県政報告
平成22年9月定例会(第4号)
2010年9月29日
(主な質疑)
- 1: 午前十時開議
◯副議長(奥村悠二君) ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
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日程第一 一般質問並びに第九十九号議案平成二十二
年度愛知県一般会計補正予算から第百十四号
議案土地利用審査会の委員の選任についてま
で及び決算第一号平成二十一年度愛知県一般
会計歳入歳出決算から決算第十八号平成二十
一年度愛知県臨海用地造成事業会計決算まで
- 2:◯副議長(奥村悠二君) 第九十九号議案平成二十二年度愛知県一般会計補正予算から第百十四号議案土地利用審査会の委員の選任についてまで及び決算第一号平成二十一年度愛知県一般会計歳入歳出決算から決算第十八号平成二十一年度愛知県臨海用地造成事業会計決算までを一括議題といたします。
これより一般質問並びに提出議案及び決算に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
石井芳樹議員。
〔十一番石井芳樹君登壇〕(拍手)
- 3:◯十一番(石井芳樹君) おはようございます。
早速、通告に従い、二項目について質問をさせていただきたいと思います。
まずは、国有地に立地する学校施設の賃借料であります。
県が国に対して借用財産として借り入れを行っているものには、土地や建物を含めさまざまであります。借用の相手方も国の機関の多岐にわたっておりますし、また、有償無償も含め、法律と照らし合わせ、その事例ごとに判断は異なるところであります。
例えば内閣府からは、愛知県は県警本部機動隊庁舎などの土地約三万七千平米を無償で借りておりますし、財務省からは、あいち健康の森公園の敷地約二十四万平米を無償提供がなされているところでありますが、同じ財務省であっても、守山区にあります小幡交番に関する敷地約百平米は有償であります。
その中で、今回質問で取り上げさせていただくのが、国有地に立地をする学校施設の賃借料であります。
学校施設というのは、その整備運営は基礎自治体に責任があります。国は、学校教育法第三十八条及び第四十九条において市町村の小中学校の設置義務を定めております。各自治体は、近年、税収の大幅な落ち込みの中でも耐震化を初めとする施設の整備に懸命に努めておられ、設置者としての責務を果たそうとしております。
このような財政状況厳しい中、財務省では、学校施設に国有地の貸し付けを有償で各基礎自治体に行っている現状があります。また、学校用地の購入及び借地料の費用負担については国による補助や交付税措置がなく、基礎自治体にその負担が強いられてきております。
そもそもこの借地料に関する法的根拠は、財政法第九条第一項の「国の財産は適正な対価なくしてこれを譲渡もしくは貸し付けてはならない」とされていることから、全国の国有地を学校施設に原則有償で貸し付けを行っております。
このように、時価による貸し付けが原則でありますが、特に学校施設の貸し付けにおいては、さきの大戦において破壊された校舎などの復旧及び義務教育の年限の延長による義務教育施設の不足の解消が急務であることの政策的必要から、国有財産特別措置法第三条第一項により、時価からその五割以内を減額した対価で貸し付けることができることとされました。
また、その一方で、同法により、災害による著しい被害を受けた地域にある義務教育施設などについては例外的に無償貸し付けが認められております。私が調べましたところ、今現在、東海財務局管内でそれら特例に当たる事例で無償貸し付けを行っているところは、愛知、岐阜、三重の東海三県ではないとのことであります。
しかしながら、この法令は、平成十八年の義務教育諸学校施設国庫負担法改正までは、特例として、災害時だけではなく児童または生徒急増、その他特別な事由がある地域として政令に定める地域は無償貸し付けが行われておりました。県内でも、従来、無償貸し付けが行われていたにもかかわらず、この法律の改正により減額貸し付けに変わった学校は、名古屋市守山区で二校、豊橋市で二校、瀬戸市で一校、豊明市で三校、合わせて県下において八校であります。
また、年間、各自治体が国に対して支払っている借地料は、一番高いところで名古屋市の二千八百万円、豊橋市で二千九百万円、瀬戸市で六百三十万円、豊明市で五百四十万円と聞いております。また、本県においても、高等学校の借地料として豊橋市商業高校、豊橋工業高校、長久手高校、合わせて計三校で、年間約五千六百万円を国に支払っているとのことであります。
さて、私がここで疑問に感じるのは、国有財産法では、教育施設以外で無償貸し付けの施設として定められているものは、生活保護法で定める救護施設などの生活保護施設や障害者自立支援法の障害者自立支援施設、また、保育所などの社会福祉施設が該当しております。すなわち、同じ国有地の上に立っていながら学校施設は原則有償であり、福祉施設は無償であるということであります。
なぜ福祉施設が無償であるのか。それは、昭和三十三年、社会福祉事業などの施設に関する措置法という議員立法により初めて例外的に無償貸し付けが認められ、その後、昭和四十八年の国有財産特別措置法の改正によって、当時寝たきりの御老人や障害者の施設などが時代背景として強く求められていた時期であり、社会的要請にかんがみ、同法の内容を国有財産法に吸収したため、このようになったと聞いております。
他方、一般の学校施設については原則有償であり、一部例外措置を除いては減額貸し付けの対象となっております。特に市町村が設置をする小中学校は、憲法第二十六条が保障する義務教育は無償の教育施設であり、災害の際は避難所として防災拠点の施設となり、福祉施設と比較しても公益性の低いものではないと思います。また、教育は、国と地方が緊密な協力関係を持って取り組んでいかなければならない施策であり、どこの自治体も限られた財源により教育費にかける割合が多い中で、毎年恒常的な財政的負担を強いること自体に疑義を感じるところであります。
国の制度という壁はありますが、それは重々承知をしております。しかしながら、国でも政権交代前ではありますが、平成二十一年の衆議院決算行政監視委員会第二分科会において、民主党の長島議員が当時の国務大臣でありました与謝野大臣に同様の質問をされる中で、その答弁で、文部科学省やその他関係者ともどういう方向で物事を考えるのかよく相談をしてみたいと思うとの発言もされておりました。
また、地方でも、全国市長会や全国都市教育長協議会からも義務教育費施設用地内の国有地の無償化並びに払い下げの制度化及び恒久的な無償貸付制度の創設の要望が毎年のように出されております。
地域の個々の事情もあると思いますが、地方財政がいろいろな面で非常に圧迫される中、県として、県立高校にもかかわる問題でありますし、また、市町村を指導する立場である中で、地域の思いをしっかりと酌み取り、率先して国に対して学校施設の無償化を要望していかなければならないと思いますが、教育長のお考えはどうでしょうか。
次に、リニモに関してであります。
議会でも何度も取り上げさせていただいておりますが、リニモの利用者数は、当初計画の一日平均三万一千五百人には遠く及ばないものの、万博終了後の平成十八年の一日平均一万三千七百三十七人をボトムに、翌十九年度は一万五千五百五十三人、二十年度は一万六千四百八十五人、二十一年度は一万六千八百十九人と、少しずつではありますが毎年増加をしてまいりました。特に、十八年度と比べ、通学定期は二十一年度で三〇%増の延べ二百七十三万三千人となり、通勤定期に至っては五〇%増の六十九万七千人となっております。今年度も、七月までのデータでありますが、一日の利用者数は二万一千四十九人と前年度を上回る数字となっております。
これは、リニモ沿線の大学には二万人以上の学生が在籍をしており、学生の利便性向上を図ることが乗者数の増加への重要な課題と位置づけを行い、平成二十年には沿線の企業、大学を訪問してリニモでの通勤通学の転換の要請を行ったり、平成二十一年には長久手町内を走る巡回バスを駅中心にルート変更いたし、利便性向上に努め、さらには、本年四月からは古戦場駅から愛知学院大学を初めとする四大学へ五十本以上のシャトルバスの運行を開始し、学生の乗降者数をふやすよう、県や沿線市町と会社が一体となり進めてきた結果であると思います。
さらに加えて、沿線の八〇%以上を占める市街化調整区域を開発するため、平成二十一年三月に愛知県と沿線市町とがともに策定をしたリニモ沿線地域づくり構想に少しでも近づけるため、長久手町は、古戦場駅においては先月、区画整理組合の設立総会を開催し、今後は、整理を進めるに当たり、大型ショッピングモールの誘致はもちろんでありますが、戸数六百九十戸、人口千七百二十五人増を計画しております。
また、万博の際、駐車場として活用されました公園西駅においても、魅力ある商業施設の誘致と住宅を配置するため、過日、地権者説明会が行われたばかりであります。
あわせて、愛知高速交通株式会社の経営改善においても、先々回、私のリニモに関する一般質問の中で、高い役員報酬の削減と、従業員の給与は派遣元の給与体系に準ずるため、早急なプロパー化により人件費の抑制に努めていただくよう指摘をさせていただきました。
その後、会社は、役員報酬を当初約三千万円から現在の千九百万円へ圧縮をし、人件費は五億七百万円から四億三千万円と縮減がなされました。給与体系も、会社独自の給与体系を超えるものについては派遣元が負担をするよう変革を行い、経費削減に努めていることは一定の評価に値するところであります。
このように、着実に改善が行われつつあるリニモでありますが、しかしながら、あわせてさまざまな問題を今なお多く抱えていることも実情であります。そこで、順次それらの諸問題について質問をさせていただきたいと思います。
まずは、ことし四月に発覚をした元社員による八千九百万円の横領事件であります。
昨日、きょうと、新聞においても元主幹が逮捕される記事が載っておりましたが、この事件に関して、六月議会においても仲議員が愛知高速交通株式会社の経営管理体制について質問をされました。
その後、今回の横領事件を受けて、愛知高速交通株式会社では、平成二十二年度七月分より、県から出向の総務部長の報酬月額の一〇%を三カ月間の減額処分とし、あわせて経理担当常勤取締役の専務もまた同じ処分に処しました。
あわせて、平成二十二年度六月三十日付で会社より出された再発防止策によりますと、管理体制の強化は、今後は総務部長、総務課長の二名で経理出納業務を確認、承諾することとし、預金通帳と銀行印の管理も別々の者が行い、預金通帳の管理を総務課長が、銀行印の管理を総務部長が行い、複数の関与でしか現金の支払いができないよう改善を行うとのことでありました。また、新規に現金の払い戻し専用の口座を開設し、必要な金額をその都度入金することにより、不正な引き出しができないよう口座管理の強化を図ったとのことであります。
次に、監査体制の強化では、これまで年二回実施していた会計監査人による監査を、今後は常勤監査役の立ち会いのもと毎月実施をし、新たに税理士と顧問契約を結び、毎月不明瞭な経費の支出がないかチェックに努めるとのことであります。人事施策の改善でも、経理業務については三年をめどに職員を変更するとのことでありました。
しかしながら、私が最も気になるのは、この横領事件に際して失われた八千九百万円は、会社の貸借対照表では未収金として会計処理がなされている点であります。これは、将来、回収の見込みがある資産として取り扱いが行われているわけであります。今後、これが、当初結んだ取り決めに反して未収金が回収されず、結果的に損失となり、最終的にはこれを県や各市町の税金で負担するようなことは絶対にあってはならないことだと思います。
名鉄と会社との間で締結をされた出向者に関する契約においては、出向者が法令などに違反をし、会社に損害を与えた場合は、その損害を名鉄が補償するといった内容になっているとも聞いております。
あわせて、本年四月、この事件を受けて、長久手町議会から六月二十三日付で会社に対して五項目による要望書が提出をされておりますし、加えて、営業収益の約一〇分の一を失うこの事件の影響力の大きさを踏まえて、今年度、沿線自治体から受け入れる予定の増資に関しても、横領事件の区切りなどを見きわめた上での判断から、実施がなされていないと聞いております。
以上の状況を踏まえて、被害の回収には万全を期し、かつ慎重に行い、万が一にも税金で応分の負担とならないようにしていかなければならないと思いますが、現在の回収の状況はどのようになっているでしょうか。
次に、二点目であります。
会社の経営内容の情報公開は、この事件を受けて財務諸表などが既にホームページで公開されております。社内の管理体制や経営の安定化に向けた会社の取り組み状況などについても情報開示を行ってほしいという要望があり、先ほども述べました地元議会の決議にも盛り込まれております。事件以降、さらに会社の信頼と安心を取り戻すため、経営状況を踏まえた情報開示を積極的に行い、経営の透明化を図る必要があると思います。
そこで質問をいたします。
今後も、より一層の情報開示を、県からも会社に対して要請を行うべきと思うが、いかがでしょうか。
三点目は、現在の第一次経営安定策では、県並びに沿線市町の支援にとどまっており、当初、出資を行った企業からの経営支援はなされていない状況であります。経済状況、いまだ厳しい時期ではありますが、民間への支援要請の状況はどのようになっているでしょうか。
最後に、四点目の質問であります。
当初計画では、リニモの利用者数は一日三万一千五百人の乗降者数見込みでありましたが、平成二十年度末に下方修正がなされ、二十年後には一日二万五千人の乗降者見込みとされました。それに伴い、経営支援策についても平成二十年度から二十五年度までの第一次経営安定策が策定をされ、平成二十六年度以降は、第二次支援策が必要と見込まれております。
当面は、この第一次支援策により、平成二十年度、愛知県は、会社が二十億円の債務超過に陥ることから、貸付金三十九億九千万円のDES化を行い、翌年二十一年度には沿線自治体でも県と同様に十五億二千万円のDES化を行い、増資をして、財務基盤の強化を図ってまいりました。また、本年からは現金も不足することから、県は五億六千万円、沿線自治体が三億八千万円を出資し、会社を支えていかなければならない現状であります。
その中で、県が長期収支見通しからはじき出した第一次経営安定化支援策では、平成二十年度から平成二十五年度まで、DES化と現金出資を合わせて、県では総額で約六十八億四千万円を、沿線自治体では四十六億五千万円の出資を行わなければなりません。
また、平成二十六年度以降においても第一次経営安定化策と同様の支援策を行っていくとすると、DES化と現金出資を合わせて、新たに県は今後約九十七億円を、沿線自治体は約六十六億円の支援をしていく必要があると試算をされております。
この巨額な出資を県並びに沿線自治体の理解を得て可能にするには、将来の見通しとしての、新たに会社が策定をした長期見通しの計画がその羅針盤となるはずであります。しかしながら、その改正を行った長期見通しにおいても、早くもその数値に計画の甘さを指摘しなければなりません。
平成二十一年度のリニモ利用者数は、一日に一万七千人を切る数字でありましたが、改善策では一日一万七千四百人を見込んでいたはずであります。計画の最初の年から既に当初の予想を下回っている状況下で、二十年後、その数字の達成は疑わしく、再びの計画の見通しの甘さは、県の行う第三セクターへの信頼を大きく失墜されるものになりかねません。
今現在、利用者増の根拠とする沿線開発事業などへ具体的な計画は示されていないままであります。この数値を堅持していくためには、具体的な沿線開発を県が主となって行っていかなければならないと思います。
現在、長久手町では、公園西駅周辺の開発に当たり、市街化整備の検討を都市マスタープランに位置づけいたしました。市街化整備の検討の中で、公園西駅の開発に当たっては、工業用地開発のノウハウを持っている県企業庁では可能かと考えるところでありますが、しかし、企業庁の開発に当たっては用地の取得見込みが一〇〇%でなければ開発要件を満たしていないことから、町が想定をしている駅前開発との適合がうまくできるのか、困難に感じるところであります。
県が主体となって開発することが難しいことはわかっておりますが、県は従来進めてきた駅周辺開発の計画の推進はもとより、既存の沿線県施設のさらなる活用や、集客力のある魅力ある施設の誘致も含めて行えることもあるわけであります。
県は、沿線市町から上がってくる計画を開発許可という受動的立場で行うのではなく、能動的にリニモ沿線地域づくり構想の実現に向けて積極的に取り組まなければ、計画の数値とはまたもや遠いものとなってしまいます。県としては、目標達成のために今後どのように取り組んでいくおつもりなのかお尋ねをいたします。
以上、二項目にわたり質問をさせていただきました。明確な県当局の御答弁を御期待申し上げまして、壇上からの質問を終わらせていただきます。(拍手)
- 4:◯教育長(今井秀明君) 国有地に立地する教育施設の賃借料についてお答えをいたします。
まず、国有地の貸し付けについての社会福祉施設と学校などの教育施設に対する扱いの違いについてでございますが、議員お示しのとおり、社会福祉施設は、昭和三十三年の社会福祉事業等の施設に関する措置法という議員立法で、初めて例外的に無償貸し付けが認められ、その後、昭和四十八年に高齢化社会を展望し、これらの施設を緊急に整備する必要があるという社会的要請にかんがみ、同法の内容を国有財産特別措置法に吸収し、原則無償貸し付けされたと、そういう経緯があるというふうに承知しております。
一方、学校の施設につきましては、原則有償でありますが、一部、災害による著しい被害を受けた地域にある施設などについて無償貸し付けができることとされております。また、学校施設の用に供する際は、時価から五割以内を減額して貸し付けができるなど、既に相当な教育的配慮がなされているところであります。
国においては、近年、少子化により児童生徒数が減少しており、義務教育施設の不足等の状況が認められないことから、現在のところ、制度を変更する予定はないというふうにしております。
学校用地の無償化等につきまして、全国市長会や全国都市教育長協議会から国に要望が出されていることは承知しておりますが、これまでの経緯や現状の優遇措置などを踏まえますと、現時点では、これ以上の見直しを求めることは難しいものと考えており、国の動向を今後とも注意を払って見守ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 5:◯地域振興部長(山田周司君) 愛知高速交通における横領事件による被害の回収状況についてお答えをいたします。
事件発覚後、会社では、弁護士とも相談しながら、被害額約八千九百万円について、元社員に対して賠償請求するとともに、元社員の出向元である名古屋鉄道に対しましても、締結していた出向者の取り扱いに関する契約に基づいて補償するように求めたところであります。
そうした中、元社員からは一千万円の弁済がなされ、現在、会社においては弁護士を通じて名鉄との交渉を進めているところであります。県といたしましても、被害がきちんと回復されるよう、会社に対し必要な助言を行ってまいりたいと存じます。
次に、愛知高速交通の経営情報の開示についてお答えをいたします。
会社では、これまでもホームページで財務諸表の公開を行ってきましたが、今年度からは、株主総会後に記者発表を実施するとともに、株主総会で配付された事業報告をホームページに掲載いたしております。
また、横領事件に関しましても、再発防止策や関係者の処分について速やかに記者発表をするとともに、発表資料をホームページに掲載するなど、情報の公開に努めているところであります。
県といたしましても、株主や債権者の利益を害するおそれがある情報や個人情報など開示に適さない場合以外については、今後とも積極的な情報開示がなされるよう会社に対し要請してまいりたいと考えております。
次に、愛知高速交通の出資企業に対する経営支援の要請状況についてお答えをいたします。
経営安定化策の実施に際しましては、これまでも主要な出資企業に対しまして増資の要請を行ってまいりました。しかしながら、未曾有の経済危機の発生後、厳しい経済状況が続いており、各企業の経営状況も大変厳しい状況であることから、当面、増資していただくことは困難であると認識しております。このため、県は、会社とも連携して、各企業に対しまして増資以外の支援についても要請を行ってまいりました。その結果、出向者の人件費の一部負担を初め、リニモの車体へのラッピング広告の実施、車内広告の掲出などの支援、協力をいただいているところであります。
最後に、沿線開発に係る今後の取り組みについての御質問でございます。
地域づくり構想では、駅周辺での住宅や商業施設、公共施設の整備、誘導を進めていくこととしております。県としても、この十月一日に愛・地球博記念公園内で地球市民交流センターをオープンする予定であり、知の拠点も平成二十三年度の供用開始を目指し、整備を進めております。こうした新たな施設の整備により沿線地域への交流人口が確実に増加し、リニモの利用者増加が見込まれます。
また、駅周辺での住宅等の立地に関し民間事業者を誘導していくためには、計画的なまちづくりのために市町が策定する土地利用計画、都市マスタープランなどの計画を踏まえて、県としても整備開発案件の掘り起こしを行うとともに、市町の開発が着実かつ円滑に進むように、開発整備に伴う法的手続の助言等を積極的に行ってまいります。
さらに、リニモ沿線は発展性が高く、先進的なまちづくりにふさわしい地域であるため、国の新成長戦略に位置づけられた総合特区制度を活用し、リニモの駅周辺に民間事業者の立地誘導を図りたいと考えており、土地利用規制の緩和などを盛り込んだリニモ沿線環境共生まちづくり特区の提案を先般行ったところであります。
県としましては、今後とも市町と連携しながらさまざまな取り組みを進め、リニモの駅を中心としたエリアの都市的な土地利用の拡大を図るとともに、イベントなども引き続き開催して利用促進に努めながら、リニモの利用者の着実な増加を図っていきたいと考えております。
以上でございます。
- 6:◯十一番(石井芳樹君) 二項目について御答弁をいただきました。二つ、二項目について、また要望させていただきたいと思います。
まず、国有地の借地料であります。
地域の声を県政に届けるのは、私たち議員の仕事であります。地方の声を国に届けるのは、特にこの学校に関しては教育長の務めだと私は思うところであります。特に、市長会や教育長会から再三この要望が上がってくるということは、これは、私は、地域の声だと確信をしておるところであります。
今、国では、地方分権から地方主権、地方が物の言える時代に変わってきたわけでありますので、教育長が先頭を切って、教育行政が少しでも各市町の中で、その限られた予算の中で新たに予算執行が行える、二千万円以上という大変大きな数字でありますので、行えるような形で進めていっていただきますことをまずは教育長にお願いをさせていただくところであります。
そして、リニモに関してであります。
愛知高速鉄道株式会社、そして、第三セクター、何か起こったときには非常にわかりにくい組織体であるわけであります。第三セクターとは、その自治体が主たる出資者であるわけでありますが、平素、業務を行っているのは専務も含めた会社が運営、管理をしておるわけであります。
ですから、先ほどの答弁のように、会社に県から強く申し述べさせていただきますというような、ともすれば客観的な形のようになってしまうわけでありますが、しかしながら、その会社の社長は知事であり、また、副社長は沿線市町の首長であるわけであります。客観的ではなく主観的に、積極的に改善をしていかなければならないと思うところでありますし、もう一つは、長期見通しの計画であります。
二十年後でありますので、平成四十一年がこの二万五千人に到達するかどうかという数字であります。この議場の中でも、平成四十一年までこの議会の中で責任を持って進められる方は限られているわけであります。次の世代に託せばいいという思いではなく、積極的に今しっかりと種まきを行わなければ、区画整理にしろ、市街化編入にしろ、すべて行ってから十年、十五年という歳月がかかっていくわけであります。
何度もこの議場で申し上げさせていただきました。リニモは、まさしく愛・地球博のシンボル的建物であります。これが万が一にも廃線となり、その場に残った後に現代芸術だとして褒めていただける方はだれもいないわけであります。今現在、しっかりとした取り組みを行っていただきながら、詳細な、緻密な計画とともに大胆な決断を行っていただき、四十年先に大きな花が咲きますことを心より御期待を申し上げ、御要望とさせていただきます。
- 7:◯副議長(奥村悠二君) 進行いたします。
熊田裕通議員。
〔六十番熊田裕通君登壇〕(拍手)
- 8:◯六十番(熊田裕通君) 私は、去る八月二十二日から二十九日までの八日間にわたり、小林議員を団長に、原田信夫副団長、安藤まさひこ団員とともに海外調査団の一員として、アメリカ合衆国のシカゴ、ニューヨーク及びシカゴ近郊のアナーバーを訪問する機会をいただきました。まことに私ごとで恐縮でございますが、この期間中、四十六回目の誕生日を迎えることができ、団員の皆様から温かいプレゼント、ネクタイのプレゼントをいただきました。御厚情に感謝を申し上げ、そのネクタイをしながら、質問を順次していきたいと思います。
最初の訪問地は、イリノイ州アルゴンヌ市にあるアルゴンヌ国立研究所の運営等について、その後、オバマ大統領の出身地でもあるシカゴにおいて、シカゴコンベンションアンド観光ビューローを訪問し、国際イベントやコンベンションの誘致活動の状況について、それぞれ調査を行いました。
翌日には、世界の金融、商業、娯楽の一大中心地であるニューヨークへ移り、経済動向、都市活性化戦略、多文化共生への取り組み、観光プロモーション、美術館運営などについて調査を行いました。アナーバーに移動してからは、トヨタ自動車のテクニカルセンターを訪問し、激動の真っただ中にあるアメリカ自動車産業の動向や次世代自動車開発の取り組みについて調査を行いました。
これらをもとに順次質問をしてまいります。
まず最初は、国際競争力強化及び次世代自動車産業拠点の形成に向けた取り組みについてであります。
本県経済は、輸出に依存する企業の割合が高いこともあり、為替や海外諸国の経済動向、産業政策など、外部環境の変化による影響を受けやすい産業構造にあります。とりわけ、昨今の円高は、中小企業にとっては死活問題であり、このままでは体力のある企業は海外へ移転し、余力のない企業は市場からの撤退を余儀なくされることでしょう。
最近では、アジア地域を初め新興国の成長も目まぐるしく、さらなる競争激化が予想されるこの激動期に、いかに本県産業が耐え、乗り切り、そして、再び飛躍していくことができるのか、そのためには行政がどのような戦略を持って支援を行っていくべきなのか、まさに本県の将来を決める重要な時期にあるのではないでしょうか。
こうした中で、今回最初に訪問したアルゴンヌ国立研究所は、革新的な研究や技術開発を目的に、アメリカ初の国立研究所として一九四二年に設立され、現在は基礎研究、エネルギー資源など五つの分野の研究を行っております。また、シンクロトロン光を利用した計測分析施設は世界三大施設の一つとも言われており、ゲストハウスも併設され二十四時間稼働しております。また、放射線施設の利用料は、その成果を一般に公開する場合は無料、成果を秘密とする場合は有料ということですが、施設の性格上、利用する企業の多くが成果を秘密にしているとのことです。
本県でも、次世代モノづくり技術を創造・発信する施設として知の拠点の整備が進められており、先般三つの重要研究プロジェクト研究テーマが決定し、来年度から本格研究が始まると発表されました。知の拠点の整備はまだ緒についたばかりでありますが、アルゴンヌ国立研究所と比較をするということは大変酷な話ではありますが、知の拠点こそ本県産業の発展の礎、ひいては国際競争力の強化につながる施設ではないかと思うのであります。
そこでお尋ねいたします。
知の拠点について、今回決定した研究テーマは、本県産業にとって、例えば技術力の向上、コスト削減、あるいは世界に類を見ない技術開発など、どのような点に期待して選定されたのかお聞かせをいただきたい。
さらに、国際競争力を強化するためには、知の拠点を世界的な研究所とすることが必要ですが、そのためにはアルゴンヌ国立研究所のように時差のある世界とのやりとりができるよう、重点研究プロジェクトに参加する研究者、技術者がいつでも研究に従事できる環境を整備することが重要であると思いますが、研究環境の整備について県の見解をお聞かせください。
次に、次世代自動車についてお伺いいたします。
次世代自動車と言われる電気自動車やプラグインハイブリッド車については、今や世界各国のメーカーが世界標準規格を目指し、激しい競争を繰り広げております。中国などの新興国メーカーの成長も見据えると、世界的な競争はますます激しいものとなっていくことでしょう。
こうした中で、今回訪問したミシガン州アナーバー市に立地するトヨタ自動車のテクニカルセンターを訪問できたことは、現在の米国自動車産業の動向や、次世代自動車開発情勢などに直接触れることができ、一層理解を深めるよい機会となりました。
さて、ミシガン州は、御承知のとおり、米国自動車業界のビッグスリーが本社を構える世界を代表する自動車産業拠点でありましたが、わずか数年前に、その一角のGM、クライスラーの破綻が続くという大きな苦しみを経験した地域でもあります。今、ここではその経験をともにした人々が団結し、大きなエネルギーとなって自動車産業の再生、復活に向けて取り組みを始めております。
ミシガン州は、世界的な自動車メーカーの研究所の集積地でもありましたが、電気自動車などの次世代自動車開発では、連邦政府や州政府から手厚い支援策が講じられたことで、これまでになかった電池開発関係の企業などの集積も進み、改めて自動車産業拠点として注目を集めてきております。
今回訪問したトヨタテクニカルセンターも、ミシガン州内に二カ所の車両開発拠点を有し、車両の企画から設計、試験、評価、生産準備まで一連の研究開発を行っているほか、先端研究に特化する新部門として北米先端研究所を二年前に設立しております。
また、広大なアメリカの環境に適した自動車を開発するため、アリゾナ州には車両総合評価を行うテストコースを、カリフォルニア州には規制認証のためのエンジン適合試験を行う施設をそれぞれ置いてあります。これは、同社が掲げる適時・適地・適車という考え方に基づくものであり、為替などの動向に一喜一憂しなくてもよいことから、自動車産業の一層の現地生産化につながり、今後の企業戦略の基本となることは明白であります。
こうしたことから、本県の主要産業である自動車産業は、いずれすべての生産を海外に移しかねず、やがては部品関係の企業も追随し、残るのは研究機関のみということになるやもしれません。
こうした大きなうねりの中で、本県としては、新産業の育成はもちろんのこと、基幹産業である自動車産業と関連産業の生き残りをかけた壮絶な競争を支援するための取り組みの強化を進めなければなりません。
現在、県内では、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の普及を目指したモデルタウン事業のほか、豊田市内での低炭素都市構築実証プロジェクト、名古屋大学による環境に優しい自動車開発を推進するグリーンビークル材料開発拠点構想などが進められております。
これらのさまざまな取り組みを結集しつつ、次世代自動車においても世界的な拠点となることを目指し、さらには愛知発の世界標準をつくり上げ、本県経済を牽引していくための支援が大変重要であります。
本県の産業構造を踏まえれば、自動車関連産業への支援は必要不可欠なものであります。そこで、次世代自動車産業の振興に向けて、どのような方向性をもって臨んでいくおつもりかお伺いいたします。
次に、観光振興施策の取り組みについてお伺いいたします。
ニューヨークでは、観光振興組織であるNYCアンドカンパニーを訪問いたしました。この組織は、一九九九年に地域の観光産業を育てるための活動を行う組織として設立され、二〇〇六年には市のブランディングマーケティング部門、ツーリズム部門、ビッグイベント部門の三部門を統合した半官半民の機動性に富む組織となり、組織の活動として掲げられた活力と多様性という方針のもと、地域のあらゆる事業者を巻き込んで積極的かつスピーディーな営業セールスを展開しているとのことでした。
コンベンション誘致においても、ホテルの空室が出やすい日曜日の利用増加を図るため、ミート・ミー・オン・サンデー、日曜日に会いましょうという方針を立てて売り込みをしていたり、あるいは効果的なキャッチフレーズを全世界に発信したりして、地元のさまざまな観光資源も生かしながら、アイデア豊かに売り込んでいるそうです。
こうした観光プロモーションは、大都市ならではの有利さがある点は否めませんが、万博を開催し、COP10、芸術祭など世界レベルの祭典の開催を通じて地域力、知名度を発信している本県においても、伝統や文化、地域性を生かしつつ斬新なアイデアで地域を売り込む宣伝力、アイデア力の強化に生かせるのではないかと感じました。
ニューヨークでの調査で最も強く印象に残ったことは、携わっている人が自分たちのまちをこよなく愛し、誇りに思っていること、まさにアイ・ラブ・ニューヨークであることです。自分たちのまちを愛しているからこそ、ニューヨークに来てもらいたい、もっとよさを知ってもらいたいとの思いが強くなり、斬新なアイデアも生まれ、積極的な宣伝にもつながるものだと感じました。
本県では、ことし三月に愛知県観光振興基本計画を策定したところでありますが、今後、基本計画を進める上で、ハード面ではなく、ソフト面の取り組みについてお伺いします。
県内にも、地域の伝統、文化、地域性を生かしつつ、自分たちのまちや地域を愛し、多くの人たちに来てもらいたい、知ってもらいたいと取り組んでおられる観光関係、民間、NPOなどの団体があると思います。観光振興に向け、県としてこれらの方々と今後どのように取り組んでいくかお聞かせをください。
また、観光客誘致に当たり、誘致側と観光客側との観光資源ニーズのギャップを指摘されるケースがあるとお聞きしますが、海外への情報発信に当たっては、相手側のニーズを把握し、ニーズに沿って観光資源を的確に発信していく必要があると思いますが、県としてどのように考えているのかお伺いいたします。
次に、あいちトリエンナーレ二〇一〇とその成果の活用についてであります。
ニューヨークでは、一九二九年の開館以来、常に最新のアートを収集展示し、世界をリードしてきたニューヨーク近代美術館について調査してまいりました。
なお、訪問に際し、我々は各地であいちトリエンナーレをPRしたのですが、同美術館からは、あいちトリエンナーレの芸術監督である建畠氏と交流があることもあって、成功に向けたエールをいただいたことを申し上げておきます。
開館以来、市民の大きな支持を得て、拡張を続けてきた同美術館は、現在では、絵画を初めとする七部門で四十五名に上る専門の学芸員を擁しており、その収蔵作品は約十五万点にも及ぶなど、近代、現代美術を幅広く網羅する大規模美術館へと成長を遂げております。
私どもがこの美術館を訪問した日は、平日であったにもかかわらず、世界的な観光都市ということもあって、非常に大勢の来館者がにぎわいを見せておりました。来館者の六割が地域外からの観光客とのことだそうで、このように入場者が多いからこそ公的支援を受けておらず、運営資金は入場料や寄附、オリジナル商品の販売などによって賄われているとのことでありました。
さて、この美術館やあいちトリエンナーレで展示されている現代芸術というのは、作者の制作意図が理解しがたい作品も多く、親しみにくいという面があるのも事実であります。こうしたことから、ニューヨーク近代美術館においては、現代芸術を受け入れる土壌をはぐくむには市民の理解の醸成が一番重要であると認識し、市民向けの教育プログラムを積極的に導入し、しかも、そのプログラムは単発ではなく継続性のある包括的なものだそうです。
実際に、教育プログラムの中には、昼食時間を利用してスタッフが解説を行うランチタイムレクチャーや、美術館職員が毎日二回展示作品の解説を行うギャラリートーク、家族向けや子供たち向けのさまざまなプログラムなどが用意され、美術館の作品そのものから職員の日常業務まで、さまざまな角度から美術館を紹介する企画が多数用意されているのです。
とりわけ、子供向けには、園児や小学生、中学生、高校生など、各年代に分けてさまざまな教育プログラムを用意しているほか、子供に指導を行う学校の先生方を対象としたプログラムも用意され、次代を担う子供たちが現代芸術へ理解を深められるようにさまざまな試みが実施されております。
ニューヨーク近代美術館の約八十年に及ぶ歴史とその歩み、そして現在の取り組みは、愛知の芸術文化政策や芸術文化センターの運営にも大いに学ぶべきものがあると思います。
文化芸術の振興は一日にして成らずと考えますが、あいちトリエンナーレの開催をはずみに、芸術文化の薫り高いまちづくり、芸術文化がもたらす活気をまちの魅力につなげる取り組みを一層進めていくべきではないかと感じております。
さらに、現在、あいちトリエンナーレの子供版、キッズトリエンナーレや、第一線で活躍する芸術家と子供たちが交流するあいち子ども芸術大学も展開されておりますが、あらゆる可能性を秘めた子供の芸術文化教育には、長期的な視点から一層力を注いでいくべきではないかと考えております。
そこでお尋ねします。
まず、現在開催中のあいちトリエンナーレの状況等を踏まえ、そこで得られる成果はどのようなものになると期待しておられるのか。
また、その成果を今後の本県の芸術文化の振興や地域づくり、観光振興にどのように生かしていくおつもりか。
そして、今回の参加した芸術家らとのネットワークをどのように継続し、広げていかれるおつもりか。
最後に、次世代を担う子供たちへの芸術教育について、今後どのように取り組んでいくのかをお伺いいたします。
最後に、今回の調査に当たり、すべての行程に同行をしてくれたサンフランシスコ駐在の職員やシカゴ総領事駐在の職員が、アメリカで愛知のために地道ながらひたむきに頑張っている姿を拝見することができました。彼らの努力が必ずや愛知のために結んでいくことを期待し、海外調査団を代表しての壇上での質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 9:◯産業労働部長(木村聡君) 私からは、まず、産業振興に関する御質問に対してお答え申し上げます。
最初に、知の拠点におきます重点研究プロジェクトのテーマの選定についてであります。
重点研究プロジェクトは、大学等のシーズを企業の製品化につなげることを目的としておりまして、テーマの選定に当たりましては、産学行政の有識者による審査を経て、中小企業を含みます県内の企業ニーズがあり、なおかつ事業化の可能性が高く、本県経済に波及効果が期待できるものを優先的に採用したところであります。
採用いたしましたテーマは三件、すなわち、低環境負荷型次世代ナノマイクロ加工技術開発プロジェクト、食の安心・安全技術開発プロジェクト、超早期診断技術開発プロジェクトでありまして、いずれも本県産業の高度化や次世代産業の創出、さらには、豊かな県民生活の実現にも貢献するものと期待しているところであります。
まず、一つ目のナノマイクロ加工技術プロジェクトにつきましては、将来の成長が見込まれる次世代産業や航空機など、製造業全般の生産技術への波及効果が大きいことが評価されたところであります。
次に、二つ目の食の安心・安全技術プロジェクトにつきましては、食品工業や農産物の生産者と安全な食品を求める県民双方のニーズが大きく、異物の混入を見つける技術は、広く製造業にも応用できる可能性が高いことが評価されたことでございます。
さらに、三つ目の超早期診断技術プロジェクトにつきましては、地域において密接な医工の連携が見込まれることに加えまして、がん、生活習慣病の早期発見と治療に資するものといたしまして、高齢化が進展する社会のニーズが大きいと、こういうことが評価されたところでございます。
いずれも、愛知の未来に対する投資といたしまして、極めて有望で夢があるテーマであると考えておるところでございます。
次に、知の拠点における研究環境の整備についてであります。
知の拠点において、先ほど申し述べました重点研究プロジェクトがしっかりと成果を上げるためには、そこに集まる研究者や技術者にとって利便性が高く、また、集中して研究に従事できる環境を整備することが極めて重要であると考えております。このため、産学行政の共同研究を行います先導的中核施設におきましては、研究室や重点研究プロジェクトで必要となる機器を設置する実験室は、常時使用を可能とする予定でございます。また、世界との円滑な情報交換を可能といたします高速インターネット通信インフラを整備いたしますほか、警備や空調設備の運転管理を二十四時間体制で行うことなどによりまして、研究者がいつでも安心して研究に打ち込んでいただける環境を整備してまいりたいと考えております。
本県といたしましては、重点研究プロジェクトに参加される研究者、技術者の御意見も参考にしながら、引き続き研究環境の改善、向上に努めていく考えでございます。
次に、次世代自動車産業の振興についてお答え申し上げます。
本県といたしましては、この地域が基幹産業である自動車産業の集積を生かしまして、次世代自動車におきましても、引き続き世界をリードしていくことが大変重要であると考えておるところでございます。
このため、現在策定中の産業労働計画におきましては、次世代自動車産業の振興を重点プロジェクトの一つとして位置づけることとしております。
このプロジェクトでは、まず、県の次世代自動車産業振興の基本方針を定めます部局横断型のアクションプランを策定いたしますほか、助成制度も活用しながら電池などの関連産業を誘致いたしまして、企業の集積を促進いたします。これとともに、知の拠点や産業技術研究所を中心といたしまして、新素材、電池材料等の研究開発や人材育成を行いますことによりまして、中堅、中小企業の参画も促しながら、新たな雇用機会を創出してまいりたいと考えております。
また、自治体の公用車でありますとか、さらには企業の社用車への率先導入を働きかけますとともに、充電設備等のインフラ整備を促進いたしまして、次世代自動車の普及にも努めますなど、その開発、生産から普及までを総合的に支援してまいりたいと考えておるところでございます。
続きまして、観光振興に関する御質問に対してお答え申し上げます。
まず、観光振興への熱意を持った地域の方々との取り組みについてであります。
本県におきましても、多くの方々がその地域の歴史、文化等を生かして観光振興に取り組んでおられます。本県といたしましては、そうした関係者の方々の地元に対する熱い思い、すなわち、地域の資源を生かして多くの観光客に訪れてもらおうとする熱意があってこそ、県全体の観光振興が図られるものと考えておるところでございます。
このため、本年三月に策定いたしました愛知県観光振興基本計画に基づきまして、今年度から、観光振興に取り組む地域の関係者やNPOの方々を対象といたしましたあいち観光まちづくりゼミを開催いたしまして、公募を通じて参加されました方々によります地元への愛情を込めた観光コースの企画、これについて支援申し上げているところでございます。
本県といたしましては、この観光まちづくりゼミを通じまして、観光振興に取り組まれる地域の幅広い関係者の方々とともに各地域の隠れた魅力でありますとか、さらには意外なおもしろさなどを掘り起こしまして、そして、そうした試みを県内各地にも波及させることを通じまして、県全体の観光振興につなげていきたいと考えているところでございます。
最後に、海外への情報発信についてお答え申し上げます。
海外に向けて本県の観光情報を発信いたします場合には、御指摘のとおり、外国人観光客のニーズを十分に勘案した上で、きめ細かく対応していくことが重要であると考えております。
本年七月に公表されました国際観光振興機構の調査によりますと、外国人観光客の訪日動機の上位三位が、日本の食事、ショッピング、温泉でございました。
また、本県は、東アジア、特に中国からの誘客を重点課題としておりますので、先般開催いたしました上海万博の愛知ウイークの期間中に、現地の中国人を対象といたしましてヒアリング調査を行わせていただきました。そうしたところ、自然風景、日本の食事、温泉が訪日動機の上位三位を占めまして、ショッピングがそれに続く結果となったところでございます。
このほか、本県のイメージについて聴取いたしましたところ、万博の開催地、自動車産業の盛んな地域、家康などの武将の生誕地などの回答が寄せられたところでございます。
本県では、現在、海外PR用の多言語パンフレットや観光情報ホームページの作成を進めているところでありますが、それらの内容、構成につきましては、先ほど申し述べました調査の結果でありますとか、さらには、県内在住の観光業に携わる外国人の方々から聴取した意見を適切に反映させてまいりたいと考えております。
具体的には、武将観光や産業観光といった本県特有の観光資源とあわせまして、本県がショッピングやグルメの適地であることもしっかりPRをするものといたしまして、インターネットも活用しながら、一層効果的な情報発信に努めていきたいと考えているところでございます。
私からは以上でございます。
- 10:◯県民生活部長(大久保裕司君) あいちトリエンナーレにつきましてお答えを申し上げます。
まず、あいちトリエンナーレ二〇一〇の現在の状況等を踏まえ、期待するところの成果についてでございます。
あいちトリエンナーレの各会場には、若い方々や御家族連れを中心に幅広い年代層の皆様に御来場いただいております。会場の様子やアンケートの回答を見ますと、多くの皆様に楽しんでいただけていると感じております。
現代アートは、とかくわかりにくいというイメージがございましたが、何だろうと思いながら来ていただき、触れていただいたことにより、多くの方々の現代アートに対する見方が変わり、親しみのある身近なものとして受け入れる土壌が広がったのではないかと感じております。これがまず一つの成果として期待をするものでございます。
二つ目といたしまして、開幕から五週間余りで二十六万人以上の方々に御来場いただいていることであります。この内訳を見ますと、中学生以下の児童生徒の割合が約一七%と、他の地域で開催されましたトリエンナーレ等と比較してかなり高くなっております。また、これまでのアンケート結果で見ますと、県外からお越しの方が約三分の一を占めており、来場者の大半からは来てよかったとの評価をいただいております。
こうしたことから、愛知での初めてのトリエンナーレ開催が、県内外の幅広い年代層の方々から高い評価と支持をいただいているのではないかと自負をいたしております。
三つ目といたしまして、今回のトリエンナーレは、世界二十四の国と地域から百三十を超えるアーチストが参加する国内最大規模の芸術祭となりました。内容的にも、「都市の祝祭 Arts and Cities」をテーマに、先端性はもとより、美術と舞台芸術とのジャンルを横断した複合性や、長者町などまちなかでの展開という祝祭性など、これまでのトリエンナーレ、ビエンナーレにはない、愛知ならではの特徴を打ち出せているのではないかと思います。
こうした取り組みについて、これまでのところ、専門誌や美術評論家等から高い評価を得ており、愛知から世界へ新たな文化芸術を発信するという目的の足がかりが得られたのではないかと考えておるところでございます。
次に、今回の成果を今後どのように生かしていくかについてでございます。
まだ会期の途中ではありますが、これまでに多くの皆様が来場され、現代アートを楽しんでいただいており、アンケートでは、トリエンナーレによって現代アートへの関心が高まった、アートが人やまちに活力を与えることを認識したなどの御意見をいただいております。
また、広小路や納屋橋、長者町会場でのまちなか展開や県内各地における約五百のトリエンナーレパートナーシップ事業など、それぞれの地域の人たちによる個性的なアートイベントも数多く開催されております。
今後、今回のトリエンナーレや関連イベントの成果についてしっかりと検証し、例えば、地域で行われた数々の取り組みの効果や培われたノウハウを紹介するなどして、アートによってまちや地域を元気にする取り組みを広げ、本県の文化芸術の振興や地域づくりにつなげてまいりたいと考えております。
次に、今回参加した芸術家らとのネットワークをどのように継続し、広げていくかについてでございます。
トリエンナーレの出品作家は、基本的には芸術監督がその時々の世界のアートの状況やそのトリエンナーレのテーマに沿って、その都度選定することとなります。しかしながら、今回参加していただいたアーチスト、企画の中心を担ったキュレーターや専門職員、さまざまな観点から専門的なアドバイスをいただいた有識者など関係者とのつながりは、今後の本県の文化芸術振興や、トリエンナーレの継続開催に向けての大きな財産であると考えております。
幸い、今回のあいちトリエンナーレ二〇一〇のキュレーター陣の中核を担いましたのは、愛知芸術文化センターの若手の学芸員でございます。今後は、彼らを中心として今回のトリエンナーレで培った人的ネットワークを活用し、継続的に世界最先端の情報を収集するとともに、愛知の情報を世界に発信することなどにより、より魅力的な次回トリエンナーレの開催につなげてまいりたいと考えております。
最後に、次世代を担う子供たちへの芸術教育について、今後どのように取り組んでいくのかという点についてであります。
今回のトリエンナーレでは、感性豊かな時期にある子供たちへの取り組みが重要であるという認識のもと、キッズトリエンナーレという国内のトリエンナーレでは初の取り組みを行い、子供たちがいつ来ても創作活動のできる場を設けるとともに教育委員会を通じまして県内すべての小中高等学校へ呼びかけ、学校単位での鑑賞も働きかけてまいったところでございます。
この結果、大変多くの児童生徒の皆さんがあいちトリエンナーレ二〇一〇へ来場し、現代アートに触れていただくことができました。来場した子供たちに対するヒアリング調査によりますと、多くの子どもたちが、楽しかった、おもしろかった、自分も何かを創作したくなったと回答をしております。また、学校の先生方への概要説明や鑑賞会などの開催なども通しまして、先生方の芸術文化教育への関心も高まったのではないかと考えております。
今後、こうした芽をはぐくんでいくために、キッズトリエンナーレの開催ノウハウや専門スタッフとのネットワークを継承し、教育委員会との連携をさらに深めながら、例えば地域にアーチストを派遣して子供たちの創作意欲を刺激するワークショップを実施するなど、芸術鑑賞や創作の機会を各地域へ広げていく取り組みを検討してまいりたいと考えております。
なお、先ほど五週間余りで二十六万人以上と申し上げましたが、二十五万人以上の方においでいただいております。どうも失礼しました。
- 11:◯知事(神田真秋君) 県議会におけるアメリカでの調査活動、御苦労さまでございました。
私からは、観光、特に海外からの誘客についてお答えを申し上げたいと思います。
ことし三月に策定をいたしました観光振興基本計画、これに基づきまして、近年、特に成長が著しい東アジア、とりわけ中国からの誘客の拡大を目指しまして、本県の観光資源の情報発信、あるいは現地旅行社に対する商品造成の働きかけなど、取り組みを推進しているところでございます。
今後でございますけれども、こうした本県の知名度を高めるさまざまな取り組みを継続することはもちろんのことでありますが、海外からお越しをいただく観光客の利便性の向上を図っていくこともとても重要な要素だと思っております。
そこで、年内で県民の皆様方、あるいは観光事業者、自治体などで構成をいたしますおもてなし愛知県民会議、これは仮称でございますけれども、このような組織を立ち上げ、特に受け入れ体制の整備を促進してまいりたいと考えております。
具体的に申し上げますと、この会議を通じまして、関係の皆様方、広範に御協力をいただきながら、例えば空港、主要な駅といった交通結節点の表示やアナウンス、あるいは、宿泊施設、飲食店のサービスメニューにおきまして、多言語による案内をより充実していきたいと考えておりますし、また、中国からの観光客の多くが買い物の際御利用なされる銀聯カードの加盟店をこれからさらに拡大していきたいと考えているところでございます。とりわけ、個人ビザが大きく拡大されましたので、こういうきめ細やかな対応が誘客のためにはぜひとも必要だと考えているところでございます。
私といたしましては、こうした県民と一体となった取り組みを通じまして、全県的なおもてなしの機運を醸成し、中国を初めとする東アジアからの観光客をふやすことによりまして、アジアの活力を本県の経済の活力につなげていきたいと考えているところでございます。
観光は、これからますます大きな比重を占めてくるものと思います。いろんな手を講じまして、誘客に向けて努力をしてまいりたいと思っております。
- 12:◯副議長(奥村悠二君) 進行いたします。
小山たすく議員。
〔一番小山たすく君登壇〕(拍手)
- 13:◯一番(小山たすく君) 民主党の小山たすくでございます。
私は、去る八月二十六日に民主党愛知県議員団が神田知事に提出した平成二十二年度重点事業及び平成二十三年度当初予算編成に対する提言書に記載された八項目、四十四点の提言及び財政措置に関する考え方六点の中から、歳出削減に向けた取り組みと地域主権の推進に絞り、質問をいたします。
なお、この二点については、さきの我が党代表質問においても触れられておりますので、重複する説明は割愛し、端的に県の考えを伺いたいと思います。
まず、歳出削減に向けた取り組みに対する我が党の提言では、第三者の視点を取り入れた事業仕分け方式を大胆に導入し、無駄の削減を徹底すること、また、すべての事業について、前年度踏襲から脱却し、ゼロベースから事業内容を検証することにより、部局間での類似事業や国、市町村との重複事業などを整理統合し、歳出削減を図ることとしております。
また、国の所管法人や県の外郭団体、出資団体に対する会費、出捐金などについて、優先度、必要性を検証し、支出の削減を図ること。特に県の外郭団体、出資団体については、そのあり方、役割を検証し、一層の事務事業の見直し、民間委託を進め、統廃合を促し、国に対しても同様な見直しを求めることとしております。
そこで、まず、冒頭に触れました第三者の視点を入れた事業仕分け方式の導入について伺います。
本県の歳出削減の取り組みとしては、事務事業評価という内部評価をもとにした評価制度をとっております。
この制度は、県の予算編成時における予算査定の手法、すなわち、各部局が予算要望の段階で個々の事業の必要性を記載した調書を提出し、財政課がそれら資料をもとにその事業の必要性、有効性、緊急性などを各部局からヒアリングし、予算査定を行うという手法を評価制度として再構築した制度と考えられ、部内だけでなく外部有識者による行政評価委員会委員による評価意見を付し、客観性を担保しようとしているものであります。
昨年度は、この事務事業評価によって約千六百の事業評価を行い、行革効果として約二百億円の削減効果があったと言われております。
また、千六百もの対象事業すべての事業評価調書をホームページで公開しているのは愛知県だけであり、事務事業評価のプロセスを公表する公開フォーラムを行ったのは、北海道に続き全国で二例目であることなどから、制度は一定の成果を上げ、評価されるべきものであるとも言えます。
しかしながら、九月十日、十三日に行われました公開フォーラムで明らかになったように、今回の事務事業評価の見える化は、過去平成十六年からの六年間すべての調書をホームページ上で公開しているにもかかわらず、県民からのメールでの意見が一件も寄せられることのなかった事務事業評価という制度の広報に主眼を置く余り、外部評価委員から指摘を受けた事業が今後どのようにその意見を反映させていくのかという最も肝心な点が見えないことは大きな問題であると考えます。
また、県が三百三十事業の中から主要なものとして選定した十二事業の一つが、外部評価委員の山谷座長から、事務事業評価にはなじまない事業であると指摘されるなど、必ずしも県民の期待した内容ではなかったのではないかと感じております。
確かに県の行う事務事業評価も第三者の視点は入っております。しかし、問題は、さきに述べたように、その視点がどう生かされているかということであります。そして、そのことは第三者が客観的に助言を行うのみで、指摘した事項に対する拘束力を持たないフレンドリーアドバイスとしての事務事業評価の限界であると言えるのではないでしょうか。
一方、名古屋市においては、河村市長の再議により公布はされておりませんが、市が従来行っている事業見直しに議員や市民も加わって効果や効率を検証することなどを定めた、名古屋版事業仕分けとも言える名古屋市公開事業審査の実施に関する条例が、六月議会で可決されています。名古屋市議会では、昨日、市長の再議の求めを退け、条例案が再可決されたところではありますが、河村市長の再議理由は、議員が加わると公正な審査ができるか疑問というものであり、私は、これは議会に対する冒涜であると考えております。
そもそも、二元代表制としての議会と首長は、それぞれが選挙で選ばれ、それぞれが県民、市民に対して責任を負うものであります。議会の正当性を疑うのであれば、みずからの正当性もまた疑われるということを忘れてはならないと思います。
そして、何より事業仕分けをめぐる議論は、パフォーマンスとしての事業仕分けではなく、議員とは何か、議会はどこまでの役割を担い、その責任を果たしていくべきかという、本質的な議論へと移行する時期に来ているのだと考えております。
今、事業仕分けの質問で、あえて二元代表制の話を持ち出しましたが、それは今後の議会と首長の関係が大きく変わる可能性があるからであります。
今、政府で検討がなされている地方政府基本法をめぐる議論の中で、首長優位に傾いた現行の二元代表制を修正するため、議会の権限の強化を図るべきとの指摘もなされております。その場合、議会の首長不信任決議の制度と、首長による議会解散制度の廃止に加え、議会招集権、議会費予算執行権、議事堂管理権が議長に付与され、さらに、議会にも予算の提案権を付与するか、あるいは少なくとも議会の予算修正権を制限しないような制度設計を行う必要があると指摘をされております。
私は、その際の議会における予算提案権、あるいは予算修正権のあらわれとして、事業仕分けを位置づけることができるのではないかと考えております。つまり、端的に申し上げれば、二元代表制の徹底による議会権限の強化の一つとしての事業仕分けということであります。そして、その趣旨を全うするためには、さきに述べたフレンドリーアドバイスなどの客観意見を述べる方式ではなく、議決に予算的な拘束力を持たせることで、パフォーマンスではない実効性と責任を伴う事業仕分けとすることが不可欠であると考えております。
そのための具体的な方策として、例えば予算の拘束力を担保する観点から、議決権を持つ議会の代表をメンバーとする特別委員会制とし、短期間、素人の判断とならないよう、分野ごとの専門家を交えた常設委員会として設置することが考えられます。その際の進め方として、年度の初めに、例えば、ことしは補助金、交付金関係の事業を見直す、あるいは、県関係団体のあり方を評価する等々の評価事業の選定を行い、十二月議会をめどに結論を出すとともに、その結果を次年度予算に反映させる特別委員会型事業仕分け方式というのは検討できるのではないでしょうか。
この方式で行うメリットは、現行の地方自治法上及び県条例で認められた委員会として設置をすることにより、議会の提案、議決によって設置が可能であること、そして、予算議決権を持つ議員が委員会の委員となることで、極めて強い拘束力を持った議決を行うことができるという点であります。
そこでお伺いをいたします。
この事業仕分けを行うための特別委員会は、現行制度上、設置が可能であると考えますが、まずその確認をいたします。
その上で、その際、議決に拘束力を持たせるためには、首長の予算編成権と議会の予算議決権との関係の整理など、検討すべき課題が生じるとは思いますが、県として越えなければならない課題があるとすれば、どのようなものであると考えているのか伺います。
次に、今述べましたように、歳出削減に向けた取り組みのためには、私としては、議員と専門家から成る拘束力を持った事業仕分けの導入が望ましいと考えておりますが、仮に現行の事務事業評価制度を継続した場合であっても、少なくとも制度のあり方と評価対象事業の選定については、さらなる改善が必要であると考えております。
そこで、評価対象事業の拡大について伺います。
県の事務事業評価では、補助金、交付金に関する事業評価はありますが、その補助金、交付金の交付対象である県関係団体のあり方自体に関しては、事務事業評価には含まれておりません。県の歳出削減を徹底させる観点からも、国の所管法人、県の外郭団体、出資団体に対する会費、出捐金や団体のあり方、役割を県としても検証すべきであると考えますが、県として今後の事務事業評価において県関係団体等の補助金、交付金や団体のあり方を事務事業評価に取り入れ、検証していく考えがあるのかお伺いをいたします。
次に、地域主権の推進について伺います。
まず、そもそも政府の目指す地域主権改革とは何なのかといえば、国と地方が対等なパートナーシップの関係にあることを踏まえ、国が一方的に決めて地方に押しつけるというのではなく、地域の自主判断を尊重するということであり、国と地方の役割分担に係る補完性の原則に基づき、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本とし、基礎自治体が広く事務事業を行い、基礎自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、国は広域自治体が担えない事務事業を担うことにより、その本来果たすべき役割を重点的に担っていくということが一義的な目的であります。
しかし、その真の目的は、単に制度の改革にとどまるものではなく、地域の住民や議員、行政がみずからの住む地域をみずからの責任でつくっていくという責任の改革であり、民主主義そのものの改革にあります。
地域主権が進み、権限と財源が地方に移譲されれば、地方はそれぞれ独自の判断で新たな事業などを行うことができ、地域をより効率的に活性化させることができます。このことは、地域主権における可能性への挑戦という側面であります。
しかし、その一方で、権限と財源が移譲されるということは、当然に自治体間の行政サービスや市政方針に差異が生じるということであり、その結果は、よくも悪くもそこに住む県民、市民に直接的に影響が及ぶということであります。このことが、可能性と同時に責任も共有しなくてはならないという責任の改革としての地域主権の本質であると思います。
地域主権の推進を考えるとき、私たちは地域主権が進めば地域の問題が解決するかのような観念的な楽観論を戒め、緻密で入念な準備こそが求められるのだと思います。その上で、既存の義務づけ、枠づけが行政の選択の幅を狭めていることは紛れもない事実であります。
政府は、これまでの地方分権改革推進委員会の勧告や、全国知事会の提言を実体化すべく地域主権戦略会議を設置し、ことし三月には、国と地方の協議の場の法制化と義務づけ、枠づけの一次見直し、地方自治法の一部改正案の、いわゆる地域主権改革関連三法案を国会に提出しています。
また、六月二十二日には、地域主権戦略大綱を閣議決定し、義務づけ、枠づけのさらなる見直しと基礎自治体への権限移譲、国の出先機関の原則廃止、ひもつき補助金の一括交付金化等の方針を打ち出し、来年の通常国会に地域主権推進一括法案として提出することが予定されております。
そこでお伺いをいたします。
従来は、勧告や提言で出されていても法制化されることのなかった多くの要望が地域主権戦略大綱に盛り込まれておりますが、中でも、基礎自治体への権限移譲が盛り込まれたことに対する県の評価と、愛知県が独自に行っている市町村への権限移譲の現状と今後の取り組みを伺います。
また、現在の国会の情勢を踏まえると、地域主権推進一括法案が早期に成立しないことも想定されますが、その際、基礎自治体への権限移譲に関しては、愛知県として、事務処理特例条例を用いて法律の成立を待たずに市町村への権限移譲をさらに推進すべきであると考えますが、県の考えを伺います。
次に、国の出先機関改革について伺います。
さきに述べましたように、政府の地域主権戦略大綱には、国の出先機関の原則廃止の方針が盛り込まれておりますが、その方針に従い、八月末までに各府省が移管可能と回答した事務はわずか一割弱にとどまっており、省庁の根強い抵抗があることが明らかになっております。国の出先機関改革は、当然政府が責任を持って推進すべきことではありますが、県も、知事会を通じて、国の出先機関の事務、権限の地方移管を求めていることから、県としても積極的に国に働きかけを行うべきであると考えます。
その際、出先機関の移管に伴う国から地方への人材の移管とその財源確保に関する問題など、他府県とも共通する懸念に対しては知事会などを通じて強く訴えていくことが必要でありますが、愛知県がそうした行動の先導役としてリーダーシップを発揮していく考えがあるのか伺います。
最後に、国庫補助金の一括交付金化について伺います。
政府は、地方の自由度を拡大する観点から、いわゆるひもつき補助金を廃止し、各府省の枠にとらわれず、地方が自由に使える一括交付金を公共事業などの投資分野は来年度から、経常費分野は二〇一二年度から導入する方針を打ち出しております。
この一括交付金が本格導入されることになれば、国庫補助があるからこの事業を行う、あるいは行わざるを得ないといった発想から、真に地域が必要とする事業を地方がみずからの判断と責任で選定し、選択と集中によって限られた財源を有効に活用していくことが期待されております。
その一方で、地域主権大綱に盛り込まれた記述では、当初案に比べ文言の削除や変更がなされるなど、地方の自由度確保に若干の懸念を感じるところではありますが、まずは来年度から実施が予定されている投資分野の交付金をいかに有効に使っていくのかという議論がなされなければならないと考えます。
そこでお伺いをいたします。
来年度、愛知県に一括交付金として交付されると見込まれる交付金の総額はどの程度の額になるのかお尋ねいたします。
次に、そこで交付された一括交付金の使途基準について伺います。
制度の趣旨は、国や省庁の意向にとらわれることなく、地方がみずからの判断と責任で、より必要な事業を選択し、実行していくものであります。そうであるならば、新しい一括交付金の使途を選定するに当たっては、既存の国庫補助金や省庁ごとの制約を前提とした使途基準ではなく、愛知独自の使途基準の作成がなされるべきであると考えております。
そこでお伺いをいたします。
一括交付金の使途の選定に当たっては、今までと同様に前年度の事業費ベースでの割合などをもとに機械的に配分することになるのか、あるいは、事業の必要性、有効性、効率性などをもとにゼロベースから愛知独自の基準がつくられ、事業の選定がなされていくのかお尋ねをいたします。
また、市町村など、より現場に近い声をどのように反映させる仕組みをつくっていくのかお伺いをいたします。
以上、理事者各位の明快な答弁を求めまして、壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 14:◯総務部長(永田清君) 一点目の事務事業評価についてのお尋ねのうち、まず、事業仕分けを行うための特別委員会の設置に関する御質問についてお答えいたします。
特別委員会につきましては、地方自治法第百十条で「普通地方公共団体の議会は、条例で特別委員会を置くことができる」とされており、愛知県議会委員会条例第四条で「特別委員会は、必要がある場合に、議会の議決により置く」と規定されております。さらに、地方自治法において、「委員会は、予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる」と規定されております。
御質問の特別委員会につきましては、こうした現行制度を踏まえて御検討されるべきものと考えております。
次に、首長と議会の関係につきましては、首長には専属する予算調製権があり、議会には予算議決権がありますが、これまでも予算編成を行う際には、本会議、委員会でいただきました御意見、御提案等について真摯に受けとめ、かつ慎重に検討し、各般の施策の立案、執行に努めてきたところでございます。
なお、六月に閣議決定されました地域主権戦略大綱には、地方自治法の抜本見直しが盛り込まれ、地方公共団体の基本構造について伝統的な解釈に沿った二元代表制を前提としつつ、どのような組織形態があり得るか検討していくこととされており、これを踏まえて総務省に設置されました地方行財政検討会議において、長と議会の関係も含め、地方公共団体の基本構造について検討されております。県といたしましても、その議論の動向を注視していかなければならないと考えております。
次に、県関係団体への補助金や団体のあり方などについてのお尋ねでございます。
本県が取り組んでいる事務事業評価におきましては、国の所管法人、県関係団体及び出資法人に対する補助金等の財政援助的な支出について他の事務事業と同様に、必要性、有効性、効率性の観点から検証を行っており、その際には当該団体等の活動や事業内容などを含めて検討した上で評価をしております。
また、県関係団体につきましては、平成十一年度以降、累次の行革大綱を策定し、その見直しに取り組んでまいりました。現在までに、団体数を三十七から二十へ削減するとともに、九百人の職員と約六十七億円の県支出を削減するなど、さまざまな経営改革に取り組んできたところでございます。
第五次行革大綱においても、引き続き県関係団体の統廃合や役割の見直しを検討することとしており、主たる業務が縮小しつつある労働協会、雇用開発協会、土地開発公社などのあり方の検討を行ってまいります。
次に、出資法人についてでございますが、県が二五%以上出資する法人については、外部の専門家から成る愛知県出資法人等経営検討委員会におきまして、経営状況全般について、毎年度、点検、評価することとしております。また、出資が少額な法人につきましても、出資当時からの状況変化等を踏まえて現状を総点検し、改めて出資の必要性を検証することとしております。
いずれにいたしましても、県が関与しております県関係団体等につきましては、社会情勢の変化を踏まえながら、その役割やあり方の見直しに今後もしっかりと取り組んでまいります。
次に、二点目の地域主権の推進についてお答えいたします。
まず、地域主権戦略大綱に盛り込まれました基礎自治体への権限移譲についてでございますが、住民に身近な行政は、より住民に身近な地方公共団体である市町村の事務とすることが望ましいとの観点から、基礎自治体への権限移譲は、地域主権改革の中でも重要なものの一つと認識しております。
また、大綱で基礎自治体に移譲することとされた事務の中には、平成十二年の地方分権一括法により創設された条例による事務処理特例制度に基づき、各都道府県が市町村に権限を移譲してきた事務も多数ございます。今回、大綱で基礎自治体への権限移譲が大きな柱として位置づけられたのは、そうした実績が反映されたものと考えております。
しかしながら、地方分権改革推進委員会の第一次勧告分として、移譲の検討対象となった事務は三百八十四条項であったのに対し、今回大綱に盛り込まれた事務は二百五十一条項にとどまっており、まだまだ十分とは言えない内容と考えております。
次に、本県におきます市町村への権限移譲の取り組み状況についてでございます。
愛知県事務処理特例条例に基づき県から市町村に移譲した事務は、平成十二年度当初は二百八十五事務でございましたが、平成二十二年四月一日には七百八十四事務まで増加しております。
今後の取り組みにつきましては、大綱に盛り込まれた事務以外にも、市町村に移譲したほうが住民サービスの向上や市町村行政の充実強化につながると考えられる事務もございますので、市町村の希望を踏まえ、引き続き特例条例による移譲を積極的に推進してまいります。
また、大綱に基づく権限移譲は、法令により市町村に移譲されることになりますので、県といたしましては、すべての市町村において円滑に移譲が進むよう必要な支援に努めてまいります。
具体的には、県や市町村の地方分権担当部課長を構成員とする県・市町村地方分権推進会議などを活用し、市町村や県の関係部局とも意見交換しながら、円滑な引き継ぎのための研修や説明会を開催してまいります。
なお、大綱では、基礎自治体への権限移譲に関する一括法案を平成二十三年の通常国会に提出することとされておりますので、まずは早期の法案化を期待するところでございますが、現状におきましても、特例条例で対応できるものにつきましては、積極的に市町村への権限移譲を進めてまいりたいと考えております。
次に、国の出先機関改革についてのお尋ねでございます。
八月末に示されました各府省による出先機関の事務権限の自己仕分けの結果は、出先機関原則廃止の目標からはほど遠い状況でございました。
改造内閣の発足に当たり、菅総理が関係大臣に自己仕分けの再検討を指示されておりますが、各府省の根強い抵抗を乗り越えるためには、地域主権改革を一丁目一番地と標榜したことにもとることのないよう、総理のより強い指導力が不可欠でございます。
今後、政府において、各府省の自己仕分けを踏まえ、総理を議長とする地域主権戦略会議において仕分けを行い、事務権限の地方移譲等の取り扱い方針及び実現に向けた行程などを明らかにするアクションプランを年内に策定する予定でございます。
出先機関改革が地域主権改革の具体の形としてその成果を示せるかどうかは、このアクションプランに事務権限の移譲はもちろんのこと、それに伴う必要な財源の確保をどれだけ盛り込むことができるか、それがかぎでございます。
これまでも、全国知事会から、人材の移管や財源の確保を初め、さまざまな課題につきまして提言をしてきたところでございますが、引き続き国と地方の協議を求めることによりまして、地方の意見を政府にしっかり伝えることが何より重要であると考えております。
本県といたしましては、アクションプランに地方の意見が十分に反映されるよう、本県独自に、また、近隣県とともに中部圏知事会会長県として、さらには全国知事会とも連携しながら、積極的な働きかけを行ってまいります。
最後に、一括交付金についてお答えいたします。
地域主権戦略大綱では、一括交付金について、地方の自由裁量拡大に寄与する補助金、交付金等を対象とすることが基本的な考え方として掲げられ、全国画一的な保険、現金給付に対するものや、地方の自由裁量に寄与しない義務的なものなどを除き、対象範囲は最大限広くとることとされております。
また、改革のスケジュールとしましては、投資に係る補助金、交付金等の一括交付金化は平成二十三年度以降、経常に係る補助金、交付金等の一括交付金化は平成二十四年度以降、段階的に実施することとされております。
本県の今年度の当初予算では、歳入として国庫支出金約千九百七十億円を計上しており、このうち投資分野の代表的な例であります公共事業関係は約四百八十億円でありますが、一括交付金化の具体的な対象につきましては、今後、国の予算編成過程を通じて検討することとされておりますことから、本県におきます対象や金額について、現時点ではお答えを申し上げることは困難であると考えております。
また、一括交付金の使途についてでございますが、大綱では、一括交付金の制度設計として、地方の自由度を拡大する観点から、各府省の枠にとらわれず使えるようにし、できる限り大きいブロックにくくるとされております。
しかしながら、具体的にどの補助金、交付金等が一括交付金化の対象とされるかといった議論が進んでいない現段階におきましては、本県としての対応について具体的にお答えすることは困難であると考えております。
いずれにいたしましても、一括交付金化については、対象となる事業を地方が滞りなく執行できるよう、必要な予算総額をしっかりと確保するとともに、真に地方が自由に使えるものとなるよう、今後もアンテナを高くし、必要に応じて全国知事会などとも連携しつつ取り組んでまいります。
以上でございます。
- 15:◯一番(小山たすく君) それぞれ御答弁をいただきました。その中で、それぞれ要望を申し上げたいと思います。
事務事業評価と事業仕分けのところでは、まず、事業仕分けに関しては、現行の制度上で設置が可能であるということで御答弁をいただいたと思っています。
確かに、そこは予算の編成権であるとか、議会の議決権というところは越えなければいけない課題があるとは承知をしておりますが、ただ、今の現行制度の中でも、事業評価方式というのは可能であるというふうにも私は思っていますが、ただ、これは、先ほどあったとおり議会側の話になりますので、事務事業評価のことについて要望を申し上げたいと思います。
先ほどお話がありましたところで、プロセスの可視化、見える化をされていったということは、私は、これは非常にいいことだと思っているんですが、質問の中でも触れさせていただいたとおり、意見を出した方がその意見を言って結果はどうなったかという、そこの部分がやはり一番大事だと思いますので、意見を出してこう変えたという意味での結果の部分の見える化というのをぜひ事務事業評価の中では徹底をしていただければ、公開をしていただければというようにも思っています。
もう一点の権限移譲についてでもありますが、こちらについては、愛知県が法律の定めのない中で権限移譲をされているとか、大綱にない中でも勧告以上のものを出されているということで、そこについては率直に評価をしたいというふうにも思っております。
その上で、先ほど一括法案が出たときの懸念を少し、話が出ましたけど、やはり法案で一括で来ると、今までは市町村が望むものに対して県が権限を移譲するという形であったんですが、一括で来るということになりますと、自治体によっては準備が整っていない自治体も来ることが想定されて、結果として、それはサービスが滞るとか低下をするということが起こらないとも限らないと思いますので、そうした中では、県として市町村に対するフォローをしっかりとやっていただける体制をつくっていただければというふうに思っております。
最後に、一括交付金の使途基準ということでありますが、今の状況で制度設計とか見通しが立たないのでということで、答えるのは困難だというところで答弁をいただきました。そこは確かに言われるとおりであるかもしれないんですが、そもそもの一括交付金としての趣旨としては、地方に自主財源を出して自由に使えるものをふやして、より必要なものに回していくということが本来の趣旨でありますので、そこはぜひとも県が新しい制度設計が出た段階で、それこそ前年度踏襲とかそういうことではなくて、ゼロベースから愛知独自の使途基準というものをつくっていただくことを要望して、終わりにします。
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- 16:◯三十七番(大見正君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 17:◯副議長(奥村悠二君) 大見正議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 18:◯副議長(奥村悠二君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
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午後一時二十分開議
- 19:◯議長(日高昇君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
原欣伸議員。
〔十番原欣伸君登壇〕(拍手)
- 20:◯十番(原欣伸君) それでは、通告に従いまして、二件の質問をさせていただきます。
一件目は、職員の人材育成についてお尋ねをいたします。
人材育成の重要性が増しているということは言うまでもありません。なぜか。まず、大きくとらえるのであれば、行政ニーズの多様化や地方分権の進展に伴い、職員には意識改革と資質の向上が求められています。そのためには人材育成が欠かせないからです。
また、団塊の世代の大量退職による貴重なノウハウが一気に失われようとしている。仕事はふえ、人は減るという行革ばかりが先行し、現場の対応は低下しています。財政運営はますます厳しさが増し、これまで以上に変革は求められる。そして、県民からの時代に見合ったニーズにしっかりこたえていかなければならないことなど、人材の育成こそが人的生産性を低下させることなく県民サービスの維持向上のために直結しているからです。
では、どんな人材育成が必要なのか。もちろん、県民に理解される行革は進めるべきです。しかし、行革のみで職員は成長しません。まして、県民サービスの向上につながるはずもありません。過剰勤務の一番の弊害は、人材育成がおろそかになると唱える専門家さえもいます。これからは行革と同時に、働く職員の意欲を高めなければなりません。働く職員を大切にすることも欠かせません。そのためには、職員のインセンティブを維持向上させる、それにより職員の組織を活性化、効率化することのできる人材育成が不可欠となります。
そこで、新たな人材育成の柱となる人事評価制度についてお聞きしていきます。
人事評価制度が導入されるまでを振り返ります。
まず、公務員制度改革大綱に基づいて改革は進みます。そこから、国で人事評価が試行されました。自治体にも、能力、実績を重視した新しい人事評価システムの導入が国から求められるようになります。二〇〇七年に国家公務員法が改正され、能力、実績主義が盛り込まれます。地方公務員法改正案は廃案となりましたが、自治体でも人事評価の導入が進みます。
また、なぜ人事評価が自治体に導入されることになったのか。簡単に言えば、公務員は年功的な人事管理が甘い、処遇にめり張りがない。だから、能力、実績主義を徹底し、評価を厳しくしなければならない。できる職員とできない職員との間にお金や処遇で差をつける必要があるとされたからです。
そして、本県でも職務と職責に応じた給与体系へ移行する人事評価制度がスタートしています。当然、勤務評価による客観的な人事評価も必要となります。
しかし、人事評価制度はただ導入すればよしとされるものではありません。導入するからには行政組織が真に必要とする人事評価制度であるべきと考えます。そのために構築されるべき人事評価を考えていくこととします。
まず、行政組織に必要な人事評価は、人材育成を目的とするものでなければならないことです。確かに、お金と処遇で差をつけることで一時的な効果はあるかもしれません。しかし、それは行政組織にはそぐわないものでしかありません。
どういうことかというと、民間と違い、チームワークで取り組む仕事が多い特徴があります。つまり、行政とは、全員とは言わないものの、大多数の職員がモチベーションを上げて働くことで、組織の全体的な効率化と活性化が果たされることになるものです。
よって、一部の優秀なモチベーションを上げることに特化するだけでは意味をなしません。それよりも組織全体のレベルの底上げを図るほうに重点を置かなければならないということです。人事管理のミッションである職員の能力を最大限に引き出し、組織の力を最大化する、活性化するを忘れてはなりません。
次は、職員の士気を高め、職員が納得できる人事評価でなければなりません。そのために評価基準の公表がしっかりなされているのか、評価者の能力を高める評価者訓練が実施されているのか、全職員を対象に面接が行われているかなど、職員から信頼される人事評価を構築し、職員のやる気を起こさせる必要もあります。
最後は、評価の低かった職員への対応がされる人事評価であるべきです。行政組織として、評価の低かった職員の原因究明と研修や、評価の低かった原因の通知など、アフターフォローが不可欠なことは言うまでもありません。
また、評価の低かった職員に対する今後の課題をともに考える機会を人事担当が持つことも欠かせません。成果主義がマイナスに作用すれば行政組織は崩壊する、そんな人事評価では絶対あってはなりません。
以上の観点からお聞きをいたします。
一点目は、本県の人事評価制度にはどんな特徴があり、職員の士気を高めるため、どのような評価制度となっているのかお尋ねをいたします。
二点目は、人材育成が目的となる人事評価制度が必要と考えますが、その見解と、評価制度で人材育成目的のためにどう活用されているのか、また、今後の展開をお尋ねします。
三点目は、組織全体の底上げのために評価制度で取り組んでいかなければならないことは何なのか、また、評価の低かった職員に対してのアフターフォローのこれからのあり方を含めてお示しください。
続いて、適材適所の人材配置、異動についてお聞きをいたします。
公務員の人事の世界はというと、数年間で定期的にローテーションするとイメージされます。ローテーション人事にはメリットはあります。しかし、職員の希望や能力が発揮できる適所に配置されることなく、適正な人事でなければデメリットも大きいはずです。人事異動はリスク要因と言い切る民間企業さえあるぐらいです。これからの職員減少時代をとらえ、活性化と効率化を考えるのであれば、人材配置と異動も人材育成を進める上で重要なことであるはずです。
例えば静岡県では、キャリア・ディベロップメント・プログラムが取り組まれています。内容は、主に三十代の職員が二日間で能力、適性を分析する。将来の開発研修を実施するとともに、キャリア計画を記載したキャリア調書により所属で面接を行う。その結果を踏まえて人事異動に反映している。特に専門分野を希望する職員は、能力、適性を判断した上で優先的に希望分野に配属されるというものです。
そこで、四点目をお聞きします。
本県では、人材配置、異動がどのように行われ、今後どのように進めるべきと考えているのか、静岡県の事例の見解とあわせてお尋ねをいたします。
最後の質問です。
大量退職、大量採用の今、専門的な貴重なノウハウが失われることは本県にとって大きな損失となります。そして、それが人的生産性の低下につながり、県民サービスの低下に直結します。あってはならないことです。
そこで、それぞれの部署で業務フォローが組織全体で徹底されているのか、また、どのように退職後の指導が実施されているのかお尋ねをいたします。
続いて、二件目の高校生の不登校問題と県立の通信制、定時制高校の役割についてお聞きをしていきます。
今の不登校問題は、小中学校に行く年齢の子供たちばかりがクローズアップされています。小中学校の不登校問題はマスコミに注目され、行政が対応し、地域教育の必要が唱えられ、問題視されます。
しかし、高校生の不登校問題を取り上げられることはほとんどありません。言うまでもなく、高校は義務教育ではありません。高校に進学するか否かは自由です。高校入学後も退学するか否かの自由もあります。
しかし、今や高校生の不登校問題は他人事ではなく、だれにでも起こり得る問題です。学業不振、人間関係、病気、思春期による不安定な精神状態など、ちょっとしたきっかけで起こり得るのです。その不登校になってしまった子供たちの心の中の思いも重要です。
民間の調査機関ではありますが、不登校経験のある高校三年生へのアンケート結果から、不登校のとき、本当は学校に行きたかったと答えた生徒が九七%にも数えられます。不登校の子供は学校に行きたがっているのです。勉強がしたい、友達をつくりたい、部活動に励みたい、そういった高校生が多くいることを認識して心の中の思いを受けとめ、高校生の不登校解決のための対応も重要な教育課題です。高校生の不登校問題も、小中学校の不登校問題と同様に現実を直視する。そして、根本的な問題の解決が必要と考えます。
ここで、高校生の不登校についての現状問題を提起します。
まず、高校進学率が九八%に達する中で、全国に毎年五万人以上もの不登校生が存在することは無視できません。
さらに、注視しなければならないことがあります。それは不登校が退学や留年につながるということです。全国で不登校の子供がそのまま退学となる割合は実に三二%にもなります。そして、今や社会問題とされるニート、フリーター問題に直接かかわる要因でもあることです。
国も提言しています。政府が平成二十年十二月に策定した新しい青少年育成施策大綱では、困難を抱える青少年の成長を支援する取り組みは重要課題の一つとしています。青少年の抱える困難の中にも、ニートなど社会的自立に困難を抱える青少年問題が深刻化している。こうした自立をめぐる問題の背景には、不登校や高校の中途退学など学校段階でつまずくさまざまな問題が複合的に存在していると指摘しています。
一方、自立に困難を抱える青少年の実態は明らかにされているとは言いがたい。このため、大綱では、困難を抱えた青少年の継続的な状況把握を推進することとしています。
また、平成二十一年三月国会で、青少年総合対策推進法案が提出されました。そこでも青少年の状況を把握することとしています。
さらに、内閣府では、高校退学者及び中学校不登校生徒の進路状況や必要な措置を把握するため、平成二十年度に文科省の協力を得て緊急調査を実施しています。高校退学者に関して、調査結果や困難を抱える青少年を支援する先進的な取り組みを紹介し、現状や自立を支援していくために必要な取り組みについて検討していくものとしています。
そして、この調査結果から判明しました。それは、高校を退学したり、不登校状態にあった青少年の多くは、現在困難な状況に置かれている。対人関係能力の向上や保健、医療に関するものなど、社会的自立のための幅広い支援の必要性が明確になりました。つまり、高校でつながりのあるうちに接触して、必要な支援の実施が求められているのです。
そこで、まず、二点のお尋ねをいたします。
一点目をお聞きします。
気になる数字があります。さきに指摘したとおり、不登校生徒が中退する全国の割合は三二%となっています。それに対し、本県の県立高校に通う不登校生徒が中退する割合は四〇%となっています。八ポイントの差は非常に大きいと思わずにはいられません。
そこで、県教育委員会としてこの数字をどうとらえ、どう考えているのか、見解をお示しください。また、退学後の状況把握がなされているのか、退学後のアフターフォローがどう行われているのかお尋ねします。
二点目は、一点目の質問も踏まえ、高校生の不登校解決の必要性をどのように考えているのか、今現在の取り組みと今後の方向性をあわせてお聞きします。
さて、今回、この質問をするきっかけは、不登校の女子生徒の言葉からでした。県立高校になじめず、中退することになった。でも、勉強はしたいし、自立はしなければならないので、県立の通信高校に入りたかった。結果は、学年途中で県立通信制の編入は認められない。私立の通信高校は途中編入できるけど、授業料が高過ぎて入ることができない。もうあきらめるしかないとの話からです。
ここから調査すると、県立の通信制や定時制高校が不登校経験者や退学者が再び学ぶ場として重要な役割を担っていることを再認識することになりました。
ここからは、通信制、定時制高校についてお聞きしていきます。
通信制、定時制の高校教育に期待される役割は三点が挙げられます。
まず、勤労者に対する後期中等教育機関であること、そして、不登校経験者や中退者に再び学ぶ機会を提供すること、最後に、県民学習の機会を提供する生涯学習機関であることです。
その中で、時代の流れとともに通信制、定時制高校に在学する生徒にも状況変化が生じることになりました。これからの通信制、定時制高校は、その変化を認識し、多様化する生徒のニーズにこたえることが求められています。つまり、今の時代に見合う対応が必要となります。それが高校生の不登校問題の解決の一つになるはずです。
変化は四つです。
一つ目が、学びながら働く勤労少年が減少しているという変化です。八十年代には、正社員として学びながら働く学生が約半数でした。今やその数は一割程度と大きく変わりました。
二つ目が、不登校経験者や全日制の中退者など、昼間の通学可能な生徒がふえているという変化です。
三つ目が、通信制高校のニーズが高まっていることです。私立を初め、一九九七年では百校に満たなかった数が、二〇〇九年には二百校を超えるまでになっています。また、さまざまな理由から県立の通信高校への編入を希望する声も多くなっていることも変化の一つです。
四つ目が、昭和六十三年から単位制の導入で、卒業が四年から三年でも可能とされました。通信制、定時制高校の教育制度が変わりました。
ここからは、変化に対して本県の状況を指摘いたします。
まず、昼間の定時制が二校に対して、夜間の定時制は二十七校と大きく偏っています。また、単位制導入については昼間校の二校のみで、夜間校では導入されていません。さらに、志願倍率は、昼間定時制の二倍以上から三倍以上に対して、夜間定時制は一倍台から一倍に満たない志願倍率となっています。そして、県立の通信制高校を希望する生徒が途中編入を含めふえています。最後は、教育委員会や高校サイドが私立の通信制高校との間で途中編入に対応するための連携がとれていない、サポート体制の欠如という現状もあります。変化と現状を比較すれば、課題は明確です。
以上から順次お聞きをいたします。
三点目は、定時制高校についてです。
昼間に学校に通い、単位制の導入に対応し、個人の努力で三年間で卒業もできる昼間定時制のニーズが高いことは志願倍率からもはっきりしています。
そこで、昼間定時制の希望が多い理由と、昼間定時制高校をふやす考えがあるのか、バランスを考えた昼間と夜間定時制高校の設置についてのお考えをお聞かせください。今後の単位制高校の導入の方向性についてもあわせてお聞きをいたします。
四点目は、通信制高校についてです。
現代の社会状況を考えるのであれば、途中編入も可能な体制づくりが欠かせません。生徒との面接というスクーリングや、取得してきた単位へどう対応するかという問題があることは承知しています。
しかし、真に必要とするならば、問題を想定し、課題に対応できるモデルをつくり上げれば可能であると考えます。高校中退や不登校の効果的な解決方法の一つとして、転校をしやすくする必要があるはずです。環境が変わることによって、新しい意欲がわく支援をし、高校における学ぶ権利を実質的に保障することが大切になります。
そこで、県立通信制高校への途中編入の必要性についての考えをお聞かせください。また、現在の通信制高校は名古屋と三河の二校となっています。本県として二校で十分な役割を果たしていると考えているのか、地域バランスも含めてお尋ねをいたします。
五点目は、スクールカウンセラーについてです。
不登校経験や退学する子供が多い定時制や通信制高校にサポート体制は必要不可欠だと思います。しかし、その役割を担うスクールカウンセラーについて調べると疑問を感じることになりました。
現状は、ことしから拠点校二校にスクールカウンセラーを配置、学校サイドの希望により十六校の巡回を実施しているとのことです。
しかし、スクールカウンセラーを必要とする子供は定時制、通信制にこそ多く存在するはずです。子供たちが卒業後に社会で自立した生活ができるように、この時期にこそしっかりとしたサポート体制の充実と支援が必要であるはずです。
そこで、定時制、通信制高校のスクールカウンセラーの設置についての見解と今後の対応について、最後にお尋ねをいたします。
以上、二件の質問をさせていただきました。当局の建設的で前向きな答弁を御期待申し上げまして、壇上からの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
- 21:◯総務部人事担当局長(原田泰君) 職員の人材育成につきまして、五点の御質問にお答えを申し上げます。
最初に、本県の人事評価制度の特徴についてでございます。
本県では、平成十四年度から管理職を対象といたしまして、発揮した能力を評価する能力発揮度評価と、なし遂げた業績を評価する目標達成度評価の二つの手法から成る人事評価制度を導入いたしまして、平成十七年度からはこの評価結果を給与に反映させていただいております。
能力発揮度評価は、職員のそれぞれの役割に応じて職務上求められる能力が適正に発揮されているかを評価するものでございまして、一方、目標達成度評価につきましては、民間の業績評価と同様に年度当初に目標を設定いたしまして、年度末にその達成状況を評価するものでございます。
本県の特徴といたしましては、従来から単に仕事の生産性を向上させるためのツールとして位置づけているものではなく、職員の育成も目的の一つとして制度化を図ってきたものでございます。
とりわけ、目標達成度評価の評価項目には、部下職員の育成、それから、モチベーションの向上の目標を必ず設定することといたしております。
また、困難な目標に対しまして果敢に挑戦をして、その目標の達成に向けまして頑張っている職員に対しましては、チャレンジ精神と取り組み姿勢をしっかり評価いたしまして評価点を加えるなど、職員の士気高揚にも十分配慮したものとしております。
次に、人事評価制度とこれを活用した人材育成についてお答えをいたします。
本県が既に実施をしております管理職の人事評価制度におきましては、年度初め、年度の中間時期、年度末の年三回の面談と評価結果に基づく指導、助言を行いまして、本人に対して意識改革を促し、能力開発を行わせることで人材育成を図っているところでございます。
次に、今後の取り組みについてでございます。
人事評価制度を課長補佐級以下の職員に導入するために、昨年度から試行を行っております。対象職員を拡大するに当たりましては、人材育成により力点を置いた制度としたいというふうに考えてございます。
具体的には、年三回の面談に加えまして、評価結果を本人に伝達する際にも、本人と面談の上、仕事の手順や進め方、調整が必要となる事項など、職務上の課題や努力すべき点などにつきましてアドバイスを行い、OJTにより課題等が克服できるようにしてまいります。
今後とも、人事評価制度の実施に当たりましては、人材育成が大変重要と考えておりますので十分考慮してまいります。
次に、組織全体の底上げ、アフターフォローのあり方についてお答えをいたします。
人事評価制度は、職員個人の能力や実績を評価するだけでなく、評価の過程で上司と部下が面談を通じまして仕事上の共通認識を持ち、また、組織目標を踏まえまして個人目標を設定するなど、組織の中で自分の果たす役割を認識する制度でもございます。
こうしたことから、評価制度を実施することで組織全体の底上げにつながっているものと考えております。評価制度がより一層効果を上げるためには、評価するものが個人の実績だけでなく、組織の中で果たした役割や、目的達成に向けて努力したプロセスをきちっと評価することが重要でございますので、今後、導入する評価制度の実施に当たりましては十分留意をしてまいりたいというふうに考えてございます。
しかしながら、評価が低い職員に対しましては、評価結果を説明する面談の中で、なぜ評価されなかったかの説明や、今後どうすれば改善できるかを具体的にアドバイスを行いまして、組織全体の底上げを図るためのフォローアップをしっかり行ってまいります。
次に、本県の人材配置、人事異動についてお答えを申し上げます。
本県におきましては、平成十八年の三月に策定をいたしました愛知人材育成ビジョンに基づきまして、若手職員を育成する人事異動制度を実施しております。これは、採用から八年の間に本庁、地方機関、部局間の三カ所を異動することによって、幅広い視野と知識、能力を習得させ、みずからの適性を見出させる制度でございます。
採用八年目の職員、また、主査級、課長補佐級へ昇任した一年目の職員に対しまして、将来本人が進みたい専門分野をしっかり考えさせるための研修、これをキャリアマネジメント研修といっておりますけれども、これを受講させるとともに、所属長は職員が今後進むべき分野につきまして聞き取りを行い、その適性と能力を踏まえまして、今後の人材育成や人事異動に反映をしていくことといたしております。
こうした職員の節目の時期に実施しております本県の制度は、御質問にございました静岡県と同様の制度と考えてございます。
今後とも、現在実施をしております人材育成の制度をさらに活用しまして、職員の能力と適性を的確に把握することで、適材適所の人事配置に努めてまいりたいと考えております。
最後に、大量退職後の業務上のフォロー体制についてお答えをいたします。
御指摘のとおり、現在、団塊世代の職員の大量退職の時期でございまして、ノウハウの継承、組織としての専門性を維持していくことが課題であると考えてございます。
こうしたことへの対応といたしましては、まずは、各職場におきまして、日ごろから業務の中で仕事を覚えさせるOJTを基本として考えております。
特に、土木や建築などの技術職員におきましては、技術継承が必要でございますので、ベテラン職員が中心となって、若手職員に専門分野の研修を実施するなど、OJTを補完する取り組みも行っているところでございます。
また、新規採用職員にはマンツーマンで指導、助言を行うトレーナーを配置いたしまして、早期に育成を図ることも行っております。
今後もこうしたことを引き続き実施することで、大量退職によって業務に支障が出ないようしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。
- 22:◯教育長(今井秀明君) 高校生の不登校と受け皿となる通信制、定時制高校について何点かお尋ねをいただきました。
まず、不登校生徒の中途退学する割合についてお答えをいたします。
高等学校では、欠席が長期化して不登校の状態になると進級が困難になり、中途退学に至る例が多いため、各学校では、欠席がちな生徒が不登校の状態にならないよう、個々の状況に応じた未然防止のための指導に努めております。
そうしたことによりまして、本県の県立高校の状況でございますが、全生徒に対します不登校生徒の割合は一・一%でありまして、全国の一・五%と比較すると低い状況にあります。この結果、全生徒に対する不登校の状態から中退した生徒の割合も、全国の〇・五〇%に対しまして、本県は〇・四五%と低くなっております。
しかしながら、議員御指摘のとおり、不登校の生徒のうちから中途退学する生徒が四〇%に上ることは、教育委員会といたしましても、学校の指導の結果とはいえ残念なことでありまして、憂慮しておりまして、今後も引き続き指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
なお、中途退学をした生徒の状況はさまざまでありまして、学校において把握することはなかなか難しいところでありますが、教育委員会といたしましては、各学校に対しまして、中途退学に至った生徒の個々の事情や希望に応じて、その後の進路選択などについて継続的に支援を行うよう指導しているところでございます。
次に、不登校に対する取り組み等についてでございます。
生徒が不登校に至る要因としましては、学業不振、友人関係をめぐる問題、家族関係に関する悩みなど、思春期特有のものが多く見られます。教育委員会といたしましては、このような悩みや不安を持った生徒が不登校にならないよう早い段階で対応するとともに、不登校になった生徒に対しては、一人一人に応じた適切な対応が大切だと考えております。
平成十九年と二十年度には、文部科学省の委託を受けまして、不登校等に対応するサポートチームに関する実践的な研究を行った結果、スクールカウンセラーを中心とした個々の生徒に対する組織的な支援と外部機関との連携によりまして、不登校状態の生徒が中途退学することなく復帰できたという成果が上がっております。
教育委員会では、これらの研究成果も踏まえ、引き続き各学校に対して教育相談を担当している教員を中心とした相談体制の充実に努めるよう指導するとともに、心の専門家としてのスクールカウンセラーの配置拡大や、医療機関等の外部機関との連携の促進に努めてまいります。
次に、昼間定時制に関する御質問でございますが、県立高校の昼間定時制課程は、現在、刈谷東高校と起工業高校の二校に設置されております。
昼間定時制課程では、一日の授業は原則として四時間で行われてきておりまして、不登校を経験した生徒も無理なくゆとりを持って学校生活を送ることができます。
また、昼間定時制課程は、単位制であるために留年による学習意欲の減退を防ぐことができるなど、多様な学習歴や学習の動機を持った生徒のニーズに合った課程であります。
こうしたことなどから、議員御指摘のとおり、近年、昼間定時制課程の志願者は増加しておりまして、本県の公立高等学校入学者選抜の昼間定時制課程の倍率を見てみますと、お示しのとおり、二倍程度の高い倍率となっております。
こうした状況を踏まえ、平成二十二年度の入学者選抜においては、刈谷東高校の昼間定時制課程の募集人員を四十人ふやしたところでございます。
次に、通信制課程についてでございますが、本県の通信制高校は、多様な学習歴を持った生徒が自分のペースで無理なく学習できることを重視して、一年間を通じて計画的に添削指導や年間三十回程度の面接指導を実施し、その成果を見て、年度末に単位認定を行っております。そうした中で、通信制課程の編入学については、毎年、年度末におおむね百五十名の生徒を受け入れております。
年度途中での編入学を行うためには、例えば各科目の学習等を半年で単位認定するといたしますと、現行の教育課程の大幅な見直しが必要となりますし、通年であれば一回で済む判定作業を二回行う必要が生じるなど、さまざまな状況によりましてスケジュールが過密となり、生徒の負担がふえることが懸念されます。したがいまして、現状においては年度途中で編入学を行うことは難しいものと考えております。
また、県内の通信制課程の募集状況は、平成二十二年度の場合、県立で、二校で六百四十人でありますけれども、私立高校では二千五十人となっております。
いずれにいたしましても、今後は、全日制課程の中途退学者や不登校経験者などさまざまな学習歴を持った生徒が、年度途中からの編入学も含めて、学ぶ意欲を抱いたときに学び直すことができるよう、昼間定時制課程の拡大や、通信制課程も含めた複数部制の単位制高校といった新しいタイプの学校づくりに向けての検討を進め、定時制、通信制教育のさらなる充実を図ってまいりたいと考えております。
最後に、定時制、通信制課程におけるスクールカウンセラーについてお答えをいたします。
定時制、通信制課程に在籍する生徒の中には、入学以前から人間関係や家族の問題など悩みを抱えている生徒が多数おり、担任や教育相談担当、養護教諭が中心となって一年次から相談に当たっておりますが、その内容は複雑で多様であるため、心の専門家でありますスクールカウンセラーによるカウンセリングが重要であると考えております。
昼間定時制課程や通信制課程には、従来からスクールカウンセラーが巡回指導しておりますが、夜間定時制課程については、今年度より新たに専任のスクールカウンセラーを二名配置し、巡回指導に当たったところであります。
また、スクールカウンセラーの配置がない学校については、緊急の対応はしておりますが、議員お示しのとおり、スクールカウンセラーの配置は十分とは言えませんので、今後とも配置の充実に努力してまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 23:◯知事(神田真秋君) 職員の人材育成につきましてお答えを申し上げます。
昨今の人事管理におきまして、やはり最も大きな課題の一つは、団塊の世代の大量退職に伴いますノウハウの継承という課題であります。
この大量退職でございますけれども、本県におきまして、平成十九年度末から二十四年度末のこの六年間に、職員の約四分の一、人数にいたしまして三千三百人が退職するということになります。特に、昨年度、そして今年度がその六年のうちでもピークであります。
こうした大きな大量の退職という実態を目の前にして、ノウハウをどう継承させていくかということは、さまざまなアプローチはあるわけでありますけれども、有力な一つの考え方として、長年の経験を持った方々に退職後も県に残っていただいて、後輩たちを直接指導していただくという手法であります。
このようなことから、平成二十一年度、昨年度から、とりわけ、この事業ノウハウの継承が必要な職場で常勤の再任用職員を採用いたしまして、役職職員として若手職員の指導、あるいは育成を行っていただいております。
具体的に申し上げますと、例えば一部の児童相談センターでは、そのセンター長の職を再任用の職員が担い、第一線で活躍していただいておりますし、また、県税事務所におきましては、滞納者との折衝というとても難しい仕事にこうしたベテランの方と若い職員とが一緒に当たっていただきまして、実務を通じてさまざまなノウハウを引き継いでいただこうと今行っているところでございます。
また、平成二十年度から導入をいたしております民間企業の経験者の採用でございますけれども、この採用数をこの春から大幅にふやしました。特に建築だとか、薬学といった技術職員におきましては、即戦力となるような職員を採用することによって、いわゆるベテラン職員が退職した穴を埋められるような体制づくりも進めているところでございます。
このような形でノウハウの継承に努力をしているわけでございますけれども、やはり何よりも大切なことは現場、第一線でいる若手がどんどん力を伸ばしていくことであります。そのことが最も重要なことでございます。我々もその点については十分意を用いていかなければならないと思っておるところでございます。行革でどんどんどんどん職員定数が減っている中で、職員も本当に頑張ってくれてはおりますけれども、現状に甘んじることなく、より一層職員の資質向上、スキルアップのために努力をしてまいる考えでございます。
- 24:◯十番(原欣伸君) それぞれ御答弁をいただきました。簡単にそれぞれ二件の要望をさせていただきます。
職員の人材育成については、知事の御答弁もいただき、県として必要性を強く持っているということが認識することができました。しかし、人材育成というと、我々が見ていると、それぞれの担当部局に任せた人材育成というように見受けられるところもたびたびあります。ですから、これからの愛知県の職員のために、担当部局はもちろんですが、人事担当を、全体としてしっかりとした人材育成のあり方をさらに深めていっていただきたいということをまず一点要望させていただきます。
そして、高校生の不登校問題につきましては、現状の重大性を認識しているものと理解できました。その中で、以前、定時制と通信制の独立校を愛知県としてつくっていくことも必要とされたということを記憶しております。やはりそれだけ愛知県としては重要性を持って取り組んでいることは承知しておりますが、今の答弁からもいただいたように、この子供たちにとって高校で学ぶ場というものは、将来の上で、この愛知県を担う子供たちのためにも非常に重要な学びの場であることは間違いありません。
教育長が御答弁されたように、独立校の考えもさらに推進していただきながら、これからの高校生の不登校問題もさらにレベルアップして進めていってほしいということを要望いたしまして、私からの質問を終わらせていただきます。
- 25:◯議長(日高昇君) 進行いたします。
水谷満信議員。
〔二十二番水谷満信君登壇〕(拍手)
- 26:◯二十二番(水谷満信君) 通告に従い、順次質問をしてまいります。
第一点目に、豪雨対策についてお伺いいたします。
二〇〇〇年九月の台風十四号と秋雨前線の影響で、県内では十カ所の堤防が決壊、床上浸水二万七千六百六棟、床下浸水四万一千百五十四棟の被害があり、愛知、岐阜、三重、静岡の東海四県における死者は十人に上りました。
東海豪雨から十年が過ぎ、国や地方公共団体、NPOなどによるシンポジウムやパネル展示、慰霊祭などが各地で開催され、そして、メディアにおいてもさまざまな報道がなされました。その中でも目を引いたのが、中部地区の各県の河川整備率を示した新聞記事でした。
その内容は、見出しに、河川豪雨対策五〇%台、整備率中部六県進まず。その記事の中に、おおむね五年から十年に一回発生する豪雨に対応できる河川区間の割合を整備率とし、河川整備率の対象となるのは河川の大半を占める各県の管理区間で、山中などで水がふえる危険性のない場所を除いたもので、二〇〇九年度末時点で愛知県五三・一%、岐阜県五二・二%、三重県三八・六%、長野県三七・九%、福井県四二・四%、滋賀県五五・五%。県により差の開く整備率、依然と進まぬ河川整備というもので、東海豪雨で大きな被害を出した愛知県は、十年前と比べ五・三ポイント、堤防が決壊した新川や流域被害を受けた天白川に集中投資したと報じています。
そこでお伺いいたします。
土木関係予算が削減される中、整備は人口密集地が優先され、河川の幅を広げる工事などでは近隣の土地を買収する必要もあることから、改修に手間取っているとのことですが、最近の河川の整備率はどうなっているのかお示しください。
次に、インターネットに目を向けてみますと、国土交通省庄内川河川事務所では、東海豪雨災害を振り返り、強いまちづくりに向けて沿線市町、愛知県、国土交通省で東海豪雨十年実行委員会を組織することで、災害を継承し、備えの必要性を地域で一体となって考えていくと述べています。
一方で、私の地元の天白川においては、なかなか進まない河川整備にいら立ちの声が聞かれます。激特事業の残事業がようやくことしで終了し、十年という長い時間が過ぎているのに、その後の計画事業の進展が見られないということです。このような現状では整備計画が計画倒れになりはしないか、整備計画が変更されることにより、さらに十年、二十年と計画が延びるのではないかとの不安の声が聞かれます。
また、私の住む野並地区は天白川、藤川、郷下川に囲まれた地域であり、東海豪雨の際、ポンプで幾ら天白川へ内水をくみ出しても、郷下川や下水から次々と水があふれ出したことによりポンプが停止したため、甚大な被害を受けました。その後、天白川、植田川流域において、名古屋市の内水対策として雨水の貯留管や貯留槽を数々設置し、また一部の主要道路には雨水浸透ますを至るところへ設置を行いましたが、しかし、思いのほか進まず、天白川の整備計画により被害者の不安は十年という長い月日だけでは変わることはありませんでした。
そこでお伺いいたします。
天白川における今後の整備計画をお示しください。
さきに名古屋市における内水対策の例を挙げましたが、河川整備計画は長期にわたるもので、短期に行うには限界があります。そこで、内水対策について、東京都の取り組みを御紹介いたします。
東京都では、平成十七年九月、杉並区、中野区を中心に六千棟に及ぶ浸水被害が発生したことを契機として、時間五十ミリを超える局所的な集中豪雨に対する取り組みについて、基本方針の策定を定めて対策を推進するエリアを選定し、床上浸水防止策や生命を守る対策、公民の役割分担の明確化など、ハード、ソフト両面の方向性を示した東京都豪雨対策基本方針を平成十九年八月にまとめました。
豪雨対策の目標として、おおむね三十年後、長期見通しとして、都内全域においておおむね時間六十ミリの降雨までは浸水発生を解消することなどを目指し、豪雨対策の主な内容は、河川整備による大規模水害の防止策の推進、下水道整備によるはんらん防止策の推進、雨水流出を抑える流域対策の強化、浸水被害を軽減する家づくり、まちづくり対策の実施、都民の生命、身体を守る避難方策の強化を進めるとしています。
また、東京都全体での連携した貯留浸透事業や雨水流出抑制型下水道などの雨水貯留浸透施設の整備、拡大を図り、時間雨量五ミリ程度を吸収するとしています。
そこでお伺いいたします。
東京都では、区、市町村とともに流域一体となった治水対策を実施していますが、本県における取り組みはどのようになっているのかお伺いいたします。
次に、第二点目に、児童虐待対策についてお伺いいたします。
さきに、厚生労働省から、平成二十一年度に全国の児童相談所が対応してきた児童虐待相談の件数が発表されました。その件数は四万四千二百十件で、集計を始めた平成二年度から十九年連続で増加し、過去最多を更新したとのことです。
厚生労働省は、虐待被害そのものがふえている可能性や、虐待への社会認識が高まっていることから考えられると分析していますが、増加し続ける児童虐待の現状を前に、この国の親子や家庭はどうなってしまったんだろうと不安を感じるのは私だけでしょうか。
児童虐待は、身体的な暴行である身体的虐待、育児放棄と言われるネグレクト、性的な加害行為等を行う性的虐待、暴言や差別等を行う心理的虐待に分類されていますが、どのような虐待を受けたとしても、子供は身も心も深く傷つけられています。繰り返し受けた虐待により非行に走ったり、さまざまな問題行動を示す子供たちも多いと聞いています。
そして、最悪の結果、児童が死亡した事件の報道も後を絶ちません。幼くして亡くなった児童の無念さ、つらさを思うと本当に心が痛みます。
このような深刻な事件が私の地元でも発生しています。この六月下旬に名古屋市天白区在住の夫婦が、当時四歳の長女に食事を与えないなどの育児放棄により、意識不明の重体にさせたとして、保護責任者遺棄致傷容疑で逮捕されたという事件です。
この長女は、体重が四歳児の平均の半分ほどの七キロしかなく、脳も萎縮しており、意識不明のまま回復の見込みはほぼないと言われています。母親は、仕事に疲れて育児をする気がなくなった、病院に連れていくことは思いつかなかったなどと話しており、夫婦ともに子供の面倒をほとんど見ない状況であったようです。
また、この家庭は地域から孤立しているだけではなく、同居している父方の祖父母とのかかわりもなく、祖父母を含めて周囲は長女が危険な状態であることが全くわからない状況であったと報道されています。
また、この七月末には、大阪市で三歳と一歳の姉と弟が親から一カ月以上マンションに置き去りにされ、ともに死亡するという痛ましい事件がありました。非常にショッキングな内容であり、国民に大きな影響を与えたことはまだ記憶に新しいところです。この事件でも、母親は、常日ごろからほとんど子供の養育を行っていないことが明らかにされました。
また、住民から虐待通報を受けた大阪市児童相談所が何度も家庭訪問したものの、児童の安全確認ができなかったことから、その調査が不十分であったという指摘がなされています。
このように、ネグレクトと言われ、児童が死亡するような深刻な児童虐待事件が相次いでいますが、こうした新聞で大きく取り上げられる特殊な事件だけでなく、身近には、近隣の住民がネグレクト等の不安を感じ、支援をしようとしても地域とのかかわりを拒否するような難しい事案が多くあると聞いています。
私の地元でも、幼いころから真夜中においても長時間にわたり大きな声でどなられることや、小学校を休みがちで、余り面倒を見てもらえない子供がいる家庭がありました。保護者も人と接するのを避け、家に閉じこもることもあり、学校の先生や近所の人たちが心配して働きかけても、怒るように反論してそれを拒否し、近所に住む祖父母は成人した親だからと無関心でした。対応に苦慮した地元の方々から私も相談を受けることがあるのですが、どの程度の虐待の事実があるのか、子供を保護者から切り離したほうがよいのかなど、今でも近隣の方々と苦慮しています。
こうしたネグレクト等の虐待を行ってしまう家庭は、地域から孤立していたり、家庭内にさまざまな問題を抱えており、その対策や支援はなかなか難しいとは思いますが、行政としては常に、児童にとって何が最善であるかを念頭に、児童の安全確認や一時保護、さらには家庭への支援についてしっかりと対応していかなければならないと思います。
そこで、以下三点についてお伺いいたします。
初めに、児童の安全確認の方法についてであります。
大阪市の事案では、通告を受けた児童相談所の安全確認が不十分であったという指摘がありますが、県ではどのように安全確認を行っているのかお伺いいたします。
二つ目は、児童の一時保護についてであります。
深刻な虐待事案等については、児童相談所は子供を保護者から引き離す一時保護ができるとされていますが、その判断はどのようになされているのかお示しください。
三つ目は、地域から孤立し、みずから支援を求めない家庭において、ネグレクト等の児童虐待が危惧される場合の対応についてです。
県は、このような家庭に対してどのような取り組みを行っているのかお伺いします。
次に、第三点目に、県営住宅における生活基盤対策についてお伺いいたします。
日本の産業と経済の成長過程において、企業は労働力を地方に求め、地方からは仕事を求めて多くの人々が大都市圏へと流入し、よりよい生活環境を求めるとともに、モータリゼーションと交通機関、交通網の発達、核家族化の進展、そして、ニュータウンやベッドタウンなどがつくられ、その一方で、山間、離島などにおいては過疎化と高齢化が進みました。
愛知県においても同様に、経済と産業の成長過程で全国から多くの人口流入があり、県内各地で集合住宅の建設が行われました。当初は、集合住宅の出現で急激な人口増加によりマンモス校と呼ばれる小中学校が出現するとともに、近隣には個人店や商店街などが軒を並べ、その後、便利で品ぞろえのよいスーパーが進出しました。
しかし、このように急速な発展を遂げたまちは、四十年から五十年が過ぎた現在、高齢化の波を急速に突き進むとともに、低廉で良好な住環境を県営住宅に求めた母子家庭や外国籍の入居者などの増加によりさまざまな問題に直面しています。
私の住むまちにも幾つかの県営住宅がありますが、ここ数年、建てかえの計画により入居者募集の停止が行われ、高齢化はより急速となっています。
県営住宅にお住まいの方のお話では、高層階の居住者や自治会の役員、共益費の収受担当の中には、高齢で身体に不自由を感じる方がいますが、休みながらゆっくりと長時間をかけて階段を上り下りしているとのことでした。
そこで、以下三点についてお伺いいたします。
まず初めに、入居募集に当たっては、高齢世帯等福祉向けの募集があるため、県営住宅の高齢者化は避けられないものと考えますが、現在の入居者の年齢比率及び高齢者世帯の入居状況はどのようになっているのかお示しください。
次に、耐用年数による建てかえが計画されれば長期にわたりますが、その間も高齢化は進み、身体の不自由な方の増加も必然的となりますが、エレベーターの設置計画はどのようになっているのかお伺いいたします。
三つ目に、入居者の若返り策として、一部に新婚世帯の県営住宅への優先入居はありますが、入居者の若返り策としての計画をより一層進めるべきだと考えますが、御所見をお伺いいたします。
さきにも述べましたが、県営住宅などの建設により、当初は個人店や商店街が多く見られましたが、子供が成長し独立をするとともに高齢化と人口減少が進み、近隣の商店から大型店へと移行したため、買い物弱者と呼ばれる高齢者をしばしば見かけるようになりました。
この買い物弱者と呼ばれる人々は交通弱者とも言いかえられるかもしれません。住まいから数百メートル離れたバス停へ十五分も二十分もかけて歩き、一時間に一本程度来るバスを待ち、さらに時間をかけてスーパーでの買い物、重い荷物を持って同じ道を帰ることとなります。その中には、県営住宅の五階にある自宅までさらに時間を要して帰ることとなります。
また、ある高齢者の方は、身体が弱り、車を運転するのが怖いと言います。私は、では、車を処分して運転免許証を返したらと言うと、ここは高齢者にとって都会の中の陸の孤島、車がなければ生きていけないと漏らします。この方のように、高齢になっても何か事があった場合の移動手段として車を所有し続ける高齢者がまだまだいらっしゃるとのことでした。
もちろんですが、車の所有は一家に一台から一人に一台の時代ですから、県営住宅内と民間の駐車場は不足した状態です。ここからあふれた車の行き場所はどこに行ったのか。言うまでもなく生活道路が駐車場となり、時として消防車、緊急車両の行く手を阻む結果を引き起こすこともあります。
そこで、以下二点についてお伺いします。
このような高齢者の買い物弱者とも呼ばれる方にとって、インターネットの通販やカタログ通販などを利用することは御存じですが、なれや親しみがないため利用ができないとのことです。そこで、県や自治会の取り組みがあればお示しください。
次に、自動車などの移動手段を持たず、身体の不自由からひきこもりがちな高齢者がいるとお聞きします。地域の皆さんも病気や孤独死を早期に発見するために努力していますが、解決とは至っていない状況です。今後の対応策についてお伺いし、私の壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 27:◯建設部長(川西寛君) 豪雨対策についてのお尋ねのうち、まず、最近の河川整備率の状況についてお答えを申し上げます。
県が管理しております河川の全延長約千九百キロメートルのうち、沿線の人命、財産を水害から守る必要がある区間約千三百キロメートルを対象としまして、計画的な改修を進めているところでございます。
このうち、人口、資産が集中し、被害低減効果が高い区間や過去甚大な被害が発生した区間につきまして重点的に整備を進めており、平成二十一年度末時点の河川整備率は、議員御指摘のとおり五三・一%となっております。
また、ここ数年の河川整備率の推移、進捗状況でございますが、毎年〇・三から〇・五%を維持しているところでございます。
次に、今後の天白川の整備計画についてお答え申し上げます。
天白川では、今後三十年間の河川整備の目標、工事実施箇所などを定めた河川整備計画を昨年三月に策定をいたしました。
具体的には、東海豪雨と同様の降雨による河川のはんらんを防止しますとともに、内水によっても市街地の住宅で床上浸水が生じないことを目標としておりまして、今後、この計画に基づき河川を整備してまいりたいと考えております。
具体的には、今年度までに野並地区を含む河口から野中橋までの区間につきまして整備を完了させる予定でございます。また、来年度からは計画に位置づけました背後地に人口、資産が集中し、万が一破堤した場合に甚大な被害が発生するおそれがある野中橋から植田川合流点までの区間、延長で約二・三キロメートルでございますが、ここを重点的に整備する計画でございます。
なお、整備に当たりましては、現在の河川の幅員を最大限活用し、新たな用地を取得せず、効率的な事業執行に努めてまいりたいと考えております。
最後に、流域一体となりました治水対策の本県における取り組み状況についてお答えを申し上げます。
都市部の河川におきましては、近年の局地的豪雨の増加などによりまして、河川の整備だけでは浸水被害の解消が難しい状況にございます。このため、県では、浸水被害対策をハード、ソフト両面から市町村などの関係者と共同して進めているところでございます。
例えば都市化の進展が著しい新川流域におきましては、昭和五十四年から国、県と関係市町が総合治水対策協議会を設置いたしまして、河川の整備とあわせ、貯留浸透施設の整備、普及に努めてきているところでございます。その後、平成十二年に発生をいたしました東海豪雨を受けまして、さらにこの対策を強化するため、法に基づきます特定都市河川流域の指定を受け、下水道事業者も加わり策定をしました流域水害対策計画に基づき、排水施設を新たに整備いたしますとともに、開発面積が五百平方メートル以上の行為に対しては、開発者に貯留浸透施設を法に基づき設置していただいているところでございます。
同様に、昭和五十七年より総合治水対策を進めております境川流域につきましても、対策を一層強化するため、特定都市河川流域の指定を目指しているところでございます。
一方、天白川の流域でございますが、河川整備計画におきまして、雨水貯留やため池の改修の実施、雨水をためる機能を有します農地、森林などの保全や、雨水貯留タンクの設置などへの支援、地域住民の防災意識の啓発など、ハード、ソフト両面での対策を推進していくことにしておりまして、本年度から実施に向けて関係市町と協議を始めたいと考えております。
以上でございます。
- 28:◯健康福祉部長(野村道朗君) 児童虐待対策について三点にわたり御質問をいただきましたが、まず、第一点目の、虐待の通告を受けた場合の安全確認についてでございます。
県の児童相談センターでは、地域住民の方などから児童虐待通報があった場合、市町村と協力しながら家庭訪問等を行い、原則として四十八時間以内、直接目視によって当該児童の安全を確認することを徹底しているところでございます。そのためには、夜間や早朝など時間帯をずらした家庭訪問を行ったり、近隣住民、児童委員、住宅の管理者などの関係者に調査の協力を求めたりしているほか、ケースによっては警察の立ち会いを要請しているところでございます。
なお、今回の大阪の事件では、住民票もなく、居住者が特定できない状況であったことが児童の安全確認の徹底が不十分になった原因であるとも言われております。この事件を受けまして、厚生労働省から改めて児童の安全確認の徹底等について要請がございまして、県では、児童相談センター長会議で、大阪市の事件のような場合における児童の安全確認の方法とか、その徹底につきまして、改めて確認をしたところでございます。
次に、一時保護の判断についてでございます。
児童を一時保護する措置は、児童福祉法によりまして、児童相談所長が保護者の同意を必要とせずに行うことができると、このようにされております。しかし、一時的ではございましても、強制的に親子関係を分断するものでございますので、その実施に当たりましては適切な判断が重要となります。
一般的に速やかな一時保護が必要とされるのは、生命の危険に結びつきやすい乳児への虐待や首絞め、頭部打撲等の危険な行為、性的な虐待や重篤なけが等、既に心身に重大な結果が生じている場合、子供自身が保護を求めている場合等が挙げられるところでございます。
一時保護を行う場合には、児童の生命等の安全を最優先に考え、正確な情報の収集に努めますとともに、その判断の客観性、的確性を高めるために、厚生労働省のアセスメントシートを改良した愛知県版のシートを作成、活用いたしまして、迅速で適切な判断を行うよう努めているところでございます。
最後に、地域から孤立した家庭への取り組みについてでございます。
地域から孤立し、みずから援助を求めようとしない家庭におきまして、ネグレクト等の児童虐待が疑われる場合には、まず、市町村や児童相談センターが地域住民の協力を得るなどして、その状況を確認しております。その結果、児童の生命の安全が脅かされるなど深刻な状況にあります場合には、直ちに一時保護や施設入所の対応を行っております。
一方、在宅での対応が可能であると、このように判断されれば、市町村に設置をされております要保護児童対策地域協議会を中心に、県の児童相談センターも含めた関係機関が情報を共有しながら連携して、粘り強く当該家庭を支援していくことになります。
例えば子供の発育面につきましては、母子家庭や保育所担当の部署、保護者の心の健康につきましては保健所、家庭の経済的な問題につきましては生活保護担当の部署等がそれぞれかかわり、さまざまな方面から支えていくことになります。
また、このような家庭は地域からの働きかけをなかなか受け入れられずに、さらに孤立したり、被害感情を抱いてしまい、援助を拒否するような悪循環に陥る危険がございます。そのため、児童相談センターがこうした家庭の置かれた立場に配慮いたしました適切なかかわり方についてのアドバイスを関係機関に行いまして、支援を受け入れていただけるよう取り組んでいるところでございます。
以上でございます。
- 29:◯建設部建築担当局長(金田健君) 次に、県営住宅における生活基盤対策についてお答え申し上げます。
まず、県営住宅の入居者の年齢比率でございますが、平成二十一年十月一日現在において、二十歳未満の方が二一・〇%、二十歳から三十九歳までの方が二四・一%、四十歳から六十四歳までの方が三一・一%、六十五歳以上の高齢者の方は二三・八%となっております。なお、県全体での六十五歳以上の高齢者の方の割合は、平成二十一年十月一日現在で一九・七%となっておりまして、県営住宅の高齢者の方の割合は、県全体と比べて四・一ポイント高くなっております。
次に、県営住宅の高齢者の世帯の状況でございますが、平成二十一年十月一日現在において、世帯主が六十五歳以上の世帯の割合は四二・八%となっております。また、六十五歳以上の単身世帯の割合は一一・九%となっております。県全体といたしましては、平成十七年の国勢調査になりますが、世帯主が六十五歳以上の世帯の割合は二四・〇%、六十五歳以上の単身世帯は六・一%となっておりまして、いずれも県営住宅における高齢者の世帯の割合は、県全体に比べてかなり高いものになっております。
続きまして、エレベーターの設置計画についてのお尋ねでございます。
現在、新たに建設する三階建て以上の住宅につきましては、すべてエレベーターを設置することとしております。また、既設の住宅につきましては、六階建て以上の住棟はすべて設置済みでございますけれども、平成六年度以前に建設しました五階建て以下の住棟につきましては、エレベーターを設置しておりませんでした。このため、高齢化の進展に伴うバリアフリー化対策として、平成十四年度から既設住棟にエレベーターを設置する改善工事を実施することとし、平成二十一年度までに十八棟で設置してまいりました。今後も配置計画上、新たにエレベーターが設置可能な住棟で、建てかえ予定団地を除きます三十六棟について、順次設置してまいります。
次に、県営住宅の入居者の若返り策についてのお尋ねでございます。
県営住宅では、世帯主が六十五歳以上の高齢者の世帯の割合が平成十七年では三六・二%であったものが、平成二十一年度では四二・八%となるなど、高齢化が急速に進んでおりまして、一部の団地においては自治会活動にも支障が出ていると聞いております。
このようなことから、県営住宅に若い世帯の入居を促進し、自治会活動など団地コミュニティーの活性化を図っていくことが重要な課題であると考えております。
現在でも既に新婚世帯及び子育て世帯などの優先入居制度を実施しておりますが、今後も若い世帯の入居を一層促進できるよう、募集方法などについて検討してまいります。
次に、高齢者を初めとする買い物弱者に対する県や自治会の取り組みについてのお尋ねでございます。
自治会の取り組み事例といたしましては、天白区において、県営住宅を含む地域の自治会が県営住宅に隣接するコミュニティーセンターの敷地を活用し、青空市場を毎週開催している例がございます。
この青空市場では、地元名古屋市内の生産者が育てた季節の野菜や県内外の出店者によります野菜、魚介類などが並べられ、高齢者の方々を中心に多くの買い物客が利用してみえるとお聞きしております。
県といたしましては、県営住宅、自治会からこうした活動についての相談や提案があれば、敷地の利用など、できる限りの協力を図ってまいりたいと考えております。
最後に、病気や孤独死を早期に発見するための対応策についてのお尋ねでございます。
県営住宅にお住まいの六十五歳以上の単身の世帯は、平成二十一年現在約六千二百世帯、入居者全体の一二%ほどとなっており、今後もさらに増加すると見込まれます。
高齢の単身の方が安心して県営住宅で暮らしていただくためには、住宅への訪問などによる安否確認など、見守り体制の確立が今後の重要な課題であると考えております。
このため、現在、住宅管理事務所が行っております施設の巡回等の業務にあわせまして、単身の高齢者の方の住宅を訪問し、安否確認を行うなどの見守りのための方策を検討していきたいと考えております。
以上でございます。
- 30:◯知事(神田真秋君) 児童虐待についてお答えを申し上げたいと思います。
昨今、心を痛める暗いニュースが多い中でありますけれども、児童虐待によって小さなお子さんが亡くなるというニュースに接しますと、本当に胸を締めつけられる思いになります。
特に、年端もいかない小さな子供がそういう目に遭うということの絶望感を考えると、本当にこちらの気持ちまでなえてしまう、やるせない気持ちになるところでございます。そういう子供を少しでも少なくしなければならないと、これは社会共通の願いだと思います。
しかし、対策はすこぶる難しいというのも現実でございまして、通り一遍での対応ではなかなかこれを回避することができません。行政といたしましても、一歩も二歩も踏み込んだ対応が必要だと考えております。
そういう中で、本県では、試行錯誤でございますけれども、さまざまな取り組みを行ってまいりました。例えば、これは約十年ほども前からでございますけれども、全国に先駆け、児童相談センターに専門家である虐待対応弁護士を配置いたしましたり、あるいはこれは昨年度からでございますけれども、警察官のOBを配置いたしましたり、安全、保護のため、あるいは適切な対応のために、こうした専門家の力をかりるということも本県としてはやっているところでございます。
しかし、そういうことだけで回避できるものではなく、究極は、お尋ねにもありましたとおり、多くの皆様方のお力をかりなければならないと思っております。職場の力もそうでありましょうし、地域の力もそうであります。それから、行政だけではなく民間のさまざまな力もかりなければならないと思っておるところでございます。地域社会全体でとにかくこの問題について何とかなくそうという機運を高めていかなければならないと思っているわけでございまして、そうした環境づくりにいかに力を入れていくかがこれから県の課題だと考えております。
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- 31:◯三十八番(神戸洋美君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 32:◯議長(日高昇君) 神戸洋美議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 33:◯議長(日高昇君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時四十五分休憩
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午後三時四十分開議
- 34:◯副議長(奥村悠二君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
須崎かん議員。
〔十二番須崎かん君登壇〕(拍手)
- 35:◯十二番(須崎かん君) 通告に従いまして、マラソンフェスティバル(仮称)の開催について質問いたします。
マラソンの歴史は古く、初のマラソン競争が行われたのは一八九六年、アテネで開催された第一回オリンピック大会であります。そのころは四十キロメートル以上も走り続けるという過酷さから、女性のフルマラソン参加は認められておりませんでした。ようやく女子のフルマラソンが国際陸上競技連盟公認で開催されたのは、一九七八年の東京国際女子マラソンであったということであります。
その六年後に、一九八四年、第二十三回ロサンゼルスオリンピックにおいてようやく女子マラソンがオリンピックの正式種目となりました。以後、女子マラソンは急速に発展し、記録の向上にも目覚ましいものがあります。
名古屋国際女子マラソンも一九八〇年に二十キロメートルロードレースとしてスタートし、第五回からはフルマラソンとなり、東京、大阪と並び、国際大会の代表選考レースとしてきょうまで発展を続けております。その間、数々の名勝負が展開され、勝負が競技場までもつれ込むことが多いことから、マラソンファンからは逆転の名古屋とうたわれているそうであります。
日本人は、もともとテレビでマラソンや駅伝を熱心に観戦するなど、感動的なドラマが生まれるスポーツイベントを好む国民だと思います。しかし、走ることに関しては、実際自分で走ることは苦手な人が多く、走ることが好きかどうかと聞かれれば、どちらかというと嫌いな人のほうが多いのではないでしょうか。
しかし、いろいろな理由でジョギングやランニングを開始する人も多いようで、その理由は、大きくフィジカル面とメンタル面の二つに分かれると思います。
まず、フィジカル面での理由は、ダイエットやメタボリック対策という現代人にとって根深く切実な問題を解消するためであります。そして、メンタル面での理由は、仕事や人間関係でたまったストレスを解消するためであります。また、例えば未婚の女性が三十歳を超える前にホノルルマラソンにチャレンジするなど、人生の転機に走ることを選ぶ人も多いようであります。ダイエット、メタボ対策、ストレス解消、人生の転機と、恐らくほとんどの人がいずれかに当てはまるように思えます。
このように、ジョギング等のスポーツを行うことは、健康の保持増進、そして、体力の向上に資するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会を形成し、心身の両面にわたる健全な発達に不可欠なものとなっております。
マラソンの競技人口についても、日本陸上競技連盟公認コースを使って行われるフルマラソンに限ってみても、平成十六年に約七万八千人だった参加者は、平成二十一年には約十六万六千人と、約二倍にふえております。女性の参加者においては、平成十六年に一万二千二百三十六人だったものが、平成二十一年には二万九千七百十九人と、約二・四倍にふえております。女性のフルマラソンへの参加率の増加が顕著になっています。
ところで、美しくて速い、そして、しんが強い、ランニングに魅せられた心身ともに健康でおしゃれな女性ランナーのことを最近では美ジョガーというらしいですが、その代表とも言える野口みずきさんの言葉に、走った距離、努力は裏切らないというものがあります。
野口選手は、皆様御存じのとおり、二〇〇四年に開催されたアテネオリンピック女子マラソンの金メダリストであります。彼女は、練習はつらいけど、それをやり遂げた後の最高の充実感が得られる。また、走ることはつらくなったり、情けなくなったり、悔しかったりといろいろな思いが交錯しますが、でも、それを乗り越えて頑張るからこそ、次こそはという思いが生まれ、また新たな目標に向かって突き進めるというとても重みのある言葉を述べられております。これは、エリートランナーのみが感じるものではなく、ランニングに魅せられたすべてのランナーの共通した思いでもあります。
さて、最近のマラソンブームに相まって、平成十九年に始まった東京マラソンは、「東京がひとつになる日」のスローガンのもと、大成功をおさめております。東京都心の名所をめぐるコースが人気で、平成十九年二月、それまで百人程度のエリートランナーだけで行われていた大会が市民ランナーに門戸を開く形で衣がえをして、第一回大会が開催されました。
第一回大会から定員約三万名に対して、九万五千人を超す方々が参加を希望し、第二回大会では応募総数が約十五万人、そして平成二十一年開催の第三回大会では、その数二十六万人、平成二十二年開催の第四回大会では三十一万人、平成二十三年開催予定の第五回大会では、定員三万五千名に対して参加申し込み数三十三万五千人を超え、抽せん倍率が約九・六倍となっている現状にあります。
こうした中、石原知事定例記者会見では、これだけの人気になったので、今後はもう少し参加者数をふやしたいと、将来的に定員をふやす意向を示したそうであります。
制限時間三時間から四時間で行われるエリートランナーの大会に対して、七時間で行われている東京マラソンの本年の大会における完走率は非常に高く、九四・一%となっており、十倍近い難関を突破して出場した参加者にとって、充実したレースになっているようであります。
また、東京マラソンは、地球温暖化対策として、東京マラソングリーンプロジェクトを推進しております。二酸化炭素の排出抑制を努めた大会運営を行うとともに、大会開催を通じて環境に関する意識啓発、行動喚起を促進する活動を行っております。
さて、日本人は、流行に敏感で新しいものが好きでありますが、それにしてもかなりの人気ぶりであります。好評の要因はさまざまでありますが、一つは、マスメディアが東京マラソンを盛んに取り上げたことが挙げられます。人気タレントや女子アナウンサーが参加したということなども大きな話題となりました。
また、メディアを通さず、じかに東京マラソンに接した人々も大きな魅力を感じているようであります。東京マラソン当日、大勢の観衆の方々が実際に銀座のど真ん中で三万人のランナーを見たり、あるいは知り合いランナーを応援したりしました。大勢の方々が老若男女、さまざまな人が走るマラソンというものに素直に感動し、大いに刺激を受けたものだと思います。このように、東京マラソンは市民に元気を与える恒例イベントとして定着しつつあります。
また、東京マラソンは、給水やコース沿道の整理など、ランナーが安全かつ快適に走ることができるよう、一万人ものボランティアの方々がサポートする体制を整えられたことや、オリンピックなどの国際大会の代表選考レースと位置づけられているとともに、東京の名所めぐりを多くの人が観戦するなど、マラソンをする、見る、支えるというさまざまな形態で参画できるスポーツ大会となっております。
こうした中、東京マラソンの成功を受けて、大阪でも平成二十三年十月に三万人のランナーが参加する第一回大阪マラソンの開催が決定しております。府民、市民のさまざまな可能性を引き出すことで、スポーツ振興や社会貢献に結びつく仕組みを構築したり、これまでのマラソン大会のあり方とは一線を画した新しい市民マラソンのモデルとして、大阪の都市の魅力の発信や地域コミュニティーの活性化に寄与することを大会の目的に据えて、準備を進めているようであります。
海外のレースに目を向けますと、毎年十二月にハワイで開催されるホノルルマラソンが有名であります。ホノルルマラソンは、三十年以上の歴史を誇るアメリカでもしにせに数えられるマラソンレースの一つであります。昨年度、二万三千人余りのエントリーのうち、六割以上に当たる一万四千四百人が日本人の参加者であります。近ごろでは、ホノルルマラソンツアーの予約キャンセル待ちが百人ということも珍しいことではなくなりました。
また、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、シカゴ、ボストン等、国際都市と言われる世界の大都市では、毎年、二万人から五万人の参加者による大規模なマラソン大会を開催しています。
アメリカで同じような大会を考えた場合、影響力の大きさでいえば、ニューヨークシティーマラソンとボストンマラソンの二大会が挙げられます。
ニューヨークシティーマラソンは、都市の持つ発信力が大きく、参加者をニューヨーク市民、アメリカ国民、海外ランナーの三分の一ずつに配分しており、より多くの人たちにランニングの魅力を伝えようという大会側の確たる意図が見えます。
そして、多くのランニングイベントを主催するニューヨークロードランナーズ(NYRR)は、一九八八年からアメリカの国民、特に十万人余りの子供たちに対し、ランニングによる健康の増進を活動方針の一つに掲げ、その普及に取り組んでいるそうであります。
中でも、定期的に短い距離を走りながら、一年間のトータルでフルマラソンと同じ距離を走るプログラムであるマイティーミラーズは、ニューヨークを中心に全米四百校の受講生において展開されております。
この活動は、経済的な理由で健康促進するプログラムを受けられない学校やコミュニティーハウスを中心に実施されており、その内容としては、子供たちのレベルに応じて一日に走る距離の目標を設定し、その達成度をウエブに登録する方法で動機づけをしたり、学校に指導者を派遣し、プログラムをサポートしたりと、受講している子供たちに楽しみを与えるものとなっているばかりではなく、確実に肥満防止にも貢献しているようです。
マイティーミラーズのプログラムについては、現在、南アフリカでも行っており、また、近い将来はエチオピアにも広げる予定であると聞いております。
これらの活動財政基盤は、二〇〇二年から行われている子供たちのために特化したチャリティー活動、チームフォーキッズであり、ニューヨークシティーマラソンなどの出場ギャランティーをうたった寄附活動を中心に、本年は千五百人で三億四千万円を集め、この活動を支えているようであります。
また、ニューヨークシティーマラソンは、参加費に二十一万円近い寄附をすることに賛同した方には、明るいグリーンの統一したユニフォームが支給され、当日誇りを持ってそのウエアを着用し、参加することができるそうです。
このようなことを考えてみると、ランニングイベントは、もはや人が走るイベントにとどまらず、走る喜びを都市の持つ発信力をもって、社会的なメッセージを送るメディアに昇華していると言えるのではないでしょうか。
そして、今日、国家財政の課題である医療費軽減にも貢献し、オーガナイザーから見ても、この地道な活動はランニングの楽しみを学童期に伝える機会を与えられ、将来にわたってランナーの再生産を行うことにもつながっていると思われます。
ニューヨークシティーマラソンが誕生してはや四十年になりますが、日本では、本格的大都市型市民マラソンが誕生してわずか四年であります。ニューヨークが社会貢献の大義を子供たちの健康の増進に求めたように、納得性の高い大義を定めることができれば、すべての関与者がウイン・ウインの関係が構築できる希有な参加型スポーツランニングの未来は非常に明るいと考えております。
また、ボストンマラソンの特徴としては、男女別、年代ごとに設定されているクオリファイタイム、つまり、参加標準記録の存在が大きく、伝統のボストンを走るためにクオリファイタイムを切ろうと各ランナーは努力し、さまざまな大会へと足を運んでいます。
また、ロンドンマラソンのようにチャリティーを実施し、それなりの出費があっても出場したいという人を受け入れるという特色のある大会もあります。
これらの大会では、トップランナーはタイムを競い合い、また一般市民もともに同じコースをそれぞれのスタイルで走り、スポーツのすばらしさと参加することの楽しさを満喫しています。健康づくりのために走り始めた多くの市民ランナーが走りの魅力に取りつかれ、レースを完走することで自分に自信が持てたり、達成感を味わったりと、充実したスポーツライフを過ごしているようであります。
しかし、残念ながら、これまで本県では、ほかの国際都市のように多くの一般参加ランナーとトップランナーによる大マラソン大会は開催されたことがありません。こうしたことから、自由民主党愛知県議員団は、平成十八年七月に政策提言、夢あいち21において、夢ある創造プロジェクトの一環として、地球環境とスポーツをコンセプトとした世界的なスポーツイベント、NAGOYA・AICHI国際マラソンの開催を提案させていただいております。
これは、環境の世紀と言われる二十一世紀において、新しい循環型環境先進圏域として、本県が果たすべき役割と責任を明確にし、地球環境をテーマとした国際博覧会愛知万博を成功に導いたこの国際大都市圏において、地球環境に配慮した国際スポーツ大会の開催を目指すものであります。
こうした中、本県でも、九月一日、マラソンフェスティバル(仮称)の平成二十四年三月開催を目指し、財団法人日本陸上競技連盟、愛知県、名古屋市、株式会社中日新聞社などにより構成される開催準備委員会が設置されたとの発表がありました。
この大会は、オリンピックを初め、国際大会の選考レースとなっている女子のエリートレースである名古屋国際女子マラソンに女子の市民ランナーも合わせた女子のみによる大マラソンと、これまで名古屋市が主催してきた、広く一般市民が参加する名古屋シティーマラソンを併催し、一万人以上の規模として、世界初となる女子エリートランナーと女子一般ランナーによる女子だけのフルマラソンに男女ハーフマラソン、男女十キロ、男女四キロを加え、国内屈指の充実した内容とし、エリートランナーからファミリーまで幅広いランナーが参加できる大会とすると伺っております。
このような大会が開催されれば、国内外から参加される多くのランナーのゴールを目指すひたむきな姿が、沿道で声援を送る県民の皆様に勇気や感動を与え、本県に活力を与えてくれるものになると期待しております。
そこでお尋ねをいたします。
新しく開催されるマラソンフェスティバルの意義をどのように考え、どのように準備を進めていくのか、教育長にお伺いをいたします。
また、このような大会を開催すると、大規模な交通規制等、県警にお願いすべきことが多々出てこようかと思われますが、県警は交通管理者としてどのようなスタンスでこの大会に臨んでいかれるおつもりか、県警本部長にお尋ねをいたします。
以上で質問を終わらせていただきます。(拍手)
- 36:◯教育長(今井秀明君) マラソンフェスティバル(仮称)の開催についてお答えをいたします。
これまで三十年余りにわたって開催されてまいりました名古屋国際女子マラソンは、オリンピックイヤーには最終代表選考レースとして大きな注目を集め、高橋尚子選手を初め、数多くの名ランナーを輩出し、多くの皆様に親しまれている歴史ある大会であります。
このたび、その主催者である財団法人日本陸上競技連盟と中日新聞社から、名古屋国際女子マラソンを数万人規模の参加者による大規模なマラソン大会にしたいということで、愛知県と名古屋市に参加要請があり、本県としましても、準備委員会の一員として参加することとしたものでございます。
この大会は、議員お示しのとおり、一万人以上の規模による世界初の女子だけのエリートランナーと一般ランナーによるフルマラソンに、現行の名古屋市が行っております名古屋シティーマラソンをあわせて開催することとし、男女のハーフマラソン、十キロメートルなどを加え、エリートランナーからファミリーまで幅広いランナーが参加できる大会として、仮称ではありますが、マラソンフェスティバルを開催しようとするものであります。
こうした大会規模の拡大により、約三万人のランナーが国際大会の代表を目指すあこがれのエリートランナーと一緒に走ることができるとともに、制限時間を拡大することにより多くのランナーが完走でき、達成感を得られることになります。
また、今の見込みでは、約一万人のボランティアの方々も大会運営に携わることなど、大会の成功を側面から支え、充実感を味わうことができることから、マラソンというスポーツを身近に感じるきっかけとなり、本県のスポーツの振興に大きな意義があると考えております。
さらに、本大会は規模も大きく、名古屋の名所旧跡をめぐるコースを検討するなど、この大会を魅力あるものとし、スポーツの振興のみならず、数多くの参加者を国内外から迎えることによる交流人口の拡大など、観光にも大いに寄与することで、経済的な面も含め、さまざまな効果が生まれるイベントとなることが期待できますので、積極的に協力してまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 37:◯警察本部長(河邉有二君) 交通管理者としてのスタンスについてお答えいたします。
主催者側からは、今回計画されているマラソンは参加総数が三万人となる大規模なものであり、名古屋市内の幹線道路が長時間にわたって使用されるものと聞いております。
交通管理者としては、大会開催の意義を踏まえ、その成功に向け、今後、主催者側から提示される具体的な計画案をもとに、必要となる体制を整備し、適正な交通規制を実施するなど、交通の安全と円滑、大会参加者の安全の確保に万全を期してまいりたいと考えております。
以上であります。
- 38:◯副議長(奥村悠二君) 進行いたします。
浅井喜代治議員。
〔四十一番浅井喜代治君登壇〕(拍手)
- 39:◯四十一番(浅井喜代治君) 通告に従い、第二次あいち地震対策アクションプランについて伺います。
本年一月にはハイチ、二月にはチリ、また、四月には中国・青海省で大きな地震が起き、多くの建物が壊れ、犠牲者も多数出ております。チリ地震の際は、本県にも津波が到来し、非常配備体制がしかれたことは御承知のとおりであります。
災害は、だれもが起きてほしくないと願っているのは当然でありますが、しかし、いつかは必ず起きるものであり、それをとめることはできません。私たちができることは、しっかりと備えをすることであり、そして、被害を最小限に抑えることであります。
本年一月に、国の地震調査研究推進本部が発表した東海地震などの発生確率は、今後三十年以内に東海地震が八七%、東南海地震が六〇%から七〇%、南海地震が六〇%程度というものであり、大地震の発生は非常に切迫している状況にあります。
また、四月には、国の中央防災会議が東海地震、東南海地震、南海地震の三つの地震が同時に発生した場合、愛知県の死者数は千九百人、建物の全壊棟数九万一千棟と公表しました。さらに、この九月一日、国は、三つの地震の連動を想定した防災訓練を初めて実施したほか、広域的防災対応についての検討を開始することが必要だとして、所要経費を来年度の概算要求に盛り込んだということであります。
一方、県では、平成十四年四月に、東海地震の地震防災対策強化地域が新城市一市から県内五十八市町村に拡大指定されたことを契機に、同年十一月に第一次地震対策アクションプランを策定し、地震防災対策に取り組んできました。
このプランは、平成十八年度末までの五年間の計画期間でありましたが、十九年度以降も引き続き地震対策を総合的かつ計画的に推進する必要があるということで、平成十九年二月には、第二次あいち地震対策アクションプランを策定しました。
このプランでは、一次プランの進捗状況や成果などを踏まえ、アクション項目のステップアップや新たな項目に追加などを行い、東海地震、東南海地震が連動して発生した場合の想定死者数二千四百人や想定経済被害額十二兆円をそれぞれ千二百人と五兆円に半減するということを目標とし、そのための取り組みを重点的に実施するとしております。
とりわけ、住宅等の耐震化など十四項目については、具体的な数値目標を定め、計画期間である平成二十六年度までの達成に向けて、全庁挙げて取り組んでいるということであります。
そこで、第二次アクションプランの十四の具体的目標の中から、第一に、災害被害の多くは建築物の倒壊が原因で発生していることから、被害軽減のための住宅の耐震化について、第二に、大地震の際には、堤防の決壊や津波による被害も想定され、県民の生命、財産を津波から守るためには、河川、海岸施設の耐震化等の促進が重要であることから、堤防の整備について、そして、第三に、大災害のときには行政による対応と同時に地域住民による自主的な取り組みも重要であり、地域防災力の強化が求められているという観点から、消防団の役割と消防団員の確保について順次お尋ねします。
まず、地震に対する被害を減らし、県民の安全を確保するための住宅の耐震化対策について伺います。
昭和二十年に発生した三河地震では、発生当時が太平洋戦争中のことであり、戦意の低下と情報の流出を抑えるため報道管制がしかれたことにより、詳細な被害状況などが残されていないということでありますが、そんな中、私の地元幡豆郡では、町役場などの資料によりますと、木造住宅の倒壊によって多くの人的被害があったと記録されております。
また、私自身が子供のころに当時の様子をばあちゃんからよく聞かされました。地震で亡くなった人がどこどこの広場に何人ぐらい並べられていたとか、川の堤防で亡くなった人を並べて火葬するその火が我が家の二階からよく見えたとか、田んぼの真ん中に稲わらで小屋をつくり、余震がおさまるまでそこで生活したとか、そんな話を聞きながら、子供心にさまざまな様子を想像し、地震は本当に怖いものだと思ったものであります。
また、平成七年の阪神・淡路大震災でも多くの建物が倒壊し、多数の死者を出したことは忘れてはならないことであります。さらに、愛知県に被害をもたらすとされている東海地震、東南海地震のことを考えますと、十分な備えをしておくことが重要であります。
平成十九年に策定された第二次アクションプランでは、住宅の耐震化に関し、平成二十六年までの目標として、住宅の耐震化率を九〇%とし、具体的には平成十九年度からの八年間で住宅耐震診断補助を十一万二千戸、耐震改修補助を一万六千戸に対して行うとしています。
これまで愛知県では、住宅の耐震化を進めるため、市町村と協力して木造住宅に対する無料耐震診断や耐震改修に対する補助を実施し、それぞれの実施件数は全国でもトップレベルであると聞いております。
しかしながら、第二次プランの計画に対する昨年度までの実績を聞いてみますと、本来であれば計画に対して三五%以上の進捗が必要なところ、耐震診断は約二四%であり、耐震改修に至っては約一六%にとどまっているということであります。現状のままでは目標の達成は非常に厳しいのではと考えます。したがって、今後はこれまで以上に工夫し、住宅の耐震化が進むよう取り組まなければならないと思います。
県下の住宅の耐震改修状況は、耐震診断は実施しても、なかなか改修工事につながらないと聞いております。したがって、県民が安心して暮らすためには、耐震改修工事の件数をふやすことに力を注いでいくべきであると思っています。
私の地元吉良町、一色町などでは、地元の大工さんや工務店が主体的にかかわり、行政と連携して、木造住宅を戸別に訪問し、無料耐震診断の申し込みを勧誘する耐震診断ローラー作戦を展開し、大きな成果を上げています。これは地域の大工さんや工務店が住民の信頼を得ていることが大きな要素だと思います。
そこで、これから一層の耐震化の推進に向けて、耐震改修工事費が少しでも安くということはもちろんですが、地域の信頼ある大工さんや工務店の協力を得て、耐震改修工事を進めていくことが重要と考えます。
このような観点も含めて、県として住宅の耐震化をどのように推進していくのか伺います。
次に、海岸と河川の堤防について伺います。
本年二月に発生したチリ地震では、大きな津波が日本に到達することが予想され、全国の海岸に津波警報が発令されました。愛知県外洋で二メートル、伊勢湾、三河湾で一メートルの津波が到達することが予想され、地震の発生から丸一日たった後、田原市赤羽で七十センチメートルの津波が観測されております。幸いにも本県では大きな被害は出ませんでしたが、地震や津波に対して改めて対応を考える機会になったと思います。
そこで、発生が危惧されている東海地震、東南海地震では、沿岸のほとんどが震度六弱の強い揺れに見舞われ、海岸堤防は液状化し、伊勢湾、三河湾では、二メートルから三メートルの津波が発生することが予測されております。
地震や津波に備える海岸堤防の耐震対策は、平成十四年度からの第一次地震対策アクションプランにより、また、引き続き平成十九年度からの第二次アクションプランに基づき進められているところではありますが、まだまだ不十分であり、いまだ整備の途中であります。
全国一広い海抜ゼロメートル以下の地域を有している本県では、地盤が低い地域に多くの人が住んでいます。海岸や河川の堤防が決壊し、一たび浸水すれば、多くの生命、財産が失われ、甚大な被害が発生します。
地震の発生はとめようがありませんが、海岸と河川の堤防の耐震対策を早期に進めるなど、できる限りの備えをする必要があります。海岸堤防では、現在は海側だけの改良が進められているようでありますが、陸側の改良も必要ではないのかという地元住民からの声も聞こえてきます。地震による強い揺れに対して、堤防が万全であるためにはやはり陸側の改良も必要ではないでしょうか。
そこで、地震対策アクションプランに位置づけられた海岸と河川の堤防において、耐震対策の整備状況と海岸堤防の整備の考え方について伺います。
最後に、地域防災力の強化の観点から二点お聞きします。
第一点は、消防団の役割についてであります。
地震は、地域にとりましてまさに招かれざる客でありますが、地震列島と言われる我が国においては逃れることのできない災害であります。
お伺いしてきた住宅の耐震化や河川、海岸施設の耐震化など、防災基盤となるインフラの整備促進は被害軽減の重要な対策であります。
しかしながら、あの阪神・淡路大震災の悲惨な体験を初め、近年の相次ぐ災害を見ても、これらの対策だけで十分とは言えません。地震に強い愛知を目指すためには、地域に存在している防災力の担い手の育成が必要であり、彼らの横のつながり、連携の確保が不可欠だと思っています。
地震発生直後には、消防本部などの常備消防による消火や、救助活動を初めとした行政による応急活動が行われ、国や県、他の市町村からも逐次救援活動が始まります。
しかし、大規模地震では、行政の救援は少なくとも三日間は望めないと言われており、過去の幾多の経験からも、災害が大きいほど行政の力には限界があるということを私たちはしっかりと認識しなければならないと思います。
とりわけ、現在取りざたされているように、東海・東南海・南海地震が連動して発生した場合、日本の太平洋沿岸全域にわたり被害が及ぶことが見込まれ、広域的な相互支援もままならない事態も予測されております。
また、私は、町役場の職員時代に非常時配備などの災害対策の現場を体験しましたが、災害発生直後の対応をすべて行政が担うということは現実的ではありません。地域住民が何でも行政がやってくれるものという大きな期待をすることは問題であると考えています。まずは、自助、共助の精神に基づき、住民一人一人がみずからを守るとともに、町内会やさまざまな民間の組織などによりともに助け合う身近な防災力の担い手の活動が地域には必要であります。
そんな中、消防団では、火災の予防、消火、火災の後始末などの活動に加え、地域に密着した組織ならではのさまざまな活動をしています。
平成十九年の能登半島地震では、被災者の安否が二十四時間以内に確認できたということであり、そこには消防団の活躍があって、効果的な被害状況の把握ができたということであります。
また、本年二月のチリ地震では、政府の対策がもたつく中、消防団が地域に密着した活動により大いに頼りにされたという新聞報道もありました。
また、私の地元吉良町の消防団には、毎年二十代後半の新入団員が三十人前後ありますが、三年から四年の任期を同年代の仲間と行動をともにし、消防団活動だけでなく地域のさまざまな行事に参加することによって、将来なくてはならない地域のリーダーとして成長していきます。こうしたことで、住民の活力の向上にもはかり知れない力を発揮しております。
地震を初めとした大規模災害の被害を最小限にとどめるためには、住民自身や自主防災組織、ボランティア、企業等の連携を深め、相互に連携して活動できるよう、日ごろからその育成に努めることが非常に重要であります。
こうした中、消防団は、これらの地域防災の組織、団体などにあって、連携のかなめとしての役割を果たすことができると考えていますが、県として消防団をどう評価し、そして、どのような役割を期待しているのか伺います。
次に、消防団員の確保について伺います。
消防団は、江戸の火消しから始まる歴史と伝統に培われた、みずからの地域はみずからで守るという郷土愛護の精神に基づき、地域社会の安心・安全を守るためのなくてはならない住民の自主的組織として活動を行っています。
本県では、一昨年に岡崎市などで集中豪雨が発生し、昨年は伊勢湾台風を思い出させるような台風十八号が来襲しました。そしてまた、火災件数は毎年三千件を上回るなど、規模の大小を問わず、災害は後を絶たない状況にあります。
平成二十一年度の県の消防年報によりますと、消防団は、災害や訓練などで平成二十年中には六万百三十件出動し、団員五十八万七千二百六十一人が活動しました。一日当たりの出動件数は百六十五件で、これは実に約九分に一回の割合で出動したことになり、消防本部などの常備消防とともに活躍しております。
このように、消防団の活動、そして、その果たす役割には大変大きなものがありますが、その一方で、消防団員の確保が困難になっていることも現実であります。
県内の消防団員数は、昭和二十六年の約七万一千人をピークに以後減少を続け、昭和四十八年には三万人を割り込み、平成二十二年四月一日現在では約二万四千人とかなり厳しい状況が続いています。全国的にも同じ傾向だと思いますが、なかなか減少に歯どめがかかりません。
人口減少社会を迎え、少子高齢化の進行に加え、地域によっては進学や就職により都市部への若年層の人口流出が進み、団員適齢期の若年層が減少していることや、就業構造の変化に伴い、企業などに勤務するサラリーマン団員の比率が約七割と年々増加し、仕事との両立が困難となっていることなどがその原因として考えられています。
さらに、都市化の進展により、核家族化や個人の価値観の多様化、ライフスタイルの変化により、地域の連帯感が薄れていく傾向にあり、地域住民で支えていくべき消防団への理解も弱まりつつあるのではないでしょうか。
そこでお尋ねしますが、消防団員の確保について、県は現状をどのように理解されているのか、また、これまでどのような対策を進め、今後どのように取り組んでいかれるのか伺います。
次に、畜産の振興と獣医師職員の確保について伺います。
本県の畜産は農業生産額全体の四分の一を占め、肉牛、乳牛などは一戸当たりの飼育規模が全国のトップクラスであります。これは畜産農家それぞれの努力の成果であり、また同時に、畜産農家を支えてきた地域の獣医師の力も大きく貢献しています。
私の地元幡豆郡も酪農、肉牛飼育、養豚、養鶏と畜産業が大変盛んな地域であります。そんな中にあって、地元町役場の公務員獣医師が農家と一体となった診療活動により重要な役割を果たしてきたことを私自身が現場で直接見聞きし、その状況を十分承知しているつもりであります。
本年四月に宮崎県で発生した口蹄疫は、四カ月余りを経て八月二十七日に終息宣言が出されましたが、この間に二百九十二戸、二十一万頭余の牛や豚などの感染が広がり、ワクチン接種の家畜と合わせると、実に二十九万頭の家畜が殺処分されるという大惨事となりました。
この殺処分などの防疫活動は、宮崎県の獣医師に加え、全国から応援に駆けつけた獣医師である家畜防疫員の指示によって進められ、本県からも多くの獣医師が派遣されたと聞いております。
また、昨年の二月に豊橋市で発生したウズラの高病原性鳥インフルエンザは、全国一の産地を一気にパニック状態に陥れ、いっとき売り場からウズラの卵が見られなくなってしまいました。幸い、獣医師を中心とする関係者の懸命な働きにより、二カ月余りで収束をさせることができたのは記憶に新しいところであります。その後、関係者の努力によって発生農家の経営が回復したのは本当にうれしいことであります。
しかし、これからの畜産経営や畜産振興、家畜伝染病の危機管理を考えると不安が募ります。現実に、宮崎県での口蹄疫に対する行政の対応などを検証する口蹄疫対策検証委員会が中間報告の中で、県の情報収集が平素から行われていなかったことが初動対応のおくれや発生拡大につながったと指摘しています。
この指摘に対応するとすれば、ふだんから畜産農家との情報交換を重ねることができるような、人員配置も含めた体制の確立が必要だということだと思います。
また、以前、新聞に、安心の番人、獣医師が足りないという特集記事が五回連続で掲載されたことがあります。
内容は、都道府県に勤務する獣医師の業務が高病原性鳥インフルエンザなどの伝染病から家畜を守ることを初めとし、食品衛生監視、動物愛護など多岐にわたり、県民の健康と暮らしの安全に極めて深くかかわっていること。一方で、毎年約千人の獣医師が誕生するが、加速するペットブームにより、近年はペット病院の臨床医を目指すものが多く、畜産の分野や公務員を職業として選択しないため、全国の都道府県を初め自治体などが獣医師の確保に苦労していることを取り上げていました。
このようなことはNHKが放送したドキュメンタリー番組「揺らぐ食の生産現場」において、過酷な仕事に追われる勤務獣医師の映像とともに、家畜に携わる獣医師は食の生産、消費に関し、国民の安全を守っているという事実を市民に知らせ、その上で待遇を改善し、獣医師の仕事が評価、理解されることが大切であると解説されていました。
特集記事も、NHKの番組も、公務員獣医師に対する待遇の低さが職業として敬遠される理由であると指摘していました。
本県においても、同様なことが起きているのではないでしょうか。獣医師は高度な専門知識を有し、幅広い役割があります。前にも述べたとおり、昨年二月に発生した豊橋市のウズラの高病原性鳥インフルエンザの際の防疫業務などの危機管理は、まさに県民の生命と財産を守る重要な仕事であります。
また、屠畜場における食肉の衛生検査、残留医薬品検査、食中毒を防止するための食品衛生監視や飲食に起因する危険防止についても、保健所に勤務する獣医師が中心となって、毎日チェックを行うことにより安全管理が図られています。
このように、獣医師は、BSE検査や鳥インフルエンザへの対応といった食の安全の番人として本県にとって必要な職種であり、将来的にも安定的に人材を確保していく必要があると思います。
ところが、職責に見合った待遇が確保されていなければ、優秀な獣医師職員の確保ができなくなることが心配されます。この点については、既に多くの都道府県で獣医師職員に対する待遇改善が実施されているように聞いております。
そこで、五点について伺います。
第一に、本県の畜産業を支える獣医師の役割についてどのように考えているか、畜産農家に対応できる獣医師は確保されているのか伺います。
第二に、県職員で獣医師の資格を持った方が何名で、必要な業務を実施するための十分な職員が確保されているのか伺います。
第三に、全国的に不足しているとされる獣医師を本県の職員として確保するためにどのような対策を講じているのか、また、募集人員に対して実際の採用人数は確保できているのか伺います。
第四に、本県の獣医師職員の待遇は他県や民間の獣医師に比べてどうなのか、また、医学部に次ぐ難関と言われる六年制大学を卒業後、厳しい国家試験に合格し、三K職場で頑張る県職員の獣医師に対し、獣医師専用の給料表を設けるなどして給与水準を引き上げるべきと考えるが、どのように考えているのか伺います。
第五に、県内の市町村で家畜の診療業務に従事している公務員獣医師の現状についてどのように把握しているのか伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 40:◯建設部建築担当局長(金田健君) 地震対策アクションプランについてのお尋ねのうち、住宅の耐震化の推進についてお答え申し上げます。
耐震改修が進まない原因といたしましては、一つは、工事費が高いということがあります。これまで県内の大学や関係団体と連携して、木造住宅の土壁を特殊な金物を使わず合板で補強するなどの安価で簡便な工法を開発してまいりました。今後、これらの工法を広く使っていただき、耐震改修を促進していくためには、御指摘のように、特に地域の信頼を得ている大工、工務店の方々にも積極的にかかわっていただくことが有効であると考えております。
このため、年内に県内三カ所で大工、工務店の方々を対象とした耐震改修の研修会を開催しまして、新しい工法を活用するノウハウなどを習得していただくとともに、市町村が実施するローラー作戦や相談会など、地域での取り組みに参加し、協力していただくことをお願いしてまいります。
また、耐震改修が進まないもう一つの原因といたしまして、安心して工事を任せられる施工業者がなかなか見つからないといった問題がございます。現在は、住宅の所有者の方に耐震診断の結果をお伝えするときに、設計の相談ができる建築士の名簿を提供しているところでございますが、今後は、耐震改修工事の実績がある大工、工務店の方々の名簿も提供して、施工の相談ができるようにしてまいります。
さらに、県民の方々にも、安価な新しい工法ですとか、耐震改修の進め方について理解していただくために、県や市町村のホームページで事例などをわかりやすい形でお伝えできるようにしていくなど、耐震改修の促進に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 41:◯建設部長(川西寛君) 地震対策アクションプランのうち、海岸と河川の堤防の耐震対策の整備状況についてお答え申し上げます。
大きな二次被害が想定されております海岸堤防約四十一キロメートル、河川堤防約二十七キロメートルを優先対策区間と位置づけまして、耐震対策を進めております。
平成二十一年度は吉良海岸、矢崎川などで、延べ延長約四・一七キロメートルの工事を実施いたしました。この結果、平成二十一年度末までに海岸堤防、河川堤防ともにそれぞれ約二十三キロメートルが完了し、優先対策区間に対する進捗率は、海岸堤防で約五七%、河川堤防で約八五%となっております。
次に、海岸堤防の整備の考え方についてお答え申し上げます。
地震による強い揺れとその後に発生する津波による越水に備えるため、地震対策といたしましては、地震発生後においても、必要な堤防の高さを確保することを第一に考えております。したがいまして、できる限り効率的にこの目的を達成するため、堤防の海側半分の堤防を補強することで十分な箇所につきましては堤防部分のみの改良を、その他の箇所では堤防全体の改良を進めております。
いずれにいたしましても、県民の皆様の生活に直結する重要な課題でございますので、今後とも、第二次あいち地震対策アクションプランの目標としております平成二十六年度の完了に向けまして重点的に整備をしてまいります。
以上です。
- 42:◯防災局長(中野秀秋君) まず、県としての消防団への評価、期待についてでありますが、消防団は、これまでの消防本部等の常備消防と並ぶ地域防災のかなめとして、火災の消火や風水害、地震などへの災害防御活動により、地域の安全に大きく寄与していただいております。
また、このような活動だけではなく、平常時には火災の予防や地域行事での警戒活動など、地域コミュニティーの支援活動にも幅広く貢献されており、その活躍を高く評価しております。
もとより、大規模地震災害が発生した場合は、県や市町村などの行政機関による公助の重要なことはもちろんでありますが、被害を小さく抑えるためには、発災からできるだけ早く近隣のさまざまな方々が連携協力して助け合う共助が大切でございます。
このような中で、消防団は、地域の住民などで構成されており、その地域のさまざまな情報に精通しているとともに、自主防災組織、ボランティア、企業など、さまざまな防災組織、団体等とも顔の見える幅広い関係で接するなど、地域に密着した特性がございます。
また、消防団は、日ごろからの教育訓練により消防防災に関する知識や技能を有していることや、一定の指揮命令のもとに組織行動を行うことができることから、災害時に即時に対応することができます。
県といたしましては、東海・東南海・南海地震など、大規模な災害の発生が懸念される中で、消防団には、このような特性や強みを生かして災害時における地域での指導的役割のほか、防災組織、団体のつなぎ役として、災害に強い地域づくりにリーダーシップを発揮していただくことを期待しております。
次に、消防団員の確保についてでありますが、消火や火災予防活動はもちろんのこと、東海・東南海・南海地震の切迫性が指摘されている中、消防団は災害対策の面でも不可欠な存在であると考えております。
その一方で、県内の消防団員数が年々減少しており、その傾向に歯どめがかかっていない現状を大変危惧しております。
こうした状況を踏まえ、これまで県の対策としまして、まず、若年層につきましては、消防団への理解を深めるため、大学祭や著名な人が参加いたしますフェスティバルなどを通じた普及啓発活動を展開するとともに、小中学生が参加する少年消防クラブを育成することにより、将来の担い手の確保に努めております。
また、団員のサラリーマン化に伴う対応については、勤務先に活動への理解を促進することが必要でございますので、啓発パンフレットや協力事例集の配付を初め、商工会議所や企業等に県職員などが訪問し、協力の要請を行っております。
さらに、市町村に対し、アドバイザーを派遣し、地域コミュニティーとの結びつきが強い女性消防団員の入団を促進するほか、災害時のみの活動等、特定の役割を担う機能別消防団員の導入を市町村に働きかけるなど、団員数の確保に努めてまいりました。
今後とも、消防団員の確保に主体的な役割を果たしていただくべき市町村と連携協力して、粘り強く取り組んでまいります。
なお、県では、毎年度、消防団が消火技術を競う消防操法大会を実施しておりますが、今年度は特にこの競技の全国大会である全国消防操法大会が各都道府県の消防団の精鋭を集めまして、十一月十二日に蒲郡市で開催されます。こうした大会などを県民の皆様にもごらんいただけるよう積極的にPRすることにより、消防団活動への一層の理解の促進を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 43:◯農林水産部長(小出茂樹君) 畜産業を支える獣医師の役割につきましてお答えいたします。
獣医師法によりますと、獣医師でなければ、牛、豚、鶏などの診療を業務としてはならないとされており、病気の診断や家畜の診療など、畜産業の振興にとりまして獣医師はなくてはならない役割を担っております。
また、都道府県では、地方における家畜衛生の向上を図り、畜産の振興に資するため、家畜保健衛生所法に基づきまして、家畜保健衛生所を設置しておりますが、同法においては、家畜保健衛生所の所長は獣医師であるとともに、獣医師である常勤の職員の設置が規定されております。
近年、BSEや高病原性鳥インフルエンザ、口蹄疫など、畜産業だけでなく、食の安全や社会全体に大きな影響を与える家畜の伝染病が発生しており、家畜伝染病の発生予防や蔓延の防止など、獣医師の果たす役割はますます重要になっていると考えております。
次に、畜産農家に対応できる獣医師は確保されているかとのお尋ねでございますが、農林水産部におきましては、百名の獣医師を配置しております。
内訳といたしましては、六十七名が県内の三カ所の家畜保健衛生所で家畜伝染病の予防、病気の診断、家畜衛生技術の普及、動物用医薬品や獣医師に係る事務を担当しております。
また、残り三十三名の方は、優良種畜の供給を業務とする畜産総合センターや畜産の試験研究を行う農業総合試験場など、県の畜産関係機関でそれぞれの業務に従事しており、現在、通常業務に必要な人員は確保されているものと考えております。
続きまして、県内の市町村で家畜の診療業務に従事している公務員獣医師の現状についてでございますが、飼育動物診療施設の設置者は、獣医療法に基づき、施設の名称や場所、診療業務を行う獣医師の氏名などを都道府県知事に届け出なければならないとされております。
その届け出内容によりますと、現在、県内の市町村が畜産農家の家畜の診療を行うため開設している診療施設は、岡崎市、西尾市、一色町及び吉良町の四カ所にありまして、これらの施設で診療業務を行っている市町村の獣医師職員は、合わせて十五名となっております。
以上でございます。
- 44:◯総務部人事担当局長(原田泰君) 畜産振興と獣医師職員の確保につきましての質問のうち、三点の質問にお答えを申し上げます。
まず、ことし四月一日現在の獣医師職員数でございますけれども、二百四名でございます。主な設置所属といたしましては、先ほど農林水産部長がお答えを申し上げました畜産業務に従事する百名のほか、残り百四名につきましては、食品の衛生監視業務を行う保健所に五十二名、食品検査や屠畜検査業務を行います食品監視検査センターに十二名、狂犬病予防業務を行う動物保護管理センターに十一名などとなっております。
また、獣医師の配置につきましては、毎年度、関係部局と調整を行いまして、業務量に見合った職員数を確保しているところでございます。
次に、獣医師を確保するための対策についてでございます。
本県では、近年、全国的に公務部門の獣医師が不足していることを踏まえまして、これまでも獣医師の確保につきましてさまざまな取り組みを行ってまいりました。
その取り組みでございますけれども、毎年、獣医師を養成する全国の十六大学のほとんどの大学へ県職員の獣医師が出向きまして、学生に対して本県の獣医師業務の内容などを紹介する就職説明会を開催いたしております。
このほかに、採用試験につきましては、平成十八年度からでございますが、受験者の年齢要件の上限を二十九歳から五十九歳に引き上げるとともに、試験日数を二日から一日に短縮するなど、社会人や遠方の獣医師の方々にも受験しやすい環境も整備したところでございます。
次に、ここ最近の採用状況についてお答え申し上げます。
平成二十一年度の試験では、募集人員が約十五名に対しまして五十二名が受験をされ、十三名を採用しております。平成二十年度の試験では、募集人員約十名に対しまして六十名が受験をされ、十一名を採用しておりまして、ここ最近の状況といたしましては、おおむね必要な獣医師を確保できているものというふうに考えてございます。
最後に、本県の獣医師職員の給与の処遇についてでございます。
本県の獣医師職員に適用いたしております給料表は、行政職給料表を初め十二種類ある中で、国の指導に基づきまして、他県と同様に医療職給料表の二表を適用しておりますので、給料月額の水準は各県とも同水準となっております。
一方、地域手当を初めといたしました諸手当等につきましては、各県の事情により、それぞれの違いはありますが、給与水準全体につきましては、本県と類似県、それと近県とを比較してみますと、本県の給与水準は決して低くはなく、適当なものであると考えておるところでございます。
また、民間の獣医師との職員給与の比較につきましては、本県の獣医師職員は、先ほど答弁をいたしましたように、さまざまな内容の仕事に従事をしておりまして、動物病院などに勤務する民間の獣医師とは職務内容が大きく異なっておりますので、単純に比較することは困難であると考えております。
以上でございます。
- 45:◯四十一番(浅井喜代治君) 要望をさせていただきます。
まず、被害の半減を目指す第二次あいち地震対策アクションプランでありますけれども、この計画の着実、そして、迅速な実現といいますか、推進、これを多くの県民が本当に関心を持って見ておると思います。ぜひ引き続き、全庁を挙げて事業の推進に取り組んでいただきますようにお願いを申し上げます。
また、獣医師の確保についてでありますけれども、他県では、待遇改善を着実に進めておるということであります。今ほどの答弁で、給与水準は適当であるというようなお話でございました。しかし、私の聞く範囲ではそうではないのかなというふうに感じております。
それだけに、愛知県におきましても、畜産業の振興を初め、県民の暮らしを守るための獣医師の確保が確実にできるように待遇改善に取り組んでいただきますこと、そして、あわせて県内の市町村においても、先ほど十五名という答弁でございましたけれども、同様の改善が進められるような取り組みをあわせて進めていただきますことを要望させていただきまして、終わります。ありがとうございました。
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- 46:◯三十七番(大見正君) 本日はこれをもって散会し、明九月三十日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 47:◯副議長(奥村悠二君) 大見正議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 48:◯副議長(奥村悠二君) 御異議なしと認めます。
明九月三十日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時四十四分散会