県政報告
令和元年公営企業会計決算特別委員会
2019年10月17日
(主な質疑)
- 1:【新海正春委員】
決算審査意見書の23ページの事業内容について伺う。
愛知県がんセンター愛知病院は、三河地域におけるがん医療の充実及び愛知県地域医療構想の実現に向けた医療提供体制の確保を図るために、本年4月1日から病院の運営が岡崎市に移管された。
移管に当たっては、愛知県知事と岡崎市長との間で締結された覚書によると、移管の条件として次のように県の負担が示されている。一つ目は、土地、建物、設備等を10年間を限度として無償で貸与すること。二つ目は、無償貸与した建物等の改修または修繕費用を負担すること。三つ目は、医療機器、医療備品等を無償譲渡すること。四つ目は、岡崎市民病院の結核病床の施設整備に要する費用を全額負担すること。五つ目は、結核医療に要する経費を10年間全額負担するということで、県は、がんセンター愛知病院の岡崎市への移管後も、岡崎市への費用負担を通じて地域の医療の確保のために役割を果たしていく。
これは地域住民として大変ありがたいが、人命を預かる病院の移管なので、慎重に行うべきである。昨年度はがんセンター愛知病院にとって、県立病院としての最後の年となった。当初は、患者の予定数を前年と比較して入院患者数は93.1パーセント、外来患者数は87.7パーセントとしていたが、岡崎市への移管直前の昨年度実績は入院、外来患者数が前年度と比較して大幅に減少している。具体的にどのような状況であったのか。
また、職員給与費対医業収益比率が平成28年度、平成29年度は67パーセント程度だが、作年度には91.3パーセントと大幅に上昇している。その理由もあわせて伺う。
- 2:【経営課主幹(経営)】
まず、がんセンター愛知病院の入院、外来患者の状況だが、昨年度の入院患者数は延べ2万2,144人であり、平成29年度の5万774人と比べて2万8,630人の減少、前年度比で56.4パーセントのマイナスとなった。
次に、外来患者数は延べ3万8,196人であり、平成29年度の5万8,489人と比べて2万293人の減少、前年度比で34.7パーセントのマイナスであった。入院、外来を合わせた患者数は前年度と比べて4万8,923人の減少となっている。
これは、昨年度末のがんセンター愛知病院の岡崎市への移管を円滑に進めるため、年度途中の話し合いで段階的に診療機能を岡崎市へ移行するということになったことに伴い減少した。例えば、消化器内科は、昨年6月末で内視鏡による診断治療を中止して、あわせて呼吸器外科も同じく昨年6月末で手術を中止し、岡崎市民病院に患者を紹介している。
そのほか、診療中の診療科でも、入院期間が長期にわたる見込みの患者は、途中での転院は患者にとっても望ましくないため、最初から岡崎市民病院に入院させるなどして対応している。
次に、経常収支の状況だが、今のような取り組みの結果もあり、愛知病院の昨年度の経常収支は9億8,551万円余りの赤字となり、平成29年度と比較すると6億5,131万円余り損失が増加している。
収支をそれぞれ見ると、医業収益は、入院、外来患者数が大幅に減少したことにより、平成29年度と比較して18億3,710万円余りの減収となった。医業費用も医薬品などの材料費や給与費の減少などの影響により、前年度と比較して12億1,296万円余りの減少となった。
また、医業収益が大幅に減少した一方で、年度当初に配置した看護師は年度末まで配置する必要があり、職員給与は医業収益ほど落ちなかったこともあり、平成29年度と比べて昨年度の職員給与費対医業収益比率は大幅に上昇した。
- 3:【新海正春委員】
岡崎市への移管について、患者には、平成31年4月からは岡崎市の所管となることを伝えなければいけないと思うが、入院患者が移管のことを考えて愛知病院を選択しなかったことも患者数減少の原因の一つではないか。
移管について、患者への周知や、看護師の派遣等さまざまな問題があった中で、それらの対応をどのように行ったのか。また、滞りなく行えたのか伺う。
- 4:【経営課主幹(経営)】
がんセンター愛知病院の岡崎市への移管は、昨年3月31日付けで愛知県知事と岡崎市長により移管に関する覚書が締結された後、昨年度4月から愛知病院と岡崎市民病院の職員で構成する会議を定期的に開催するとともに、診療部門や管理部門など、部門別に打合会を開催して移管に向けた協議を行い、準備を進めてきた。
こうした中、消化器内科などの一部診療科は年度途中に機能を移行するなど、段階的に愛知病院の機能を岡崎市民病院に移行する対応も行った。
また、患者や地域住民への周知、案内については、まず病院の移管に伴う診療科の移転などを入院、通院患者へ通知し、岡崎市医師会会員の全診療所への案内を行い、その後、保健所及び消防への周知、町内会での回覧、ホームページへの掲載などの方法で周知を図り、患者が引き続き安心して医療が受けられるように努めた。
次に、医師や看護師を初めとする職員について、岡崎市との協議により、医師は移管時に岡崎市に割愛採用されている。看護師を初め医師以外の医療従事者は岡崎市からの求めにより、県から139人の職員を岡崎市に派遣した。なお、派遣職員の給与については、県から支給するが、その経費は岡崎市が負担した。また、派遣職員のうち、岡崎市への移籍希望のある職員は、2年間の派遣期間を経た後に岡崎市が割愛採用することになっている。こうしたさまざまな対応により滞りなく移管を行った。
- 5:【新海正春委員】
次に、移管に伴う県の負担について伺う。
昨年度、移管に要した費用が幾らで、どのような内容だったのか。また、本年度以降はどれほどの経費を要すると見込んでいるのか。
- 6:【経営課主幹(経営)】
まず、昨年度の移管に要した経費は、岡崎市への移管前にがんセンター愛知病院の老朽化した設備や医療情報システムの改修などを実施しており、費用は5億1,000万円であった。
また、本年度は、結核病床の運営費用で1億7,000万円、岡崎市民病院に整備する結核病床に関する設計費用で3,000万円、旧がんセンター愛知病院の建物、設備に係る企業債償還金や施設設備の修繕などで3億3,000万円、合計で5億3,000万円である。
県負担分の全体額は現時点では確定していないが、本年度の予算から勘案すると結核病床の運営費用で1億7,000万円となっており、これを今後10年間負担するものとして、単純に10倍の約17億円となるが、この額は年度ごとの患者の受け入れ状況によって変動する。
このほか、結核病床の整備費は現在検討中である。また、来年度以降の建物などの改修修繕は、現場の状況を確認しながら必要なものは予算措置する。
- 7:【新海正春委員】
最後に、移管に関する医療機能の再編について伺う。
移管に関する覚書によると、移管後の岡崎市立愛知病院及び岡崎市民病院の医療機能について、岡崎市は愛知病院のがん、結核及び感染症に係る医療機能を引き継ぐとともに、移管後のがん医療機能を岡崎市民病院に集約し、移管後の岡崎市立愛知病院では主に亜急性期医療を担うこととされている。今後、医療機能の再編はどのようなスケジュールになっているのか。
- 8:【経営課主幹(経営)】
再編のスケジュールは、岡崎市が昨年8月に策定した岡崎市病院事業将来ビジョンの中で示されている。がん医療は、本年4月から乳腺外来と緩和ケアを除く機能を岡崎市民病院に移行する一方で、岡崎市立愛知病院で亜急性期医療を開始している。乳腺外来は、来年4月から岡崎市民病院に移行する。
結核、感染症の医療機能は、昨年度岡崎市が策定した基本計画で、市民病院の8階南病棟を改修することとしており、本年度設計を行い、来年度から岡崎市民病院の病床整備工事に着手し、令和3年度中に機能を移行する予定である。
さらに緩和ケアの医療機能は、令和4年度から岡崎市民病院に緩和ケア病棟を整備し、令和5年度中に機能を移行する予定である。こうしたスケジュールで移管5年目には医療機能が再編され、岡崎市民病院事業将来ビジョンに示された姿になる予定である。
- 9:【新海正春委員】
今後も地域医療の確保について、県として必要な支援を継続して実施してもらうことを要望する。
- 10:【川嶋太郎委員】
愛知県病院事業報告22ページの予算の執行状況について、病院事業収益の医業外収益の中のその他医業外収益の執行率が63.1パーセント、病院事業費用のうち医業費用の研究研修費の執行率が69パーセント、退職給付費の執行率が29.1パーセントと低いが、それぞれの執行状況を伺う。
- 11:【経営課主幹(経営)】
まず、その他医業外収益は、がんセンターの研究所における外部機関との共同研究や日本医療研究開発機構等からの公的研究費補助金などの研究補助事務事業による収益のほか、各病院の行政財産使用料や貸付料などを計上している。
今回の不用額2億6,454万361円の主な理由は、研究所の共同研究に係る外部機関からの研究資金が見込みより少なかったためである。
予算では、共同研究について、外部機関からの受け入れ研究資金が多くなった場合に対応できるように収益予算を枠的に計上している。当初予算では2億6,500万円を見込んでいたが、実績は2,581万2,748円となり、2億3,918万7,252円の不用額となった。
次に、研究研修費はその財源について主に受託研究費、外部機関との共同研究費、研究補助事務事業の収益を充てているが、事業収益が見込みより少なく、その収益の財源の範囲内での支出となったため、研究材料費などで2億1,177万3,548円の執行残が生じた。
次に、退職給付費は、年度末に在籍する職員を対象に退職手当を支給するための引当金を計上している。不用額の主なものは、がんセンター愛知病院の約2億8,000万円で、これは主に病院の移管に伴って医師が岡崎市に割愛採用されたことにより退職手当の引当額が少なくなったことによるものである。また、あいち小児保健医療総合センターの約2億円は、心療科、心の心療科が愛知県医療療育総合センターへ移管したことに伴う医師などの異動で退職手当の引当額が少なくなったことによる。こうした理由などにより6億6,900万8,603円の不用額となった。
- 12:【川嶋太郎委員】
研究研修費の執行率が外部からの共同研究がうまく引っ張ってこれなかったのは何か原因があるのか。また、昨年度におけるこれらの予算の執行率は、ほかの年度と比べて多いのか。
- 13:【経営課主幹(経営)】
例年の数字では、それほど変わらない。枠的に多めに予算をとっているが、決算の段階では例年と同額程度の推移と認識している。
- 14:【川嶋太郎委員】
枠で大きくとるのはわからないこともないが、研究施設としての役割が十分に果たせているのか疑問である。
次に、愛知県病院事業報告の26ページの中で、平成29年度と昨年度を比較すると全ての病院で延べ入院患者数が減少しているが、その理由は何か。
- 15:【経営課主幹(経営)】
愛知県がんセンター中央病院では、新入院患者数が平成29年度の1万581人から昨年度は1万849人と268人増加しているが、平均在院日数が12.3日から11.7日に0.6日減少しているため、年間の延べ入院患者は減少した。
がんセンター愛知病院では、岡崎市への移管に向けて消化器内科などの診療機能を年度途中から段階的に岡崎市民病院に移行する中で入院患者数が減少した。
愛知県精神医療センターでは、全面改築にあわせて診療機能の見直しを進めていく中で、病床数を減らしており、昨年2月の全面オープン時に病床数を277床から273床に減らしたことから入院患者数が減少した。
あいち小児保健医療総合センターでは、昨年4月に心療科を愛知県医療療育総合センターへ移管したことに伴う病棟改修工事を10月まで実施した影響などで入院患者が減少した。
- 16:【川嶋太郎委員】
病院として病床数という箱があるわけで、収益をきっちり上げるにはその箱をいかに使い切り、ベッドを稼働させるのかが重要である。そういった観点で、病院事業庁として、持っているものをいかに使い切るのかという発想を持って進めていってほしい。
そこで、一番ポイントになるのは医師の確保である。まず、昨年4月にがんセンター中央病院の手術室が1室ふえたことで手術件数がどのぐらい伸びたのか。また、きちんと手術をやり切るだけの人員の確保はできているのか。
- 17:【管理課主幹(総務・人事)】
がんセンター中央病院では昨年4月に手術室を1室増室することに伴い医師1人と看護師3人を増員し、必要な人員を確保している。また、手術件数は、平成29年度の3,230件から昨年度の3,351件と121件、約3.7パーセント増加した。
- 18:【川嶋太郎委員】
ほかの各病院についても施設整備をこれまでも進めていると思うが、それに伴う人員確保がきちんとされてこそ箱が十分に生かし切れる。
がんセンター以外のほかの病院の医師や看護師など、医療関係の人員の充足状況、確保状況を伺う。
- 19:【管理課主幹(総務・人事)】
まず医師の充足状況については、本年10月1日現在で3病院全体の定数236人に対して13人の欠員となっている。病院別では、がんセンターでは定数129人に対して9人の欠員、精神医療センターでは定数20人に対して1人の欠員、あいち小児保健医療総合センターでは定数87人に対して3人の欠員である。
次に、看護師の充足状況だが、10月1日現在で、この3病院全体では定数876人に対して、産休や育児休業等で実働状態にない人を除いた実労働者数としては871人であり、5人の欠員である。
病院別の内訳は、がんセンターでは定数393人に対して7人の欠員、あいち小児保健医療総合センターでは定数314人に対して2人の欠員、精神医療センターでは定数166人に対して4人の過員である。各病院では看護師の年度途中退職などに備えて年度当初にあらかじめ一定数の過員を配置しているが、現時点では3病院全体で見た場合、欠員状態である。
- 20:【川嶋太郎委員】
その欠員によって収支にどの程度影響が出たのか。また、それに対して今後どのような対策を行っていくのか伺う。
- 21:【管理課主幹(総務・人事)】
欠員による決算への影響は、予算を組む時点で定数を見込んで算出しているので、その分金額に影響しているということはもちろんあるが、具体的な数字は回答できない。
医師の確保対策は、これまで病院事業庁長を初め各病院長や関係診療部長が直接大学医局等に出向いて働きかけを行っているほか、医師の確保にとって重要である病院の魅力向上のための取り組みも行っている。具体的には、がんセンターにおける手術支援ロボット・ダ・ヴィンチや放射線治療装置のリニアックなどの最先端医療機器の導入、がんゲノム医療の推進、あいち小児保健医療総合センターにおける小児集中治療室(PICU)や新生児特定集中治療室(NICU)といった小児救急、周産期部門への対応など、高度で専門的、かつ先進的な医療を提供できる体制を充実・整備してきた。
また、医師の確保にとって働きやすい環境づくりも重要であり、医師の業務負担を軽減するため、2年の初期臨床研修を修了した専門研修医であるレジデントの確保や医師事務作業補助の配置、院内保育所を整備して子育て中の女性医師が安心して働き続けられる環境の整備も行っている。
さらには、医師の初任給調整手当や地域手当の支給割合の引き上げを図るなどして、給与面での改善も行ってきた。そのほか、医師の募集やリクルートに当たっては全国の医学系大学への公募やホームページでの募集に加えて、医師専用の転職有料サイトへの募集登録、学会や講演会等、専門の医師が集まる機会を捉えて個別のリクルート活動も行っている。
次に、看護師の確保対策として、優秀な人材を確保するために、従来は8月から9月ぐらいに実施していた採用試験日程の早期化を図り、本年度は5月に採用試験を実施した。また、より多くの学生に受験してもらうために、病院見学やインターンシップの積極的な実施や大学等での病院説明会への参加、看護大学等での特別講義のほか、試験合格者の辞退防止を図るために、合格者に対して病院の院内誌や看護部長からの手紙等を定期的に送付している。
魅力的な勤務環境の整備として、看護宿舎としての民間マンションの借り上げや、院内保育所の整備なども実施している。また、県立病院を広く知ってもらうために、看護専門誌である看護ナビや新聞広告への掲載、企業展への参加などの取り組みを行っている。
医師の確保及び看護師の確保、ほかの医療従事者の確保は県民の方々に質の高い高度で先進的な専門医療を提供するために必要不可欠であり、今後も積極的に取り組んでいきたい。
- 22:【川嶋太郎委員】
医療の現場なので、数字だけに目を向けるだけではいけないが、どこに問題があるのか、どこに課題があるのかを把握し、今後ともしっかりと取り組んでほしい。
- 23:【黒田太郎委員】
決算に関する附属書の27ページ、長期借入金明細書について伺う。
一般会計からの30億円の借り入れについて、長期資金を調達する場合、企業債も使えたのではないかと思うが、なぜ一般会計から借り入れたのか。
- 24:【経営課主幹(経営)】
30億円の長期借り入れについては、昨年度の決算において資金不足が見込まれ、これを解消する必要があり、安定的な病院運営を図るために一般会計から借り入れを行った。
今回の借り入れは営業運転資金であり、公営企業債の発行が認められる医療施設の建設改良費や医療器具の整備費などの経費には該当しないため、企業債の発行によって賄うことはできなかった。
- 25:【黒田太郎委員】
借入期間が25年間とあるが、なぜ25年間なのか。
- 26:【経営課主幹(経営)】
借入期間は昨年度から25年間で、本年度から6年間元金の返済は据え置かれるが、その後は毎年1億6,000万円ずつ元金を返済する。
これまで順次各病院で整えてきた施設・設備や人員体制、医療機能をフル稼働させるとともに、一層効率的な病院運営に取り組み、経営改善を図ることにより病院運営に必要な資金を確保していくが、今後返済に向けた経営状況の改善の見通しを立てると6年程度かかると見込んだため、返済の据置期間を6年間とした。
また、元金の返済期間については、据え置き後の病院の経営改善の状況を踏まえ、19年間程度の返済期間が必要になると判断し、据置期間6年間と合わせて借入期間を25年間とした。
- 27:【黒田太郎委員】
次に、利率について伺う。
この30億円の借り入れについて、年利0.5パーセントと記載されている。財務省は同じ時期の25年物の国債の利率は0.432パーセントと公表しているが、これと比べて適正だったのか。
- 28:【経営課主幹(経営)】
予算編成中の昨年12月12日時点の財政融資基金の25年貸付金利を参考に、一般会計と病院事業庁との間で協議して、貸借契約を結んだものであり、病院事業庁としては適正なものと考えている。
- 29:【黒田太郎委員】
次に、決算に関する附属書23ページに縁故資金との記載があるが、この縁故資金とは何か。
- 30:【経営課主幹(経営)】
地方債計画の資金区分上、民間等から借り入れる地方債のうち、指定金融機関やそれ以外の銀行、信用金庫等から借り入れるものを銀行等引受債と呼んでいる。縁故資金とは、かつて縁故債と呼ばれていた、銀行等引受債で借り入れた資金の名称である。病院事業庁の場合、縁故資金は全て三菱UFJ銀行からの借り入れである。
- 31:【黒田太郎委員】
決算に関する附属書の26ページについて、例えば本年3月29日発行の企業債は縁故資金にて1億6,000万円強調達していて、その利率が0.038パーセントとなっている。財務省が公表している同じ時期の5年物の国債の利率は、マイナスの0.202パーセントであり、その差は0.240ポイントあるが、縁故資金の利率0.038パーセントは適正だったのか。
- 32:【経営課主幹(経営)】
縁故資金の利率は、同月・同年限の市場公募地方債の利率や発行に要するコストを勘案して、財務資金室において銀行と交渉して決定しているものと伺っている。企業債と同時期の本年3月に市場公募の方法により発行された5年物の地方債については、応募者利回り0.020パーセントとなっている。
ただし、市場公募の方法により地方債の発行を行う場合には、発行時の初期費用として証券会社に支払う引受手数料、管理手数料等の手数料が必要となるので、それらの手数料の1年当たりのコストが0.05パーセント程度必要であり、コストを含めた利率は0.07パーセント程度となる。このような市場公募による調達と比べても0.038パーセントについては適正な水準と考えている。
- 33:【黒田太郎委員】
先ほどの25年資金とした30億円の場合、同じ時期の国債の利率との差が0.068ポイント、今の5年物の地方債との差が0.240ポイントとなる。通常リスクプレミアムということになると借入期間が長期になるほど利率が高くなるかと思うが、この点について説明してほしい。
- 34:【経営課主幹(経営)】
地方債の利率の設定について、一般的には無リスク資産と考えられる国債利回りを基準として、信用リスク、流動性リスクなどのリスク分だけ利回りを上乗せして設定する。しかしながら、近年のマイナス金利政策の導入に伴い、マイナス利回りが常態化した年限では、標準金利としての国債の指標性が乏しくなり、投資家の判断基準が利回りの絶対値へと変化することとなり、国債との実質の利率差が大きく広がる。
本年3月の金利水準は、5年物国債については大きくマイナス圏を深掘りしている状況である。このような金利水準を受けて、国債との利率差の比較においては5年物の利率差のほうがかなり大きくなっているが、それぞれの資金について適正な発行水準であったと考えている。
- 35:【黒田太郎委員】
最後に、事業会計として、資金調達コストを下げるためにどのような努力をしているのか伺う。
- 36:【経営課主幹(経営)】
これまでに短期の借入金を調達していたことはあるが、その場合には銀行3社から聞き取りを行って借入利率が一番低い銀行から資金を調達している。また、長期の企業債の借り入れについては、財政融資資金からの借入利率が金融機関よりも低いことから、原則財政融資資金で借り入れている。
なお、民間資金での借り入れは、総務局の財務資金室に金融機関との条件交渉を依頼している。財務資金室は県庁内の県債発行事務を一元化しているため、病院事業庁単独で条件交渉をする場合と比べ低い利率で借り入れをしている。
- 37:【黒田太郎委員】
民間に準じて厳格な経営が求められる中で、本業の損益である医業損益が68億円近い赤字となっている。これは一般会計からの負担金が入った上でこの数字である。
本業についてもいろいろ努力していることは承知しているが、本業がこうした状況であるだけに、今以上の資金調達コストの引き下げ努力をお願いしたい。
- 38:【塚本 久委員】
決算審査意見書3ページに、一層の経営改善に努めるよう要請が出ているが、それに向けての具体的な対策を伺う。
- 39:【経営課長】
本年度の決算については、病院事業全体で赤字が増加しているが、愛知病院の移管の分を除くと全体としては赤字は縮小している。各病院それぞれで状況を踏まえて対応していく必要がある。がんセンター、精神医療センター、あいち小児保健医療総合センターそれぞれについて、患者の確保が一番であり、患者の確保をしっかり行いながら、入札方法や仕様の見直しなどを行って費用も抑えて、収益、費用の両方から経営改善を図っていく。
- 40:【塚本 久委員】
問題は病院と研究所の両方があるため、収支を改善していくことは難しいが、医師やほかの職員一人一人がコスト意識を持って、業務に取り組んでいくことが大事である。
昨年の公営企業会計決算特別委員会で、病院事業庁長は経営改善に向けて、新しい患者の確保、診療の質の向上、入院の収益に直結する外科手術件数の増加を図り、そのためにがんセンターにおけるがんの5年生存率が高い数値であるとPRしていくと言っている。
そこで、今のがんセンターにおける5年生存率の割合はどれくらいか伺う。
- 41:【がんセンター病院長】
5年生存率については、トータルで67パーセントから68パーセントである。多少、年によって前後することもあるが、全国平均に比べて高い値になっている。
患者はいろいろな情報を見ているので、がんゲノム医療拠点病院を取得するなど、できるだけ新しい医療を取り入れて、県民に還元する形で、研究所と病院が一体となってPRしていく。また、患者の予後をもっと改善する試みは引き続き継続していく。
- 42:【塚本 久委員】
現在、厚生労働省に特定機能病院の承認を申請しており、大学病院に匹敵するような専門性の高い病院を目指しているとのことだが、その進捗状況を伺う。
- 43:【がんセンター病院長】
特定機能病院とは、高度医療の提供、開発、そして研修する能力がある病院である。医療法で定められており、4月現在では医学部の附属病院が79施設、特定の領域に特化した専門病院が7施設、合計86施設承認されている。
数年前から特定機能病院の取得に向けて取り組んでおり、昨年、厚労省に申請書を受け取ってもらった。今、社会保障審議会の医療分科会で既に3回審議が行われ、施設訪問も昨年受けた。現在、継続審議中である。
現在がんセンターでは、愛知県がんセンター医療安全改革実行プランを設定している。昨年医療法が変わり、特定機能病院は医療安全が非常に重視されたので、医療安全を重視した改革を実行していく。
一方で、公益財団法人日本医療機能評価機構という第三者機関による特定機能病院に特化した一般病院3の認定を受けるよう指導されており、来年2月に受ける予定である。
医療安全改革実行プランについては、着々と準備している。第三者機関の認定を受けて、その結果を来年度早々に再度厚生労働省に持っていき、医療分科会で審査を受け、できれば来年度早急に特定機能病院の認定をとりたい。
ただし、医療安全改革実行プランも医療のことだけではなく、メディカルエンジニアリングや薬剤師といった医療従事者の配置状況など、非常にハードルが高いが特定機能病院の認定を取得したい。
特定機能病院を取得するメリットは、最高水準の医療安全のもとでがんの医療技術を開発できたり、それを患者に提供し、研修できたりすることを国に認めてもらう点である。
特定機能病院の取得と、がんゲノム医療の拠点病院には非常に力を入れており、がんセンター自体が病院の研究所とともに発展していくのに不可欠である。
- 44:【塚本 久委員】
特定機能病院の認定を受けることによって収益はふえるのか。
- 45:【がんセンター病院長】
診療群分類包括評価の点数が変わることなどによって、2億円から3億円程度収入がふえると見込んでいる。
- 46:【塚本 久委員】
来年の2月にまた新たに申請を行うと思うが、承認の基準や制度の位置づけなどが明確ではないと言われており、当面の間は新たな承認は見合わせることになっていると聞くがどうか。
- 47:【がんセンター病院長】
かなりハードルは高いが、先ほど説明した医療安全改革実行プランと、特定機能病院に匹敵する病院との認定に向け取り組んでいく。
- 48:【市川英男委員】
大学病院は総合病院だが、がんセンターはいろいろな持病を持つ方が来院したときどう対応するのか。
- 49:【がんセンター病院長】
がんセンターの医療が大学病院に負けているわけではない。特定機能病院取得の基準について、集中治療室、医療安全や感染対策、医療機器管理など総合的な力をもっと要求されている。がんの治療はもちろん一流だが、今まで医療従事者の人員はぎりぎりの状況でやってきたので、医療安全等についてもっと万全な体制を整えないと特定機能病院として認められない。
併存疾患が重篤ながん患者は、がんセンターでの受け入れが難しい場合がある。がんの治療は一流だが、心臓、腎臓に持病がある人や多臓器疾患を持つ人は外来来院時に診察・検査をして、他施設へ紹介しており、やむを得ないと思っている。
- 50:【市川英男委員】
公営企業会計決算審査意見書の5ページから6ページの県立病院中期計画2017の進捗状況は、19項目の主な成果指標のうち7項目の指標が昨年度に目標を達成したとなっている。12項目の指標は達成していないが、それぞれの指標の目標達成度は現在どんな状況か伺う。
- 51:【経営課主幹(経営)】
がんセンター中央病院では、治験件数についての目標が172件のところ実績が196件となり目標を達成した。病床利用率や新外来患者数及び手術件数は計画の患者数を確保できなかったため目標に届かなかったが、いずれも目標に対して9割を超える達成率である。
がんセンター研究所では、学会・学術会議発表件数や外部との共同研究数など、全ての成果指標について目標を達成した。
がんセンター愛知病院では、本年4月の岡崎市への移管に伴う患者数の減少などにより、全ての成果指標で目標を達成できなかった。
精神医療センターでは、医療社会事業相談件数の目標を達成したほか、平均在院日数は達成率が99.5パーセントとほぼ計画どおりとなった。このほか、病床利用率や新外来患者数は計画の患者数を確保できなかったため目標に届かなかったが、目標に対して8割を超える達成率である。
あいち小児保健医療総合センターでは、新外来患者数と緊急入院患者数の目標を達成したほか、手術件数は達成率が98.3パーセントとほぼ計画どおりとなった。このほか、病床利用率は計画の患者数を確保できなかったため目標に届かなかったが、目標に対して8割に近い達成率である。
こうした病床利用率など、主な成果指標については、経営に直結する指標であるので、目標達成に向けて患者数の確保などにしっかりと取り組んでいく。
- 52:【市川英男委員】
がんセンター研究所では、学会・学術会議発表件数や外部との共同研究について計画目標を達成したとのことだが、どういう内容になっているのか。
- 53:【がんセンター総長】
がんセンター研究所での研究成果は、愛知県発の世界に向けて発信するエビデンスとして、英語の原著論文で昨年度は96編を数えている。そのような論文の中には世界のトップレベルの研究機関に伍して、日本を代表する形で国際コンソーシアムに参画して最先端の成果を上げたものなどが含まれる。また、日本癌学会等においても非常に活発な発表をしている。
がんセンター研究所は2017年度に全面的に再編を行い、従来の8部門を12部門に見直して、国内外から気鋭の分野長を招聘してきており、10月1日にも新しい分野長が1人着任している。これによって、これまでの基礎研究に重きを置く研究所から基礎と臨床をつなぐ、いわゆる橋渡しの研究に大きくかじを切るとともに、病院と研究所が一体となった研究を強力に推進している。
例えば、免疫細胞ががん細胞を攻撃する目印となるがん化に伴う遺伝子変異に起因したネオアンチゲンに対するワクチン療法、遺伝子を改変して攻撃力を強化した免疫細胞を体外でふやして体内に戻すCAR─T細胞療法などのがん免疫治療法の開発、あるいは分子標的薬に対する治療抵抗性克服法の開発、血液バイオマーカーによる早期診断法の開発、ゲノム解析に基づく個別的ながん発症リスクの評価法の開発やがん関連情報のビッグデータ解析に基づくがん予防研究等を推進している。
- 54:【市川英男委員】
がんセンターでの取り組みは国内でどういった評価を得ているのか。
- 55:【がんセンター総長】
がんセンターは、国立がんセンターが1962年に設立されたのに続いて1964年に設置され、国立がんセンターや大学病院とともに最先端のがん研究や医療をリードしてきた。がん研究の面での東海地方のメッカと言えば当センターの研究所のことであり、名古屋大学を初めとする県内の4大学の医学部でがん研究に携わる教授たちの多くは当センターの研究所で育ったというゆかりがある。
我が国のがん研究にかかわる中心的な学会は日本癌学会だが、その中心をなす評議員には当センターから13人が選出されており、これは、名古屋大学と同数であり、名古屋市立大学や藤田医科大学の3倍を超えている。こうした高い評価の中、昨年には知事と名古屋大学総長によって名古屋大学医学系研究科と愛知県がんセンターの包括連携協定が結ばれ、全分野長が名古屋大学の博士号の指導教授となった。
医療の面でも、肺がんや大腸がんなどの薬物療法において、全国的な共同研究グループを率いて世界レベルのエビデンスを発信できる実力を持っており、がんにかかわる新薬の開発を行うことにおいて、県内のどの医科大学、医療機関と比べても圧倒的に貢献している。
近年進みつつあるゲノム医療の臨床導入においても、がんセンターはがんゲノム医療拠点病院に指定されたが、県内には中核病院に指定されている名古屋大学病院以外で拠点として指定されている病院はないため、県内の4大学医学部と伍している。あるいはそれ以上の評価を受けていると言える。
こうしたことからも、当センターは病院と研究所をあわせ持ついわゆる総合がんセンターとして、国内では国立がん研究センター、有明がんセンター並び、国内の3大がんセンターの一つである。このことが世間で余り認知されていないのは私たちの見える化に対する努力不足である。いかに高いレベルで医療と研究を進めているのかをもっと多くの人に知ってもらえるよう、一層努力していく。
- 56:【市川英男委員】
愛知県が誇れるがんセンターであってもらうともに、我が国を代表するがんセンターであることをいろんなところで発信できるような仕組みを検討してもらいたい。
次に、全体の経営収支について、がんセンター愛知病院の岡崎市への移管の準備を進める中での患者数の大幅減少、収益減少により、昨年度の計画の目標である病院事業全体の経常黒字は達成していない。
昨年度はあいち小児保健医療総合センターの収支改善は図られてきているが、がんセンター中央病院、精神医療センターの収支が悪化している。また、昨年度末には一般会計から30億円の長期借り入れを行っており、今後の病院経営に課題がたくさんある。その中で平成29年度からの4年間の中期計画において、ちょうど折り返しの時期でもあるので、経営状況をどのように考えていて、どのように改善に向けて取り組んでいるのか伺う。
- 57:【経営課長】
昨年度の決算では、病院事業全体で平成29年度の7億1,000万円の赤字から昨年度は11億8,000万円という赤字に拡大している。このうちがんセンター愛知病院の移管に要した費用を除くと、平成29年度は3億7,000万円の赤字、昨年度は2億円の赤字となり、全体では赤字幅が縮小している。
これは主にあいち小児保健医療総合センターの収支改善によるものであり、救急棟の整備以降、PICUの運用病床をふやすなど、収益増加に取り組んできた成果が出ている。
今後の病院事業全体の経営の見通しは、本年度の収益状況を毎月確認しているが、前年度の実績を上回って推移してきている。引き続き医師の確保や老朽化した施設、設備の更新などの課題もあり、予断を許さない状況である。
また、昨年度末に借り入れた30億円の返済を見据えて経営改善を図っていく必要がある。今後の経営改善については、病院ごとの状況を踏まえて取り組みを進めていく。
まず、がんセンターでは新規患者の確保、患者数の増加が重要である。このため、病院長や診療部長による開業医への訪問のほか、医療関係者を対象とした医療連携学術講演会の開催などによって紹介患者の増加を図っていく。
次に、精神医療センターでは、児童青年期部門の体制充実による入院、外来患者の増が重要である。これについては、本年の4月から児童青年期の医師をさらに1人確保したところであり、今後とも児童青年期の専門デイケアや入院患者数の増につなげていく。
最後に、あいち小児保健医療総合センターでは、特に小児医療の三次救急の中核的拠点として救急患者の増加を図ることが重要である。PICUなどの稼働をふやすほか、県内各地の救急救命センターを訪問して小児センターの治療実績をPRし、受け入れ患者を増加させることにより収益増につなげていく。
こうした収益確保とともに経費の削減にも取り組み、収益、費用の両面から中期計画の目標である黒字化に向けて、しっかりと経営改善に努めていく。
- 58:【市川英男委員】
医師の欠員や不足は、しっかりと改善してほしい。いろいろな研究成果のことを考えると、なぜ医師不足になるのか不思議である。これからの時代は、小児医療、精神医療も重要になってくるので、積極的な取り組みを要望する。
- 59:【松本まもる委員】
公営企業会計決算審査意見書の4ページについて伺う。
医業未収金の問題については、一生懸命努力しているが、原因がわからないと解決しようがない。
まず、現在の未収金の発生理由と状況を教えてほしい。
- 60:【経営課主幹(経営)】
昨年度末現在の過年度医業未収金の金額は、未納となっている診療費等のうち1年以上未払いのものであり、1億951万1,827円となっている。
次に、昨年度末の医業未収金の発生理由については、理由別の内訳を金額ベースの構成率で説明すると、事業不振、失業、病気治療、借金、その他収入の減からなる生活困窮によるものが54.8パーセントと全体の半数以上を占めている。
残りは納入義務者が行方不明となっているケースや、本人死亡に当たり相続人が相続放棄したケースのほか、その他として本人の居場所、連絡先は確認できているが、本人と連絡がとれないために状況が確認できないケースもある。
- 61:【松本まもる委員】
未収金を発生させない事前の対策が一番大事であるが、何か具体的な対策は行っているのか。
- 62:【経営課主幹(経営)】
未収金は早期に回収することは言うまでもないが、発生防止が最も大切であり、各病院における未収金対策会議や未収金発生防止対策・回収対策ワーキンググループ会議などの各種会議において未収金対策の定期的な進行管理のほか、未収金発生事由の分析による具体的な対策の検討、情報交換などを行い、病院全体で取り組んでいる。
具体的には、医師による患者自己負担の概算金額の説明、事務職員や医事業務委託業者による入退院時及び毎月の定期請求時における支払い方法の説明、ケースワーカーによる各種医療費の補助制度、貸付制度の案内などを行っている。
また、計画的な退院を徹底しており、特に土日退院の場合については金曜日までに会計処理を行うなど、退院時に看護師は支払い手続を済ませていることを確認した上で患者を退院させるなど診療部門と事務部門との連携強化を図っている。
さらに、支払いに当たっては、クレジット払い制度を平成18年度から導入しており、患者の利便性を高めている。
- 63:【松本まもる委員】
未収金の回収についてどのような工夫をしているのか。
- 64:【経営課主幹(経営)】
医業未収金の回収対策は、各病院において来院の都度、窓口での請求を行うとともに、来院予定のない患者の場合は、2カ月から3カ月をめどとして職員が電話、文書による督促を行っている。
また、本人に支払い能力がないような場合には家族など連帯保証人に請求するとともに、本人が行方不明などになっている場合には住民票を請求して所在を確認し、さらに請求をしていくなど、病院としてさまざまな努力を行っている。
さらに先ほど未収金の発生理由でも説明したように、経済的な要因も数多くあるので、支払い方法については相談に積極的に応じており、分割納入の便宜を図るなど、本人、家族の支払い能力に応じたきめ細やかな対応を行っている。
こうした職員による取り組みに加えて、回収率の向上のために平成22年度から法律事務所に回収業務を委託している。
- 65:【松本まもる委員】
委託業者に回収させているので、成功報酬等を支払っているかと思うが、そのようなお金を発生させずに回収できるのが一番である。
1億円という多額の未収金が発生している以上、毎年同じような質問を私たちがしなくていいように、もう少し未収金の金額が減少していくように努力してほしい。
- 66:【石井芳樹委員】
愛知県病院事業報告の22ページの病院事業収益について伺う。
病院事業収益は、予算額が約443億円に対して決算額が393億円である。患者が減ったためとのことであったが、なぜ患者が減ったのか。
- 67:【経営課主幹(経営)】
病院事業収益の決算額は393億2,409万余円であり、予算額443億896万余円と比較して、49億8,486万余円、11.3パーセントの減収となっている。
減収の主な要因は、患者数の減少による入院患者の減による金額が36億3,256万余円、外来収益の減による金額が7億9,064万余円である。これは入院・外来を合わせて、延べ患者数を71万3,617人と見込んでいたが、がんセンター愛知病院の岡崎市移管に向けて、順次、段階的に診療機能を移行する中で患者数が大幅に減少したことなどにより、病院全体で60万3,691人となったためである。
原因はさまざまなものがあり、しっかり分析をしていかなければいけない。
- 68:【石井芳樹委員】
岡崎市移管だけではなく、愛知県精神医療センターもあいち小児保健医療総合センターも患者数が減っていたとのことであるが、根本的に何か問題があると思うので、ぜひ来年度に向けてしっかりと原因究明をしてもらいたい。
次に、愛知県病院事業報告の24ページについて伺う。前年度の決算と比較して医療従事者が減少しているにもかかわらず、給料と手当等の額が1億2,000万円増加している。先ほど医師不足は13人という説明であったが、それは今現在の数であり、決算当時はたしか29人であったかと思う。医師、看護師を含め多くの医療従事者が減っているにもかかわらず、給与と手当がふえているのはなぜか。
- 69:【経営課主幹(経営)】
昨年度末の職員数については、平成29年度と比較して減少している。それに伴い、給与、手当等が減少しているが、その一方で、昨年度は職員の給与改定やがんセンター研究所における医師、研究員の初任給調整手当の増額も行った。そのほか、職員の定期昇給による増加などもあり、差し引きとして、給与、手当等の額は1億2,042万円増加している。
- 70:【石井芳樹委員】
愛知県病院事業報告の25ページにある未収金は、49億円になっている。先ほどの説明では1億951万1,827円だったと思うが、この差は何か。
- 71:【経営課主幹(経営)】
昨年度末における未収金総額は49億786万余円であり、このうち昨年度に調定を行った医業未収金総額は47億5,371万余円ある。このように多額の未収金となるのは、一般会計では5月末までを出納整理期間としているのとは異なり、公営企業会計では出納整理期間が存在しないため、3月末までに調定を行ったものは全て未収金となるためである。
大半は、本年2月、3月診療分に関する国民健康保険、社会保険など、保険者団体への診療報酬請求分であり、診療報酬の受け入れが2カ月おくれとなっているので、事務手続上、年度をまたいだ入金となる。これについては、本年7月末までにほとんど収納している。
このほか、患者個人の診療費等で1年以上未払いとなっているものを過年度未収金として整理しており、昨年度末現在で1億951万1,827円となっている。
- 72:【石井芳樹委員】
1億円という金額は他県と比較してどの程度のものなのか。
- 73:【経営課主幹(経営)】
本県と同様に、専門的医療への機能特化を図っている群馬県、埼玉県、神奈川県の各県の昨年度末の過年度未収金を比較すると、群馬県は5,148万6,000円、埼玉県は2億2,571万2,000円、神奈川県は2,661万2,000円となっている。
各県の病院の収益規模などが異なるので、過年度未収金を入院収益と外来収益の合計額に対する割合で比較すると、愛知県は4.9パーセントのところ、群馬県は2.1パーセント、埼玉県は7.8パーセント、神奈川県は1.0パーセントとなっており、県によって状況は異なっていると分析している。
- 74:【石井芳樹委員】
過年度未収金は、貸借対照表では負債の部ではなく資産の部に含まれるので、ほぼ100パーセント近く回収していかないと、貸借対照表上よくない。平成29年度の過年度未収金は1億円で、昨年度も1億円である。未収金の時効は3年であり、どこかで不納欠損処理をしていると考えられるが、ここ数年の不納欠損処理の件数と金額はどのぐらいか。
- 75:【経営課主幹(経営)】
不納欠損処理の件数及び金額は、昨年度においては26件、377万4,405円を不納欠損処分とした。未収となってから3年が経過したもののうち、納入義務者の行方不明などで納入義務者に接触することが事実上不可能となったものを中心に不納欠損処理を行っている。
最近3年間における不納欠損処理の件数・金額の推移だが、平成28年度は29件で171万5,000円、平成29年度が27件で414万1,924円、昨年度は26件で377万4,405円となっている。
今後も適切な債権管理を行うとともに、過年度未収金の回収に向けて、しっかりと取り組んでいく。
- 76:【石井芳樹委員】
不納欠損処理の金額が少ないのは、時効が停止しないように内容証明で送ったり、一部返済してもらったりとさまざまな努力をしているからだと思うので、引き続きしっかり対応してほしい。
次に、愛知県病院事業報告の24ページにおける材料費について伺う。収支を見ると、人件費が半分で、材料費が3割となっており、県立病院の事業は大体その8割かと思うが、4病院の医業収益に対する材料費の比率はどうなっているのか。また、他県の病院と比較してどのような状況か。
- 77:【経営課主幹(経営)】
昨年度の医業収益に対する材料費の比率は、がんセンター中央病院が43.6パーセント、がんセンター愛知病院が35.7パーセント、精神医療センターが12.7パーセント、あいち小児保健医療総合センターが27.4パーセントである。
他県の病院については、本県と病床数が同程度の病院で比較すると、がんセンター中央病院の43.6パーセントに対して、埼玉県のがんセンターは38.9パーセント、兵庫県のがんセンターは44.8パーセントとなっている。がんセンター愛知病院の35.7パーセントに対しては、群馬県のがんセンターは40.3パーセント、栃木県のがんセンターは27.6パーセントとなっている。精神医療センターの12.7パーセントに対しては、三重県のこころの医療センターは8.5パーセント、京都の洛南病院は11.5パーセントとなっている。あいち小児保健医療総合センターの27.4パーセントに対しては、埼玉の小児医療センターは28.4パーセント、兵庫県のこども病院は19.1パーセントとなっている。
4病院とも他県の病院と比較して、特に比率が高い状況ではないし、病院ごとの比率が異なることについては、材料費の多くを占める薬品の使用状況によるものと考えている。
- 78:【石井芳樹委員】
少しでも安い価格で薬品を仕入れることで材料費は下がっていき、国の指針でも一括で購入するように要請されているかと思うが、本県における薬剤や診療材料の購入並びに管理はどのように行っているのか。
- 79:【経営課主幹(経営)】
薬品については、各病院の薬剤部において、使用状況、在庫状況を確認し、電算システムに入力し、事務部門で確認した上で発注している。薬品は、薬剤部に入庫し、在庫として扱うものや、病棟等へ払い出しされるものとして出庫する。
診療材料についても、各部門で電算システムに入力したものを事務部門において確認した上で発注し、事務部門で納品を確認し、各部門に払い出しており、過不足がないように努めている。
また、特に購入金額が上位にある医薬品の購入については、病院間で共同で入札を実施し、コスト削減に取り組んでいる。さらに、入札では各病院において、全国の病院の購入単価が比較できるベンチマークシステムを活用して適正な購入予定価格の積算を行うとともに、業者との価格交渉において、会計事務職員だけではなく院長を初め幹部職員も参加することで、より安価な医薬品等の購入に向けて病院全体で取り組み、材料費の削減に努めている。
- 80:【石井芳樹委員】
もう一つの材料費削減の方法は後発医薬品の採用であり、ある記事には2020年秋口までに後発医薬品の使用率を80パーセントにするようにとの記載があったが、本県の県立病院における後発医薬品の使用率はどれくらいか。
- 81:【経営課主幹(経営)】
後発医薬品の比率については、昨年度の状況は、後発医薬品の使用数量を、後発品のある先発品の使用数量に後発医薬品の使用数量を加えたものを母数として割った数量ベースでの比較では、がんセンター中央病院が84.8パーセント、精神医療センターが48.4パーセント、あいち小児保健医療総合センターが80.5パーセントであった。
- 82:【石井芳樹委員】
精神医療センターの割合が小さい理由は、後発医薬品が少ないからか。
- 83:【精神医療センター院長】
さまざまな要因があるが、一つは、統合失調症の人に使われる抗精神病薬の新薬などで、まだ先発品しか開発されていない医薬品が多いことである。もう一つは、先発品から後発品に切り替えると、医療費は下がるが、後発品より先発品を使用したほうが薬価差益が高い医薬品が多いためである。薬価差益と社会的医療費の軽減をてんびんにかけながら、ある程度薬価差益が得られる場合は、先発品を使っている。
- 84:【石井芳樹委員】
次に、使用期限が切れた医薬品の処分である薬品ロスの割合はどれぐらいあるのか。
- 85:【経営課主幹(経営)】
薬品のロスの発生状況については、各病院の薬剤委員会で管理しており、有効期限が切れそうな薬品は、院内に積極的に使用するように伝達して、できるだけロスのないように努めている。それでもやむを得ずロスが発生したものが、昨年度は、がんセンター中央病院で201万9,030円、がんセンター愛知病院で122万1,191円、精神医療センターで23万5,013円、あいち小児保健医療総合センターで147万9,287円、合計495万4,521円となっており、薬品使用料の91億6,589万1,030円に対して、0.05パーセントとなっている。
今後とも薬品ロスがないように、薬剤委員会等でしっかりと管理していく。
- 86:【石井芳樹委員】
次に、決算審査意見書の6ページでは、精神医療センターの平均在院日数の目標が95日となっているが、8年ほど前は平均在院日数が数年間200日を超えていた記憶がある。この95日という目標はどのように縮減してきたのか。
- 87:【精神医療センター院長】
8年から10年前の平均在院日数は200日程度であったが、目標として95日を設定し、実際に95.5日を達成した。平成5年は平均在院日数が650日ということで、この25年で7分の1程度に減ってきた。かつては一旦病院に入ると5年、10年となかなか退院できず、長期で入院する人が多数いたが、病院から地域へ戻し、地域で暮らしていくことが精神患者の機能回復には最も有効であるという最近の精神医療の国の政策に基づいて取り組んできた。また、病棟の機能分化を進めて救急病棟や急性期病棟をつくり、一定の期間に退院させないと診療報酬がカットされるという診療報酬上の決まりを満たすように、入院したら直ちに退院に向けた障害を一つ一つ取り除いていくことを多職種で行い、短期退院を実現している。この二つから平均在院日数が減ってきた。
- 88:【石井芳樹委員】
診療報酬上は在院日数が長くなるほど点数が減ってしまうので、在院日数が短いほど病院の利益になるが、一歩間違うと民業圧迫や、ほかの病院でもいいのではないかという話にもなりかねない。重度でなかなか入院ができない方を受け入れることが公立病院の役割であると思うが、民間の病院との役割分担は、今後どうしていくのか。
- 89:【精神医療センター院長】
県内でただ一つの県立の精神科病院としての役割は十分に全うしていかなければならない。
例えば、ほかの病院で治療や処遇に困難を来している人の入院依頼を受け入れる、入院に際して他病院が引き受けない方を受け入れる、あるいは、救急医療のシステムにおいて、当番病院が引き受けられない場合に受け入れるといったことは、公立病院でやらなければならない仕事であり、取り組んでいる。そうした依頼を引き受けつつ、長期入院の人を地域で支援できるケアプラン、その体制をつくり地域に戻すことを両立していく。
長期入院が前提となる患者の受け入れもあるので、一般病棟については経営的には決してよいものではないが、県立病院の役割としてしっかり残して、ある程度長期にかかってもきちんと地域に戻せるよう取り組んでいる。
そういう長期入院の患者を、民業圧迫を避けるために他病院に転院させる話もあるかと思うが、ほかの病院での対応が難しいために当センターに回ってきた患者を他病院へ受け入れてもらうのは難しい。
- 90:【石井芳樹委員】
国からは、新公立病院改革プランの中で公立病院も黒字にすべきであると言われる一方で、診療報酬が下がってでも公立病院としてしっかりと患者を受け入れなければならず、経営と公助のバランスをとりながらやっていかなければいけない。今後とも県民の安心と安全のため取り組んでもらいたい。
次に、あいち小児保健医療総合センターについて伺う。
病床の利用率を見ると、60パーセントを超えるぐらいである。病床の利用率を上げるためには新規患者の増加や平均在院日数の短縮が不可欠であるが、現状はどうなっているのか。また、今後どのように取り組んでいくのか。
- 91:【あいち小児保健医療総合センター長】
昨年度の病床利用率の低下に関しては、一番大きな理由は、昨年4月に心療科の外来と入院部門全てが旧コロニー中央病院に移管したことである。それにより、昨年度は4月から11月まで、病棟改築のため約3分の2が使えない状況であった。平成29年度には心療科が3,500人ほどの入院患者がいたがそれがゼロになった。61.1パーセントという低い利用率になった一方、昨年度の経営が改善している。その理由としては、平成28年度に救急棟をつくってPICUやNICUを増床してきたことによって、非常に単価の高い患者が増加し、全体の収入が上がり経営が改善された。
昨年12月には旧心療科病棟の改築が終わり、一般小児患者が入院できるようになり、本年度は4月から9月までの実績で病床利用率が63.8パーセントになっており、昨年度実績と比べて約2.7パーセント上がっている。小児病院は休みに治療を希望する患者が多く、夏休み、冬休み、春休みは非常に利用が多くなる。本年8月の稼働率は平均76.9パーセントで、日によっては94パーセントと、ほぼ満床の状況であった。今後、改築が終了し、すべての病棟が整備されたので、徐々に病床稼働率・利用率が上がっていくと考えている。しかし、PICUやNICUがまだ完全な増床に至っていないので、そこを増床することにより、単価の高い患者をふやし、さらに経営の改善に努めていく。
- 92:【石井芳樹委員】
資料を見ると、平成29年度の病床利用率が62.5パーセントであり、国の新公立病院の改革プランでは、病床利用率が70パーセント未満の病院については、病床数の削減など抜本的な見直しを検討すべきであるとあるが、本県では今後どうしていくのか。
- 93:【あいち小児保健医療総合センター長】
当センターは小児の3次救命救急センターであり、昨年度の平均在院日数は約5日と非常に短い。また、PICUやNICUの特別加算病棟を初め、産科を除く小児病棟では医療密度が高度な最も点数の高い小児医学管理料1という施設基準をもらっており、病院全体が高度急性期病院である。今、地域医療構想に基づいてさまざまな改革が行われているが、当センターの医療圏である知多半島医療圏に関しては、高度急性期病床はまだ少なく、特に小児病院という特殊性、高度急性期病院であることで今後も地域医療に貢献していきたい。
当センターでは、学校の夏休み、冬休み、春休みの時期はほとんど満床になってしまうことも多く、県民が希望したときに入院できること、知多半島医療圏の病床配分を考えると、病床数の減少などは考えていない。
しかし、病床稼働率がこのままでいいとは考えていないので、休日に低下する病床稼働率をなるべく下げないようにする、あるいは、新規入院患者数をふやすための取り組みは随時考えていきたい。
- 94:【石井芳樹委員】
最後に、愛知県病院事業報告の26ページ、27ページについて伺う。
医業収益に対する給与比率は、一般に50パーセントを超えると経常収益が苦しいと言われている。平成28年度は精神医療センターが100パーセント、あいち小児保健医療総合センターが70パーセントを超えている状況の中で、現状をどう考えているのか。また、他県の県立病院との比較状況もあわせて伺う。
- 95:【経営課主幹(経営)】
職員給与費対医業収益の経営指標について、平成28年度においては、精神医療センターが106.3パーセント、あいち小児保健医療総合センターが70.9パーセントであったが、昨年度では、精神医療センターが99.3パーセント、あいち小児保健医療総合センターが62.2パーセントと改善されている。
他県の県立病院の比較については、同じ病院種別で病床規模の近い県立病院と昨年度の数値で比較したところ、精神病院については、精神医療センターの99.3パーセントに対して、三重県立こころの医療センターは99.8パーセント、京都府立洛南病院は100.7パーセントであった。
次に、小児病院については、あいち小児保健医療総合センターの62.2パーセントに対して、埼玉県立小児医療センターは66.0パーセント、兵庫県立こども病院は72.7パーセントであった。
本県の職員給与費対医業収益比率は、他県と比較しても必ずしも高い状況ではない。
また、愛知県病院事業全体の昨年度における職員給与費対医業収益比率は52.1パーセントであり、本県と同様に、がん医療、精神医療、小児医療の病院を持つ群馬県、埼玉県、神奈川県と比較すると、群馬県は48.6パーセント、埼玉県は59.1パーセント、神奈川県は50.5パーセントであり、病院全体で見ても高い状況ではない。
なお、精神医療センターとあいち小児保健医療総合センターの比率の違いについては、精神科医療という診療報酬単価の低い病院と、小児救急という診療報酬単価の高い病院の違いで、比率の分母となる医業収益の規模が異なることなどから生じている。
- 96:【石井芳樹委員】
精神病院はどこも職員給与費対医業収益比率が100近いことがわかったが、これは病院の業態として薬の投与であったり、診断、カウンセリングであったり、やはり人が頼りで診療していくために高くなっているという理解でよいか。
- 97:【経営課主幹(経営)】
精神病院の特性としては、やはり労働集約的な医療と考えており、どうしても人で治療やケアをする医療であるために、人件費比率については高くなっていく傾向がある。
- 98:【原よしのぶ委員】
決算審査意見書の6ページ、平成29年の県立病院中期計画について伺う。
病床利用率や、新外来患者数、手術件数など、それぞれ平成30年度目標を掲げる中での目標の算出根拠は何か。
- 99:【経営課主幹(経営)】
算出根拠は、4年に1度策定している中期計画である。今の計画は平成28年度に策定しているが、病院の実績などを勘案しながら、経営指標として適当なものを抽出しており、抽出に当たっては、外部委員で構成する愛知県県立病院経営改善推進委員会の委員の意見も聞きながら目標設定している。
- 100:【原よしのぶ委員】
結果を見ると達成できていない項目もあるが、目標に対して30年度の実績数字になってしまった要因は、病院事業庁としてどう考えているのか。
- 101:【がんセンター病院長】
昨年度の病床利用率は、平成29年度の77.3%を下回る75.4%となり、目標の79.5%には届かなかった。新入院患者数は前年度の1万581人を上回る1万849人を確保できたものの伸び悩み、平均在院日数は平成29年度より更に0.6日短縮の11.7日となったことが要因である。なお、平均在院日数の短縮理由は、国の方針に沿ったもので、クリニカルパス整備による計画的な治療の実施、術前検査の外来実施、低侵襲の鏡視下手術増加による患者の在院日数の短縮などが挙げられる。
手術について、昨年4月に手術室を1室増室して10室で運用するようにしたことから、昨年度の実施数は3,351件となり、平成29年度の3,230件を上回ったものの、目標である3,600件には届かなかった。患者を引っ張ることのできる部長の定年・流出などさまざまな要因があった。手術室の更なる効率的な運用と麻酔医を初めとしたスタッフの確保を、今まで以上に進めていかなければならない。
今年度は、前半期において昨年度を上回っており、今後も目標達成に向けて取り組んでいく。
- 102:【精神医療センター院長】
新外来患者数については、昨年度実績は1,017人で目標の1,200人に対して約85パーセントとなっており、目標を達成しなかったことも問題だが、平成29年度の実績である1,190人よりも下がってしまったことが大きな問題である。この要因は、昨年度の途中で医師が1人退職になり、その人が担う新外来患者の数が減ったということと、平成29年度の新外来患者枠の拡大に対して、医師から負担が大きいとの意見があり、新外来患者の予約枠を昨年度は平成29年度に比べて少し減らしたことがある。
新外来患者は、予約で来院する患者と、緊急で受診して即入院となる患者の2種類ある。現在は予約枠を減らしたので、予約待ちが1カ月半になっており、その間に、ほかの医療機関を受診し、連絡もないまま来院しないということも発生している。緊急の患者はベッドがあいている限り必ず受けるという姿勢で取り組んでいるが、予約枠による患者については、予約を受ける際に、多少受診を待てる患者と、なるべく早く診なければならない準緊急的な患者の二つに分けて、準緊急的な新外来患者は別枠で早い予約に回せるようにすることにより新外来患者の確保を図ろうと、今システムを変えようとしている。
病床利用率は、平成29年度、昨年度とほぼ同じ数値であり、273病床のうち、48床が保護室という病室である。保護室とは、自殺を図る人や、ほかの患者と過ごすと暴力を振るってしまう可能性があるため共用スペースでは過ごすことのできない患者を個室に収容して、本人や周りの安全を図るための部屋である。ほとんどの緊急入院は保護室に入院させる。保護室に入院させた後、病状が落ちついてくるにつれ、普通の共用スペースの一般室に移行していき、一般室で落ちついて過ごすことができたら退院となる。この保護室から一般室に移っていく過程では、保護室を基本的に入院している病床として利用しながら、一般室のベッドも提供する、言わば1人で二つベッドを使う状況も多く発生している。
その状況の中で、病床利用率は保護室を全部含めた全ベッドに対して何人入院しているかで算出されるため、72パーセントになる。保護室を除いた一般室のベッドは225床あり、それを稼働率の分母とすると、病床利用率は87パーセント程度になる。
病床利用率82パーセントという目標は、なかなか達成するのが難しい数字だが、達成に向けて頑張っている。
- 103:【あいち小児保健医療総合センター長】
あいち小児保健医療総合センターでは、病床利用率78パーセントという目標と手術件数2,550件という目標が到達していない。病床利用率は、現在の平均在院日数が5日台なので、休院日の日曜日、月曜日になると50パーセントにまで落ちてしまうが、週末になると70~80パーセントになるという状況がずっと続いている。休院日の稼働率を上げないと、目標の78パーセントには到達できない。ただ、患者1人当たりの単価は、中期計画以上の単価となってきているので、これが昨年度の経営改善に寄与したと考えている。
また、手術件数は、おおむね目標に達するが、当センターには手術室が7室あり、1室を心臓のカテーテル検査が行える部屋にしたことで、心臓の検査、治療として、カテーテル検査のみでなく、カテーテルをやりながら手術を行うハイブリッド手術ができるようになった。手術件数は2,506件だが、全身麻酔で行われるカテーテル検査を含めた手術室の稼働件数は昨年は2,701件となり目標を超えている。今後はほかの手術件数もふやしながら、中期計画の目標を達成していこうと考えている。
- 104:【原よしのぶ委員】
医師は、29人の不足だが、がんセンター中央病院が8人、がんセンター愛知病院が14人、精神医療センターが1人、あいち小児保健医療総合センターが6人の欠員で間違いないか。
- 105:【管理課主幹(総務・人事)】
決算審査意見書の4ページには、医師の定数と現員が書かれているが、これは昨年度の決算の意見書であるため、本年3月末日では合計で29人の欠員で間違いない。
- 106:【原よしのぶ委員】
医師が足りていないことで、入院が受け入れられなかったり、外来患者が新しく入ってこなかったり、手術ができなかったりということにつながっているか。
- 107:【がんセンター病院長】
記載されている数字はあくまでその時点での欠員数になるため、現在の状況とは異なっているが、医師の欠員が経営に影響するかどうかについては、患者を集められるような部長が異動したり、定年になったりする場合はその医師を目当てに来る患者もいるため影響を受ける。
中堅、若手の医師については、残った職員が頑張って穴埋めをしないといけないので、その分の負担はほかの医師にかかる。
- 108:【原よしのぶ委員】
退職する部長級の医師の跡を継ぐ医師をしっかり育成してもらえばカバーできることであり、力を入れて取り組んでもらいたい。
また、病床利用率の目標値は、それぞれの病院長から厳しい数値であるとの意見もあった。高い数字を示すことはもちろん大切だが、病院の健全経営も考えながら、現実的な数値の設定が重要である。見直し等も含めて、今後考えていかなければならないと思うが、数値設定のあり方について、考えを改めて伺う。
- 109:【経営課長】
中期計画については現在4年目で、2年が経過した。予算の策定に当たっては、国の示す改革プランでも病院には黒字が求められているので、計画目標としては頑張って黒字にしようというような患者数の見込み、病床利用率の設定を行っている。
来年度は次期計画を策定する年であるので、各委員からの意見や患者の実際の確保状況、医師の確保状況など、実態になるべく添いつつ、頑張るところは頑張るという意気込みで、次の計画を策定していく。
- 110:【原よしのぶ委員】
がんセンター愛知病院の移管に要した費用を除くと、経常損益は2億円ほどになるとのことだが、移管したことによって、愛知県が5億3,000万円の補助を行っていかなければならないことはしっかりと受けとめ、総合的に考えた病院経営のあり方を検討してもらいたい。