県政報告
(主な質疑)
- 1:(主な質疑)
《議案関係》
【伊藤辰夫委員】
第30号議案「介護保険財政安定化基金条例の一部改正について」伺う。この基金は介護保険財政の安定化のために設置されているが、具体的にはどのように活用しているのか。また、基金の積立方法と積立残高については、どうなっているのか。
- 2:【高齢福祉課主幹(介護保険企画・審査)】
介護保険財政安定化基金の活用であるが、この基金は、介護給付費がサービス利用者の増加などの要因で、当初計画していた金額を上回ったり、保険者である市町村の努力にもかかわらず、想定外の保険料未納が発生した場合において、財源不足を補うため、資金の貸付や交付を行い、各保険者の保険財政の安定化を図るものである。
次に、基金の積立方法については、3年を1期とする介護保険事業計画の期間における介護給付費などの事業費に、県条例で定める拠出金算定割合を乗じた額を保険者、国、県で3分の1ずつ拠出したもので、介護保険制度創設の平成12年度から積み立てを行っている。基金残高については、平成20年度末では約127億2,100万円となる見込みである。
- 3:【伊藤辰夫委員】
財源の不足に対して資金の貸付や交付を行うということであるが、貸付と交付の違いは何か。また、これまでに貸付、交付が実際にあったのか。
- 4:【高齢福祉課主幹(介護保険企画・審査)】
貸付については、「保険料収納率の悪化」と「給付費の増大」による財源不足に対して、無利子の貸付を行うもので、償還は次期の介護保険事業計画期間中において3年間均等に償還されるものである。交付については「保険料収納率の悪化」による保険財政の赤字を補てんするもので、その2分の1は交付され、償還を要しないものとなっている。
次に、貸付と交付の状況であるが、第1期と第2期の介護保険事業計画期間の平成12年度から17年度においては、16保険者に18億791万5,000円を貸し付け、11保険者に7億2,907万6,000円を交付し、合わせて25億3,699万1,000円となっている。第3期計画期間中の平成18年度から20年度は、貸付・交付ともになかった。
- 5:【伊藤辰夫委員】
先ほどの議案説明において、「基金の積立残高が必要十分な額であると見込まれるため、基金へ拠出する金額の算定割合を零とする」との説明があったが、この基金への拠出金の算定割合は、どのように決めているのか、本当に零にしてしまっていいのか。
- 6:【高齢福祉課主幹(介護保険企画・審査)】
拠出金の算定割合については、厚生労働省令により規定された率を標準として、条例で定めることとされており、本県では、これまで省令の定めた率と同率としてきた。平成21年度から23年度の第4期介護保険事業計画期間においては、省令で定める標準とする率が「1万分の4」とされたが、第4期計画期間末の積立残高が、県が確保すべき額を超える場合は、この算定割合を「零」とすることができるとの見解を厚生労働省が示した。この厚生労働省の見解に基づき、拠出金の算定割合を検討した結果、平成12年度から17年度までの貸付・交付の実績が25億円余りとなっている状況から、127億円余りという基金残高は、目的を果たすために必要十分な額と見込まれるので、第4期計画期間における拠出金の算定割合を「零」とし、新規の積立を行わないことにしたいと考えている。
- 7:【高木ひろし委員】
ハンセン病対策費について伺う。ハンセン病については、この4月から新しい法律が施行される。通称「ハンセン病対策基本法」と呼ばれているが、この法律の施行について県はどのように認識しているのか。また、その中に県の責務もあるが、県としては元ハンセン病患者や入所者の方々に、どのような施策を展開しようとしているのか。
- 8:【健康対策課主幹(原爆・特定疾患)】
国の隔離政策によりハンセン病患者であった方等が受けた被害の回復は、平成13年6月の「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」の制定により、一定の解決が図られてきたところであるが、福祉の増進、名誉の回復等未解決な問題も残されていることから、この新たな法律により、これらの問題解決の促進について、基本理念や必要な事項を定めたものである。この法律では、元患者らの被害は国の隔離政策に起因したものと明記しており、また、元患者らが地域社会から孤立せず、良好な生活を送れるよう、入所者への医療体制の整備、社会復帰の支援、名誉回復の措置などを国の責務としている。
地方公共団体は、国と協力しつつ、その地域の実情を踏まえ、ハンセン病の患者であった方々の福祉の増進等を図るための施策を策定し、実施する責務を有するとされている。本県では、従来から、ハンセン病対策に積極的に取り組んでおり、毎年本県出身者の方が入所しておられる9療養所に幹部職員等が訪問している。知事は平成15年度から、毎年療養所を訪問しており、今年度は7月9日に、国立駿河療養所及び神山復生病院を訪問し、入所者の方々との懇談を行った。また、里帰り事業として、療養所入所者全員を対象とした郷土訪問事業を毎年開催しているが、平成20年度は10月8日から10日の2泊3日で開催し、希望された方全員17名が参加され、里帰り初日には、知事及び県議会議長との面談を行った後、墓参り、実家・出身地などへの訪問、県内観光等を行った。その他、在宅回復者等を対象とした国立療養所医師による年2回の療養相談事業、リーフレット配布等の知識普及啓発事業等を引続き実施していきたいと考えている。
- 9:【高木ひろし委員】
愛知県は啓発資料を作成し、社会復帰の促進や正しい知識の普及、名誉回復についてキャンペーンをしているが、入所者の方から、新たな法律に基づく県の施策についての要望を聞いている。愛知県出身の入所者は、現在全国9か所の療養所に113名であるが、愛知県を離れて40年から50年、人生の大半を療養所で過ごしている。この方々がふるさと訪問事業で旅行として訪れることはあっても、実際自分が生まれた村、町で家族、親類、知人、近所の人達と面会することはほとんどない。県内の観光で慰められるという取組にとどまっており、本当の意味での社会復帰、ふるさとへの帰還には程遠い状況である。愛知県には無らい県運動という、ハンセン病患者を県内から一掃しようという国の強制隔離政策を推進してきた残念な歴史がある。その結果、療養所が県内に一つもなく、近くて駿河、遠くは熊本菊池恵風園にも愛知県出身の入所者がいる。入所者の方々からの要望に、県の名誉回復として愛知県甚目寺町円周寺の生まれである、小笠原登医師の業績についての評価がある。愛知県のリーフレットにも紹介があるが、この方は国の強制隔離政策について、医学界において唯一公然とハンセン病の強制隔離政策は不必要と提唱し、京都大学の研究室で通院治療を続けたために迫害を受けた、という大変立派な方である。光田健輔医師等の提唱により、国は強制隔離政策を推進してきたが、結局、小笠原医師が提唱した、人権を根本的に否定する強制隔離政策は間違っているという主張が正しかったのである。国が本当に強制隔離政策を反省するならば、本県出身の小笠原登医師の業績を積極的に顕彰し、名誉回復のあかしを立てるような活動が求められていると思う。甚目寺町では1昨年に円周寺等から資料提供を受けて、人権ふれあいセンターに小笠原登医師顕彰コーナーを設けている。県もセンター開設については補助金を出して協力しているが、甚目寺町では名誉町民として顕彰しており、県としても、それに類似した対応が必要ではないか。
- 10:【健康対策課主幹(原爆・特定疾患)】
全国の療養所の愛知県出身入所者数であるが、現在は106名となっている。次に小笠原登医師についてであるが、県としても小笠原登医師の功績を高く評価しているところである。毎年度実施している「ハンセン病を正しく理解する週間」を中心に、県作成のリーフレットを市町村、保健所、地域婦人団体等に配布し、ハンセン病に対する正しい知識の普及に努めており、そのリーフレットで小笠原登医師の功績を紹介している。県では小笠原登医師の功績を紹介したパネルを作成しているが、「ハンセン病を正しく理解する週間」には、このパネルを県庁地下連絡通路にも掲示している。また、愛知県の公式ウェブページにハンセン病のホームページを設けており、その中でも小笠原登医師の功績を紹介している。
- 11:【高木ひろし委員】
健康福祉部としての対策費はわずかであるが、教育委員会や県民生活部とも連携を強め、入所者の強い思いでもある小笠原登医師の業績の顕彰を通じて、本当の社会復帰が一日も早く実現できるよう努力してほしい。
- 12:【谷口知美委員】
感染症対策費に関連して伺う。インフルエンザの予防接種の料金であるが、子どもが複数で、保護者もあわせて接種をすると1万円を超えることとなる。毎年インフルエンザの流行が話題となる中で、補助があるとありがたいという声を耳にする。また、病院へ接種に行って、かえって病気を拾ってしまうということもある。病院以外の所でのインフルエンザの予防接種など、環境を整えることはできないか。また、インフルエンザに対する県の考えはどうか。
- 13:【健康対策課主幹(感染症)】
子どもに対するインフルエンザの予防接種については、予防接種法の対象の疾病とはなっておらず、任意の予防接種という位置付けである。任意の予防接種については、インフルエンザ以外にも様々な疾病に対する予防接種があるが、現時点で任意の予防接種に対する県としての補助を具体化したものはない。次に医療機関以外での接種についてであるが、例えば65歳以上の方に対する定期の予防接種については、予防接種法上の予防接種であり国がインフルエンザ予防接種実施要領を定めている。この実施要領では接種場所として、医師が医療機関で実施する、いわゆる個別接種を原則としている。子どもについては、任意の予防接種であり、これが即当てはまるというものではないが、同様の方法で実施されるものと考えている。また、病院で病気の方と接触する機会があり、かえって病気を拾ってしまうことについては、医療機関によっては、予防接種の時間帯と外来の診療時間帯を分けて対応している医療機関もあると聞いている。現時点で、インフルエンザの予防接種の実施について、特に不都合が生じているとは考えていないが、予防接種を受ける方の中には、そのような考えもあるということであり、今後、機会があれば関係機関に伝えていきたいと考えている。
インフルエンザに対する県の対応についてであるが、インフルエンザの感染予防や症状の軽減化のためには、ワクチン接種が有効であると考えており、毎年、インフルエンザ流行期前に、各種広報媒体を用いて、インフルエンザの予防方法の一つとして、手洗いやうがい、咳エチケットの励行などに加え、ワクチンの接種について広報を実施している。
- 14:【谷口知美委員】
神戸市ではインフルエンザの予防接種について、来年度から補助金を出す動きもあるとのことであり、愛知県としてもできることがあればお願いしたい。
麻しん、はしかの予防接種について伺う。はしかは空気感染など感染力が強いことや、症状が重篤になったり、死亡率も高いとのことで世界的にはしかを撲滅しようと、WHOやユニセフにおいて、日本を含む西太平洋地域で2012年までに、はしかを排除するとの目標を掲げている。日本では、大学ではしかが流行したり、海外へ行った際に現地で発症するなど、はしか輸出国と言われている。日本では接種回数が1回であった世代に十分な免疫力がついていなかったり、1994年から義務から勧奨に変わったり、はしか、風疹、おたふく風邪の混合ワクチンの副作用が問題となるなど、いろいろな理由で10代以降の患者が増加している。それにより、今年度から5年間、中学1年生、高校3年生に相当する者に無料で予防接種ができるようになった。しかし、新聞報道等では、接種率の目標が95パーセントであるところ、昨年末の接種状況は全国で中学1年生が66.1パーセント、高校3年生で58.1パーセントであり、都道府県によって接種率にかなり差があるとのことである。愛知県の接種状況はどうか。
- 15:【健康対策課主幹(感染症)】
愛知県における麻しんの接種率は、12月末現在で、中学1年生に相当する年齢の者を対象とした第3期が64.8パーセント、高校3年生に相当する年齢の者を対象とする第4期が63.5パーセントという状況である。
- 16:【谷口知美委員】
中学1年生が全国平均より少し低く、高校3年生は全国平均よりは高い状況であるが、県として様々な対策がとられていると思うが、これまでの県の対応について伺う。
- 17:【健康対策課主幹(感染症)】
麻しんの予防接種率は、95パーセント以上を目標としており、3月末で、それを達成することは非常に困難な状況となっている。これまでの対応であるが、予防接種法に基づく麻しんの予防接種は各市町村の実施する事務であるから、各市町村に対して、接種対象者への接種勧奨及び効果的な啓発の実施について機会あるごとに指導するほか、県としてもホームページを始め、ラジオ、テレビ、メールマガジンといった広報媒体を利用した広報を行っている。
- 18:【谷口知美委員】
接種率を上げるための今後の対策について伺う。
- 19:【健康対策課主幹(感染症)】
今年度12月に感染症の専門家、医療関係者、学校関係者、PTA関係者等で構成する県の麻しん対策会議を設置した。この会議の意見も聞きながら、特に学校関係機関との連携を密にして、効果的な啓発を行なうなど接種率の向上に努めていく。更に、今年度も実施しているが、国立感染症研究所などから講師を招き、市町村担当者や学校の養護教諭に対し、麻しん対策の必要性についての研修会を実施するなどの対策を進めていく。
- 20:【谷口知美委員】
対策は学校でのPRになると思うが、保護者に直接PRする媒体を工夫するとともに、高校に行かない子どもにも配慮してほしい。また、接種環境の整備については、養護教諭の多忙な状況を考慮し、安易に学校での集団接種ということではなく、慎重に対応してほしい。
- 21:《請願関係》
【高木ひろし委員】
本請願については、昨年6月以来、9月、12月と継続審査になっている。民主党県議団の立場は、本会議で小山たすく議員が表明したとおりであり、この問題は財源がある、ないで論ずべきではないと考えている。任意の加入とされている65歳から74歳の障害者の方々が、本来、75歳以上で入るべき後期高齢者医療制度への加入を事実上強制されている実態を改めるべきである。これは制度の運用趣旨にかかわる、いわば差別にもかかわる問題である。財源のことを考えると、県が見直しをちゅうちょすることも分からないではないが、請願者の訴えどおり、障害者医療の適用については後期高齢者医療制度に入っても入らなくても、差別がない運用をすべきである。
- 22:【小林 功委員】
平成20年度請願第1号は継続審査とされたいという動議を提出する。本請願は65歳から74歳までの障害者が後期高齢者医療制度に加入しない場合においても、医療費助成を適用することを求めているものである。後期高齢者医療制度については、政府・与党において昨年4月の導入以降、制度の根幹は維持しつつ、低所得者層の保険料軽減措置を拡充するなど、運用の改善に努めるとともに、今年の春を目途に全世代の納得と共感を得られる枠組みについて結論を得ることとしている。なお、この制度は県だけで実施するのではなく、保険者たる市町村にも関係するので、市町村の財政状況等が特に厳しくなっている状況を更に詳しく調査する必要があると考えている。そこで、現時点では、本県における障害者医療制度の取扱いを変更することは困難であると考えているが、国における後期高齢者医療制度の見直しの動向を見極める必要があることから、本請願については引き続き慎重に検討する必要があるので、継続審査とすることを求めるものである。
- 23:【かしわぐま光代委員】
「県発行の書類と広報紙への音声コード付加」の請願について伺う。音声コード読上げ装置は、県内の公共施設や個人宅にどれくらい設置されているのか。
- 24:【障害福祉課長】
音声コード読上げ装置の普及状況であるが、国の障害者自立支援対策臨時特例基金事業の対象事業として市町村において平成19年度から導入が始まっており、これまでに県内の44市町が市役所や支所等の窓口に計146台、県の機関である福祉相談センター、県立図書館等に10台が設置されている。また、個人用については、日常生活用具の指定品目であり、市町村により一部負担を伴うが、個人に交付される。平成17年から19年の3年で、約170台の交付が確認されている。
- 25:【かしわぐま光代委員】
視覚障害者の状況を見ると、点字ができる方は1割ほどしかいないと聞いた。他の9割は点字以外の方法で情報を入手しなければならないことになる。情報の入手の方法としては、家族の協力を得る場合、他のITを利用した機器、音の出る時計を利用するなどがある。自分たちの生活を守るため、公的な情報を入手しようと思うと、役所の窓口に行くしかない方もある。音声コードが付加されている書類がたくさんあれば装置が必要ということになるが、少なければ装置もいらないということになる。県は、広報などを含め必要な書類には率先して音声コードを付加することが必要だと思うが、現在、音声コードはどれくらい付加しているのか。
- 26:【障害福祉課長】
県の資料については、「福祉ガイドブック」に付加したのが最初であり、他は愛知県図書館において「視覚障害者用のご案内」というちらしに付加されている。
- 27:【かしわぐま光代委員】
現状では、県の情報を入手するには、音声コードではほぼ無理ということになると思う。県として、この請願を受けて、音声コードを付加していかなければならないと考えているのか。それとも他の方法を使って充実させていくのか。
- 28:【障害福祉課長】
情報は、点字を始めレコーダーなど様々な手段により入手できるものと考えている。視覚障害者の方の状態により、何がふさわしいかを個別に判断する必要があるが、音声コードについては、現状ではまだ2件ほどであり、視覚障害の方にとっては、情報入手手段の一つとして有効であると思うので、今後、健康福祉部のパンフレットなどへ付加するよう関係課室へ話をしたい。なお、コードを付加するには、コード作成ソフトを使い、情報を入力してコード化するため手間がかかる。また、印刷物を作る場合、部数等にもよるが、これまでの状況から1割程度経費が上積みされることを踏まえ、各課へ協力してもらう。健康福祉部だけでなく、県の施策など視覚障害者に必要なものがあれば、各部局へできる限り付加をお願いしていきたいと考えている。
- 29:【かしわぐま光代委員】
読上げ装置の置いてある公的機関を見ると、安城市で10台、岡崎市で10台、豊山町で8台となっている。もっと各市町の公的機関へ設置することが必要だと思う。また、音声コードを各市町の書類に付加する話をしていくことが大切だと思うので、力を入れてやってほしい。参考に、視覚障害者は県内で何人いるのか。
- 30:【障害福祉課長】
身体障害者手帳所持者である視覚障害者の方は、1級から6級まであるが、平成20年4月1日現在で、計15,176人に交付されている。
- 31:【かしわぐま光代委員】
多くの方が困っていると思うので、音声コードを付加して、幅広く視覚障害者の方に県の情報を取り入れてもらうことをお願いする。
- 32:【小林 功委員】
視覚障害者の方で、県の広報等を音声で聞いているという人の話を聞いた。どうしても健常者の方と比較して、情報の入手が少なくなる。印刷物に付加するだけであれば大きな負担ではないと思うので、音声コードの付加を充実してほしい。
- 33:《一般質問》
【石井芳樹委員】
障害者自立支援法が、平成18年4月に一部施行されて、まもなく3年がたつが、支援費制度が平成15年に発足してからわずか3年で、利用者負担の1割の定率負担の導入や報酬の月払い方式から日払い方式への変更など大幅な制度の改正が行われたことから、利用者、事業者、市町村などの多くの関係者に混乱をもたらしたところである。自立支援法では障害者が各種サービスを利用する場合に、まず、障害程度区分の認定を受けることになっている。障害程度区分は、障害のある人たちが公平な福祉サービスが利用できるようサービスの必要性を客観的に明らかにすることを目的として導入されたものである。その判定方法は、介護保険の要介護認定調査項目79項目と障害程度区分独自の調査項目27項目、計106項目を基にコンピューターによる一次判定が行われ、コンピューター判定では適切な評価が困難な項目について、医師の意見書や調査員の特記事項を参考に、審査会で総合的に審査をする二次判定、更には審査結果に対する不服を審査する不服審査会が設置され、利用決定のプロセスの透明化が図られている。しかしながら、コンピューターによる一次判定では、知的障害者や精神障害者の障害程度が低く判定される傾向にあり、障害特性が適正に反映されていない状況となっているため、二次判定で一次判定の結果より上位区分に変更された割合が、全国調査によると、知的障害者では43.8パーセント、精神障害者では55パーセントという結果が出ている。このような状況の中で、県が設置している愛知県障害者介護給付費等不服審査会には、法の施行後、何件の不服審査請求が出され、その裁決状況はどうなっているのか。
- 34:【障害福祉課主幹(地域生活支援)】
平成18年度は65件、平成19年度は4件、平成20年度は現在のところ7件であり、合計76件の不服審査請求が提出されている。その裁決の結果であるが、76件のうち42件については請求を取り下げられており、残りの34件について裁決を行っている。その内容は、市町村の処分が不適当で、処分の取り消しを行う「認容」が21件、市町村の処分が適当で、審査請求に理由がないとする「棄却」が13件という状況となっている。
- 35:【石井芳樹委員】
与党障害者自立支援に関するプロジェクトチームにおいて、「障害者自立支援法の抜本見直しの基本方針」がとりまとめられ、コンピューターによる一次判定ソフトに関する見直しの動きがあると聞いているが、そのスケジュールはどのようになっているのか。
- 36:【障害福祉課主幹(地域生活支援)】
国から示されている見直しのスケジュール案によると、平成20年度から21年度にかけて、サービスの利用実態調査が実施され、その収集されたデータの分析を行い、新たな一次判定理論の検証を行い、平成22年度には一次判定理論を盛り込んだ新たな判定ソフトを開発することとされている。平成23年度には一部の市町村でその新たなソフトを試行し、検証・修正した後完成したソフトを市町村へ配付する予定となっている。
- 37:【石井芳樹委員】
精神障害と知的障害について、一次判定では障害程度区分に反映されにくい状況にあり、あと3年間は現在の判定ソフトを使用して障害程度区分を判定していかなければならないので、市町村による二次判定による重要度が増してくると考えている。県として、二次判定を適正に実施するために、市町村に対してどのような指導を行っているのか。
- 38:【障害福祉課主幹(地域生活支援)】
障害程度区分の判定については、二次判定の市町村審査会の役割が非常に重要と考えている。県としては、厚生労働省が作成した「障害程度区分状態像の例」や「二次判定の際の変更事例集」を、市町村に配布して、二次判定を適正に実施するよう周知徹底を図っている。また、障害程度区分認定調査員、市町村審査会委員及び医師を対象とした研修会を毎年実施して、資質の向上に努めているところである。
- 39:【石井芳樹委員】
不服審査申し立て件数は、数字から見ると減っている。しかし、不服申し立てをして、行政に物申すことが苦痛であったが、最終的には区分が3から5に上がってよかったという話を聞いた。また、この市町村では的確に判断してくれるが、隣りの町では特記事項や意見書が反映されないという意見も多く聞く。ソフトの見直しが行われるまでの3年間、地域の実状を調べ、特記事項や意見書が適切に反映されるよう、市町村に対する支援を要望する。
- 40:【かしわぐま光代委員】
2月27日にうずら農家で確認された高病原性鳥インフルエンザについて伺う。現在までのところ、大きな風評被害等もなく、静かに見守っている状況であり、安心しているところである。学術的に原因が確立しないうちに検査が行われたこともあり、住民にきちんとした情報が伝えられ、安心して暮らせるようになればと思っている。また、豊橋市と愛知県と国とが連携をとり、人間に感染しないように対応してもらうことを望んでいる。今までに、健康福祉部として、どのような対応をしてきたのか。
- 41:【健康対策課主幹(感染症)】
豊橋市は中核市であり、感染症対策は感染症法に基づき、豊橋市が実施することになる。豊橋市内で発生した今回の事例についても、豊橋市が中心となり、感染症対策としての対応を行っているが、県としても、発生当初から、うずらの殺処分など防疫作業の従事者に対する健康チェックの応援のため、医師や保健師を毎日派遣するとともに、従業員から採取された検体などの検査を県衛生研究所で実施するなど、豊橋市と連携しながら対応しているところである。
- 42:【かしわぐま光代委員】
豊橋市から健康福祉部に対して要望はあったのか。
- 43:【健康対策課主幹(感染症)】
非常に多くの職員が殺処分に従事しており、その健康チェックを短時間で行わなければならないことから、どうしても人手が足らないということで、医師と保健師の派遣について、要請が来たという状況である。
- 44:【かしわぐま光代委員】
人に対して害が及ばないことを望んでいるが、最悪の事態も想定しながら、県としてどのような対応をしていくのか。
- 45:【健康対策課主幹(感染症)】
鳥への感染が確認された農場の従業員を始め、鳥への接触者については、接触状況、現在の症状などの調査を行う。もし、発熱などインフルエンザを疑うような症状があれば、人への感染の有無を確認するために、検体を採取して、県の衛生研究所において検査をすることになっている。また、症状がない場合でも、接触後10日間は体温測定を要請するとともに、万一その間に発熱などの症状が出た場合には、直ちに保健所へ連絡してもらうよう要請することとしている。今回の事例について、豊橋市においても、同様の対応をとっていると理解している。県で同じ事態が生じた場合にも、同様の対応をとることとしている。
- 46:【かしわぐま光代委員】
国に対して、県として特別に要望することはないか。
- 47:【健康対策課主幹(感染症)】
現在は豊橋市内で確認されている状況であるが、今回初めてH7N6が確認されたものであり、対応について、国と調整・検討しながらやっていく必要があると考えている。検査についても、国立感染症研究所の協力を得なければ対応できない部分もあり、連携を図りながら対応していきたいと考えている。
- 48:【かしわぐま光代委員】
素早い動きが大切であると思うので、機を失することのないよう最大限の努力を要望する。
- 49:【筒井タカヤ委員】
今回の不適正経理処理問題について、関係者は対応について大変苦労したと聞いている。しかしながら、このような問題については、たとえ大変であってもしっかりとした対応を行うべきであり、今回の対応結果については、しっかり申し送りを行っていただきたいと思う。また、これから返還金に関する仕事も残っているが、事務職員だけでなく、今回の事件と直接かかわりがないと思われる医療職、看護職の職員がいる。返還金は強制ではないというが、よく説明する必要があると思う。どのように対応していくのか。
- 50:【健康福祉部長】
委員の皆様、県民の皆様にお詫び申し上げる。調査を実施し、再発防止策も示され、二度と起こさないよう取り組んでいるところである。組織としてこうした土壌があったということであり、もちろん強制ではないが、全員で返還していくことに協力をお願いしている。7月までと時間もあるので、趣旨をしっかり説明し、返還に取り組んでいきたい。また、再発防止とともに、蓄積したノウハウを引き継いでいきたい。
- 51:【病院事業庁長】
医療職の中には、経理業務には携わっていないので、今回の件は関係ないとの意識がある者もいるが、先日、知事が議会で答弁したように、県職員全員が一つとなって県民に謝罪していくという気持ちを示すことが大切であることを伝えていきたい。また、返還金は強制ではないということもよく説明していきたい。
- 52:【筒井タカヤ委員】
医療職には、返還金に根強い抵抗感があると思う。医師・看護師不足と言われる中で、現場の声に耳を傾け、責任者が誠意を持って対応するよう要望する。
勤務医環境改善事業費補助金についてであるが、これは昨年の12月補正で認められたものであり、予算額はわずか300万6,000円、中味としては二つの事業が挙げられている。一つは、女性の医師の育児等支援のため、短時間の勤務制度等を導入する病院への支援を内容とするもので、「短時間正規雇用支援事業費補助金」、もう一つは、医師の業務負担軽減のため、診断書の代行記載等を行う医師事務作業補助者の設置・充実を図る病院への支援を内容とするもので「医師事務作業補助者設置事業費補助金」で、合わせて3か所の民間病院が補助の対象先となっている。この補助対象の病院はどのようにして選定されたのか。
- 53:【医務国保課主幹(医療対策)】
この補助金の目的は、病院勤務医の勤務環境を改善することにある。病院勤務医の勤務を過酷にしている原因の一つとして、重症・軽症問わず、患者の方々が夜間、休日に救急病院に集中するということが挙げられているので、補助対象として、2次救急病院、3次救急病院、加えて特に医師不足の影響が大きく、病院勤務医の負担が増していると思われる小児科、産科を掲げる病院、以上を補助の対象としている。県では補助対象となる計178の病院すべてに対して、意向確認調査を実施したところ、3病院から希望があったので、予算化を図ったところである。
- 54:【筒井タカヤ委員】
178の病院がありながらどうして三つなのか、少し理解に苦しむところもあるが、事実だとすれば、今後の進め方も考えていかなければならない。普通に考えると、政策医療を担って頑張っている公的病院こそが補助先にふさわしいと思うが、どうして公的病院は補助を希望しなかったのか。
- 55:【医務国保課主幹(医療対策)】
公的病院が補助を希望しなかった理由について個々には聞いていないが、短時間正規雇用支援事業費補助金については、医師をフルタイムの正規雇用から短時間の正規雇用とすることによって生じる勤務時間の不足分を補充する代替医師の人件費が補助の対象となっており、また医師事務作業補助者設置事業費補助金についても、医師事務作業を補助する者が技能習得のために研修に参加した場合の代替職員の人件費を補助の対象としている。県の緊急な意向調査の中で、代替の医師あるいは職員を確保する目途が、この医師不足の中で立たなかったということはあると思う。
- 56:【筒井タカヤ委員】
公立病院が危機的であると言われる中で、実態と今回の件が離れているような気がする。一体なぜこのように反応がなかったのかという検証をするための文書を提出してほしい。
救急医療におけるドクターヘリの有効性、重要性等については十分承知しているが、ドクターヘリを設置する場合、多くの経費がかかる。平成19年に「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」が制定されたものの、まだ日本の各県においてその配置がされていないが、愛知県は7年前から愛知医科大学病院に配置され、各病院の協力で活動が進んでいる。最近の活動状況について伺う。
- 57:【医務国保課主幹(医療対策)】
平成20年1月から12月までの1年間の出動回数は491件であり、うち現場出動等が350件である。残り141件は要請を受けて現地に飛び立ったものの、救急隊が現場を確認した結果、軽症あるいは死亡等でキャンセルが入り、途中で引き返したというケースである。平成19年の出動件数は496件であり、平成20年の出動件数はほぼ前年と同程度であった。
- 58:【筒井タカヤ委員】
ドクターヘリは、着陸場所の確保が問題である。例えば、高速道路で多重事故が起きた時など、高速道路近くの空き地に着陸しても、高速道路はおそらく渋滞で患者との接触に時間がかかると思う。このような時に、高速道路の本線上に着陸できればいいという声があり、そういった要請ができるような環境も整えたいという意見もあった。本県ではドクターヘリが高速道路上に着陸した事例があるか。
- 59:【医務国保課主幹(医療対策)】
本県では、これまでに1度だけある。平成19年10月9日、午前10時ごろ、西加茂郡三好町内の東名高速道路上り線において、車両3台が絡む多重事故があり、傷病者への一刻も早い医療処置が必要という救急隊の要請を受けて、消防が警察、道路管理者と調整した結果、現場から約50メートルほど離れた下り線の本線上にドクターヘリが着陸したというものである。
- 60:【筒井タカヤ委員】
高速道路本線上に着陸するには、消防、警察、道路管理者など、多くの関係機関と調整する必要がある。今後、高速道路への着陸を進めていくためには、事前に関係機関で協議をして、ある程度のルールを定めておくことが必要だと思うが、本県の状況を伺う。これは健康福祉部の問題ではないかもしれないが、ドクターヘリの運航にかかわる問題であり、分かる範囲で見解を示してほしい。
- 61:【医務国保課主幹(医療対策)】
ドクターヘリ、愛知県の防災ヘリの高速道路着陸に関して、県防災局、県警本部、愛知県消防長会、中日本高速道路株式会社等道路管理会社、ドクターヘリ運航調整委員会の間で、平成20年12月25日に覚書が締結されている。この覚書は着陸場所の候補地を選定するとともに、関係機関への連絡及び実際の着陸場所の選定、安全確保等に関する手順を定めたものである。今後、万が一、ドクターヘリの高速道路着陸が必要な事故が起きた場合は、この覚書にのっとって、着陸への調整が行われると聞いている。
- 62:【筒井タカヤ委員】
平成19年度の着陸の時はそういうものはなく、昨年12月25日に覚書が締結できたことは、大変いいことであると思う。議会や委員会で覚書が締結できたことを共有し、理解を深めることも必要である。ある部局だけということでなく、公表し、委員会にも話をしてもらいたい。
乳幼児への感染が問題となっている細菌性髄膜炎の原因菌の一つである「インフルエンザ菌b型」、いわゆる「ヒブ」について伺う。インフルエンザ菌b型とは、正式名称をヘモフィルス-インフルエンザ菌b型といい、略してヒブと呼ばれている。細菌性髄膜炎は、脳や脊髄を覆う髄膜に細菌が入り込み炎症を引き起こす。発熱、頭痛、おう吐、吐き気などの症状から始まり、時に意識障害を伴い、死亡や後遺症を残すこともあり、乳幼児にとって注意を要する疾患である。この細菌性髄膜炎のうち、ヒブによるものが50パーセント以上あると言われているが、どのくらいの細菌性髄膜炎の患者がいるのか。
- 63:【健康対策課主幹(感染症)】
感染症発生動向調査に基づく全国約500定点医療機関からの報告によれば、昨年412件の細菌性髄膜炎が報告がされている。このうち、本県の発生状況であるが、17定点医療機関から昨年は21件の報告があった。なお、全国のヒブによる年間発症者数は、約600人と推測されている。細菌性髄膜炎の原因菌はいくつかあるが、最も患者の割合が多いのがヒブによるものであり、また、感染者の多くは4歳までの乳幼児となっている。
- 64:【筒井タカヤ委員】
わが国では国内へのワクチン接種の導入が遅れていたが、一昨年1月にヒブワクチンが医薬品として承認され、昨年12月19日から発売が開始されたところである。このワクチンについて、乳幼児の父母だけに限らず、例えば祖父母なども含め、幅広く広報を実施していく必要があると思うが、県の見解はどうか。また、先日の本会議において、県のホームページでカタカナの「ヒブワクチン」では検索できないとの指摘がされたが、どのように対応したのか。
- 65:【健康対策課主幹(感染症)】
県としては、ワクチン接種が感染症の有効な予防接種の手段とされている水ぼうそうやおたふくかぜなどの任意の予防接種について、以前からホームページ等での広報活動に努めているところである。ヒブワクチン接種の有効性についても、ワクチン発売に合わせて、県のホームページでヒブ感染症や接種のスケジュールなどについて、広報を行っている。今後もワクチンの需給状況等の情報も入手しながら、県の広報など様々な媒体を利用して幅広い広報に努めていく。また、県のホームページでの検索であるが、カタカナの「ヒブ」や「ヒブワクチン」では、検索できない状況になっていたので、直ちにホームページを修正し、現在ではこれらでも検索できるようになっている。
- 66:【筒井タカヤ委員】
今後、県民への広報が徹底できるように取り組んでほしい。
先日、委員会の調査で、がんセンター中央病院の外来化学療法センターを見たが、看護師が作業を行う場所も狭いと感じたし、また、患者に投与する抗がん剤のミキシングについては、少人数の薬剤師で対応しているということも聞いた。一方、今回、病院事業庁からは、化学療法を必要とする外来患者数の増加に対応するため、がんセンター中央病院の外来化学療法センターを、現行の29床から60床に拡充することとし、来年度は、建物の基本設計を行い、平成24年度中の供用開始を目指していくと聞いている。この外来化学療法センターについては、大幅な増床を行うことから、当然、抗がん剤のミキシング業務が更に増加することが予想されるので、薬剤師の増員が必要だと考えるが、病院事業庁はどのように考えているのか。
- 67:【管理課主幹(人事・労務)】
当然、抗がん剤のミキシング等業務量の大幅な増加が見込まれるので、薬剤師の確保は、重要な課題であると認識している。一時期に大量の採用も困難であることから、平成24年度の供用開始に向けて、順次、薬剤師の定数を増加させ、必要な薬剤師の数を確保していきたいと考えている。なお、現在の外来化学療法センターについては、全体的に手狭な状況となっているので、来年度の外来化学療法センターの建物の基本設計の中では、患者や職員の動線も踏まえながら、アメニィティーの高い施設となるよう、十分に検討していきたいと考えている。
- 68:【筒井タカヤ委員】
あのような狭あいなところで治療を受けるのは、患者も大変だと思うが、薬剤を管理する薬剤師が間違いをしないかと不安感を覚えた。平成24年度の供用開始までは、間違いのないようにしてほしい。同時に、がん専門の知識を持った薬剤師は1名であり、更に1名増やすという話も聞いたが、60床にするにあたり体制をしっかり整えてほしい。
- 69:【管理課長】
薬剤師や看護師も高度専門医療のためには、高度な資格が必要である。認定看護師・薬剤師を育てるため、計画的に研修を受講させているところである。認定薬剤師を採用するのではなく、我々の組織の中で育てるよう努力している。
- 70:【筒井タカヤ委員】
資格を取得するには、大変な労力がかかり、資格を取得したからといって給料が上がるわけでもない。資格を取った職員に対して、それに見合った処遇をすることが大切である。以前、認定看護師については、そのことが分かるバッジを付けるよう、また、がんセンターニュースでも紹介するよう質問をした。また、名札の色を変えて認定看護師・薬剤師であることが分かるようにしてもらいたいとも言ったが、どうなっているのか。
- 71:【管理課長】
認定看護師については、それが分かるようにバッジを付けるようにしており、また、がんセンターの広報誌でもそのことを記事にしている。名札の色を変えることについては、組織における位置付けもあり、また、それぞれの部門の中で認定を取られた方をどのように処遇していくかということも課題でもあり、今しばらく研究したい。
- 72:【筒井タカヤ委員】
資格取得のための努力をしようとする気持ちにさせるような処遇をすることが大切である。
現在、医師不足が社会問題化し、常時、公立病院は医師確保に大変苦労している状況だと認識している。こうした状況を踏まえて、国の人事院では、医師給与の引き上げが勧告され、本県の人事委員会も同様の勧告がなされたものと承知している。本県の人事委員会の調査では、現在、病院事業庁の医師給与と、民間医師の給与の間には、年間で約200万円の差があり、県立病院の医師給与の低さが医師確保のための阻害要因の一つであることは、まぎれもない事実となっている。しかし、本県では、財政状況の急激な悪化に伴う緊急避難措置として、来年度は全職員を対象とした給与抑制を行うことになっている。医師については、その確保のために、本来ならば処遇を改善すべきである状況下であると認識しているが、今回逆行するように、医師についても給与の抑制を行い、その処遇を改悪することには甚だ問題があるのではないかと思う。一方、名古屋市においては、昨年10月に医師給与を改善したと聞いているが、病院事業庁は承知しているのか。勤務医不足の中、本県が医師の給与抑制を行えば、医師が名古屋市などの他の公立病院や民間病院の方に流れてしまうのではないか。いずれにしても、このような時にこそ、県立病院の医師に対する何らかの処遇改善が必要なのではないか。このことについて、病院事業庁としてはどのように考えるのか。
- 73:【管理課主幹(人事・労務)】
まず、名古屋市の状況であるが、総務省の平成19年度地方公営企業決算統計調査によると、単純平均ではあるが、医師給与については、本県の方が年収で約60万円上回っているが、名古屋市は、昨年10月に特殊勤務手当により、平成20年度は年収で約50万円の医師給与の改善を行ったと承知している。この改善により、名古屋市は本県の状況におおむね近づいたものと認識している。次に、病院事業庁としては、県立病院勤務医確保のための医師の処遇改善について、今回の人事委員会勧告をしっかりと受け止め、初任給調整手当の大幅な改善を行なうこととしている。今回の初任給調整手当の改善により、現行で月額10万100円の手当額が改善後には月額24万9,100円となり、月額で14万9,000円の引き上げとなる。給与抑制については、危機的な県の財政状況への対応として、医師も含めた全職員で受け止めるものである。結果として、医師については初任給調整手当の大幅な改善により、抑制を加味しても年収は大幅に増加するものと見込んでいる。病院事業庁としては、県立病院医師の給与が一定程度改善できたと考えている。しかしながら、医師の給与も含めた処遇改善については、病院事業庁の最重要課題として、今後も、社会情勢等を見極めながら、引き続き検討していきたいと考えている。
- 74:【筒井タカヤ委員】
医師の給与改善があることをほとんどの人が知らない。医師不足への対応のためにも、もっと広報すべきではないか。
- 75:【病院事業庁長】
少し視点を変えた意見だが、先ほど病院事業庁の医師給与と民間医師の給与の間には、年間200万円ほどの差があるとの話があったが、これは民間病院の勤務医との比較であると思う。個人の開業医の場合は、「仕事半分、給料3倍」と言われており、医師会のデータでは、勤務医と開業医では1,000万円以上の開きがあると思う。先日、がんセンター中央病院の部長に退職理由を聞いたら、「3人の子どもを大学に進学させるには、この給料ではどうしようもないので、開業したい。」とのことであった。これは国家的な医療資源の喪失である。現在、全国の自治体病院の7割から8割が赤字であるが、その要因は診療報酬制度であると考えている。高度医療はやればやるほど赤字になってしまうシステムである。そのため、県立病院も一般会計から補てんしてもらって経営しているのだが、診療報酬制度が改善されれば相当なことができる。委員の皆様にも、次回の診療報酬改定時には、ぜひとも支援をお願いしたい。
- 76:【筒井タカヤ委員】
今の話を聞いて、高度なものをやればやるほど赤字になることが分かった。こうしたことから一般会計から負担金が補てんされている。単に赤字を出すことが悪いというわけではない。医療制度も悪い。これからも高度な医療を行っているがんセンターを支えていきたい。
- 77:【高木ひろし委員】
救急医療情報システム委託費の民事調停については、まだ結論をみていないと聞いているが、経過はどのようになっているのか。
- 78:【医務国保課主幹(医療対策)】
昨年、愛知県医師会から簡易裁判所に民事調停の申立てがあり、愛知県と県医師会の間で調停が進んでいる途中の段階である。内容については、民事調停法により非公開で行われるということになっており、まだ途中の段階であるので、中味の話は差し控えさせていただきたい。
- 79:【高木ひろし委員】
民事調停は、その場に入ると、どのような調停が行われているか一切非公開ということである。今回、不適正経理問題で県が取ろうとした対応と比較して、極めて問題があると思う。県の事業として国の補助金を入れて、毎年2億円以上、20年間以上にわたってつぎ込んできた事業のうち、その1割相当が不正に流用されてきたという指摘であり、極めて重大な事案である。発覚以来2年たってもまだ決着をみず、返還が行われていないということには、改めて注意を喚起しておきたい。そもそも民事調停で解決する問題ではなく、不正を認めた県が委託先に対して返還請求を起こし、裁判で決着すれば、物事の判断がつくわけである。それをしないため調停作業にはまり込んでしまい、1年以上やっても、全然結論が出ないわけである。これをどのように決着をつけようとしているのか。
- 80:【健康担当局長】
調停に入って約1年半になる。争点はいくつかあり、いつ決着するということは難しいが、できるだけ早急に決着をつけていきたいと考えている。
- 81:【高木ひろし委員】
現在、民主党から障害者差別禁止という趣旨の条例を作るため、他の会派と相談中である。昨年8月に25の障害者団体により、愛知障害フォーラムという一つの団体が結成された。その団体から、各会派及び県に、愛知県障害者差別禁止条例を愛知県議会において、制定してもらいたいという趣旨の要望が出されており、当事者の立場から条例案の試案も添付されていた。先日のことであり、まだしっかりとした検討はされてないとは思うが、県として当事者からの要望について、どのような受け止め方をしているのか。
- 82:【障害福祉課長】
愛知障害フォーラムから、3月10日に議会関係と県に条例の早期制定について、その方々が作られた条例案を示され、要望があった。これは、障害者、その家族あるいは支援者の方々の思いがこもった内容になっているかと思う。まだ、詳細に内容を見ていないが、先行している千葉県の条例と比較すると、一部分、権利関係について強調された条例案ではないかと思っている。
- 83:【高木ひろし委員】
一昨年9月に、国連において採択された障害者の権利条約に日本政府が署名したことから、日本国内においても、国内法の整備の関係で自治体においても条例制定の動きが出てきたものである。この条約については、今年の3月に入り、国内法の作業を経て、批准案件が閣議決定され、この3月中にも国会で批准をされるのではないかという動きがあるが、所管の障害福祉課では、こうした国の条約を巡る動きをどのように認識しているのか。
- 84:【障害福祉課長】
国の動きについては、内閣府で障害者施策推進本部が平成19年12月に開かれ「条約の可能な限り早期の締結を目指して必要な国内法の整備を図る」ことが確認され、それが障害者基本計画の重点施策実施5か年計画に盛り込まれた。これを受けて各関係省庁が検討を進めており、障害者基本法の一部改正が予定されている。一部改正の内容については、この条約を踏まえた「差別の定義」や「合理的配慮の否定」を盛り込んだ一部改正にする方向で、今検討が進められていると聞いている。条約の締結、批准については外務省が中心で動いているが、今国会に承認を受けるという手続きをとりたいということで動き始めたという新聞情報がある。外務省に確認したところ、そういう流れではあるが、詳細スケジュールについては、まだまだ見通しはつかないということであった。
- 85:【高木ひろし委員】
これは極めて注目すべき動きになってきている。障害者自立支援法は3障害全体を対象にしてスタートし、大きく見直されようとしている。障害者に対するサービスをいかに充実していけるかということについて、障害者は重大な関心を持って見ている。一方、県も国も財政上の理由から、新たなサービスへの資源を投入することが難しい情勢もある。こういうときであればこそ、社会全体が障害者に対する理解を深めること、差別をなくして暮らしやすい世の中を作っていくような、民間の協力を求めていく、サービスの量的な問題ではなく、社会の質的な転換を促すような仕組みを作っていくような重要な段階であると考える。かつて、愛知県の条例として、議員提案ではないが、「人にやさしい街づくり条例」が作られた。これは国がハートビル法やバリアフリー法を整備するのに先立ち、全国的にも兵庫や大阪に続く形で、自治体の条例が国の法整備をリードしたという経緯がある。こうしたことから、北海道、岩手、宮城、三重でも、障害者の権利に関する条例制定の動きがある。県当局としても議会側といろいろと討議を深め、どうしたら条例整備が可能なのか、積極的な検討を進めてほしいと思うがどうか。
- 86:【健康福祉部長】
「人にやさしい街づくり条例」は、たまたま国も同時期にハートビル法を制定しており、ほぼ同時期に条例と法律が出来上がったケースである。「人にやさしい街づくり条例」の場合、一定の罰則をもって規制するものではなく、その前に整備指針、いわばガイドラインを示すものを作っており、それを条例に作り上げたということである。今回は、国における条約批准の動きに伴って、障害者基本法を改正するという動きがあり、同時期に障害者差別禁止条例を制定したらどうかということだと思う。愛知障害フォーラムの案を見ると、移動に関するアクセスの権利やサービスの提供を受ける権利など、いろいろな項目の権利が規定されており、それらを保障するための権利委員会を設置し、権利が保障されない場合は、勧告、公表するという内容になっていると思う。したがって、個人の権利を調整する必要があり、単なるガイドラインと違うものになっている。条例は法律の範囲内で制定できることになっており、権利の規制に関することを国内法で整備していこうとしていることとのバッティングが想定される。国内法の整備を待って、それをベースに足りないところを条例で整備するというのが本筋であると思っているので、国内法の整備をよく見ながら条例について考えていきたい。
- 87:【高木ひろし委員】
これは、愛知県が全国に先駆けてやろうというわけではない。3年前に千葉県がほぼ同様の条例を作っており、それを基に提案できないか模索してきたわけである。まだ障害者の権利条約もない時代に、千葉県は厚生労働省の指導を得ながら県条例を既に成立させている。法律を乗り越えた条例を作ろうというものではないので、障害者当事者の要望に添うような条例制定、それに伴う県の施策の体系の見直しを検討してほしい。
- 88:【吉川伸二委員】
平成17年4月に尾張病院が循環器呼吸器病センターに名称を変更し、専門に特化したので、もっと頑張ってくれると思っていたが、その後、患者は減っている。今年の議案書を見ても、名称変更前に比べて6割近くに減っている。今年の入院の予定は、114人で、昨年度よりも更に減らそうとしている。県の姿勢は消極的ではないか。こうした状況に至るまでの経過について伺う。
- 89:【管理課長】
循環器呼吸器病センターは、最近の勤務医不足の中で、大幅に医師の欠員が生じている。従来は、開業や転職などで勤務医が離れる場合、大学から補充があったが、最近の勤務医不足の中で、大学の医師派遣余力が低くなり、大規模に集積した循環器部門以外の診療科において、こうしたケースはほとんど不補充となった。その結果、これらの診療科の診療力は大きく低下し、それが原因でその診療科全員の欠員という状況になってしまった。消化器内科、消化器外科、呼吸器外科、整形外科は医師の定数は持っているが、現実は現員ゼロで、事実上、循環器専門の純特化病院となっている。患者数の減は、その結果だと考えている。勤務医不足の中、医師の派遣元である大学側からは、施設や医療機器の充実した大規模病院へ医師を集中配置することとしたい。そうすることが、地域医療にとっても、医師の勤務環境にとっても最適であると考えていると聞いている。循環器呼吸器病センターの現状は、こうした大きな流れの中での結果であると受け止めている。
- 90:【吉川伸二委員】
現在、病院事業庁において検討が進められている新中期計画の中で、尾張西部医療圏における循環器医療のあり方として、一宮市民病院との連携について検討しているようであるが、これは、循環器呼吸器病センターの機能が低下してきたから、その解決策としてこのようなことを考えているのではないかと心配しているが、その点についてはどうか。
- 91:【管理課長】
循環器呼吸器病センターについては、循環器系以外の診療科の医師欠員により、循環器系のほぼ専門病院となっている。合併症や、他の持病をお持ちの方については、専門医がいないことから十分な治療ができない不安を抱えている。一例を挙げると、心臓手術後には消化管出血が生じる場合が多くある。こうした場合、消化器内科が全員欠員であるので、現在は、一宮市民病院から臨時に医師の応援をもらい対応している。こうした事例のように、循環器呼吸器病センターのみで十分にケアできない状況が現場の医師を始めとする医療従事者にも、また患者の皆様にも不安の一つとなっていると考えている。一方で、救急医療の体制整備の観点から、一宮市民病院における循環器系医療の診療能力の不足が先の有識者会議でも指摘されている。また、大学の医局からも、循環器呼吸器病センターの循環器系医療の診療能力を十分に発揮できるような体制を検討してほしいとの意見もある。今回、計画の骨子に一宮市民病院との連携について検討するという考え方を示したところであるが、県としては、循環器呼吸器病センターが現在保有している高度な循環器系の診療能力を今後ともこの地域で継続的にかつ十分に発揮するためには、どうしたらいいのかとの観点から統合・連携を含めた検討を進めることとしている。
- 92:【吉川伸二委員】
病院事業庁として、循環器呼吸器病センターの診療機能を維持するために、これまでどのような努力をしてきたのか。また、今後、どのように検討を進めていくのか。
- 93:【管理課長】
平成17年に循環器呼吸器病センターと名称を変更し、循環器部門で、県内では豊橋ハートセンターに次いで2番目の心臓外科、心臓カテーテル等の実績を持つ有力な病院になったと思っている。それとは別に、新たな臨床研修医制度を発端とした勤務医不足の荒波の中で、小規模な消化器内科、消化器外科、また、呼吸器については開業を引き金に補充ができないという状況になった。それを、大学医局にもお願いをしてきたが、大学に医者が戻らず医局の医者が少ない中で、重点病院というものがあり、小規模な病院には医師補充をするのが難しいということであった。私どもとしては、やむを得ず循環器の専門病院としてやっていくということを、昨年度末に前庁長が申し上げたところである。それについても、24時間循環器疾患に対応するといっているが、他の症状を持った方を受け入れられない状況になった。そうした合併症を持った方が来られない病院で、本当に安心を提供できるかとういことで、次善の策を検討するということに至った。
次に、最近の一宮市との協議の状況であるが、一宮市と本県の幹部実務者で構成する「尾張西部医療圏における循環器医療のあり方に関する協議会」を設置し、その第1回会議を1月16日に開催した。第1回会議では、一宮市民病院側から循環器呼吸器病センターの循環器部門を市民病院の中へ受け入れたい旨の提案がなされた。この提案に関連して、県からは、現在、循環器呼吸器病センターが担当している結核医療について、一宮市側の受け入れ体制について検討するように要請をした。第2回は、本日のこの委員会終了後開催する予定としている。第2回目の会議では、一宮市から循環器部門の受け入れ体制、結核医療の受け入れ体制について具体的な提案が示されることになっている。今後は、一宮市側からの具体的な提案を基本に、現在の循環器呼吸器病センターの医療の水準、特に県内第2位という循環器系の医療水準をどのように維持・継続するかということを検証しながら、統合を視野に入れ、移行に当たっての具体的な諸課題について実務レベルの協議を進めたいと考えている。
- 94:【吉川伸二委員】
予算書を見ると、一般会計の負担金が約65億円、赤字が約15億円あるが、過去から県議会では、県民の方々に高度な医療を提供し、県民の医療の向上を図るということで予算を認めてきたところである。平成17年4月に循環器呼吸器病センターになってわずか4年でこうした方向転換をしなければならないことは非常に残念なことである。一宮市とは協議を進めているようであるが、尾張西部医療圏の中で循環器呼吸器病センターは全国的にも名の知れたところであり、しっかり守ることも必要ではないかと思う。そうしたところに重点を置いて、検討に入っていただくことを要望する。
- 95:【病院事業庁長】
尾張西部医療圏における医療をどうするのかということで協議をしており、本日の第2回目の会議で、一宮市民病院側の基本的な受入れ体制の考え方が明らかになる。こうした病院同士の話にとどまらず、尾張西部の医療をどうするのかということが重要なので、次回からは、稲沢市民病院の方々にも参加いただき、尾張西部の医療をどうするのかということを全員で考えていきたい。