのは、モータリゼーションや人口減少などの外部要因だけでなく、交通事業者や行政にも、移動ニーズの把握と住民の生活に照らし合わせてサービスを見直す生活者目線が不足していた面があるのではないでしょうか。今後、高齢社会に見合った基幹交通、生活交通、福祉交通という切れ目のない交通サービス、移動支援の立案をしていくためには、自治体は、実際に高齢者等に何の移動に困っているのか、なぜ既存の公共交通が利用しづらいのか、本当は何の目的でどこからどこへ移動したいのか、また、その頻度はどれぐらいか等を丁寧に把握する必要があります。その上で、ニーズに応じて適切な交通モードや運行主体、車両の種類等を検討し、既存交通との割り振りや乗り継ぎ、連携について工夫していくことが重要であると思われます。
そのプロセスで、例えば、ニーズの重要度は高いが量は少ないということが分かれば、代替交通を導入するより、高齢者等に直接タクシー料金を助成するほうが効率的な場合もあるでしょう。また、利用者の特性や利用目的によっては、介護保険の財源を利用して運営をサポートする場合も考えられます。これからは、こうした利用者重視の交通政策を行うことが重要と思われるのです。
ほかにも一つ考えるべき課題があります。
私が住む地域は、一宮市の南西の端にあります。西側は木曽川で、南側は稲沢市です。公共交通は薄く、住民の方々の移動のほとんどはマイカーであります。買物、病院、駅へ行くのも、近くの床屋、喫茶店に行くのも、マイカーであります。家には二台、三台、家族の人数分車を保有しているお宅も多く見られます。生活圏となると、一宮市中心部より稲沢市のほうが利便性の高いスーパー、病院、映画館、飲食店が近く、住民は毎日の生活の中で稲沢市に車で出かける方も多いです。しかし、七十五歳になり、運転免許証を返納し、行き慣れた稲沢市のその場所に公共交通機関で行くには、考えただけでも時間とお金と労力がかかります。
公共交通機関は、市町村ごとに完結していることが多いからです。愛知県内でもところどころで他市町まで延びるコミュニティバスがありますが、相互に路線が重なり合うような形態となればとも思います。
そこでお伺いします。
公共交通の検討に当たっては、様々な形態の公共交通を活用することや、市町村の範囲を超えた俯瞰した視点も必要でありますが、公共交通の充実に向けて県はどのように関わっていくのかお伺いします。
以上、一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 28: ◯福祉局長(植羅哲也君) 本県の少子化対策の進め方についてお答えをします。
本県では、中長期的な視点に立って少子化対策を推進するため、子ども・子育ての総合的な計画であるあいちはぐみんプラン二〇二〇─二〇二四に、ライフステージに応じた重点目標として、若者の生活基盤の確保、希望する人が子どもを持てる基盤づくり、すべての子ども・子育て家庭への切れ目ない支援、社会全体で子ども・子育て家庭を応援する基盤づくりの四つを掲げております。はぐみんプランの取りまとめは福祉局で行っておりますが、重点目標を達成するため、プランに位置づけられた施策につきましては、福祉局だけではなく、学齢期からのキャリア教育の推進は教育委員会、若者の就労支援は労働局、青少年の健全育成は県民文化局など、施策の内容に応じた関係局を中心といたしまして、相互に連携することによって本県の少子化対策を総合的に推進してまいりました。
国におきましては、本年四月からこども家庭庁が子供に関する施策を一体的に実施する組織として発足をしたところでございますが、本県といたしましては、これまでと同様、今後も関係局がしっかりと連携をし、子供を取り巻く環境変化に的確に対応しながら、子供を安心して産み育てられる社会づくりを推進してまいります。
- 29: ◯都市・交通局長(坂田一亮君) 地域における公共交通の充実についてお答えをいたします。
高齢者をはじめ、移動手段の確保が困難な方々にとって、公共交通の役割は極めて重要であると認識しております。地域の暮らしに不可欠な交通手段を確保していくためには、高齢者を含めた住民の移動に対する様々なニーズを的確に把握し、地域の実情に応じた交通手段を提供していくことが求められます。
市町村では、住民、交通事業者など、公共交通に関わる関係者で構成する地域公共交通会議等の議論を経て、コミュニティバス、オンデマンド交通などの適切な交通手段を選択、提供しております。
また、議員御指摘のように、市町村域を超えるコミュニティバスの運行や、隣接市町村で連携して交通手段の相互の情報共有を図っているケースなど、各地域の実情を踏まえ、様々な工夫をすることによりまして、地域公共交通の確保が図られているところであります。
また、新城設楽地域では、高校再編に伴うバスの経路などをテーマとした田口新城線活性化検討会、尾三地域では、コミュニティバス運行情報のデジタル化などをテーマとした尾三地区広域公共交通推進会議など、市町村域を超える個別の課題について、関係市町村間で協議する取組も行われているところでございます。
県では、従来から、広域的な観点から、市町村をまたがって運行する幹線の乗り合いバスに対して補助を行うとともに、市町村の地域公共交通会議、また、さきに述べました新城設楽地域、尾三地域の検討にも参加をし、様々な助言や情報提供を行ってきております。
今後も、地元市町村と緊密にコミュニケーションを図り、また、国、交通事業者など関係者と連携を密にして、地域の公共交通が抱える課題の解決に向け、積極的に取り組んでまいります。
- 30: ◯知事(大村秀章君) 佐藤英俊議員の質問のうち、地域の公共交通の充実について、私からもお答えをいたします。
人口減少、少子・高齢化に伴う需要の減少や運転者の成り手不足など、公共交通をめぐる環境はますます厳しくなっております。
こうした状況を踏まえ、国は二〇二〇年十一月に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律、いわゆる地域交通法を改正いたしました。この改正法では、地方公共団体においては、多様な主体が参加する協議会を設置し、公共交通に係るマスタープラン策定に努めることといたしております。
本県におきましても、本年一月に、学識者や交通事業者、行政等で構成する愛知県公共交通協議会を設置いたしまして、この六月九日に第一回目の会議を開催したところであります。今後は、この協議会の議論を経て、来年の六月頃を目途に、本県の公共交通のあるべき姿として、愛知県地域公共交通計画を策定してまいります。
今後とも、地域の皆様の移動に不可欠な基盤である公共交通の維持、充実に向けまして、しっかりと取り組んでまいります。
- 31: ◯議長(石井芳樹君) 進行いたします。
山口健議員。
〔十八番山口健君登壇〕(拍手)
- 32: ◯十八番(山口健君) 岡崎市及び額田郡選出、あいち民主県議団の山口健です。
通告内容に従い、質問をさせていただきますが、その前に、六月二日の大雨による災害で被災されました皆様に対し、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
私は、三十一年前、就職を機に本県に移住をし、以来、諸先輩の皆さんがつくり上げられたモノづくり産業において、多くの仲間と協力し、本県の経済活動に携わってきました。そうした経験から、日本の成長エンジンである愛知県を今後も維持し、日本を引っ張っていくには、働く人の知恵と工夫を結集し、日本人の強みであるチームワークを最大化した上で、環境変化に応じて目標を都度修正し、現状を踏まえたPDCAのサイクルを回すことが重要と考えております。
新型コロナウイルス感染症が五類感染症に変更となり、大村知事がおっしゃっているように、アフターコロナに向けて、しっかりと愛知を躍動させるために、地元の岡崎、幸田をはじめ、県内で働く皆さんが直面されている課題意識を踏まえて、大きく二つの観点で質問いたします。
一点目は、競争力ある本県産業の人材戦略について。
二点目は、資源の乏しい我が国において、常に大きな産業課題でありますエネルギー戦略についてであります。
先ほどPDCAのサイクルを回す重要性を申し上げましたが、様々な施策の推進に当たっては、考慮すべき基本戦略として、本県が三年前に策定をしておりますあいちビジョン二〇三〇を念頭に置きつつ、政策の進捗状況や新たな課題の把握につながる最新のあいちレポート二〇二二を踏まえながら、次年度の取組に反映すべきという観点も交えて質問をさせていただきます。
〔冊子を示す〕
それでは、一つ目の観点である人材戦略について、足元の深刻な人手不足に関して現状認識を申し上げます。
あいちレポート二〇二二によりますと、中小企業の経営上の問題点として、人材不足を上位に挙げているのは、サービス業と建設業であります。製造業では、原材料高や売上げの不振、エネルギー費用の増加が挙げられております。これは、昨年の十月から十二月の調査結果でありますので、自動車の生産が半導体不足等で計画どおりにいかない状態が長期化していたことを反映しています。
私も、昨年度は、中小企業の多くの経営者の方から、コロナ禍で一昨年に落ち込んだ生産からの挽回計画に対して人員を増やして体制を整えた、ところが、半導体不足により計画どおりの挽回といかず、売上げ不振が続く中、さらに、原材料とエネルギー費用の高騰が経営を圧迫するという悲鳴を伺っておりました。
本年二月には、本県において、適正な取引・価格転嫁を促し地域経済の活性化に取り組む共同宣言が発出されています。そうした宣言に対して、発注する側の一部大手企業が、原材料費の市況価格アップ分を一〇〇%部品価格に反映したり、エネルギー費は、電気、ガス中心に、一次仕入先だけでなく、二次仕入先への価格反映も始まっていると認識しております。
一方、今年度に入り、自動車の生産も本格的な挽回に移行し、コロナ前の水準を上回ってきていることから、潮目は大きく変わり、製造業の人手不足に加え、製造業の旺盛な求人の影響を受ける県内の様々な産業の現場からも深刻な御意見をいただいております。
そうした足元の変化も踏まえ、アフターコロナに向けた経済活動が人手不足で減速しないように、具体的な提案も交えて、四点質問いたします。
一点目は、産業力日本一の愛知で働く・くらすというキャッチコピーを掲げるあいちUIJターン支援センターを中心に取り組んでいる、働く人を愛知に呼び込む、いわゆるUIJターンの促進について伺います。
人手不足が深刻な愛知県にとって、この取組は非常に意義深い取組ですが、現在の対象者は正社員と無期雇用契約の求人に限られております。そのうち、東京二十三区から中小企業等に転職する移住者には、国の支援制度を活用した上で、県と市町村が費用負担する移住支援金が支給されますが、二十三区以外の方は対象外です。コロナ禍でのリモートワークの進展など、働き方に対する意識が変化していることに加えて、本県の深刻な求人状況を踏まえれば、国の制度の対象とはならない二十三区以外からの移住者に対しても、後押しとなる支援策を検討すべきではないかと考えます。
そこで、あいちUIJターン支援センターと移住支援金のこれまでの実績と今後の取組についてお伺いいたします。
次に、非正規労働者の方が責任とやりがいを感じ、安定した処遇の下、正社員として愛知に定着し、活躍していただく取組の必要性について申し上げます。
愛知県では、二〇〇四年にヤング・ジョブ・あいちを開設して以来、若者の就業促進を目的に、国と連携して、企業とのマッチング機会の充実を推進しています。同様に、就職氷河期世代に対しては、あいち就職氷河期世代活躍支援プラットフォームを活用し、正社員就職に向け、支援コースの拡充や伴走型支援コースの定員を増やすなど、取組を継続しています。
このように、県として若者も就職氷河期世代も分け隔てなく取り組んでいますが、国の助成金には差があります。
例えば、非正規労働者で働かれていた方を県内の別の企業が正社員として雇用する際、就職氷河期世代の方であれば雇用した企業に助成金が支給されますが、氷河期世代以下の若い世代を雇用する場合には支給されません。
一方で、県内の民間企業が連携し、人材の維持、確保に取り組んでいる事例があります。その事例を簡単に紹介しますと、全国各地から期間従業員として本県の企業に採用された方が、期間満了まで就労された後、別の企業で正社員として採用されるようにマッチング支援を行うものであります。このスキームは、非正規労働者として一定の期間本県で働かれた方が、身につけた技能を生かして、正社員として活躍できるように、民間企業が連携して、人材の育成と定着を図る取組と言えます。
しかし、課題もあります。当然ですが、ハローワークの場合、マッチングの紹介料は発生しませんが、民間事業ですので、採用する際は紹介手数料が必要になります。手数料を相場の半分以下に抑えても、中小企業の方からは、経験者の採用は魅力的でも、手数料負担がネックとの声が多く、たまたま対象者が就職氷河期世代の場合は、国の助成金が得られるので、採用までスムーズに進むと聞いております。
県として、こうした枠組みに独自に助成すれば、一時的には負担が生じますが、本県の中小企業が正社員を増やし、若者が愛知に定住して、産業を支え、個人として成長することは、安定した納税者を増やすことにもなります。
答弁は求めませんが、このような民間連携による中小企業に向けた健全な人材確保策に対しては、本県として独自に助成することを検討課題として提起いたしたいと思います。
質問の二点目として、深刻さが際立っている特定の業種についてお伺いいたします。
本県として、特に人材確保が難しいと言われている、介護、運輸、建設、警備の四種類について、既に取組を強化されていると認識しております。
どの業種も深刻な状況にありますが、とりわけ運輸・物流部門のドライバーに関しては、労働時間規制が強化される二〇二四年問題への対応はもちろん、あらゆる経済活動をつなぐ産業の血液として個別業種の課題で片づけることはできません。
建設や介護の領域では、関係者の御尽力により、徐々にですが、外国人の方に活躍していただく取組が進んでいますが、物流部門ではあまり進んでいないのが実情です。関係者の方によりますと、ドライバーの働き方は、大型車の安全な運行をはじめ、渋滞など道路状況に応じた臨機応変な判断や、納入企業ごとにルールが異なった荷役作業への対応など、顧客に応じたきめ細かな対応がドライバー個人に求められるため、外国人活躍の機会を増やしにくい面があるようです。
物流部門では、高齢者の活躍が進んでいる反面、外国人材の活躍が難しいことを踏まえ、特に女性ドライバーの活躍促進に向けた取組が必要ではないでしょうか。
私も最近知りましたが、既に本県として積極的に取り組んでおられる企業を表彰し、好事例として紹介もしています。
冒頭に、大手企業が取引先企業に対して、原材料やエネルギー費用の高騰分の価格への反映を実施していることに言及しましたが、物流関係の企業に対しては、従業員の賃金を上げて、何とか人材確保を図ろうと、労務費上昇分の価格への反映が先行して始まっております。
このような原資も活用し、物流業界全体で働きやすい環境をつくり、働く時間に制約のある女性を積極的に採用するなど、チャレンジしていただくことが必要です。
そこで伺います。
運輸業において、時間外労働の上限規制の適用開始が来年四月に迫る中、働き方改革の促進にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
次に、三点目として、外国人の活躍促進について伺います。
本県の外国人労働者数は、二〇一一年の約八万四千人から、二〇二二年には約十八万九千人と大幅に増加し、東京都に次いで二番目に多くの方が産業を支えていただいております。県も、定住外国人の方と雇用を希望する企業の双方に対して相談窓口を設置して、各種就労支援を実施しております。
定住外国人以外では、技能実習生や特定技能制度による外国人の方の活躍が進んでおり、特定技能在留外国人は、技能実習生からの移行に伴い、二〇二二年十二月末時点では、全国で最も多い約一万一千人の方が活躍されております。
一方で、特定技能制度で働く外国人の方の多くが、最初は、技能実習制度で日本に来られるわけですが、コロナ禍での入国制限により、技能実習生は三年前から大きく減少しています。その技能実習制度は、秋に向けて国で制度の見直しが検討されておりますが、見直しの目的が、外国人材の確保をより意識した制度構築であり、本県でも深刻な人手不足の状況を踏まえた取組が必要ではないでしょうか。
加えて、東南アジア各国の方にとっては、ここ数年の環境変化により、日本に来るメリットを感じることが難しくなっていることにも留意が必要です。
その理由は大きく三点あり、一、大幅な円安の進行により、現地通貨ベースでの日本での収入が減少すること、二、オーストラリアやドイツ、韓国、香港などが東南アジアの人材市場に攻勢をかけており、人材争奪戦の様相を呈していること、三、東南アジア各国が自国の経済発展により、日本との処遇差が縮まっていることなどにあります。このような認識の下、国が技能実習制度の見直しを進めていますが、その先を見越し、受入れや共生に向けた環境整備という目的に加え、人材確保のために、いち早く外国人材から選ばれる愛知を目的にした取組にシフトしていく必要があると思います。そのためにも、大村知事のリーダーシップの下、東南アジア各国からより多くの方に本県に働きに来ていただくための取組を進めるべきと考えます。
現在、国においては、特定技能制度の見直しについても検討がなされており、この六月初旬には運用方針の変更が閣議決定されたところであり、この見直しにより、長く日本で働くことができる外国人が増加すると見込まれております。
そこで伺います。
愛知県でも、特定技能の在留資格を持った外国人が労働者として活躍できるよう、県はどのように取り組んでいくのか質問いたします。
さらに、本県のモノづくり産業を将来にわたって支えることが期待される県下の工業高校で学ぶ子供たちについて伺います。
先日、地元岡崎の中小企業の経営者の方から、電気学科を卒業した生徒を採用したいが、定員が一クラスで、大手が採用すると自社に来てもらえる生徒がいなくなる、何とか定員を増やしてもらえないかと相談を受けました。すぐに実態を確認したところ、岡崎だけでなく、多くの工業高校で定員割れが常態化しており、定員を増やすどころか、現在の定員に対しても希望者が圧倒的に少ない現実に気づかされました。同時に、多様で魅力ある学校づくりの一環として、二年前に工業高等学校の見直しを行い、学科、コースを刷新したことも知りましたが、私や先ほどの経営者のように実態に対する企業や県民の認識が進んでいないように思います。
地域産業の次世代を担う人材を継続的に育成していくためには、工業高校の魅力を高め、工業高校で学ぶことを選択する子供を何とか底上げしていくことが重要であります。その上で、工業高校の生徒が地域のモノづくり産業に、とりわけ中小企業に就職するには、在学中に地元企業の業務内容やその魅力を知ることが重要であります。と同時に、工業高校の魅力を県内の中学生に発信することはもちろん、保護者や教師にも伝えていくことが必要と考えます。
二月議会で先輩であります西久保ながし議員が、モノづくりの基本と技能の大切さを次世代に伝えるため、技能五輪全国大会をどのように活用するか質問されました。労働局長からも、子供たちにモノづくりや技能者への興味、関心を呼び起こす絶好の機会と位置づけ、教育委員会や市町村と連携し、多くの子供たちに見学を働きかけるなど、技能尊重機運の醸成を図るといった前向きな回答がありました。
そうした絶好の機会である技能五輪が、今年も十一月に本県で開催されることも踏まえて伺います。
まず、本県のモノづくりを支える中小企業の担い手を確保するために、県立工科高校において、県内の中小企業の強みや魅力をどのように伝えていくのか、さらに、他県ではPRビデオの作成なども行っているようですが、二年前に大幅に見直した内容を含めて、入学を希望する子供たちを増やすために、今後どのように工科高校の魅力発信を図っていくのかお伺いいたします。
以上、人材戦略について、民間企業、とりわけ中小企業の目線で質問をいたしました。そうした視点で、あいちビジョン二〇三〇の内容を確認してみますと、至るところに労働力不足の深刻化への懸念が提起されています。具体策も、産業人材の育成や次世代を担う若者、女性、高齢者といった多様な人材の活躍、そして、外国人県民の雇用拡大と受入れ環境の整備といったキーワードが並んでおり、県の本気度が表れていると受け止めております。
しかし、数値目標は、管理指標として、現状の労働力率六四・五%を上回るという目標が掲げられているだけです。本県が誇る産業を今後も守り抜くには、国の生産年齢人口の減少見通しに対して、多様な人材の活躍、他県からの流入による社会増、そして技能実習や特定技能含めた外国人労働者の拡大について、成り行きに任せることなく、数値的な中長期目標を掲げ、取り組む必要があると考えます。日本全体の労働力人口の減少と、本県の産業特性を踏まえた上で、次なる中期ビジョンや年次レポートの作成に当たっては、数値目標を戦略的に織り込むことを検討いただきたいと思います。
人材戦略は以上ですが、続いて、エネルギー戦略に移ります。
まず、モノづくり産業をはじめ、多くの事業主が頭を悩ませておられますエネルギー費用の高騰を踏まえ、脱炭素も見据えた事業者へのエネルギー対策について伺います。
県が昨年実施した中小企業へのアンケートでも、製造業においては、エネルギー費の高騰に対する問題意識が高く、地元の経営者の方から対応に苦慮されている声を頻繁に伺います。県として、原材料価格の高止まりに対して、適正な取引の促進を関係団体と共に推進され、電気やガスといったエネルギー費の上昇分を大手企業が価格に反映していることも申し上げました。
一方、事業者の皆さんにとっては、二〇五〇年の脱炭素社会の実現、カーボンニュートラルを見据えたエネルギー対策に取り組んでいくことも非常に重要です。
県は、昨年十二月にあいち地球温暖化防止戦略二〇三〇改定版を策定し、二〇三〇年度の温室効果ガス排出量を二〇一三年度比で四六%削減し、さらにその先の二〇五〇年にはカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げました。この高い目標の達成には、事業者の皆さんに再エネの導入拡大や生産設備の省エネ化などを積極的に進めていただかなければなりません。
エネルギー費用の高騰を受け、サプライチェーンでの健全な取組が進んできている今だからこそ、再エネの導入拡大や省エネの徹底を図り、今後も高止まりが見込まれるエネルギー費用の抑制対策が求められます。
そこで伺います。
将来を見据え、事業者による省エネ設備や再生可能エネルギー設備の導入に対して、県として支援することが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
エネルギーに関しては、目の前にある課題や、二〇三〇年に加えて、二〇五〇年を見据えた長期的な戦略も重要です。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、国際社会全体でエネルギーの安全保障の重要性が議論される中、資源の乏しい我が国において、特に産業の集積地であるがゆえに多くのエネルギーを必要とする本県においては、持続可能な地域づくりとして、脱炭素社会を見据えた再生可能エネルギーの導入拡大を積極的に進めています。本県の地域特性を生かした太陽エネルギーのさらなる活用や、官民の連携で分野横断的にカーボンニュートラルの実現を目指す矢作川カーボンニュートラルプロジェクトの拡充など、幅広い取組が進められていますが、実現には長い時間と多大なコストがかかります。
そうした中、国がGX実現に向けた基本方針の中で、水素基本戦略を見直し、今後十五年間で十五兆円の投資を決定しました。既存産業の競争力を維持しつつ、カーボンニュートラルあいちの実現に向けたあいち地球温暖化防止戦略二〇三〇改定版を進めるには、今こそ、国の投資を戦略的に呼び込み、中部圏水素・アンモニアサプライチェーンビジョンに基づく取組を総力を挙げて推進するべきと考えます。
本県のモノづくり産業には、全国一位の出荷額を誇る業種が産業中分類で十一もあり、自動車、鉄鋼、化学、石油製品の製造工程では、水素やアンモニアを活用する余地はもともと大きくあります。しかし、研究開発や新たな設備投資への負担、水素、アンモニア自体のコストの高さゆえに、民間企業の負担が大きな課題と認識しております。
圧倒的な実現力を誇る大村知事のリーダーシップの下、国の投資を効果的に活用する、そして、サプライチェーンビジョンに基づき、水素とアンモニアの供給体制を構築し、需要の創出と利活用の促進に取り組むことで、愛知の産業が今後も元気さを保ち、日本の経済を牽引し続けると確信しております。
こうした取組には、広く県民の理解と参画も必要です。
一方、国の支援を得るために、川崎、姫路、北九州など他の地域も、戦略的に取り組んでいると認識しております。
そこで伺います。
そうした他の地域と比較した際の本県の強みと弱みも踏まえ、国が戦略的な投資を決め、将来に向けた正念場となる今年度以降、本県としてどのように取り組んでいくのか、現状の認識と今後の戦略を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 33: ◯労働局長(大嵜みどり君) 競争力のある本県産業の人材戦略のうち、UIJターンの促進についてお答えいたします。
東京と名古屋を拠点とするあいちUIJターン支援センターでは、首都圏、関西圏などから本県に人を呼び込むため、大学訪問や大規模就職フェアへの出展などを通じ、UIJターン希望者の掘り起こしや就職相談等を行っております。また、専門ポータルサイトにおいて県内企業の求人情報を登録、発信するとともに、首都圏等の大学で本県の企業や住みやすさなどをアピールしています。二〇一七年度のセンター開設以来、昨年度までの利用は四万六千三百八十一件、県内企業への就職に結びついた方は三百四十八人であり、今まで以上に本県に人を呼び込むためには、情報発信の強化が必要と考えます。
このため、今年度は新たに、拠点がない大阪市において、ハローワーク主催の就職面接会で直接求職者に県内企業を紹介するなど、関西圏での働きかけを拡充してまいります。
また、移住支援金は、東京一極集中を是正するための国の制度であり、専用ポータルサイト掲載企業へ就職し、東京二十三区から県内への移住者等を対象に市町村を通じて支給しております。二〇一九年度の制度創設から昨年度まで二十九件の利用があり、毎年増えております。利用者からは、愛知県は家賃が安く生活しやすい、引っ越し費用や教育費の助けになったなどの声も聞かれ、支援金は本県への移住のきっかけになっていると考えます。
今後も、市町村等と連携しながら求人開拓を積極的に行い、愛知の情報発信を充実するとともに、支援金制度を引き続き活用し、県外からのUIJターンを促進してまいります。
次に、運輸業における働き方改革の促進についてお答えいたします。
運輸業では、二〇二四年四月から時間外労働の上限規制が適用され、さらなる人材不足が懸念されることから、ドライバーなどの担い手確保のためには、働きやすい職場環境づくりに取り組むことが重要であります。
このため、県では、中小企業の事業主等を対象に、労働講座などによる労働法の啓発や、就業規則の整備促進に取り組むとともに、育児など家庭の都合で時間制約のある方を積極的に採用する運送会社の好事例を発信しております。また、先進的な取組を実施する経営者をパネリストに招いたワークショップを開催し、働き方改革への意識啓発や実践方法の普及に努めているところであります。
今年度は、新たに、休み方改革マイスター企業認定制度を創設し、年次有給休暇の取得促進や、多様な特別休暇の導入などに積極的に取り組む中小企業を支援してまいります。
業界団体等を通じて、認定制度の利用を促し、誰もが働きやすい職場環境づくりを支援することにより、運輸業における働き方改革の促進や担い手確保につなげてまいります。
続いて、外国人労働者の活躍促進についてお答えします。
特定技能は、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人の受入れを目的とした在留資格で、特定技能一号は、製造業分野など十二分野を対象とし、最長五年の在留が可能です。また、より熟練した技能を要する特定技能二号は、建設などの二分野が対象で、在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も可能です。
現在、国は、深刻化する人手不足に対応するため、二号の対象を介護を除く十一分野に拡大する制度改正を進めていることから、今後、自動車産業等で長期間就労する外国人労働者が増加することが想定されます。そうした方々が安心して働ける適正な労働環境を整えることは、人手不足への対応や生産性向上が急務となっている中小企業等にとっても重要なことと考えます。
このため、本県では、名古屋出入国在留管理局や愛知労働局、経済団体、労働団体などを構成員とするあいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会の下に労働環境ワーキンググループを設置し、各構成団体における取組や課題等について情報を共有し、意見交換を行っているところです。
また、企業に対して、外国人労働者の雇用管理における留意点などをガイドブックやホームページで周知し、法令遵守等の意識を高めるよう働きかけるとともに、外国人労働者には安心して働くための労働関係法令などを多言語で情報発信しております。
今後も、特定技能者などの外国人労働者に、愛知で働きたいと思ってもらい、本県産業の担い手の一員として活躍していただけるよう、労働環境整備に取り組んでまいります。
- 34: ◯教育長(飯田靖君) モノづくり愛知を支える工科高校についてのお尋ねのうち、初めに、県立工科高校の生徒に中小企業の強みや魅力をどのように伝えていくのかについてお答えをいたします。
世界から高い評価を受けている本県のモノづくりは、高度な技術を有する多くの中小企業に支えられております。その中小企業の将来を担う人材を輩出していくことは、県立工科高校の大きな使命であり、生徒が地域の中小企業を就職先として選びやすくするためには、議員お示しのように、在学中に中小企業の仕事の内容や魅力を知ることが何より大切でございます。
そのため、県教育委員会では、地域の中小企業の御協力をいただき、二年生の生徒が夏休みの一週間、モノづくりの現場で技術者から直接実践的な技術を学ぶ実習の機会を設けております。二〇一九年度には百七社に二百八十九人の生徒が参加をいたしましたが、二〇二〇年度、二〇二一年度は、新型コロナウイルス感染症のため、大きく減少をいたしました。昨年度は七十社に百九十七人の生徒が参加をいたしましたが、依然としてコロナ前の七割以下でございますので、今年度は、さらに多くの企業の御協力をいただいて、参加生徒を増やしてまいりたいと考えております。
また、今年度からは、地域の中小企業で組織をする経済団体と連携をし、尾張地区と三河地区において企業説明会を開催し、生徒とその保護者が中小企業の魅力を知る機会とするとともに、教員と企業の採用担当者との意見交換会を実施し、企業が求める人材の育成につなげてまいります。
さらに、生徒が地域で行われるイベントに参加をし、中小企業と協働をして行事に取り組むことで、中小企業への理解を深め、就職につながるようにしてまいります。
こうした取組を通して、県立工科高校の生徒に中小企業の強みや魅力を伝えてまいります。
次に、県立工科高校の魅力発信についてお答えをいたします。
県立高校の工業科では、グローバル化、デジタル化の進展に伴う産業界の変化を踏まえまして、二〇二一年四月に学科改編を行い、ロボット工学科、IT工学科など、今の時代に求められるスキルを学ぶための学科に切り替え、新たなスタートを切りました。各工科高校におきましては、基礎的な知識や技術から学び、卒業後、製造現場で即戦力として働けるようなスキルを身につけられる工業教育に取り組んでおります。近年は、企業から生徒一人当たり十社を超える求人をいただいており、卒業生は身につけた知識や技術を生かして、現場で活躍をしております。
こうした工科高校の魅力をより多くの中学生やその保護者によく知っていただくため、体験入学を年複数回実施し、中学校の教員向けの授業見学会も開催をするほか、工科高校のウェブページを充実させてまいりたいと考えております。
さらに、議員お示しのとおり、技能五輪の全国大会が今年十一月に県内で開催をされ、多くの小中学生が見学する予定となっております。メイン会場のアイチ・スカイ・エキスポでは、県立工科高校の生徒がガイド役となり、小中学生に競技の解説をしたり、学校の出展ブースにおいて学校紹介やモノづくり体験を行ったりするので、工科高校に興味を持ってもらう大変よい機会になると考えております。
今後もこうした取組を通して県立工科高校の魅力を発信してまいります。
- 35: ◯環境局長(川村正人君) 将来を見据えた省エネルギー設備、再生可能エネルギー設備の導入支援についてお答えをいたします。
日本一のモノづくり県である本県は、活発な経済活動の結果として、温室効果ガス排出量が全国トップクラスとなっており、カーボンニュートラルの実現に向けては、本県の排出量の六割を占める産業・業務部門における脱炭素化の取組が極めて重要となります。
このため、本県では、昨年度、高効率空調機や高効率照明機器など、より性能の優れた省エネ設備への更新や、太陽光発電、蓄電池などの再エネ設備の導入を行う事業者向けの補助制度を創設し、延べ百十二の事業者に補助を行いました。これにより、年間で一般家庭約一千四百世帯分の排出量に相当する約五千五百トンのCO2の削減が見込まれます。
今年度は、引き続きこうした設備整備への補助を行うほか、脱炭素化に向けて取り組むに当たり、情報や知識、人材面などの制約があることから対応が遅れてしまうおそれがある中小企業への支援を強化してまいります。
具体的には、従来から実施しております省エネ相談に加え、新たに事業者の元にアドバイザーを派遣して、CO2排出量の算定や意欲的な削減目標の設定をはじめ、省エネ・再エネ設備の導入といった削減計画の策定などのサポートを実施し、脱炭素経営に向けた取組をきめ細かく支援してまいります。
エネルギー費用が高騰する中、事業者の光熱費や燃料費の負担軽減にもつながる徹底した省エネルギーの実施と再生可能エネルギーの導入拡大を今後も積極的に促し、カーボンニュートラルあいちの実現に向けしっかり支援をしてまいります。
- 36: ◯経済産業局長(矢野剛史君) 次世代エネルギー確保の取組についてお答えをいたします。
水素、アンモニアは、燃焼時に二酸化炭素を排出せず、電気や熱のエネルギー源として、また、化石燃料由来製品の代替原料として期待されており、脱炭素社会を支える資源として注目をされています。
本県では、知事を会長とする中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議を二〇二二年二月に立ち上げ、この組織を核にして、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けまして、水素、アンモニアの社会実装への取組を早急に進めていく必要があると認識しております。
本県を含む中部地域には、他の地域と比べて自動車産業をはじめとして需要家となり得るモノづくり企業の圧倒的な集積がございます。現在、名古屋港をはじめとする臨海部だけではなく、内陸部までを含めた広域的かつ産業横断的な水素サプライチェーンの構築や、世界初となります株式会社JERAの碧南火力発電所でのアンモニア発電を核としたアンモニアサプライチェーンの構築のために、国による支援の獲得を目指し、行政、民間が一体となって需要創出などの取組を加速させているところでございます。
具体的には、今年度から新たに、モノづくり企業で利用される工業炉をはじめ、工場での水素、アンモニアの活用可能性の調査や、中小企業に対しましては、専門家の派遣などを通じ、水素、アンモニア利用の理解増進の取組などを行い、中長期的な需要創出につなげてまいります。
このような活動を確実に進めることにより、本県が近い将来、日本有数の水素、アンモニアを活用した一大産業拠点となるよう全力で取り組んでまいります。
- 37: ◯十八番(山口健君) 真摯に御答弁をいただきどうもありがとうございます。
今回少子化対策は質問しておりませんが、国が異次元の対策を進めていくとはいえ、本県の産業にとって、当面の課題は労働力人口の減少だと思っております。カーボンニュートラルの実現やAIの進化により、モノづくり産業の基盤がどのように変化していこうとも、本県産業の競争力を維持していくには、人材の確保に地道に取り組んでいくことが求められると思っております。
本日、提案した具体策の検討を要望するとともに、人材確保に関する具体的な取組につきましては、県内各産業で働く皆さんの問題意識に応じて、今後も都度要望していくこともお伝えし、全ての発言を終わります。ありがとうございました。
- 38: ◯議長(石井芳樹君) 進行いたします。
杉江繁樹議員。
〔四十一番杉江繁樹君登壇〕(拍手)
- 39: ◯四十一番(杉江繁樹君) 自民党の杉江繁樹でございます。
通告に従い、二項目について質問をさせていただきます。
一つ目の質問は、選ばれる愛知県国際展示場アイチ・スカイ・エキスポになるための取組についてでございます。
愛知県国際展示場アイチ・スカイ・エキスポは、東京ビッグサイト、幕張メッセ、インテックス大阪に次ぐ、国内第四位の規模として、二〇一九年八月に開業しました。当時は、中部国際空港のインバウンドも旺盛で、アイチ・スカイ・エキスポも大いに躍進することが期待されましたが、開業から僅か半年ほどで新型コロナウイルスが蔓延し、残念なことに、その持てるポテンシャルを十分に発揮できないまま、四年が経過しようとしています。アイチ・スカイ・エキスポは、国際空港直近という立地を生かし、日本で唯一の常設保税展示場として誕生しましたが、これまでに海外からのビジネス訪日客を多数迎えてのフルスペックでの国際展示会は開催されておらず、強みを生かし切れていないのが現状であると考えます。
開業当初は、産業展示会がメインになる展示場というコンセプトで誕生しましたが、現在では、週末を中心に音楽イベントが多く開催され、特にアイドルのイベントは多く、常滑イベントとしてSNS上では全国のファンがよく話題にしており、それはそれで地元としては大変うれしく思っています。
しかし、モノづくり日本一の産業県である愛知県に誕生した国際展示場として、本来の狙いの一つであるビジネスマッチングの機会を創出する国内外の産業展示会がこれからもっと多く開催されることを期待しています。
思い起こせば、開業当初から、私の元にも様々な声が届いたことを思い出します。まず印象深いのが、野外の音楽イベントが開催されたときに、偶然、風向きが悪く、対岸に重低音を運んだため、行政機関や警察にも苦情が入る出来事がありました。私も対象の地域の行事に参加したときに、大きな苦情をいただきました。また、知多半島道路の事故により、アイチ・スカイ・エキスポで開催された催事に来場した方々が乗るバスが多数市内に流入したときも、交通に関する御意見もいただきました。そして、コロナ禍では、当時の感染対策を守らない音楽催事が開催されたときは、かなり厳しい御意見をいただいたことも思い出します。
しかし、どのような御意見をいただいたときも、地元に整備していただいた愛知県国際展示場アイチ・スカイ・エキスポは、必ず地域にとって有益な施設であり、地域の人々にとって自慢の施設になることを説明してまいりましたし、今もその思いであります。
運営会社である愛知県国際会議展示場株式会社の皆さんも、コロナ禍でも事業継続のために様々な努力をしてみえたことも存じ上げています。
そして、いよいよ長かったコロナに対する状況も変わってまいりました。
そのような状況の中、このたび、大村知事のトップセールスにより、二〇二四年三月にスマートマニュファクチュアリングサミット・バイ・グローバルインダストリーの開催が決定しました。これは、ヨーロッパ最大級の総合的な産業展示会であるグローバルインダストリーの日本版で、ヨーロッパをはじめとする百以上の海外企業やスタートアップが出展予定であり、国内外から多数の来場も見込まれる、日本とヨーロッパをつなぐ日本初のBtoBの製造業向け展示会でございます。大変喜ばしいことでございます。
また、ほかにも幾つかの国際展示会が今年度開催予定と聞いており、いよいよアイチ・スカイ・エキスポが、苦しかった時期を抜け、本来の国際展示場として大きく動き出す年になると確信しているところであります。
これから新しい展示会やイベントを誘致し、リピーターとなってもらうためには、運営会社、出展者、関係者など主催者、また、来場者にとって魅力的な展示場にならなければなりません。そのためには何をすべきか、少し考えてみました。
主催者に対しては、他の施設と比べて安い料金設定、またはインセンティブなどで安く使えること、それに施設としての使い勝手のよさなどが考えられます。また、来場者については、アクセスのよさは大切であります。そして、双方にとって必要なのは、アフターMICEと言われる、余暇をいかに楽しく、有意義に、リラックスして過ごせるかも重要になってくると考えられ、特にこれから開催される国際的な展示会におられる外国の方々は、日本での様々な体験を楽しみにしてみえます。
今回は、多々要因が考えられる中で、選ばれる国際展示場となるための取組という部分について、質問をさせていただきたいと思います。
昨年、世界百以上の都市で展示会を開催するイスラエル、ケネス社のダンCVO、チーフ・ビジョン・オフィサーが来日した際、アイチ・スカイ・エキスポでの会議で伊藤辰矢常滑市長と面会し、国際展示会開催に当たりいろいろと要望をされていかれたとお聞きしました。ダンCVOは、国際展示会に来られる皆さんは、仕事の余暇を大切にすること、名古屋に宿泊する人もいるだろうが、展示場の近郊に宿泊する人も多いだろうということを念頭に、主に三点話をされたとのことですので、紹介させていただきます。
一点目は、空港島と市域をバスで結んでほしいとのことです。電車がありますとお答えすると、電車は現金が必要となるなど、外国人にはハードルが高く、やはり展示場やホテル付近から乗ることのできるシャトルバスがあると、気軽にショッピングや飲食などを楽しむことができるとのことでした。
二点目は、余暇を楽しむことのできるバスツアーが必要だとのことです。日本の食文化、酒文化、温泉や伝統文化、工芸の体験、海や自然など、リアルな日本に皆さん興味があるとのことです。凝ったバスツアーでなくてもよく、例えば、酒蔵の見学、試飲、温泉、イチゴ狩りと三か所ぐらいを用意し、自分の興味のある場所で降り、数時間後に再び迎えが来る、その程度のツアーで十分だとのことです。
三点目は、展示会参加者に対して何かしらのインセンティブがあるとよいとのことでした。
実際はもっといろいろと言われたようでしたが、かなりの速い口調で勢いよく要望されたため、語学に明るい伊藤市長でも全てを聞き取り完全に理解することができなかったと言ってみえました。ですが、先ほどの三項目については、少なくとも考えてほしいと受け止めたとのことでした。
県としても、海外の展示会主催者と話をする機会が多くあると思います。
そこでお尋ねいたします。
これから本格的な国際展示会が始まるに当たり、海外や国内の展示会主催者から愛知県や展示場会社に何かしらの要望等はあるのかお伺いいたします。
およそ五年前、県議会の海外訪問団が南米を訪問した際、GLイベンツ社の運営するリオセントロを視察したと伺いました。その際、リオデジャネイロの市街地から三十五キロほど離れた立地であるにもかかわらず、充実したホテル機能に加え、近くのショッピングモールやビーチなどとシャトルバスで結ぶことにより、複数泊でも飽きることなく滞在できる環境にあり、稼働率も順調な施設だと話されていたそうです。
アイチ・スカイ・エキスポが、東京ビッグサイト、幕張メッセ、インテックス大阪と大きく異なるのは、都市部にある展示場ではないという点でございます。裏を返せば、都市部に少ない酒蔵、温泉、海や自然などが近くにあるということになります。先ほど紹介したリオセントロ同様、一見不利な立地ですが、利点を生かした努力と工夫次第で、特に海外からの訪日ビジネス客に対しては、世界でも魅力ある展示場の一つになることが可能だと考えます。
アイチ・スカイ・エキスポが選ばれる展示場になるためには、アフターMICE、余暇を楽しむことのできる魅力的な背後地が必要であると思います。
そのためには、正確な展示会の日程や種類、規模などの情報に加え、展示会主催者の要望などニーズも周辺自治体をはじめとしたステークホルダーと共有し、背後地として受入れ体制を整えていくことが求められます。そうすることにより、展示会主催者や来場者の方々の期待に応え、ひいては、アイチ・スカイ・エキスポそのものの魅力にもつながると確信しております。
そして、展示場近郊である知多地域と愛知県がしっかりと連携をして、それぞれの自治体が持つ資源を集結させ、その効果を知多地域から愛知県内全域へと波及させるべく、県が主体となる積極的な取組が重要だと考えます。
そこでお尋ねいたします。
アフターMICE、余暇として魅力的な背後地へ出展者や来場者を誘客するために地域とどのように連携していくのか、県としての見解をお伺いいたします。
続いて、二つ目の質問でございます。
二つ目の質問は、愛知県におけるコロナ後の国際交流についてでございます。
現在、愛知県は、オーストラリアのビクトリア州、中国の江蘇省、広東省と友好都市提携をしており、県内の市町村も世界の多くの都市と友好都市提携をしています。現在の数字では、県と三十三市町村で六十三の提携をしています。また、友好都市提携以外でも、さらに多くの地域政府や機関と相互協力や経済連携を結んでいます。
そして、愛知県は、産業面で見ても、令和三年経済センサス─活動調査、産業別集計によると、製造品出荷額等は四十三兆九千八百八十億円と、前年比では減少したものの、一九七七年以来、四十四年連続で全国一位となった産業県でありますし、県内には日本を代表するトヨタ自動車もあり、全世界に向けて産業力の高さを発信していると言ってよいと思います。そのおかげもあり、名古屋港では、総取扱貨物量、輸出額、貿易差引額、自動車輸出台数は過去何年も連続で日本一を記録しています。
そして、現在取り組んでいる施策として、二〇二四年十月にはSTATION Aiという日本最大のスタートアップ支援拠点を開業予定であり、あいちスタートアップ・エコシステムの形成に力を入れています。そのスタートアップ戦略の中には、海外スタートアップ支援機関や大学との連携があり、フランス、アメリカ、中国、シンガポール、イスラエルの大学及びスタートアップ支援機関と、連携やMOU締結などをしています。
また、何といっても、二〇二六年には国際大会であるアジア競技大会、アジアパラ競技大会の開催が予定されています。
こうした背景からも、さらなる県の国際化や県民の国際感覚の醸成は必要だと考えています。
そして、愛知県は、あいち国際戦略プラン二〇二二を策定してからの五年の間に、国際社会の大きな変化を受けて、新たなるあいち国際戦略プラン二〇二七を策定し、県の国際化を進めています。そのプランの趣旨の中には、世界とつながり成長する地域であり続けるために、次代を担う若者を中心に幅広く多層的な交流を実施し、未来に続く施策を展開するということが言われており、そのプランでは、愛知県の現状としての強みは、英語教育の着実な成果、外国人人口の集積、多様な魅力の存在、モノづくり産業の集積とされ、課題としては、デジタル人材の不足、高度外国人材の受入れの遅れ、国際的な認知度の低さ、デジタル化の必要性とされており、目指すべき愛知の姿として、世界と行き来するヒト・モノ・カネ・情報により成長を続ける愛知とされています。また、その目指すべき愛知の姿を実現する戦略、施策の方向性の中には、若者のグローバル人材としての育成と記されており、国際感覚の醸成に関する部分も書かれています。
私も、少ない経験の中ですが、地元のロータリークラブで青少年奉仕委員長をさせていただいたときに、ロータリークラブが支援して留学をした高校生から、その成果を帰国報告として直接お聞きする機会がありましたが、大勢の大人たちの前で楽しそうにホームステイ先での出来事や、学校や地域での経験を語る彼らの表情を見ていると、本当によい経験をされたことが伝わってきました。まさに、成長した姿を実際に見ることができた経験です。
少し話を広げますが、私の地元常滑市には、高校生が対象ではありませんが、市内の小学生や中学生を対象に、中部国際空港セントレアが開港する以前より、二十五年以上にわたり、児童生徒の派遣、受入れの国際交流を行ってきた団体がありますので、少し紹介させていただきます。
その団体は、常滑市児童生徒国際交流推進協議会(TSIE)といい、小学生の国際交流の世界組織であるISSEのプログラムを使い、保護者やボランティアによる運営をしている、あまりほかには見られない形で事業を行う団体でございます。発足以来、多くの人々の御尽力により、引率者を合わせると千三百人を超える派遣、受入れをしてまいりました。この団体を詳しく知ることになったのは、私が市議会議員になってからではありますが、本当に常滑市の子供たちの国際教育にとって大切な事業であると思っております。
しかし、基本的にボランティアでの運営のため、資金を集めるために、各学校の保護者や委員会の皆さんは、学校行事のときに合わせてバザーを開催したり、団体から寄附を募ったりと、様々な努力をしてみえました。常滑市も平成三十年度から引率する教員に対し旅費や日当を支給するなど、行政としても協力する姿勢を取っていました。
そういった周りからの支援もあり、海外に派遣される子供たちも、日本にやって来た子供たちも、その交流をとても楽しんでいましたし、その成果や発表を拝見させていただくこともとても楽しみでした。
コロナ禍になる前の二〇一九年には、市内の四小学校の児童がマレーシア、メキシコ、タイの小学校に派遣されましたし、中国、タイ、マレーシア、インドの子供を市内の小学校に受入れをしました。以前には、海外からの子供たちを受け入れているときに、文化交流の夕べと題して、大々的に関係者や支援者を市内の文化会館に集め、各国の踊りや歌などを披露していただいたこともありました。
このような活動が順調に続くことを願っていましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりにより、大きな打撃を受けることになってしまいました。コロナにより今まで総会が書面での開催でありましたが、本年、久しぶりにリアルに開催された総会に出席して、その打撃の大きさを実感することになりました。
コロナ禍では、人と人との接触が避けられ、国内においても移動が制限されるなど、様々な制約がありました。日本はもとより、世界各国も入国制限をするなど、海外との交流は非常に厳しい状況になり、その象徴の出来事として、中部国際空港では二〇二〇年四月に、開港以来、初めて国際便がゼロ便になってしまいました。
代替の手段として、リモートでの交流や手紙の交換など、様々な方法で事業を継続する努力をされていましたが、やはり国際交流の大切さは、その国に行き、気候や匂いを感じ、生活を実感することが喜びであり、学びだと思います。その重要な部分ができなくなってしまうと、もともとボランティアや有志の力で運営をしていたため、協力していただける人の確保も困難になってきている状況のようです。また、プログラムを提供しているISSEという組織自体も運営が厳しいようだとお聞きしました。
ですが、会長をはじめ、役員、関係者の皆さんは、こういった国際交流事業の大切さを理解していますので、前向きに今後も取り組んでいただけると言ってみえました。
きっと、このようにコロナにより大きな打撃を受けた団体や機関などは、愛知県内にも多々あると思います。全てに手の届く支援をすることは困難だと考えますが、復活への成功事例や取組の紹介、または相談など、愛知県として今後とも国際交流を推進していただけると、関係者は心強いと思います。
そして、愛知県としても、外国青年招致事業や留学生支援をはじめ、様々な国際交流事業をしていると承知しています。この事業もコロナ禍により多くの影響を受けていると考えます。
そこでお尋ねいたします。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、県が行っていた国際交流事業も多くの影響を受けたと思います。現在は、感染症法上の分類が二類から五類となり、ウイズコロナと言われる世の中になってまいりましたが、コロナ禍で停滞していたと思われる県の国際交流事業について、今後どのように進めていくのか、お伺いいたします。
以上、明快な答弁を求め、壇上での質問とさせていただきます。御清聴誠にありがとうございました。(拍手)
- 40: ◯観光コンベンション局長(阿知波智司君) 選ばれるアイチ・スカイ・エキスポになるための取組についてのお尋ねのうち、初めに、海外や国内の展示会主催者からの要望についてお答えします。
国内外の主催者からは、新しい展示会の立ち上げは大きなリスクを伴うことから、開催に係る費用に対する補助や、出展者、来場者の増加に向けた支援等について要望をいただいております。
こうした要望に対し、費用面については、展示場の運営権対価を原資として設置した基金を活用し、BtoBの商談を含む展示会など、県が後援等を行う催事を対象に、会場利用料金や、展示場と県内主要箇所を結ぶシャトルバスの運行費用に対する補助を実施しております。また、出展者や来場者の増加に向けては、庁内関係局等のネットワークを活用し、メールマガジン等で催事の開催情報を周知することにより、県内企業などに対し、出展や来場の働きかけを行っております。
こうした取組の効果もあり、これまでに、名古屋モーターサイクルショーやロボットテクノロジージャパンなどの産業展示会が新たに開催されたほか、今年度は、アイチ・スカイ・エキスポで初めての開催となる、人とくるまのテクノロジー展二〇二三ナゴヤが予定されております。
今後も主催者の要望を把握し、丁寧に対応することにより、新たな催事の誘致、創出や、既存催事の継続的な開催につなげ、アイチ・スカイ・エキスポの一層の利用促進を図ってまいります。
次に、魅力ある背後地への誘客に向けた地域との連携についてお答えします。
催事の開催に伴い、アイチ・スカイ・エキスポへ訪れた人々が、アフターMICEとして背後地へ足を運び、地域の魅力に触れていただくことは展示場の魅力を高め、また、宿泊や飲食などを通じて地域経済の活性化につながるものと認識をしております。
そのためには、催事の基本情報や催事主催者等が求める周辺の観光情報について、地域の関係者と共有できる仕組みづくりが不可欠です。
県では、地域を挙げてアイチ・スカイ・エキスポの利用促進を図るため、経済界をはじめ、交通、宿泊、農商工や観光の各分野の関係団体などを構成員とするアイチ・スカイ・エキスポ需要創造会議を設置しております。この会議の中に受入体制充実プロジェクトチームを設け、開催予定の催事情報を共有することにより、各構成員が利用者に提供できる地域の観光情報や料金の割引など、具体的なサービスの内容について検討を行っていくこととしております。
コロナ禍による行動制限の解除や水際措置の終了により、来場者が背後地に足を運べる環境が整ってきた中で、今年十月には高齢者の自立をテーマとした国際会議、インディペンデントエイジング二〇二三、来年三月には、国際的な産業展示会、スマートマニュファクチュアリングサミット・バイ・グローバルインダストリーの開催が予定されております。
今後は、こうした催事における来場者等の背後地への誘客促進に向け、アイチ・スカイ・エキスポ需要創造会議の枠組みの中に、知多地域をはじめとする背後地の市町や観光関連事業者の参加を幅広く呼びかけ、受入れ体制を一層充実させることにより、催事の開催効果が地域全体に及ぶよう取り組んでまいります。
- 41: ◯政策企画局長(沼澤弘平君) 本県の国際交流事業の今後の進め方についてお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界的な移動の制限をもたらした一方、オンラインによる交流が急速に普及するなど、国際交流の在り方に大きな変化をもたらしました。
コロナ禍においては、本県がこれまで友好提携などにより交流を深めてきた中国・広東省、タイ・バンコク都、韓国・京畿道との高校生の相互派遣事業のほか、米国・テキサス州で毎年開催される世界最大級のイノベーションの見本市、サウス・バイ・サウスウエストへの学生チームの派遣もオンラインでの実施となりました。
一方で、対面での交流の重要性も改めて認識されており、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まりを見せた今年三月には、バンコク都への高校生派遣及びサウス・バイ・サウスウエストへの学生チームの派遣を再開するとともに、五月にはバンコク都からの高校生訪問団の受入れを実施いたしました。
本県といたしましては、オンライン交流も利用することで、交流のプログラムをさらに充実させながら、対面による交流を積極的に推進していくことにより、地域間の信頼関係を醸成し、県はもとより、市町村や民間レベルでの交流促進にもつなげていきたいと考えております。
- 42: ◯知事(大村秀章君) 杉江繁樹議員の質問のうち、私からもアイチ・スカイ・エキスポについてお答えをいたします。
開業初年度となる二〇一九年度は、eスポーツイベントをはじめ多くの催事が開催をされまして、想定を上回る稼働率となったものの、二〇二〇年度以降は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けて、展示場を取り巻く環境は厳しい状況が続いてまいりました。
こうした中で、先月八日に感染症法上の位置づけが五類に移行し、いよいよ制限なく催事が開催できる環境となりました。
私も視察をいたしましたアウトドアイベント、フィールドスタイルジャパン二〇二三は、五類移行後の開催であったこともあり、約五万人もの来場者を集め、大変にぎわっておりました。
また、来月には人とくるまのテクノロジー展二〇二三ナゴヤがアイチ・スカイ・エキスポで初めて開催されるほか、十一月には技能五輪全国大会や全国アビリンピックが今年から三年連続でアイチ・スカイ・エキスポで開催されることが決定をいたしております。
引き続き新たな催事の誘致、創出に積極的に取り組むことで、展示会産業の成長を促し、さらには催事の効果が地域経済の活性化につながるように、しっかりと取り組んでまいります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
- 43: ◯四十番(朝日将貴君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 44: ◯議長(石井芳樹君) 朝日将貴議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 45: ◯議長(石井芳樹君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時五十六分休憩
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午後三時三十九分開議
- 46: ◯副議長(いなもと和仁君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
丹羽洋章議員。
〔五十九番丹羽洋章君登壇〕(拍手)
- 47: ◯五十九番(丹羽洋章君) それでは、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
まず、愛知県職員、教員、警察官の採用と人材育成についてお伺いさせていただきます。
我が国では、少子・高齢化が急速に進展した結果、二〇〇八年をピークに総人口が減少に転じています。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、今から三十年後の二〇五三年には、日本の総人口は一億人を下回ることが予測されています。人口構成も変化し、一九九七年には六十五歳以上の高齢人口が十四歳以下の若年人口の割合を上回るようになり、二〇二〇年には三千六百十九万人、全人口に占める割合は二八・九%と増加しております。また、十五歳から六十四歳の生産年齢人口は一九九五年をピークに減少しており、二〇五〇年には五千二百七十五万人に減少すると見込まれております。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など、様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されております。
そして、そうした少子化による人口減少を背景として、人手不足や採用難は恒常的な課題になりつつあります。少子化がさらに進むことによって、人材の確保が将来的に今以上に困難になることは予想に難くありません。人手不足は今後改善されると楽観的には考えずに、むしろ人手不足の問題は今後ますます拡大すると考えたほうがいいように思います。
そんな中ではありますが、一方で人手不足に悩まされていない企業も存在し、少子化だけが人手不足の原因とは言い切れないように思います。創意工夫を凝らして人材獲得に動いている企業、組織などは、必要とする人材を問題なく採用できているようです。
近年、人材が欲しい企業や組織にとっては人材獲得競争の状態になっており、優秀な人材を求めた企業や組織の間の競争が激化し、人気のない業種、同業種と比べて魅力のない企業は取り残された状態となっていると考えても差し支えないように思います。
そして、人手不足、人材確保に悩んでいるのは、何も民間企業だけではありません。昨今では、自治体でも人材確保に苦慮しており、特に土木系技術職員の担い手不足や定員割れが深刻であり、本県においても同様であると伺っております。
そんな中、採用試験の受験資格の緩和や試験時期の前倒し、筆記試験の撤廃など、今までとは少し変わった採用に取り組んでいる自治体も出てきていると聞いております。
そこでお伺いいたします。
近年の愛知県職員の競争試験の採用予定者数、それに対する受験者数、合格者数、辞退者数、採用者数について、どのような状況であるのかお伺いします。中には受験者数がかなり少ない職種もありますが、受験者数及び採用者数確保のためにどのような対応をしているのかお伺いいたします。また、採用辞退者についてはどのような理由で辞退をしているのか、それに対しどのように対応しているのか、お伺いいたします。
少子化の進行などの要因により、民間企業も含めて人手不足が深刻化する中、官民を問わず熾烈な人材確保競争と言ってもいいような状況の中で、人材確保のために様々な方策を取り始めております。その一つとして、先ほども申し上げましたが、国、ほかの都道府県などでは、採用試験の時期などを前倒しするなどの対応を取り始めたところもあります。また、民間企業では、新卒を含めて給与を大幅に上げるなどして、人材確保に動くところも出てきております。
三十年にわたるデフレ経済の中、給与のアップを口にすることがはばかられた感もありましたが、制度上、愛知県においては簡単に給与アップできるわけではありませんけれども、本県職員としても処遇改善が必要であるなら、大胆に処遇改善を行う必要もあろうかというふうに思います。
そこで、本県として、民間やほかの地方自治体の採用の動きを見据えつつ、採用時期や方法を含めて今後どう対応されるのか、お考えがあるようでしたらお伺いいたします。
あわせて、せっかく採用した優秀な人材を育成していかなければなりません。現代社会は急速に変化し続けており、その変化に対応するためには、柔軟性や適応力を持った人材が求められます。国際化や多様性も進んでおり、異なる文化や価値観を持つ人々とのコミュニケーション能力も求められます。さらに、現代社会では、技術等の進歩が速いため、継続的な学習が求められます。
本県としては、日本一元気な愛知づくりを支える人財力の強化のために、二〇二〇年十二月に愛知県人材育成基本方針を定め、自律的で、スピーディーかつスマートに行動する職員、行政のプロ意識と高い専門能力を持って行動する職員、サスティナブルな県庁を目指し、組織一体となって、いきいきと活躍する職員の三つをめざす職員像として人材育成に取り組まれております。
そこでお伺いいたします。
今日まで人材育成にどのように取り組まれてきたのか、また、時代の変化と次代を見据えて、本県職員の人材育成について、特に若手職員の育成に今後どのように取り組まれていくのか、お伺いいたします。
次に、教員の採用と人材育成についてお伺いいたします。
教員採用においても人材確保が喫緊の課題となっておりますが、その背景には、受験者数の減少や、採用時期が民間企業などよりも遅いことなどが挙げられております。
そこで、近年深刻化している教員採用倍率の低下や教員不足を背景に、教員採用を行う都道府県教育委員会は、様々な策を講じて人材の確保に動いております。東京都を皮切りに始まった大学三年生の受験のほかにも、普通免許状がなくても受験できる特別選考、受験科目の廃止、受験スケジュールや会場の変更などなど、多くの自治体が様々な工夫を凝らして優秀な人材確保に動き出しております。
また、去る五月三十一日、文部科学省は、採用時期が早まる民間企業に対抗して、現在より一か月程度早い六月に教員採用試験を実施する方針を示しました。自治体ごとに行う教員採用試験について、来年度から一次試験は六月十六日を標準とするよう、全国の教育委員会に要請したところです。
そこでお伺いいたします。
本県における近年の教員の採用予定者数、受験者数、合格者数、辞退者数、採用者数について、どのような状況であるのかお伺いいたします。採用辞退者についてはどのような理由で辞退をされているのか、それに対してどのように対応しているのか併せてお伺いいたします。
近年受験者数が減少傾向にあります。先ほど申し上げたとおり、人材確保のために各都道府県の教育委員会が様々な方策を取り始めていますが、本県として、他の都道府県の動向をどのように認識し、教員採用に際して採用方法や時期を含めてどのような工夫を講じているのか、お伺いいたします。
また、コロナ禍の中で急速に進んだGIGAスクール構想でございますが、様々な課題を抱えているようにも思います。
まず、教員はデジタル技術を活用する能力を持つ必要があります。ICTを積極的に活用し、オンライン学習やデジタル教材の提供などを行う必要がありますが、全ての教員がICTスキルに精通しているわけではありません。ICTスキルの習得や継続的な研修等の支援策の一層の充実が必要だとも考えます。
また、新たな教育アプリケーションやプラットフォームが頻繁に登場しますし、昨今ではチャットGPTをはじめとする生成AIなども議論の俎上に上がってきていますが、そうしたものの導入の可否や問題点、活用方法を理解することも重要です。
さらに、オンライン教育は便利な手段でありますけれども、対面授業とはやはり異なります。例えば、児童生徒とのコミュニケーションが困難になりがちになることなどもあると聞き及んでおります。オンライン教育の特性を正しく理解した上で、適切な方法で児童生徒をサポートする必要もあると考えます。
こうしたICTを活用した学習スタイルの変化に対応するためには、教員の教育方法の多様性と柔軟性が求められるとともに、児童生徒の多様な学習スタイルに対応していく必要もあります。
そこで、県として、そうしたGIGAスクール構想をより一層加速、充実させていくことを含めて、次代を見据えた人材育成に今後どのように取り組まれていくのかお伺いいたします。
次に、警察官の採用についてお伺いいたします。
警察官は、国や地域社会の治安を維持し、私たちが安心して暮らせる社会を守っていくために必要不可欠な職業です。警察官は、私たちの生命、身体、財産などを犯罪や事件、事故などから守るという非常に重要な社会的役割を担っていただいております。
また、ほかの業界と同じように、警察組織においても情報技術や科学技術は目覚ましい勢いで進歩しております。犯罪捜査に用いられる手法も日々高度化しているため、それらに対応できる専門警察官の育成が今後の課題の一つであるとも思います。ハッキング行為、サイバーテロなどに対応するためのサイバー犯罪対策スタッフ、いわゆるホワイトハッカーなどはその最たる例と言えるでしょう。新規採用の場においても、プログラミングなどのIT知識、スキルを持つ学生や理系人材を積極的に受け入れる動きもあるように思います。
また、日本を訪れる外国人観光客や、今後日本で就労する外国人労働者の数がますます増加することが予測され、それに伴い、外国人の犯罪件数の増加や犯罪が国際化することが懸念されております。それらを取り締まる警察官に対しても、高い語学力や国際感覚を備えていることが必要な資質の一つになることが想像に難くありません。
そうした警察官においても、昨今慢性的な人員不足に悩まされていると聞いております。
そこでお伺いいたします。
愛知県警察の近年における警察官の採用予定者数、受験者数、合格者数、辞退者数、採用者数についてお伺いいたします。また、採用辞退者の辞退理由及び採用辞退者を抑制するためにどのように対応されているのかお伺いいたします。また、今後必要とされるサイバー犯罪や外国人に対応する資質を備えた人材確保について、本県としてどう対応されるのかお伺いをいたします。
続きまして、大きな二番、愛知県や市町村の行政におけるデジタル化、DXの取組についてお伺いをいたします。
本県においては、あいちDX推進プラン二〇二五を二〇二〇年十二月に策定し、愛知県のデジタルトランスフォーメーションを迅速かつ計画的に進めるとして取り組まれているところです。本プランでは、県行政の効率化、DXの推進、県民の利便性の向上、県域ICT活用支援、デジタル人材の育成などをプランの視点、柱として設定し、これに対応した様々な取組を進められているものと認識しております。
本プランが策定されてから二年半になろうとしておりますが、具体的にどのような取組が行われているのか、このプランの視点、柱ごとに順次お伺いをいたします。
まず、県行政の効率化、DXの推進、県民の利便性向上についてです。
この取組は、先進的技術等を活用した業務効率化の推進やICT環境のモバイル化を進め、行政の効率化を図ることや、文書や手続の単なる電子化ではなく、デジタルの徹底活用により手続を飛躍的に簡単にし、県民と職員の利便性を格段に向上させるというものです。
デジタル化は、行政運営の一層の効率化の契機になるものと考えます。少子・高齢化に伴う労働人口の減少が確定的と言える状況であり、人手不足ということが早晩、切実な課題となることが見込まれる中、システムで代替し得る業務はシステムに委ね、業務の効率化や省力化を図っていくことが必須であると考えます。
同時に、デジタル化により利用者の利便性を向上させることも重要です。例えば、行政手続やサービスのオンライン化がなされますと、閉庁後の夜でも申請できますし、窓口に出向かなくても申請できるといったように、時間的制約や空間的制約が緩和されます。
そこでお伺いいたします。
本県におけるデジタル化、DXの取組のうち、プランに掲げる県行政の効率化、DXの推進、県民の利便性向上に関する取組について、これまで主にどのような取組を進めてきて、どのような実績を出されているのか、お伺いいたします。
次に、県域ICT活用支援における市町村行政のDXに向けたデジタル化に関する取組のうち、特に自治体システムの標準化についてでございます。
自治体システムの標準化は、住民記録システムなど、市町村が基本的な事務を処理するための情報システムが、これまで自治体ごとに個別に開発され、カスタマイズが行われてきた結果、維持管理や制度改正時の改修等において個別対応を余儀なくされておりました。そのことにより、市町村の負担が大きいことなどの課題が発生していることから、デジタル庁を司令塔として情報システムの標準化を行おうとするものであります。
具体的には、住民基本台帳や印鑑登録など、市町村が多くを担っている基幹系の二十の業務について、二〇二五年度末までに国が定める標準化基準に適合したシステムに移行することが目標として掲げられております。
二〇二一年九月一日に、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律が施行され、また、二〇二二年十月七日には、自治体の情報システムの標準化の推進を図るため、地方公共団体情報システム標準化基本方針が閣議決定されるなど、市町村行政のDXに向けたデジタル化の重要な取組として、その実現に向けた動きが本格化しているところであります。
自治体の情報システムの標準化の取組は、システムを個別に開発することによる人的・財政的負担の軽減につながります。そして、地域の実情に即した住民サービスの向上に注力することができるようにするとともに、新たなサービスの迅速な展開を可能とすることを目指すものであります。そうした意味から、自治体の情報システムの標準化の取組は、住民の利便性の向上や行政運営の効率化のために、全ての自治体において着実に進められることが求められるものであります。
しかしながら、各自治体の作業が集中し、システムの開発など担う、いわゆるベンダー側の人材不足によるシステム構築等の進捗への影響が懸念されるなど、具体的な課題が出てきているとも聞いております。
こうした中、二〇二五年度末の移行期限までに円滑な移行を進めるため、広域自治体である本県が果たすべき役割として、情報提供や助言などを通じた市町村への支援が求められているのではないかと考えます。
そこでお伺いいたします。
市町村行政のDXに向けたデジタル化、特に市町村の情報システムの標準化について、県としてどのような支援を行っているのかお伺いいたします。
最後に、デジタル人材の育成についてでございます。
本県では、愛知県職員デジタル人材育成計画を二〇二一年八月に策定し、行政のデジタル化や行政DXを推進する人材の育成に取り組んでおります。行政のデジタル化やDXの取組を進めるに当たっては、デジタル技術やデジタルツールを理解し、その導入や活用に関する知識を持つ人材の確保が必要であることは当然であります。
しかし、こうした知識があっても、デジタル技術と業務とを組み合わせていくだけでは、業務のデジタル化にすぎません。これでは、デジタル化を前提として、業務プロセスの在り方から抜本的に変革、トランスフォームするDXにたどり着いておりません。
したがって、行政のDXを進めていくためには、デジタル技術に精通した人材に加えて、デジタル技術を活用するために最適な業務処理方法等を立案し、その方法等を積極的に実行していくことができる人材が不可欠であります。
そこで、国は、組織内部に人材が少ない場合は、外部人材の活用を積極的に検討するようにと言われております。そして、自治体DX外部人材スキル標準を策定され、自治体DX推進に必要とされる人材像をプロデューサー、プロジェクトマネジャー、サービスデザイナー、エンジニアの四つに分類し、外部デジタル人材の確保を支援しています。
その一方で、外部人材に地方公共団体の知識がないと、現場と混乱が生じてしまう可能性のことも言われておりまして、外部人材が自治体の組織、業務、システムや自治体DXの国の動向等に関する基礎的な知識を習得する必要性も併せて求められております。
そして、全ての県職員にとって、DXを進めていく上で何よりも重要なのは、県庁内の職員の意識を改革し、デジタルトランスフォーメーションの必要性を共有することであると考えます。ありていに言えば、可及的速やかにDXを推進していくためには、職員の意識改革が不可欠であります。ただ、業務の変革をしていくことには大変な苦労を伴うこともあり、また、これまで正確にきちんと処理できていた仕事の進め方、これを変えることには不安もあるでしょう。
しかしながら、人口減少に伴う人手不足が見込まれる状況において、業務を効率化し、生産性を向上させることは、もはや避けては通れないのではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。
外部人材の活用も含めて、本県における県職員デジタル人材育成について、どのように考え、どのような取組を行っているのか、お伺いをいたします。
最後に、本県企業の女性登用についてお伺いいたします。
先日、政府が公表した女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二三、いわゆる女性版骨太の方針では、我が国の民間企業の役員登用が国際的に大きく立ち後れていると指摘されました。そして、国内外の投資家が女性役員比率を重視する傾向が強まっているとして、日本経済の成長のためにも、女性登用を加速化させることが喫緊の課題だとの認識を示しております。その具体策として、東京証券取引所のプライム市場に上場する企業に対して、女性役員の比率を二〇三〇年までに三〇%以上とする目標を掲げました。
OECDは、去年、各国の主な企業を対象に、女性役員が占める割合を調査しました。欧米では一定の割合で女性役員の登用を義務づけるクオータ制を取り入れる国や州があり、女性役員の比率は、フランスの四五・二%をはじめ、イタリアやイギリスなどで四〇%を超えております。アメリカでは三一・三%となっていて、OECD各国の平均は二九・六%となっております。二〇二二年時点で、日本のプライム上場企業の女性役員比率は一一%にとどまり、プライム市場で女性役員が一人もいない企業は三百四十四社あり、一八%を占めるとのことです。
国際的に見れば、我が国の女性役員は非常に少ない状況となっており、国内外の機関投資家が議決権行使で女性役員が一人もいない企業の経営トップの選任に反対するといった事例も出てきていると聞いております。
本県では、二〇一三年度に本県初となる女性副知事が就任し、あいち女性の活躍促進プロジェクトチームが設置され、職場における女性の定着と活躍の拡大を図るため、様々な取組が行われてきました。女性活躍に向けた機運の醸成や、ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んできた結果、女性が出産や結婚を機に一時的に仕事を辞めて離れてしまうために生じる、いわゆるM字カーブは近年ほぼ解消されるなど、職場における女性の定着は進んできたものと理解しております。
一方で、活躍という面ではどうでしょうか。活躍という点について、何を基準に判断するのかは様々な御意見があろうかというふうに思います。女性の正規社員での雇用率ですとか、男女間の賃金格差であるとか、様々な指標がございますが、やはり働く場における様々な意思決定をする場面に女性がいるかどうか、会社や組織の方向性などを決める場面で女性の意思が反映されているのかどうか、そのような観点で企業の役員や管理職に女性が登用されているかどうかを見ていくことは、特に重要なことであろうかというふうに思います。
女性活躍が注目されるようになり、新聞報道等でしばしば企業における女性登用に関する報道を目にしますが、どの記事を読んでも、愛知県内の企業の女性の登用状況は全国的に見て遅れているのではないかと、そうした報道が多いのではないかと個人的に感じております。
近年、男性だけが要職を占める企業は、多様性に欠け、環境の変化に弱く、株価や業績に影響するとの分析が示されております。また、女性が登用されていない企業には、差別や性別による古い役割分担意識があるのではないかという厳しい目も向けられるようになってきています。
そんな中で、少子・高齢化に伴い、人材不足が経営面の最重要課題になってきている中、全国一の産業県である愛知県の企業が持続的に発展していくためには、女性登用を積極的に推進していくことも不可欠であると考えます。
そこでお伺いいたします。
本県企業の女性登用について、その向上を図るため、今後、県としてどのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
以上、壇上からの質問とさせていただきます。明確な答弁を期待します。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)
- 48: ◯人事局長(権田裕徳君) 愛知県職員の採用と人材育成についてのお尋ねのうち、初めに、近年の競争試験の実施状況についてお答えします。
直近の二〇二二年度試験の状況は、採用予定者数約三百六十五人に対しまして、受験者数三千九百四十八人、合格者数五百九人、辞退者数百二十二人、採用者数は三百八十七人でございました。このうち、受験者数三千九百四十八人は、前年度の二〇二一年度までの過去五年平均二千八百七十九人と比較すると、約一千人の大幅増となっております。また、近年の辞退率は約二割前後で推移しております。
次に、受験者数及び採用者数確保の取組についてお答えします。
本県では、愛知県職員の仕事に興味のある大学生等を対象にした職員ガイダンスや職場見学会を行い、愛知県で働く魅力を発信しており、二〇二一年度からは、新たに、職員ガイダンスに動画配信を導入し、より積極的な情報発信に努めているところでございます。
また、特に人材確保が厳しさを増す専門職につきましては、関係局におけるインターンシップの実施、大学主催の説明会や民間企業主催の合同企業展への参加などを通して、愛知県職員の職務内容や仕事に対する責務、やりがいなどを発信しております。
このうち、土木職では新たに、二〇二一年度から若手職員による個別相談窓口を設置したほか、二〇二二年度から一次試験受験者を対象にガイダンスを実施するなど、受験者確保対策を強化しております。
次に、辞退の理由及び対応についてお答えします。
まず、辞退の主な理由でございますが、国や他の自治体への就職が大半となって、二〇二二年度試験では、約六割が国家公務員、約一割が市町村職員になっております。
次に、辞退への対応でございますが、本県では、こうした辞退者を減らすため、合格者に対して毎月メールで県政情報や今後のスケジュール、採用に向けた準備事項などを配信して、入庁までのきめ細やかなフォローを行っております。
また、辞退者数が最も多い大学卒業程度の試験である第一回試験につきましては、合格者一人一人に電話連絡し、今後の日程の説明や個別の疑問に答えるなど、丁寧な対応を行うとともに、合格者説明会を実施して、入庁後の生活や働き方をイメージしてもらうことで、入庁前に感じる不安解消に努めております。
次に、採用試験の時期や採用方法を含めた今後の対応についてお答えします。
まず、本県の採用試験の時期につきましては、二〇二二年度から主たる試験である第一回試験の日程を一か月程度前倒しする取組を実施しており、その結果、前年度と比較して、受験者数が約七割増加し、競争倍率が三・一倍から六・〇倍に上昇したことで、より高い競争倍率の中での選抜が可能となり、優秀な人材の確保につながっているものと考えております。
次に、採用方法でございますが、受験者を増加させるための工夫や、即戦力となる人材の確保にも取り組んでおり、二〇二一年度からは、民間企業等職務経験者を対象とした採用試験におきまして、受験資格の職務経験年数を緩和し、実施回数を年二回に増やすとともに、合格者の年度途中の随時採用を実施しているほか、二〇二二年度からは、国家公務員総合職等の実務経験者を対象に、筆記試験を実施しない試験を新設しております。
今後も、民間企業や国、他の自治体の動向を注視しつつ、受験者確保や辞退者を減らすための取組を行うとともに、多様な採用方策を取り入れながら、職員の人材確保に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
最後に、人材育成のこれまでの取組と今後の若手職員の育成についてお答えします。
本県におきましては、従来から、新規採用者から管理職までを対象とした人材育成施策を体系的に実施しており、職員の能力向上や、人を育てる組織風土の醸成に努めてまいりました。
その中でも、特に、次代を担う若手職員の育成が重要であると考えており、議員お示しの愛知県人材育成基本方針におきましては、若手職員の育成を大きな柱の一つとして掲げ、様々な取組を進めております。
具体的には、若手職員の成長を促すため、上司と部下が一対一の対話を定期的に行うワン・オン・ワンをはじめ、広い視野、多角的な発想を身につけるための国や民間企業等への派遣や、能力開発を促進するための各種研修などに取り組んでおります。
今後も、こうした取組を着実に推進し、時代とともに変化していく政策課題や県民ニーズに迅速かつ的確に対応できる若手職員の育成にしっかりと取り組んでまいります。
- 49: ◯教育長(飯田靖君) 初めに、教員採用の状況についてお答えをいたします。
二〇二三年度採用の教員採用選考試験においては、採用予定者数千七百十人に対しまして、五千七百二十六人が受験をし、合格者は採用予定者数の千七百十人を確保いたしました。
辞退者数は百七十四人となっており、明確になっている辞退の理由は、他県や私学の教員への採用が八十七人、大学院進学者が二十八人、教員免許が取得をできなかった者が八人、民間企業や他の公務員へ就職した者が六人となっております。辞退が生じた場合には、補欠者の中から繰上げ合格で採用予定者数を確保しております。
この五年間で、採用予定者数を約二割増やしておりますが、受験者数は約二割減少をしております。また、辞退者数も増加傾向にあります。
次に、教員採用における工夫についてお答えをいたします。
本県では、教育の質を確保するため、受験者数や受験倍率の増加に向けて、一昨年度実施の選考試験から、一次試験と二次試験で二回実施をしていた筆記試験を一次試験に集約するなど、受験者の負担軽減を図りました。また、今年度から、これまで一次試験の一部を免除していた講師経験者について、市町村教育長や県教育委員会がその実力を認めた場合は、一次試験を全て免除し、二次試験の面接のみといたしました。
今後は、さらに、議員からもお示しがありました文部科学省の方針や東京都の取組を参考に、試験の実施時期を七月から六月に前倒すことや、大学三年生から受験をできるよう学生の受験機会を増やすことについて、積極的に検討をしてまいります。
最後に、GIGAスクール構想を推進するための教員の育成についてお答えをいたします。
GIGAスクール構想を推進する上で教員に求められるのは、授業でICTを効果的に活用できる力、情報モラルを含めて児童生徒のICT活用を指導できる力でございます。
本県では、総合教育センターにおいて、児童生徒用のタブレットをはじめとしたICTの効果的な活用や、情報モラルに関する研修を、全ての新規採用教員と中堅教員を対象に、それぞれの経験やキャリアの段階に応じて実施しております。また、各学校でICT推進の中核となる教員を養成するより専門的な研修も実施をし、そこで学んだ教員が学校の先生方をサポートし、教員全体のICTスキルの底上げを図っております。
こうした取組を通じて、基礎から応用までのICTスキルを含む最新の教育手法を習得することにより、児童生徒の多様な教育ニーズに柔軟に応えることができる教員を育成してまいります。
- 50: ◯警察本部長(鎌田徹郎君) 初めに、愛知県警察における近年の採用予定者数等についてお答えいたします。
警察官採用試験の受験者は年々減少傾向にあり、五年前と比べ約四割減少している状況にございます。二〇二二年度の採用試験では、採用予定者三百五十人に対し、二千二百九十五人が受験し、五百二十八人が合格しました。合格者五百二十八人のうち、百五十二人が採用を辞退したほか、受験後のけがで三人を採用延期措置としたため、採用者は三百七十三人でございました。例年、合格者のうち約三割が採用を辞退しております。
続きまして、採用辞退者の辞退理由及び採用辞退者を抑制するための対応についてお答えいたします。
二〇二二年度試験の採用辞退者からの聞き取りでは、辞退理由といたしまして、他の公務員と競合した者が多く、警察官以外の他の公務員が約四割、他の都道府県警察が約二割、愛知県警察職員が約一割、その他民間企業が約一割となっております。
採用辞退者を抑制するため、県警察では、合格者に対し、合格通知と併せてお祝いと激励の書簡を送付しているほか、採用後の不安や疑問を払拭するため、合格者研修会の開催や電子メールによる質問に随時回答する活動などを行っているところであります。また、合格者を警察署に招待し、署員が業務説明や施設案内を行うなど、合格者に警察で働く意思を高めていただくための活動も行っているところでございます。
最後に、サイバー犯罪や外国人に対応する資質を備えた人材確保への対応についてお答えいたします。
県警察では、情報技術や特定言語の素養を有する人材を計画的に確保するため、警察官採用試験において、一般区分とは別に、情報技術区分及び語学区分による採用試験を実施しているところでございます。
こうした人材の確保は熾烈を極めるため、この分野の学生に警察を選択してもらえるよう、情報技術や語学に特化した体験型説明会を開催するなど、採用後、警察で自分の技術がどのように生かせるのかイメージできる取組を推進しているところでございます。
これに加え、企業展や他の官公庁との合同説明会に参画し、民間企業や他の公務員を視野に入れている学生に対しても、幅広く警察の魅力と仕事のやりがいを発信するなど、人材の確保に取り組んでいるところでございます。
県警察といたしましては、他の都道府県警察の動向も参考にしながら、採用試験の在り方等について検討してまいるとともに、現在取り組んでおります男性育休の取得促進や働き方改革等の処遇改善施策をより深化させることにより、魅力ある職場をアピールし、優秀な人材の確保に努めたいと、かように考えております。
以上でございます。
- 51: ◯総務局長(川原馨君) 初めに、あいちDX推進プランの視点、柱の一つである県行政の効率化、DXの推進の主な取組実績についてお答えします。
まず、昨年度末までに千百四十一の行政手続において、オンラインでの申請、届出を可能としました。また、今年四月からは、愛知県電子申請・届出システムにおいて、納税証明書の交付申請をはじめ、百十六件の手数料等についてキャッシュレス決済を開始したところであります。さらには、プラン策定後の社会環境の変化にも対応して、電子契約を今年十月を目途に導入できるよう、積極的に取組を進めてまいりました。
引き続き県行政の効率化、DXの推進を強力に進め、業務効率化の推進や県民サービスの向上に努めてまいります。
次に、市町村の情報システムの標準化に対する県の支援についてお答えします。
本県では、これまでも、県と県内市町村で構成するあいち電子自治体推進協議会による研修会を通じて、市町村からの相談に個別に対応するなどの支援を行ってまいりました。
加えて、今年度は、本県において、外部コンサルタントと委託契約を締結し、全ての市町村に対して新たな支援を実施いたします。具体的には、各市町村の進捗状況を詳細に把握するとともに、個別のヒアリングによりそれぞれの課題を丁寧に確認した上で、外部コンサルタントの専門的な知見に基づいた助言等を行うこととしております。
情報システムの標準化は、住民サービスの向上のみならず、経費の削減、業務の効率化にもつながることから、引き続き市町村と連携を図りながら、円滑なシステム移行に向けて支援をしてまいります。
続いて、外部人材の活用も含めた県職員のデジタル人材育成についてお答えします。
愛知県職員デジタル人材育成計画では、全職員がDXに係る基本的な知識を有していることなどを目指しており、より多くの職員が参加できる動画視聴を中心とした研修プログラムを用意し、昨年度は延べ四千二百九十一人が受講しました。
また、外部人材の活用については、総務省から、情報通信行政の経験豊富な人材を情報通信(ICT)政策推進監に採用、民間企業等職務経験者を対象とした職員採用試験のICT枠を年二回募集し随時採用、さらには、人事交流による民間企業のデジタル人材の受入れなど、幅広く人材確保に努めております。
今後も、研修内容の充実や研修手法の改善を図るとともに、外部人材の活用を進め、改革意識を持って県行政のデジタル化、DXを推進できる職員の育成確保に努めてまいります。
- 52: ◯県民文化局長(伊藤正樹君) 本県企業の女性登用の向上を図る取組についてお答えします。
内閣府の調査では、上場企業の女性役員の割合は全国平均九・一%に対して、本県は八・一%で、全国二十一位であるなど、本県企業の女性登用は年々改善してはいますが、まだ全国平均を下回っています。
本県では、二〇二一年度にモノづくり企業における女性管理職の育成、登用に向けた取組ガイドを作成し、企業の経営者等にフォーラムで紹介するとともに、本県の女性活躍応援サイトにも掲載をしました。また、昨年度は、県内の女性社員にロールモデルを知る機会を提供するため、あいち女性リーダー講演会を五回開催し、現役の会社役員である十人の女性から、これまでの経験等をお話しいただきました。
今後も、企業の環境整備や女性のキャリア形成などを支援し、県内企業の女性登用が進むよう取り組んでまいります。
- 53: ◯五十九番(丹羽洋章君) ありがとうございました。
まず、職員、教員、警察官の採用、人材育成とDXの推進についてでございます。
少子・高齢化に伴う労働人口の減少が確定的と言える状況でございまして、人手不足ということが早晩、切実な課題となることが見込まれております。本県としましても、今お答えの中でいただいたとおり、人材の確保、育成に一層の工夫を凝らして取り組んでいっていただきますことを要望させていただきます。
DXの推進につきましても、システムで代替できる業務はシステムに委ねる、業務の効率化や省力化を図っていくことは不可避でございます。職員の皆さんの意識改革を含めて、DXの推進を一層加速させていただくことを期待申し上げます。
次に、女性登用につきまして再質問をさせていただきます。
佐々木菜々子副知事が、このたび、愛知県副知事を退任され、七月七日付をもって、国に復帰されるとお伺いしております。
佐々木菜々子副知事におかれましては、一昨年の七月に副知事に就任されて以来、約二年間にわたり、あいち女性の活躍促進プロジェクトチームのリーダーとして、本県における女性の活躍促進について各種事業を精力的に推進するだけでなく、所管する県民文化、環境、福祉、保健医療等を中心とする県政課題に積極的に御尽力いただき、手腕を発揮していただきました。次々と持ち込まれる様々な課題に対して、迅速かつ的確に対応される姿は、県職員のみならず、多くの働く女性に自らロールモデルを示されていたのではないかと感じております。
愛知県のために御尽力いただいたことに、県民を代表してお礼を申し上げますとともに、国に戻られてからのますますの御活躍を祈念したいと存じます。本県発展のために、二年間御尽力賜り、本当にありがとうございました。
そこで、佐々木菜々子副知事にお尋ねいたします。
愛知県の副知事に就任されてからの二年間、これまでどのような思いで女性活躍をはじめとする県政課題に取り組まれてこられたのか、また、これからの愛知にどのような期待をされているのか、お考えをお伺いいたします。
- 54: ◯副知事(佐々木菜々子君) ただいま、丹羽議員より過分なお言葉をいただきまして、また、このような答弁の機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
この二年間、愛知県の副知事として、全ての人が輝く愛知の実現に向けて、女性の活躍促進をはじめ、様々な施策に取り組ませていただきました。これも、大村知事の強力なリーダーシップと御指導、愛知県議会の議員の皆様方をはじめとする多くの関係者の皆様方の御理解と御支援、職員の方々のサポートがあったからだと思っております。誠にありがとうございました。心から感謝申し上げます。
一昨年七月に副知事に就任して以来、あいち女性の活躍促進プロジェクトチームのリーダーを引き継ぎまして、各種事業を推進するとともに、県内各地域の市町村や経済団体、企業、大学、女性団体などを訪問させていただき、多くの方と意見交換する機会をいただきました。県内の経営者の方などとお話しさせていただく中で、これまで積み重ねた働きかけの結果、女性活躍の重要性は経営層の方々にも認識されてきている一方で、愛知県の中でも地域によって女性活躍についての受け止め方、取組の状況は様々であるということを感じました。それぞれの地域の実情を踏まえた上で、女性活躍の重要性を御理解いただき、地域の関係者で御議論を重ねながら、女性活躍をさらに進めていくことが大切であると感じております。
昨年度から、市町村レベルで商工会議所などと連携しながら、地域の中小企業に向けて女性活躍の働きかけを行う取組を始めました。今後は、各地域で女性活躍の輪が広がり、それが愛知県全体の女性活躍につながっていくことを期待しております。
また、この二年の間、中部経済連合会が主催するこの地方を代表する企業や大学等で要職を務める女性リーダーが集まるなでしこの会という会合に定期的に出席させていただきました。女性リーダーの皆様には、県が実施したロールモデルとしての御講演などに御協力いただきましたが、参加者に大変御好評をいただくとともに、エンパワーしていただく、そういう機会になりました。
また、女性リーダーの方々は県外出身の方もいらっしゃいましたが、皆様、口をそろえておっしゃっていたのは、愛知県の住みやすさ、製造業だけでなく農業なども盛んなバランスの取れた愛知県のポテンシャルの高さであり、また、この地域の魅力がもっと全国に伝わってほしい、そういうことでございました。
昨年は県政百五十周年と愛知県にとって記念すべき節目の年に当たり、ジブリパークの開園、国際芸術祭あいち二〇二二など、愛知県の魅力を発信する百五十周年記念事業を間近に見させていただきました。
ジブリパークの開園を機に、これまで以上に多くの方が愛知を訪れることになると感じております。ジブリパークを中心として、愛知の魅力が全国、世界に発信されていくことを期待しております。
また、昨年開催された国際芸術祭あいち二〇二二は、私も何度か会場に足を運びましたが、スティル・アライブのテーマ、コンセプトを踏まえた力強い作品や、愛知ならではのすばらしい作品の数々は、非常に印象的でございました。今後も世界に愛知を発信する芸術祭として発展していくことを期待しております。
所管した事業の中で印象に残っているのは、あいちアール・ブリュット展でございます。あいちアール・ブリュット展では、障害のある方の情熱あふれる作品に触れ、その魅力を大いに感じました。愛知県が、障害のある方をサポートされている関係者の協力を得ながら、着実に積み重ねてきた取組が、今年で十年を迎えます。次の十年に向けて、障害のある方の社会参加と、障害の有無を超えた交流がさらに推進していくことを期待しています。
そして、子供、高齢者、障害のある方、外国籍の方、そして男性も女性も性別にかかわりなく、全ての人々が個性と能力を発揮できる、そういう愛知を実現されていくことを、心から願っております。
私自身、岩手県の出身でありまして、この二年間、初めて愛知県で仕事をさせていただきました。日本を牽引する産業県である愛知県で、副知事として、これまでにない貴重な経験をさせていただきました。来月には厚生労働省に戻りますが、今後も、愛知県での経験を糧に、職務に邁進してまいりたいと考えております。
最後になりますが、大村知事、そして愛知県議会の議員の皆様方のますますの御活躍、御発展を心から祈念いたしますとともに、また改めて感謝を申し上げまして、私の答弁とさせていただきます。本当にありがとうございました。(拍手)
- 55: ◯副議長(いなもと和仁君) 以上で質問を終結いたします。
─────────────
- 56: ◯三十九番(山田たかお君) ただいま議題となっております議案は、審査のため、それぞれ所管の常任委員会に付託されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 57: ◯副議長(いなもと和仁君) 山田たかお議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 58: ◯副議長(いなもと和仁君) 御異議なしと認めます。よって、ただいま議題となっております議案は、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
なお、議案付託表は議席に配付いたしました。
─────────────━━━━━━━━━━━━━━━━━
日程第三 請願(六件)
- 59: ◯副議長(いなもと和仁君) 次に、請願を議題といたします。
本議会に提出されました請願六件については、お手元に配付してあります請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会及び議会運営委員会に付託いたします。
─────────────━━━━━━━━━━━━━━━━━
- 60: ◯四十番(朝日将貴君) 本日はこれをもって散会し、六月二十六日から七月五日までは委員会開会等のため休会とし、七月六日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 61: ◯副議長(いなもと和仁君) 朝日将貴議員の動議のとおり決しまして、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 62: ◯副議長(いなもと和仁君) 御異議なしと認めます。
六月二十六日から七月五日までは委員会開会等のため休会とし、七月六日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時二十八分散会