県政報告
平成20年6月定例会(第4号)
2008年6月24日
(主な質疑)
- 1: 午前十時開議
◯議長(栗田宏君) ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
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日程第一 一般質問並びに第八十四号議案株式会社日
本政策金融公庫法等の施行に伴う関係条例の
整理に関する条例の制定についてから第九十
五号議案豊橋コンテナターミナルの指定管理
者の指定についてまで
- 2:◯議長(栗田宏君) 第八十四号議案株式会社日本政策金融公庫法等の施行に伴う関係条例の整理に関する条例の制定についてから第九十五号議案豊橋コンテナターミナルの指定管理者の指定についてまでを一括議題といたします。
これより一般質問並びに提出議案に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
高木ひろし議員。
〔五十番高木ひろし君登壇〕(拍手)
- 3:◯五十番(高木ひろし君) おはようございます。
私は、通告に従い、三つのテーマについて、順次県当局のお考えをお伺いしたいと思います。
まず最初は、歩行者のための交通安全行政、そして道路行政についてであります。
このうち最初に取り上げたいのは、歩車分離信号と言われるものの普及の問題であります。
愛知県における交通事故による死者の数が二〇〇五年以降全国ワーストワンを今日に至るまで続けているということについては、知事を初め県関係者が事あるごとに憂慮を表明し、これを一人でも減らすためにさまざまな対策やキャンペーンが繰り広げられてきたところであります。そして、その結果、道路交通法の改正による悪質運転者に対する罰則が強化されたことなども効果があったと思われますが、交通死亡事故の絶対数そのものは、本県も含め確実に減少しつつあることが確認できます。
しかし、私が注目をしたいのは、この交通事故による死亡者の内訳であります。交通事故には、車対車とか、車対歩行者・自転車、いろいろな組み合わせがありますが、一番弱い立場にある歩行者がその犠牲になる割合が一貫してふえ続け、昨年は、ついに全国でも、そして愛知県でも、死傷者中に占める歩行者の割合が三割を超えたという事実にもっと関心が払われるべきではないかと思うのであります。
先日伺った話によりますと、日本、アメリカ、欧州、この先進自動車地帯と言われる地域における年間の交通事故の死者の数は合計八万人に上るそうでありますが、そのうち、歩行者、歩行中に事故に遭い亡くなった方は一万人、つまり、割合にすると一割強であります。これに比べて、愛知県、そして日本の交通事故による歩行者の犠牲の割合がいかに高いかということであります。
昨年一年間に本県で発生した交通事故による死者数二百八十八人の内訳を見てみますと、信号機のある交差点で青信号に従って横断歩道を渡っていたにもかかわらず、右折してきた車、そして左折してきた車にはねられたりひかれたりして亡くなった方が二十一人いらっしゃいます。その多くはお年寄りであり、子供であります。
つい先日、三月十七日の朝のことでありますが、新聞報道でも御承知の方も多いと思いますが、名古屋市熱田区の一番という交差点で痛ましい事故が起きました。保育園に向かおうと青信号で横断歩道を渡っていた親子三人が左折してきた四トン保冷車にはねられて、五歳の保育園児が即死、母親と二歳の弟も重軽傷を負うという悲惨なものであります。
このトラックは、前方不注意、歩行者妨害ということでもちろんこの責任が問われるわけでありますが、ついでに申し上げますと、この車には助手席に遮光カーテンが引いてありまして、フロントガラスの下にも装飾板が三十センチも据えつけられておって、視界が著しく妨げられておったと、こんな車が走っておるわけであります。
しかし、歩行者の保護ということを考えた場合に、信号機のあり方についても疑問を持たざるを得ないのであります。つまり、通常信号では、皆さんよく御承知のとおり、車両は青信号で直進と左折、右折もできるわけであります。その際、横断中の歩行者にはよく注意を払い、これを妨げないように右左折しなさいというのが交通ルールとなっております。この信号方式によりますと、車をスムーズに交差点を通過させるということを優先した発想であります。歩行者は、青信号で横断している場合にも、右折や左折してくる車の運転者の注意力にみずからの命を、安全をゆだねているということにもなりまして、非常に歩行者にとって不利で、危険な立場に置かれている信号方式であるということが言えます。
歩行者信号が青のときは、車両はすべて赤でストップすると、こういうふうにしますと、少なくとも信号を守っている限り、歩行者と車が交差点内でクロス、接触することはあり得ないわけでありまして、非常にシンプルで当り前の発想ですが、これを歩車分離型信号といいます。愛知県では余りなじみがないわけであります。皆さんも余りお耳にされたことがないと思いますが、この歩車分離式信号については、スクランブル方式や、特に愛知県に散見されるのは、青色の矢印で車を制御するセパレート型の歩車分離信号もあります。実にシンプルに、車、青、そして反対方向の車、青、そして全体の歩行者が青と、こういう順番で車と歩行者を制御する歩車分離式信号が一般的であります。
こういうふうに切りかえますと、一般的には、車が渋滞したり、信号待ちの時間が長くなってしまうのではないかというような弊害も指摘されるところでありますが、警察庁が二〇〇二年一月からの半年間、全国で百カ所の交差点でこの歩車分離式信号の試験運用をいたしました。その結果によりますと、歩行者の安全面で劇的な効果が出るばかりか、交通渋滞も二%減少したのであります。こんな結果も出ております。
実は、この歩車分離式信号の全国普及のきっかけとなったのは、一九九二年に東京八王子で起きた長谷元喜君十一歳の通学中の死亡事故がきっかけとなっております。青信号を守って横断していた息子がなぜ左折してきたダンプカーにひき殺されなければならなかったのか、父親の長谷智喜さんの執念とも言える調査と訴えが、通学通園中の事故で子供を奪われた全国の遺族らの共感を呼び、全国に歩車分離式信号の普及運動が広がりまして、この三月には、命と安全を守る歩車分離式信号普及全国連絡会が結成されたところであります。
こんな結構ずくめとも思える歩車分離信号なんですが、全国に二十万カ所近くある信号交差点のうち、わずか四千二百八十一カ所、二%ちょっとしか導入は進んでおりません。そして、交差点での死亡事故率が全国平均よりも三割も高い、交差点が特に危険だと言われるこの愛知県、この愛知県における歩車分離信号の普及率を調べてみますと、県内一万二千八百八十八カ所の信号交差点のうち、この歩車分離式信号はわずか百四十八カ所、一・一%、全国の半分しか普及しておりません。
神奈川県においては五百二十七カ所、大阪府の五百二十二カ所とも比べて余りにも少ない。この事実が、公共交通よりもマイカー依存度が高いと言われる本県ではありますが、交差点の信号一つとっても車優先の発想が根強く残っている証拠であるとすれば、大きな問題であると考えるものであります。
ITS先進県を目指す愛知県としましては、先日もフォーラムが開かれておりますが、歩行者の存在を感知する信号制御技術など情報通信技術を使えば、効率的で愛知県らしい歩車分離型信号、安全で効率的な信号の愛知県内の展開を図る可能性も十分にあると思われます。
そこで、警察本部長にお伺いしておきたいと思います。
信号機の普及、設置につきましては警察本部が所管されておりますが、愛知県でも、この歩行者事故が多発する交差点や通学路に当たる信号交差点を手始めにして、積極的に歩車分離型信号を普及、転換していくべきだと考えますが、本部長の見解をお伺いしておきたいと思います。
次に、これと関連をいたしますが、歩道橋の問題に触れたいと思います。
私たち民主党は、県政の合い言葉を「いつも真ん中に人がいる」といたしまして、政策を考えてきておるつもりです。そうした人間の視点で道路というものを見詰め直してみますと、今申し上げた歩車分離式信号以上にはっきりと人よりも車優先ということを象徴する事例を県内の至るところで発見することができます。それが道路横断歩道橋だと思うのであります。
調べてみますと、愛知県内には、二〇〇六年四月現在で、実に千八十六もの歩道橋がありまして、東京都の千百六と並ぶ全国的な歩道橋大国であるということがわかります。しかも、日本で初めて立体式、階段で上りおりする歩道橋ができたのは、本県の西枇杷島町跨道橋であるということも有名な事実であります。
国際的に見てみますと、皆さんも海外に行かれた際お気づきだと思いますが、歩道橋というものはほとんど目にいたしません。世界的に歩道橋なる、歩行者が階段を上っておりて、車を優先して、道路横断をすると、安全を確保するという方式はほとんど、日本と韓国に特殊な形態だと言われております。
そうした歩道橋のほとんどは、モータリゼーションが急発展をいたしました昭和四十年代に、交通戦争と呼ばれるほどの、年に一万六千人を超えるような交通死亡事故が激増した時期に緊急避難的に歩行者を守るためにつくられたものがほとんどであります。そして、これを資金的に促進してきたのは、道路特定財源を活用した国の補助金制度であったのであります。道路管理者である市町村や県は、二五%の自己資金で四分の三の国の道路特定財源をいただいて、歩道橋をつくれるという制度によって、これだけにも横断歩道橋が普及したということであります。
今日、エレベーターはおろかスロープすらない急階段の歩道橋は、高齢者や車いすの身体障害者、そして、ベビーカーの母親などにとっては、とてつもないバリアとして町なかに立ちはだかっております。
一九七〇年に建設された名古屋市東区の古出来町交差点歩道橋、これが有名でありますが、この歩道橋に対しては、こうした交通弱者の立場から、建設した名古屋市と国に慰謝料の支払いを求める裁判も十八年にわたって続きました。結局、この交通弱者の訴えは退けられてしまいましたけれども、その後、二〇〇二年に、愛知県警は、この古出来町交差点歩道橋の直下に横断歩道を併設するという異例の措置をとったのであります。しかし、県警によりますと、歩道橋のあるところに横断歩道はつくらないというのがいまだに原則であります。
本県では、一九九四年に、人にやさしい街づくりの推進に関する条例を制定いたしておりますし、国においても、二〇〇〇年以降、まちづくりや交通のバリアフリー化を進める法整備が急ピッチで進められてきております。道路を取り巻く環境は大きく変わり、車優先時代の遺物となった歩道橋の存在自体を検討し直す時代に入っております。
東京都では、六年前から計画的にこの歩道橋を撤去しようという建設部の方針が打ち出され、利用者が少ないこと、そして五十メートル以内に横断歩道があること、そして通学路に指定されていないことなどの条件で歩道橋の対象を選定して、今日まで既に二十橋以上の歩道橋が撤去されております。
また、大阪では、まだまだ使える立派な歩道橋を撤去する、解体するだけではもったいないという発想から、撤去した歩道橋をインドネシアの開発途上地域に、川にかける橋として利用するという、そうした活動を仲介するNGOの活動も話題を呼んでおります。
愛知県の至るところ、皆様の恐らく近所にもあると思います歩道橋、老朽化してほとんど利用する人もいないというような歩道橋も多いと思います。しかし、補助金が入っておることや、一たんつくってしまったものをなかなか撤去するという決断ができない自治体、そして、歩道橋が存在している限り横断歩道を併設することはできないという原則をいまだに堅持しておる警察との間で、実は交通弱者と呼ばれる住民が困っているわけであります。その結果として、横断歩道はないのに無理に歩道橋の下を横断しようとして、結果として事故に遭うような高齢者の事例も後を絶ちません。
この問題については、人にやさしい街づくり条例、この立派な条例がある愛知県、そして、この条例を所管しておる建設部にまずお尋ねいたします。
県内のこの一千を超える歩道橋に対して、県が管理しているのは四百幾つでありますが、どのような現状認識をお持ちなのか、そして、この人にやさしい街づくり条例制定後十四年を経過した現在、人に優しいまちづくりにとっていよいよバリアとなってきているこの歩道橋を撤去するということについてどのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
また、警察本部長にも、この歩道橋に関しても伺います。
歩道橋の撤去がすぐにできない、あるいは学童が歩道橋を利用しているという場合においても、交通弱者の立場に配慮して、横断歩道を安全に渡れる信号機つきの横断歩道を併設するということを検討していかれるお考えがあるのかどうか、お伺いをしておきます。
この問題の最後の締めくくりといたしまして、歩車分離信号、歩道橋、この二つの具体的な事例を挙げてお尋ねしてまいりましたのは、車優先の時代から歩行者優先の時代へと、今、根本的に道路行政や交通安全行政を転換すべき時期だという点であります。折しも、この三、四月、さまざまな議論を呼びました道路特定財源、これが一般財源化したということは、すなわち、道路の整備は自動車ユーザーの負担によって行われているんだということがこれまでの車優先の道路行政に傾いたということの背景にあったわけでありまして、この一般財源化による効果というものは、この際、まちは、道路は、一体主役はだれなのか、安全や福祉、環境という今日的なまちづくりの総合的観点からこそ道路交通行政を行っていくべきではないのか、こうした総合的な観点について、県のお考えを伺っておきたいと思います。
次に、二番目の課題、レジ袋の問題であります。
地球環境を主要テーマとする洞爺湖サミットを控え、二〇一〇年のCOP10の開催が愛知・名古屋に決まるなど、環境問題に対する住民の関心も次第に高まりを見せつつあります。それを身近なところで感じさせてくれる動きの一つに、レジ袋削減運動の広がりがあります。
私の住む名古屋市では、昨年十月から緑区をモデル地区として、レジ袋の有料化が取り組まれてまいりまして、この二月までの五カ月間で、実に千七十七万枚のレジ袋が削減されるという効果を上げております。参加店舗でレジ袋を辞退した率は何と八八%、十人中九人までがレジ袋は要りません、私の自分で持参したマイバッグを使いますと、こういう対応をされておるということであります。
名古屋市では、ことしの十月からは東側の七区で、来年の四月からは西側の八区で実施し、すべての名古屋市内ではレジ袋が有料となる方針であります。そして、県内全域を見渡しても、四月からは豊田市が有料化を実施しておりますし、江南市など二市二町でも広域で九月から実施を決めております。
マイバッグを持参してレジ袋を断るという新しい習慣が根づき始めております。一袋五円分を節約するということより、ごみを少しでも減らすエコロジカル、アースフレンドリーなライフスタイルの象徴であるというふうに考えますと、こうした消費者の動きは非常に心強いものだと思われます。
ことし二月に名古屋市内で開かれました、ごみゼロ社会推進あいち県民大会、ここでは、愛知県民脱レジ袋宣言が発せられております。そのチラシを見ますと、一日三枚分のレジ袋をみんなでなくせば、家庭で発生する一年分のCO2、五千五百キロの一%分を減らせると。要するに、個人の努力によっても一%のCO2削減ができるんだと、こうした訴え方で、消費者と、そして店舗、自治体行政のさらなる協力を呼びかけております。
労働組合である連合愛知も、今年度、地域で統一して取り組む課題として、レジ袋削減、マイエコバッグ利用促進を熱心に取り組み始めております。
二〇一〇年、あと二年後のCOP10で、世界から地球環境に関心の高い政府代表やNGOの方々が本県を訪れていただくときに、愛知県では既にレジ袋というものが無料でもらえるということはなくなっていると、レジ袋のない愛知県でお迎えできるということができれば、すばらしいことだと思います。
そこで、環境部に伺います。
現在の愛知県内のレジ袋削減の取り組み状況と今後の動向はどのようになっているのか、お示しください。
二番目に、レジ袋削減運動をさらに進めていく上での課題をどう認識し、これを踏まえて、県としてはどのような方針で取り組んでいかれるのか、お答えをいただきたいと思います。
最後の課題は、芸術文化振興策についてであります。
この春以降、二〇一〇年を初回とする愛知から発信するところの国際芸術祭が、本当にみんなが喜び合える成功へと導かれ、そして継続することを心から願う立場からお尋ねしたいと思いますが、昨年十二月にまとめられた、文化芸術創造あいちづくり推進方針、そして、この三月に公表されたあいち国際芸術祭基本構想、こうした県がつくられた文書に目を通させていただき、そして、この地で活躍する芸術家や文化人のうちの何人かの方々に感想を伺ってみました。
これらの文章に記載されておる高邁な発想や、そして、議会における知事の御説明には、一様にうなずいてはいただけるものの、私が気になりましたのは、なぜかどこかさめた反応が、こうした文化芸術創造という高らかな県の呼びかけに対してあるのであります。なぜだろうと、私はさらにお話を聞いていますと、これまでの愛知県の芸術文化への取り組みに対して、長年の不満が横たわっているということに気づかされました。その不満の原因の一つは、県の文化活動団体に対する補助金の推移であります。
一九九一年(平成三年)この年に、当時の鈴木礼治知事の決断によりまして、文化振興基金百億円が造成されまして、その運用果実によって、文化芸術団体に幅広く補助をしていこう、振興していこうという動きが始まりました。その当初、その援助予算は総額二億五千万、限度額五百万円で、一団体当たり六十万円、そして三百を超える団体に対してこの支援がなされたのであります。翌九十二年には、国内最大級の芸術文化複合施設と誇るところの愛知県芸術文化センターもオープンをいたしまして、当時の新聞によりますと、文化不毛の汚名を返上する県の英断であるとまで評価されておった、そんな時代があったわけであります。
しかし、その後、県の財政状況は急激に悪化をいたしました。基金運用益も、金利の低金利によりまして劇的に減少いたしました。こうしたやむを得ぬ事情があったとはいえ、この文化振興基金による文化活動補助事業は、予算額が当初二億五千万円から、二〇〇〇年には一億円を割り込み、二〇〇二年には約六千万円、二〇〇五年には四千万円と減り続けて、二〇〇七年度の予算額は、何と制度発足当初の十分の一程度にまでなってしまいました。予算削減の過程では、助成の要件や支給額もたびたび改変が重ねられる中で、交付団体の数も、一九九八年ごろまではいろいろな分野にわたる四百以上の団体に交付されておったものが、二〇〇六年には百六十四団体に絞られ、回数制限に係る打ち切りが出始めた二〇〇七年には、何と八十六団体にまで減少してしまいました。
こうした経過をつぶさに伺っておりますと、一過性のイベントに五億、十億という県の貴重な資金を投じるぐらいならば、毎年一億円ずつでもいいから地元芸術活動の実になるような使い方をしてほしいと、こうした声が聞こえてくるのも私は当然だと思う、そんな気持ちもわかるのであります。
しかし、こうした地元の文化芸術団体の方々の参加や支援なしには、せっかくの国際芸術祭も本当に一過性のイベントに終わってしまうおそれがあると思われます。この文化活動補助金制度については、県として、この後、今後どのように運用、拡充していくお考えなのか、それによって、県内の芸術文化団体の方々の県の活動への期待をもう一度つなぎとめ、そして、県の提唱する方針への参加、協力をお願いできるようになるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
以上で私の壇上からの質問を終わります。県の率直で誠実な御答弁を期待して、終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 4:◯警察本部長(松尾庄一君) 私からは、横断歩行者の安全確保の二点の御質問についてお答えいたします。
まず、歩車分離式信号機の普及についてです。
この歩車分離式信号機は、議員お示しのとおり、大きく、歩行者が横断するときには全方向の車両をとめるスクランブル方式と、歩行者信号が青のときは、右折あるいは右左折の車両をとめる、いわゆるセパレート方式に分けられます。
セパレート方式のうち、歩行者と右折及び左折、双方の車両を分離する信号機は、横断歩行者が多く、また、道路幅員が広くて、右左折レーン等の確保に問題がない交差点において、歩行者と自動車の交錯を生じさせない、または交錯を少なくするもので、歩行者が安全に横断することができる信号制御方式であります。
当県では、歩車分離式信号機を、スクランブル方式ではありますが、昭和四十六年に東山動物園前に初めて導入し、以後、交差点の交通事故発生実態、県民の要望等を踏まえて順次整備し、本年四月末現在、県内百四十八交差点で実施しております。
歩車分離式信号機については、お示しのとおり、実施箇所においてその安全効果が実証されていることから、今後とも、交差点形状や歩行者の横断需要等を勘案しながら、整備に努めてまいりたいと考えております。
次に、歩道橋と横断歩道の併設についてお答えします。
歩道橋が設置されているところは、そこを通過するドライバーは、通常、横断歩道が設置されていないと思い、高速運転となりやすい、また、横断歩行者への注意がおろそかになるおそれがあること、さらに、歩道橋の橋脚、足、あるいは昇降階段などで、ドライバーから横断歩行者の動き等が見えづらいことなどの問題があり、横断歩行者の安全確保の観点から、原則として、歩道橋直下の横断歩道の併設は行わないこととしております。
しかしながら、高齢者の方々等から、歩道橋を渡るのは大変だという声も聞いております。歩道橋が設置されているところで道路横断のバリアフリー化の要請があった場合には、まず、道路管理者において、当該歩道橋へのエレベーター、エスカレーター、スロープの設置などによりバリアフリー化を図ることが望ましいと考えます。
ただし、これが困難な場合については、横断歩行者の安全を確保できることを大前提として、具体の場所において、高齢者、障害者などの方々の横断需要が多いこと、また、代替横断箇所がないことなどを踏まえて、歩道橋直下での横断歩道併設の適否を慎重に検討してまいりたいと考えております。
- 5:◯建設部長(湯山芳夫君) 歩道橋に対する現状認識と撤去に関する考え方についてであります。
県が管理している歩道橋は四百十橋あり、そのほとんどは地元の要請を受けて設置したものであります。現在でも、道路の新設時に地域の実情に応じて歩道橋を設置しており、過去五年間で十橋を新設しております。
御指摘の、歩道橋は人にやさしい街づくり条例の理念にそぐわないのではないかとのことでございますが、この条例では、高齢者、障害者などの移動等の円滑化を掲げており、多数の者が利用する一定規模以上の建物や歩道については円滑に利用できる措置を求めておりますが、歩道橋については特に規定は設けておりません。
なお、歩道橋へのエレベーターの設置は、費用、管理面に課題があるため、事例としては、名古屋市内などの一部で、駅の近くなど、歩行者が多く、障害者の利用が見込まれる場所への設置となっております。
歩道橋は、歩行者等を車と立体的に分離することにより確実な安全が図られるため、県が管理している歩道橋の約七割は通学路に指定されており、交通安全には有効な手段と考えております。
次に、県として歩道橋を撤去した事例としては、昨年、歩道の改修に合わせ、利用が少なく、地元の意向により撤去したものがあります。また、学校の統廃合により通学路でなくなったため、地元の意向により撤去を予定しているものがございます。
このように、撤去の対象となる歩道橋としては、通学路の指定がなく、利用者もほとんどないといった交通安全上の支障がない箇所になろうかと思われます。また、東京都も、同様の条件の箇所について撤去を行っていると聞いております。
今後も、地域の実情に応じて対応してまいりたいと考えております。
次に、まちづくりの総合的観点についての御質問でございます。
交通安全上、歩行者の保護は重要な課題であることは言うまでもありません。一方、高齢者、障害者を含めたすべての人が円滑に移動できるようにするという目標がございますので、地域ごとの事情を酌み取りながら、人に優しいまちづくりができるよう整備を進める必要があります。そのためには、交通行政、道路行政が同じ視点に立って、一つ一つ対策を積み重ねていくことが重要であると考えております。
今後とも、地域の要望を十分に踏まえ、交通管理者と十分連携をとりながら、交通安全の確保、また、人への優しさ、そして、環境に配慮したまちづくりに取り組んでまいりたいと考えております。
- 6:◯環境部長(藤井敏夫君) レジ袋削減に向けた取り組みにつきまして、二点御質問をいただきました。
このうち、まず、その取り組み状況と今後の動向についてであります。
本県では、レジ袋の削減が循環型社会、脱温暖化社会へとライフスタイルを転換していく身近な取り組みの第一歩であるということから、その推進を図っているところであります。
このため、循環型社会の構築を地域挙げて推進する目的で本県が設置をいたしましたごみゼロ社会推進あいち県民会議を核といたしまして、ごみ減量に向けた取り組みを継続的に実施してきたところであります。
今回、こうした取り組みを一歩進めまして、レジ袋削減に焦点を当てた展開を図るため、会議の構成員でございます消費者団体、チェーンストア協会などの関係団体、すべての市町村など、計百二十四団体の合意を得まして、本年二月に愛知県民脱レジ袋宣言を行ったところであります。
この宣言を踏まえまして、三年間でレジ袋辞退率五〇%以上という目標を掲げる店舗の登録制度を創設をいたしまして、現在、四十一市町内の約二百五十店において、この制度によりレジ袋削減の取り組みが進められているところであります。
このほか、瀬戸市初め五つの市の約二百店で、さらに一歩進んだ取り組みといたしまして、事業者、消費者団体及び地元市の三者の間で、レジ袋の有料化に関する協定を締結をし、地域として連携した取り組みが展開されているところであります。
また、今後の動向でありますけれども、新たに本年度中にレジ袋削減に取り組む予定の市町も見られます。この取り組みの輪は広がっていくものというふうに考えているところであります。
次に、レジ袋削減の課題と今後の取り組み方針についてであります。
レジ袋削減に向けた取り組みの課題といたしましては、二十の市町におきまして取り組みが始まっていないこと、また、既に取り組んでいる市町村におきましても、登録店が少ないことが挙げられるわけであります。
このため、全市町村にレジ袋削減の取り組みを広げるという方針のもと、取り組みが始まっていない市町村に対しまして、その着手を強力に働きかけてまいりたいと考えております。
また、登録店の拡大に向けましては、市町村と連携をいたしまして、事業者に対し、取り組み導入のPR、これを一層進めますとともに、関係業界を通じまして、登録店への参加を働きかけてまいります。
さらに、レジ袋削減の重要な担い手、主体であります県民の皆様方に対しましては、消費者団体あるいは市町村と協力をして、啓発に一層力を注いでまいる所存であります。
以上であります。
- 7:◯県民生活部長(石川延幸君) 文化活動事業費補助金についてお尋ねをいただきました。
この補助金は、平成三年度に制度を創設をいたしまして、文化振興基金の利息を原資に助成を行ってまいりました。その後の社会経済状況の変化によりまして、基金利子が大幅に減少しましたことから、これを補うために一般財源を投入したり、制度改正を行ったりいたしまして、さまざまな工夫を重ね、自主的、自発的な文化活動の支援を行ってまいったわけでございます。
こうした中、県全体の単独補助金につきまして、厳しい財政状況のもとにおきまして、零細補助金や団体運営費補助金の見直しが行われてきたところでございます。
文化活動事業費補助金につきましては、これまで補助要件を満たすすべての団体に対して交付をしてまいりましたけれども、長年の経緯の中で、団体の運営費補助的な性格を帯びる傾向も出てまいりましたので、有識者の御意見も参考にして、本来の趣旨に沿って、より有効に活用できるように見直すこととしているところでございます。昨年の十二月に策定、公表いたしました文化芸術創造あいちづくり推進方針、この方針の中でも、この見直しを重点的に取り組む項目の一つということで掲げております。
そこで、この見直しの方向でございますけれども、補助の対象は、企画性を重視し、広域的、国際的な事業やら、先駆的、実験的な事業、こうしたものを重点的に支援することとしたいというふうに存じております。また、その選定に当たりましては、第三者に選定していただくような審査方式、これを導入する方向で考えております。
今後、文化芸術団体や有識者の方々の御意見、御要望を十分にお聞きしながら、この補助事業の目的が達成できるように取り組んでまいりたいと考えております。
また、こうした財政支援のほか、二〇一〇年の国際芸術祭における地域の文化芸術団体の皆様の参加やら連携、そして、あるいは愛知芸術文化センターにおける文化芸術団体の活動の場づくりなど、本県の文化芸術施策全般を通じまして、地域の文化芸術団体の活動支援に引き続き努めてまいりたいというふうに思っております。
以上でございます。
- 8:◯五十番(高木ひろし君) 残り時間が少のうございますから、簡単に要望だけ申し上げたいと思います。
いろいろなテーマを取り上げさせていただきましたが、おおむね私が提起させていただいた方向と県からお示しいただいた方針は、そう食い違っていないということが確認できたと思いますので、あとは、信号機、歩道橋、それから、また、補助金のあり方、レジ袋、それぞれの地域の具体化が課題でありますから、それぞれの委員会なりでもって、この手がかりをもとにして具体化をぜひ進めていただきたいということを県当局にも議員各位にもお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
- 9:◯議長(栗田宏君) 進行いたします。
浅井喜代治議員。
〔四十番浅井喜代治君登壇〕(拍手)
- 10:◯四十番(浅井喜代治君) 議長の許可を得て、通告に従い質問させていただきます。
保安林についてお伺いしますが、具体的に、私の住む町を例に挙げて質問させていただきます。
幡豆郡吉良町は、愛知県のほぼ中央に位置し、岐阜県から三河山間地域を流域として、三河湾に注ぐ矢作川の流れによって、その河口部に開けた肥沃な平野であります。
人口は二万二千人、面積は三十六平方キロメートル、年間平均気温十七度と温暖で、農業と水産業を主な産業として発展した町であります。また、古代から塩づくりが行われており、潮の満ち引きと遠浅な海岸を利用した入浜式塩田は、東日本では最大規模のものでありました。
このように、海の恵みを受けながら発展した吉良町にも、雑木林とでもいいますか、広葉樹を主体とした山林があります。今様の言い方をすれば、里山ということにでもなるでしょうか。この山林の面積は七百八十八ヘクタールで、町全体の面積の二二%に当たります。
吉良町にとっては、この山が問題でありまして、戦後の一時期、特に農業の盛んなころは、国の補助事業であるパイロット事業を導入し、ブルドーザーを使って山肌を階段状に整地して、ミカンを植栽したり、地域の農家が組合を組織し、タケノコをとって加工したり、あるいは山畑や棚田としても盛んに手入れがされておりました。
しかし、昭和四十年代から次第に農業所得の伸びが期待できなくなってきました。同時に、米の生産調整もあって、徐々に農業離れが進み、山に入る人がなくなってきました。
その結果、最近では、手入れの行き届かない竹林などの拡大により、荒れた雑木林が目につくようになってきました。
竹林は、食料であるタケノコをとり、あるいは生活に役立つ資材として重宝されてきたのですが、今では、外国産の安いタケノコの輸入増や、プラスチックなどの代用品の普及などで、国内の竹の需要が極端に減ってしまいました。
その結果、放置されて荒廃が進む竹林や、隣接の山林への竹の侵入拡大が問題になっています。竹が侵入し、その勢いが強くなると他の植物が育ちにくくなり、いずれは竹林になってしまいます。また、放置された竹林では立ち枯れが発生し、周囲に悪影響を及ぼすだけでなく、景観としても好ましいものではありません。
また、竹林は、短期的には地盤を固め、災害を防ぐ効果があるように思われがちですが、実際には、地表から数十センチ程度の深さに地下茎が集中するため、表層ごと滑りやすくなり、地すべりなど土砂災害の危険がある山になってしまうと言われています。
吉良町では、この竹林の拡大や侵入を防ぐ方法を町のホームページに掲載して、山林の保全に努めています。
御承知のように、森林は、さまざまな機能で私たちの暮らしを守っています。最近発刊されました平成二十年度森林・林業白書に、国民が森林に期待する働きのアンケート結果が載っていました。それによりますと、一位が地球温暖化防止に貢献する働き、二位が山崩れなどの災害を防止する働き、三位が水資源を蓄える働き、以下、空気をきれいにする、心身のいやしの場の提供、貴重な動植物の生息の場の提供、森林について学ぶ場の提供、木材の提供と続きます。特に、昨今話題の地球温暖化防止や動植物の生息などが上位に入る結果となっています。
このように、さまざまな機能で私たちの安全で快適な暮らしに物言わず黙って貢献している森林ですが、最近では、三河山間地域の人工林での間伐など、手入れが行き届かなくなってきております。
また、里山と言われる、かつては燃料や薪炭材や落ち葉の採取など、私たちの生活と密接にかかわる中で常に維持管理されてきたものが、人とのかかわりが希薄となるにつれて放置されるようになってきています。このため、森林の持つ多面的機能の健全な発揮が危ぶまれています。
これらの森林や里山林を整備、保全し、県民の共有の財産として後世に引き継いでいくために、さきに二月議会において、全会一致であいち森と緑づくり税条例を制定し、県民全体で森林の整備、保全を支える制度を創設したところであります。
さて、そこで、森林の中で、水源の涵養や災害の防止など、特に重要な役割を果たしている森林を保安林として指定する制度があります。
この保安林制度の発足は古く、私が調べたところでは、明治三十年の森林法制定にまでさかのぼりました。この時期には、砂防法と河川法も同時に制定されております。この背景には、明治維新後に全国的に森林の荒廃が進み、各地で土砂災害や下流部の水害が多発したことが主な原因としてあったようです。
この明治三十年に制定された我が国最初の森林法は、ほぼ今日のような保安林制度であり、その対象は、江戸時代における留め山、これは、江戸時代に、山林保護のため、狩りや木を切ることを禁じた山をいいますが、この留め山が明治以降に禁伐林という制度になり、この禁伐林がすべて保安林となったということです。
この後、昭和二十六年、森林法は改正されましたが、保安林制度については、その趣旨において変更はなく、保安林の種類の追加などが行われました。
このように、早くから森林の重要性に着目し、また、さまざまな森林の持つ機能別に保安林を制度化した先人の知恵には感心するばかりであります。
森林は、戦中戦後に燃料などとして木材が切り出された結果、全国的に荒廃してしまいました。そのため、愛知県でも、昭和二十年代後半から三十年代にかけて、西三河地域、尾張東部や豊田地域において、治山事業によって荒廃地復旧が行われ、同時に保安林として指定されたものや、昭和二十九年に制定された保安林整備臨時措置法に基づき、全国的に始まった計画的な指定などの措置により、保安林の指定が進められたようであります。
保安林の種類には、洪水や渇水を防止したり、きれいな水をはぐくむ効果を目的に指定された水源涵養保安林、表土の浸食や土砂の流出の防止などの目的で指定された土砂流出防備保安林、レクリエーション活動の場として生活にゆとりを提供し、空気の浄化や騒音の緩和などにより、生活環境を守る目的で指定された保健保安林を初め、十七種類の保安林があります。
愛知県には、水源涵養保安林、土砂流出防備保安林、保健保安林を初め、十種類の保安林があります。
保安林の面積は、全国の森林二千五百十二万一千ヘクタールのうち、千百七十六万三千ヘクタールが保安林に指定され、その割合は約四七%となります。そして、そのうちの七五%が水源涵養保安林として指定されています。
愛知県の保安林は、昭和四十年には、国有林を含めて森林の約一〇%であったものが、現在では、森林面積二十二万ヘクタールのうちの約三〇%に当たる約六万五千ヘクタールとなっています。その内訳は、土砂流出防備保安林が最も多く、約三万九千三百ヘクタール、六〇%を占め、次に水源涵養保安林が約二万四千六百ヘクタールで三七%と続きます。
本県の特徴として、人口密集地と森林が近接していることや、荒廃地復旧のための治山事業が多く実施されたことなどから土砂流出防備保安林が多くなったものと思われます。
吉良町でも同様の傾向で、二百九ヘクタールの保安林が指定されており、その多くは土砂流出防備保安林で、荒廃地復旧事業が本格的に始まった昭和三十年代に指定されたもののようであります。
このように、地域にとって大切に守るべき保安林ではありますが、一方では、社会経済の発展に伴って、効率的な土地利用、言いかえれば、開発と保全のあり方についてさまざまな議論がなされています。
私は、常々、この保安林制度に対して幾つかの疑問を持っていました。
一つは、保安林の指定とその配置についてであります。私が町役場の税務課に勤務していた当時、土地の課税台帳を電算化するための整理をしていると、個人が所有する山林で非課税となっている土地が多く目についたため、先輩に聞いたところ、保安林に指定された土地で、昔、税金が免除されるからと所有者が競って保安林指定を申し出たもので、今となってはさまざまな規制があり、松の木一本自由に切ることもできずにみんなが困っていると、冗談半分の話だとは思いますが、当時の先輩は教えてくれました。
また、先ほどもお話ししたとおり、吉良町の山林では、国の制度に基づいて、農業振興を目的としたパイロット事業による山林開発を大規模に実施し、ミカンなどを植栽しました。しかし、その後、ミカン価格の暴落などにより、補助制度によってそのミカンの木を伐採したこともありまして、四十年以上が経過した今日にあっては、ほとんどが雑木林となっております。
今、当時を振り返って考えますと、かなりの面積の保安林を保安林と気づかずに開発してしまったのではないかと思われます。
そして、今、現実の保安林指定状況を見ますと、一筆ごとの地番設定で、しかも、飛び地で指定されており、これで本来の土砂流出防備機能を果たすことを目的とした保安林指定となっているのかという思いがあります。
他の土地利用規制の多くは、線的なものや面的なものなど一定の区域として指定されております。保安林についても、このような指定によってこそ、その目的に沿った機能を十分に発揮させることができるのではないかという疑問であります。
二つには、市町村、特に地方と言われる地域にさまざまな困難を強いているのではないかという思いであります。
地球環境問題、災害防止、水源涵養、いやし、動植物保護などなど、すべて森林がもたらす自然の恵みであり、これを人間がこれ以上開発することは許されないことだと。そして、これを担保するため、法律で開発を規制し、その上で、その責任をすべて地方が背負わされているのではないか。逆に言えば、都市住民の生活の利便性向上を進めた、その大規模な開発のしわ寄せがすべて地方に回ってきているのではないかという思いであります。
また、保安林については固定資産税が免除されます。相続税、贈与税も減免されます。特に固定資産税は市町村の貴重な税財源ですが、地方が果たしている、あるいは果たすべき責任に応じた国の財源措置がなされているのかと疑問に思います。
三つには、保安林の保全と地域の開発計画とのバランスをどう図っていくのかという問題です。
地方がある程度の規模の開発を計画した場合、どうしてもその事業区域の一部、あるいは大規模な計画など、物によっては大部分が山林区域にかかってしまう場合があります。保安林を含まない山林を開発するに当たっては、森林法の定めにあります林地開発許可制度に沿って、災害や水害防止の要件、環境保全の要件などを満たせば開発は可能となります。
しかし、開発対象となる山林の中に保安林があると、原則として保安林は開発の対象としてはならないとされており、その開発は極めて難しいものとなります。仮に保安林の解除が認められるとしても、かなり長い時間がかかることになります。これでは地域開発はできません。
道州制や市町村合併など、地方分権が進められる行政にあって、地域の将来を地域が決定し、その責任は当然地域にあるという原則からすれば、土地利用計画を初め住民の日々の生活に密着する問題は、地方みずからが決定すべきではないかと思います。
以上、保安林制度について、私が以前から持っている疑問についてお話をさせていただきました。
そこでお尋ねいたします。
保安林の指定や解除の権限は、地方分権が進まない今日にあっては、そのほとんどが国にあることは承知はしていますが、次の点についてお答えいただきたいと思います。
一点目として、最近の愛知県の保安林の新たな指定面積の推移とその種類はどのようなものか、伺います。
二点目に、小規模であり、なおかつ点在する保安林は、その本来の機能を果たしていると考えているのかどうか、また、指定以来何十年を経た今日までに、その時代時代に合わせた計画変更、あるいは土地利用の実態に合わせた見直しがなされた経緯があるのかどうか、また、今後においてその計画があるのかどうか、伺います。
三点目に、固定資産税を初め、さまざまな税の減免がなされることになりますが、地方が受ける影響とその補てん対策は十分になされているのかどうか、伺います。
四点目に、保安林の解除は非常に困難であると同時に、大変な時間が必要になることのその理由と、地域の意見を尊重することが制度として考えられないのか、お聞かせをください。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
- 11:◯農林水産部農林基盤担当局長(松下栄夫君) まず最初に、愛知県の保安林の指定面積の推移と種類はどのようかという一点目のお尋ねについてですが、最近三カ年の保安林指定面積は、新たに平成十七年度に七百六十三ヘクタール、平成十八年度に五百二十六ヘクタール、平成十九年度に六百五ヘクタール、三カ年で合計千八百九十四ヘクタールの保安林が指定されております。その結果、現在の愛知県の保安林面積は六万五千五百七十六ヘクタールとなり、昭和四十年当時の約二・八倍になっております。
保安林の種類としましては、この三カ年では、水源涵養保安林の指定が最も多く、全体の七一%、続いて、土砂流出防備保安林が二九%を占めております。
次に、御質問の二点目の小規模で点在する保安林はその機能を果たしていると考えているかどうかというお尋ねについてでありますが、例えば、人家の裏山の保安林や道路などの公共施設に面した保安林は、たとえ小規模な保安林であっても、雨水等による表土の浸食や土砂の流出等を防止しておりますので、災害防止の機能を果たしていると考えております。
保安林は、その指定された場所でそれぞれの機能を発揮しておりますし、また、周辺の森林と一体となって、一層その機能を発揮していると考えております。
また、これまでに計画変更や見直しをした経緯があるか、今後その計画はあるかということにつきましては、定期的あるいは一斉に保安林の配置を見直すという制度や仕組みは設けられておりません。したがいまして、これまでにそうした見直しを行った経緯はありませんし、今後、国において見直しを行うということも聞いておりません。
なお、保安林の指定や解除につきましては、今後とも個別に対応してまいります。
次に、三点目の地方が受ける影響とその補てん対策はなされているのかというお尋ねについてでございます。
保安林の指定による固定資産税の免除や、相続税、贈与税の減額などの措置は、伐採の制限、他の用途への転用制限など、さまざまな制約を森林所有者に強いることから、その代償措置として設けられているものです。このため、市町村が受けます直接の影響としましては、指定されております保安林分の固定資産税の減少でございますが、その補てん措置は講じられておりません。
しかしながら、保安林に指定された場合は、必要に応じて山地災害の防止や森林の整備など、森林を保全するための治山事業を県において実施しております。この事業に要する経費は、国費と県費で全額賄っております。
続きまして、最後になりますが、四点目の保安林の解除はなぜ困難で大変な時間が必要かというお尋ねについてですが、保安林は、御指摘のように、水をはぐくんだり、土砂崩れなどの災害防止に貢献するとともに、住民の方々の貴重な緑として、空気浄化や心の安らぎの場を提供するなど、さまざまな機能を発揮しており、地域の方々の安全・安心な暮らしに大いに貢献する地域住民の財産でもあります。したがいまして、保安林の解除は厳しく制限されております。
また、解除に要する時間でありますが、例えば、地域住民のライフラインとなります県道や市町村道を建設する場合は、道路と保安林の公益性を比較し、地域住民の必要性や利便性を考慮し、比較的速やかに手続が進められております。これに対しまして、一般の開発では、その開発が保安林の公益性を上回るか、地域にとって必要不可欠な開発であるかという点について検討することになります。
具体的には、他に開発の適地を求めることができないのかとか、解除面積が必要最小限の面積であるか、開発によって失われる保安林の機能を代替する施設が確実に設置されるか、開発事業が確実に実施されるのか、解除に関係する土地所有者や水利権者などの利害関係者の同意が得られているかなどを慎重に審査することから、相応の時間を要しているのが実情でございます。
なお、多くの案件は、解除について農林水産大臣権限となっておりますことから、調査結果を国へ報告し、国においても審査が行われることになります。
また、地域の意見を尊重することが制度として考えられるのかということにつきましては、地域の公的な土地利用計画に即していることが解除の要件ともなっておりますし、市長村長の意見を聞くことにもなっておりますことから、地域の意見を尊重する制度となっていると考えております。
以上でございます。
- 12:◯議長(栗田宏君) 進行いたします。
神野博史議員。
〔四十三番神野博史君登壇〕(拍手)
- 13:◯四十三番(神野博史君) それでは、さきに通告いたしました順序に従いまして、順次質問させていただきます。
初めに、公立病院改革プランについてお伺いいたします。
公立病院改革については、二月定例議会におきまして、我が自由民主党の代表質問で、公立病院改革に対する県の取り組みについてお伺いいたしましたが、今回、私は、公立病院の経営状況という視点も含め、その後の状況などについて質問させていただきます。
公立病院は、地域における基幹的な医療機関として、地域医療の確保のため重要な役割を担ってまいりました。その公立病院が、近年、類を見ない厳しい経営状況にあると言われております。昨年十一月の新聞紙上に、全国の自治体病院の累積赤字が平成十八年度末で一兆八千億円を超える旨の記事が掲載されました。総務省によれば、これは全自治体の医療関連収入の約半分に当たり、累積赤字を抱える自治体は全体の八割以上とのことであります。
このように、自治体病院の経営状況が悪化した原因には、職員給与や人事体系が硬直化していることや、施設の建てかえや最新の医療機器の購入などによる償却費用の増加など個々の病院による事情のほか、診療報酬のマイナス改定といった制度的な問題、あるいは平成十六年から導入された医師の新臨床研修制度の影響などによる医師不足や医師の偏在などが考えられます。
また、救急医療、小児医療、出産・周産期医療、僻地医療など、不採算医療は公立病院の大きな役割であったという事情もあります。特に、医師不足のために診療体制の縮小を余儀なくされる公立病院が増加し、地域医療に深刻な影響を与えておりますが、診療体制の縮小は患者数の減少を招き、それにより経営はさらに悪化して、その結果、病院の存続さえ難しくなっているところも出てきております。
ところで、自治体における病院事業は、公営企業であり独立採算制が原則ではありますが、公立ですので、経営が悪化した場合に、最終的には一般会計で負担せざるを得なくなります。
また、来年度から本格施行される地方公共団体財政健全化法では、地方公共団体の財政の健全化を図る判断比率に公営企業会計などを含む全会計の実質赤字などが積算に含まれ、公営企業ごとの資金不足率が位置づけられております。
それによりますと、自治体の財政の健全化を図る判断比率として、普通会計ベースにおける実質赤字比率、病院事業を初めとする公営企業会計などを含んだ連結実質赤字比率、一部事務組合や広域連合の決算状況も含んだ実質公債費比率、さらに、地方公社や第三セクターの経営状況も加味した将来負担比率の四指標のほか、公営企業会計の事業ごとに算定する資金不足比率が挙げられております。
そして、これらの指標の数値が一定基準を超える場合には財政健全化計画、さらに悪化した場合には財政再生計画を策定することが義務づけられました。
このように、地方自治体の財政は、公営企業会計などを含めた連結収支により健全度をはかる制度が導入されましたので、公立病院の経営は、自治体全体にかかわる問題としてとらえなければならないと考えます。
しかしながら、自治体自身も財政は大変逼迫しており、公立病院へのこれ以上の繰り出しは期待できないというのが現状であります。そのため、今後も公立病院が地域医療の中核として、必要な医療を安定的かつ継続的に提供していくためには、公立病院の抜本的な改革の実施は避けては通れない状況となっております。
こうした中、総務省は、昨年十二月二十四日に公立病院改革ガイドラインを策定し、病院事業を設置する地方公共団体に対して、平成二十年度内に公立病院改革プランを策定し、病院事業経営の改革に総合的に取り組むよう求めました。そして、公立病院改革プランの策定に当たっては、公立病院の果たすべき役割及び一般会計負担の考え方を明記するとともに、経営の効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しの三つの視点に立った改革の推進が必要とされております。
以上の点を踏まえて、公立病院改革プランに関連して、二点質問させていただきます。
一点目は、県全体の市町村立病院の経営改善についてであります。
県内には、市町村立と一部事務組合立の公立病院が合計二十九ありますが、平成十四年度から十八年度までの五年間の決算の推移を見てみますと、十八年度の決算における累積欠損金は六百九十三億円で、十四年度の四百二十億円の一・六倍となっております。実質資金不足額、いわゆる不良債務額は、十八年度は二十六億円で、十四年度の十三億円の二倍となっております。
また、経常収支比率は、十四年度の九七・九%から十八年度は九五・一%と二・八ポイントの減少、病床利用率は、十四年度の九〇・二%から十八年度は八三・五%へと六・七ポイントの減少と、いずれも悪化しております。
このように、本県の市町村立病院も非常に厳しい経営状況にありますが、都市部に比べて、地方においては、公立病院がより地域医療の中核的な存在である場合が多いことから、なお一層安定的で継続的な地域医療を確保するための経営改善が必要であると考えます。
この点、私の地元東海市におきましては、医師不足による診療体制の縮小などにより、経営状況が悪化していた東海市立病院と産業医療団中央病院について、地域医療を守り、市民の安心と健康を確保していくという共通認識のもと、平成十九年七月十九日付で東海市病院連携等協議会を設置し、協議を重ねた結果、ことし四月一日に東海市に経営統合し、東海市民病院百九十九床、市民病院分院百五十四床として再出発いたしました。
そして、今後、医師不足や医療改革制度など、医療を取り巻く環境が一層厳しさを増すと予想されることから、同じく厳しい経営状況にある知多市民病院との連携を検討するため、ことし七月には、東海市民病院と知多市民病院の医療連携等のあり方検討会を立ち上げ、本年度中に提言を取りまとめていくとの考えであります。
そこで、県は、市町における公立病院の経営の現状をどのように認識しておられるのか、また、市町における公立病院改革プランの策定に対してどのように取り組んでいかれるのかをお尋ねいたします。
二点目は、公立病院の再編・ネットワーク化についてであります。
公立病院改革プランのうち、再編・ネットワーク化プランの策定に関して、知事は、本年二月の県議会におきまして、地域医療をしっかり守っていくために広域的な調整を行うと述べておられます。また、医師の確保が重要な課題であるとの認識から、医学部を持つ県内四大学の病院長を初めとした医療関係者から成る有識者会議を開催し、関係者の理解と協力を得るなど、最大限の努力をするとの決意を表明されました。
この有識者会議は、ことし三月を初回としてこれまで三回行われました。そこでは、再編・ネットワーク化プランについて、地域医療を守るという観点から、県民の安心・安全に直結する救急医療体制の確保が最大の課題であるとして、中長期的視野に立った新しい救急医療のあり方を検討するという基本的な考えに取りまとめられたと伺っております。
現在、救急医療は危機的な状況にあると言われております。その要因の一つとして、医師不足による一部の医療機関における救急医療の休止が近隣の医療機関の負担増につながっているということであります。この点、県内では、三十四の公立病院のうち、二十の病院が医師不足のため、診療制限しているとのことであります。
二つ目は、救急医療体制の崩壊であります。つまり、軽症患者を診る一次救急、入院が必要な重症患者を対象とする二次救急、生命にかかわる重篤患者に高度な医療を提供する三次救急という医療体制に対して、患者が専門医を求めて、三次救急の医療機関に集中する傾向があり、そのため、軽症患者の時間外受診が増加して、本来の二次、三次の救急医療機関としての機能が阻害されてしまっているという状況があります。ちなみに、平成十九年度の愛知県医療実態調査によれば、時間外受診患者のうち入院が必要な方は全体の一一%でありました。
そこで、医師や看護師あるいは医療機関などが不足する現状において、三百六十五日二十四時間、救急患者が受診できる救急医療体制を確保するためには、従来の救急医療体制にとらわれることなく、実態に即して検討を行い、外来救急医療と入院救急医療を区分して、それぞれの医療体制を構築していくことが適当であるとしております。
そして、公立病院における取り組みや県の果たす役割についても述べ、特に医師確保のために、病院に対しては、医師にとって働きやすく診療に専念できる環境を整える必要があること、また、大学に対しては、救急医療機関や地域の中核的な病院への医師の派遣がスムーズに行われるような環境整備を行うことを求めております。
そこで、県として、この有識者会議の提言をどのように受けとめておられるのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのかをお尋ねいたします。
次に、県立病院の経営改善についてお伺いいたします。
私は、前年度、健康福祉委員長を務めさせていただきましたが、この機会にできるだけ多くの福祉施設や医療機関の現状を調査したいと考え、県内外を問わず、さまざまな施設を視察し、勉強させていただきました。また、委員長という立場から、各種の委員会や審議会に出席させていただき、専門家の貴重な御意見を拝聴する機会を得たことを本当にありがたく思っております。
そこで、今回は、特に地域医療を守るという視点から、県立病院の経営改善について、二点質問をさせていただきます。
一点目は、新たに愛知県病院事業庁長に就任された二村病院事業庁長の所信についてであります。
周知のごとく、愛知県の県立病院事業は、平成十六年度に地方公営企業法の全部適用となり、病院事業庁を設置いたしました。これにより、庁長は、与えられた権限と責任のもとに病院事業の一元的な管理運営に当たることになり、病院事業は効率的かつ効果的な事業管理が可能となりました。
そして、前任の外山病院事業庁長は、良質な医療の提供と病院経営の健全化を目的として、平成十七年度に経営改善行動計画を作成いたしました。それから三年が経過いたしましたが、当初の二年間は、十七年度十一億三千万円、十八年度二億八千万円と、それぞれ純損失額を減少させるなど経営改善が行われました。ところが、十九年度になると、十八年度からの診療報酬のマイナス改定や医師不足などの影響により、経営状況が大変厳しくなっていると伺っております。
昨今の医療を取り巻く環境には、このように診療報酬の改定や医師不足などといった経営努力だけでは解決できない問題も多く、今後も県立病院が中核的な存在として地域医療を担っていくためには、その役割の明確化と経営改善がぜひとも必要であると考えております。
その役割について、私は、県立病院は民間ではできない医療を提供することにあると思っております。つまり、最新の医療機器を備えた高度で専門的な医療の提供や、救急、小児、出産・周産期、僻地などといった不採算部門を担う医療機関であります。
そして、これからの経営改善には、人件費などによるコスト削減もさることながら、医師や看護師など医療従事者にとって魅力ある職場づくりを行うことも大変重要であると考えております。
いずれにいたしましても、二村庁長には、その豊富な経験と実績を生かして、県立五病院の経営改善をしっかり行っていただけるものと大変期待しております。
そこで、二村庁長に、どのような理念と決意を持って病院経営に臨まれるのか、お尋ねいたします。
二点目は、新たな経営改善行動計画の策定についてであります。
次年度からの新たな計画の策定に当たっては、これまで三年経過した経営改善行動計画の評価、検証とともに、公立病院改革ガイドラインへの対応が必要となります。
一つ目は、これまでの経営改善行動計画への取り組みに対するチェックであります。私は、客観的な分析を行うために、愛知県と同じような県立病院を持つ埼玉県の病院と比較してみました。この結果、特に入院外来収入に大きな差があることに注目いたしました。埼玉県では、入院外来収益が平成十一年度の百九十九億円から平成十五年度には二百四十四億円と四十五億円も伸ばしているのに比べまして、愛知県では、平成十六年度の二百十八億円から平成十八年度は二百三十二億円と十四億円の増加でありました。
そこで、ここに何か課題があるのではないかと考え、個々の病院ごとの収入状況について、平成十八年度の損益計算書などの資料から分析してみました。
まず、がんセンターにつきましては、埼玉県の入院単価は一人当たり四万五千九百五十一円であるのに対しまして、愛知県のがんセンター中央病院では四万二百十二円と五千七百三十九円も低く、それによる主な影響として、手術の単価差が三千六百六十六円でありました。入院単価は入院収益に大きく影響し、年に換算すると八億円余の差となりますので、経営上の観点からは、がんセンターの手術単価のアップが課題ではないかと思っております。
また、がんセンター愛知病院につきましては、結核病床を持ち、がん診療を主体とする類似の病院は、埼玉県を初め他県にはありません。しかしながら、がんセンターの病院でありますので、現在、三万二千七百三十二円とがんセンターに比べて七千四百八十円も低い入院単価をがんセンター中央病院と同程度にすべきであると考えます。
いずれにいたしましても、入院診療単価のアップが課題ではないかと思っております。
次に、城山病院についてでありますが、埼玉県の精神医療センターは、最近、全面改築を行いまして、精神科救急入院料が徴収できる施設となりました。その入院診療単価は一万七千九百一円と城山病院の一万三千六百二十六円より四千二百七十五円も高く、年に換算すると四億円の差となります。年間の入院収益が十五億円程度でありますので、四億円は大変大きな金額であります。
経営上の観点からは、やはり入院単価のアップが必要でありますが、そのためには、精神科救急の充実には病院の改築も必要ではないかと考えております。
次に、循環器呼吸器病センターについては、埼玉県の循環器呼吸器センターの病床利用率は八三・三%であるのに比べて、愛知県は五八・九%と病床利用率にかなりの差があります。そのため、総収益も、埼玉県の百四・七億円に比べて、愛知県は五十三億円とおおむね半額しかありません。総費用も収益に連動して、埼玉県では百六・六億円で、愛知県は六十・三億円でありますが、差し引いた損失は、埼玉県の一・九億円に対して、愛知県は七・三億円と大きくなっておりますので、収入を前提とした収支構造の見直しが今後の課題ではないかと考えております。
次に、小児センターにつきましては、埼玉県の小児センターは昭和五十八年に設置され、歴史も古く、病床数も三百床と大きい病院でありますが、病床利用率と入院収益を比較してみますと、埼玉県の病床利用率八一・八%に比べて、愛知県は六七・七%と低いために、入院収益が埼玉県の四十九億円に対しまして、愛知県は二十六・八億円であります。これには、愛知県の小児センターが新生児医療や小児救急医療を行っていないことも要因の一つと思われます。新生児への対応や小児救急を実施して、幅広く患者を確保することが課題ではないかと思っております。
二つ目は、公立病院改革ガイドプランへの対応についてであります。
このガイドプランにおきましては、公立病院の役割の明確化と経営改善が二本柱であると理解しております。特に、経営改善の点では、病床利用率、職員給与比率、経常収支比率などを明らかにするよう求めており、病床利用率が三年連続して七〇%を下回るような場合には、病床数を見直し、適正な規模に縮小することとされております。残念なことに、現在、愛知県では、循環器呼吸器病センターと小児センターがこの七〇%基準に達しておりません。
昨年、私は、兵庫県こども病院を視察させていただきましたが、病床利用率は八〇%と高い水準にありました。愛知県の小児センターは、今、研修医やレジデントにとって大変魅力ある病院になっていると伺っておりますが、それにもかかわらず、病床利用率が低いということは、小児救急センターと周産期部門がないことが大きな要因ではないかと思います。したがって、小児センターが一〇〇%機能を発揮するためには、ぜひとも小児救急センターと周産期部門の設置が必要であると考えます。
また、循環器呼吸器病センターについては、医師不足の影響により現在五十床が休床しているとのことでありますが、地域医療にどのような役割を果たしていくのかを明らかにした上で、規模についての方向性や医師などの人材確保対策を打ち出していく必要があると思います。
一方、城山病院についてでありますが、昨年度、参加させていただきました愛知県地方精神保健福祉審議会において、医師不足の影響もあって、精神科の救急輪番制が危機に瀕していることから、城山病院には、精神科救急医療の中核としての機能を果たしてほしいとの要望が出されました。
しかしながら、城山病院は老朽化が激しく、ハード面において精神科救急に十分対応できないのが現状であることも、この審議会における共通の認識でありました。健康福祉委員長として参加した私に対しましても、城山病院の全面改築と救急対応について強く要請がなされましたことを報告させていただきます。
二村新庁長には、今後、新たな経営改善行動計画の策定に取り組んでいかれるわけでありますが、ただいま申し上げました点につきまして十分に御検討をされた上で、方針を明らかにしていただきたいと思います。
そこで、これまでの経営改善行動計画の状況を踏まえ、どのような方針で取り組んでいかれるのかをお尋ねいたします。
以上で私の壇上での質問を終わります。(拍手)
- 14:◯総務部長(島田孝一君) 公立病院改革プランについての御質問のうち、まず、市町村における公立病院の経営の現状認識についてでございます。
県内の市町村立、一部事務組合立の公立病院二十九病院の経営状況でございますが、平成十八年度決算では、総収益が二千十九億八千八百万円ございます。一方、総費用は、これを上回る二千百二十一億二千八百万円に上りまして、差し引き百一億四千万円の赤字となっております。
近年では、この総収益が平成十二年度をピークに年々減少する一方、総費用は十五年度以降年々増加してきております。
病院別に見ますと、総収益がピークでありました平成十二年度では黒字が十五病院ございました。一方、十八年度には黒字は五病院に減っておりまして、赤字が二十四病院となっております。非常に厳しい経営状況にあると考えております。
こうした状況を受けまして、病院経営の改善、安定化に向けましたさまざまな取り組みが動き出しております。
議員お示しの東海市や知多市のほか、三好町では地方公営企業法の全部適用、東栄町では指定管理者制度の導入、一宮市、高浜市では民間移譲の検討など、経営のあり方にまで踏み込んだ取り組みとなっております。
現在の公立病院は、地域住民の安心・安全の確保という観点から、身近で安定的かつ継続的に医療を提供する役割がますます高まりつつあります。しかし、経営を取り巻く環境は厳しさを増してきておりますので、今後とも安定的で持続可能な経営を目指し、さらなる病院改革の取り組みを進めていく必要があると考えております。
次に、公立病院改革プラン策定に対する県の取り組みについてでございます。
昨年末に総務省からガイドラインが示されたことを受け、県におきましては、関係部局が連携して対応しており、これまでに関係市町村の財政担当と病院事業担当合同の課長会議を二回開催し、公立病院改革プラン策定に関する情報提供を行っております。また、今月に入ってからは、地域に出向き、各病院の経営状況とあわせて、プラン策定の取り組みについてヒアリングを行っておりまして、これらの場を活用するなどして、実効性のあるプラン策定に向けての助言、調整を行っているところでございます。
プランを策定し、経営改善に取り組む市町村に対しては、国から財政支援のメニューが示されておりまして、具体的には、プラン策定に要する経費、再編・ネットワーク化に伴う医療機能の整備に要する経費、医師不足により発生した不良債務の解消に係る経費などが対象とされております。
県といたしましては、市町村がこうしたメニューを効果的に活用し、病院改革が円滑に進められるよう積極的に支援を行ってまいります。
以上です。
- 15:◯健康福祉部健康担当局長(五十里明君) 公立病院改革プランのうち、私からは、公立病院の再編・ネットワーク化についてお答えをいたします。
まず、有識者会議の提言をどのように受けとめているかとの御質問についてでございます。
今回の有識者会議の中間取りまとめは、大きく二つの内容から成り立っております。
第一点は、地域医療を守る観点からは、救急医療体制の確保が最大の課題であるとの認識に立ち、公立病院の再編・ネットワーク化の検討に当たっては、まずは、救急医療体制確保の視点から行うべきとされております。
具体的には、三百六十五日二十四時間、救急患者が受診できる体制を確保するため、救急医療を外来、入院に分け、例えば、入院救急医療では、心筋梗塞や脳卒中等の緊急性の高い疾患について、実際に対応できる高度な救命救急医療機関を確保することが求められております。
第二点目は、医師確保のための環境整備についてであります。
例えば、医師派遣を行う大学は、救急医療体制の中で位置づけられた病院に対し、優先的に医師を配置するシステムを確立する必要があること、また、各病院は医師のこれ以上の減少を食いとめるため、医師にとって魅力的な病院であることが求められるとされております。
このように、この提言には地域医療を守っていく上で大変重要な視点が含まれており、今後、公立病院の再編・ネットワーク化プラン作成の指針となるものと認識をいたしております。
次に、再編・ネットワーク化プランの策定支援に対する今後の取り組みについてでございます。
この病院の再編・ネットワーク化プランの策定は、市町村単独でできることではなく、地域全体で、その実情に即して、どのような医療連携を行うべきかについて、協議、調整を行う必要がございます。
このため、医療圏ごとに、公立病院や関係市町村を初め、民間病院を含めた地域の中核的な病院、医師会などの関係者から構成する地域医療連携ワーキンググループを順次設置しておりますことから、この場において有識者会議の提言を踏まえ、保健所が中心となって再編・ネットワーク化プランを検討してまいります。
また、地域で検討される個別の公立病院のプランがより実効性あるものとなりますよう、有識者会議から提言をいただきながら具体的な調整を行い、本年十二月を目途にプラン最終案の作成に向けて市町村を支援してまいります。
- 16:◯病院事業庁長(二村雄次君) 御質問を二点いただきました。
一点目は、病院事業庁長就任に当たっての所信についてのお尋ねでございます。
私は、本年四月から愛知県病院事業庁長に就任いたしましたが、これまでは、名古屋大学医学部の附属病院長を経験した立場から、それから、昨年度は愛知県がんセンター総長としての立場から県立病院の運営を見てまいりました。
そのときに感じておりましたのは、がんセンター中央病院を初めとする県立五病院は、いずれも高度に専門分化した分野で、後方病院としての役割を十分果たしているということであると思います。本年四月からは、この五病院を統括する立場についたことで、責任の重さを実感しております。
庁長としての役割は、本県の医療政策実現のための中心的な実戦部隊である県立五病院をきちんとかじ取りすることであると私は考えております。
また、県立病院が十分な能力を発揮して、今まで以上の診療実績を上げるためには、医師、看護師を初めとする医療従事者にとりまして、働きがいのある職場づくりをすることが基本であるというふうに考えております。
こうした思いを持って、今後、庁長として最大の努力を惜しまず取り組んでまいりたいと思いますので、議員の皆様方におかれましては、今後も御支援、御鞭撻を賜りますことをお願いいたしまして、私の決意の所信とさせていただきます。
次に、これまでの経営改善行動計画の状況を踏まえ、どのような方針で取り組むかについてのお尋ねであります。
現在、私自身が各病院に出向きまして、各病院長を初め病院幹部職員から経営改善行動計画の四年間の進捗状況を聞きまして、その反省に基づいた今後の病院経営の方向性についての意見も聴取しているところであります。
私は、新たな計画策定に当たって、県立病院の役割とその機能については、今後、いま一度考えさせていただきたいというふうに思っております。その視点としましては、県立病院は、がん克服フロンティアあいちの推進、精神医療、小児医療などの県の医療行政の実戦的中核部隊として、その役割をきちんと認識しなければならないというふうに思っております。
このような考えに基づき、ただいま議員から御指摘、御提案のありました課題や、公立病院改革ガイドラインで提起されました課題などを踏まえ、県立病院のそれぞれの役割と今後の方向性をしっかりと検討した上で、今後四年間を見通した中期計画を立ててまいりたいというふうに思っております。
以上です。
- 17:◯四十三番(神野博史君) 先ほどは、私の質問に対しまして、それぞれ御答弁をいただきましたが、要望を四点申し上げます。
一点目、私の地元東海市におきましては、ことし四月に東海市民病院と中央病院が統合されましたけれども、統合に至るまでの協議会の内容を見てみますと、当事者同士ではなかなか利害調整が難しく、客観的な立場からの県による指導は大変重要であることを再認識いたしました。
今後、病院の再編・ネットワーク化が推進され、また、病院の経営形態が変化していく中で、県は、助言、指導という役割をぜひ果たしていただくことを要望いたします。
二点目、先ほど質問でも述べましたが、城山病院につきましては、審議会におきまして、施設の老朽化が激しく、一次救急が既に崩壊しているとの発言がありました。私も以前視察いたしましたが、患者さんは、大変劣悪な環境の中で治療を続けている状況であります。一日でも早く全面改築して、救急に対応できるようにしていただくことを強く要望しておきます。
三点目、小児センターにつきましては、魅力ある病院として多くのレジデントや研修医が来ておりますが、それにもかかわらず病床利用率が低いということは、やはり小児救急センターや周産期部門がないということが決定的な要因ではないかと思います。兵庫県のこども病院を視察して、心からそう実感いたしました。
そこで、ぜひとも小児センターには小児救急センターや周産期部門を設置して、お子さんや親御さんの期待にこたえるとともに、病床利用率七〇%基準をクリアしていただけますことを要望いたしておきます。
四点目、昨年十二月二十四日に出されました総務省の公立病院改革ガイドラインによれば、原則として赤字決算は認められなくなります。そのため、今後は、繰出算定基準の見直しが病院の存続にかかわるほど重要なことになりますので、個々の病院の役割を明確にして、しっかりと病院経営に取り組んでいっていただくことを要望しておきます。
また、平成十六年四月より地方公営企業法の全適となり、病院事業庁長の管理者としての権限と責任が強化されましたが、昨年の委員会における前任の外山庁長の発言によりますと、権限の面におきまして、給料の査定一つにとっても十分ではなかったということであります。そして、民間病院に勤務する医師と比較して、公務員である医師は給料が安いという発言もよく聞きました。
そこで、医師不足に対応するためにも、庁長にもっと裁量権を付与して、医師の給料の改善を図るなど、処遇を向上することができるようにしていただくことを神田知事にも強く要望いたしまして、終わります。
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- 18:◯三十七番(酒井庸行君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 19:◯議長(栗田宏君) 酒井庸行議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 20:◯議長(栗田宏君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
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午後一時開議
- 21:◯副議長(鈴木愿君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
鈴木あきのり議員。
〔三番鈴木あきのり君登壇〕(拍手)
- 22:◯三番(鈴木あきのり君) 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。
私は、農作物のおかげで、その中でも特に米の力で大きく育ちました。皆さんは御存じでしょうが、米という字は漢数字で八十八から成り立っております。そして、その意味は、苗から米になるまで農家が八十八回の手間をかけ、惜しみない愛情を注ぎ込み、大変な苦労を重ねて、ようやく私たちの口に運ばれるということです。私は、それを知ったとき、感謝の気持ちでいっぱいになりました。その思いを踏まえ、愛知の農業政策について、以下七点、質問をさせていただきます。
農業というと大変暗い話題が多い。農業従事者の高齢化、後継者不足、遊休農地の増加など、悲観的な話題に事欠かない。農業関係の会議では、農業情勢が厳しい環境にありとか、農業の危機的状況の中などという言葉が時候のあいさつのように使われております。
しかし、私は、厳しいとか危機的とかいう言葉を通り越して、農業の崩壊の状況が近いと懸念をしております。地元東三河の地域に住む私が身近なところで目にするのは、農業従事者として苦労し続けた昭和一けた世代がまさに精根尽き果て引退する姿であります。
そして、その子供たちはほとんど農業以外の仕事についておられます。荒れた農地、少なくなっていく集落、さらには、ともに頑張ってきた友が原油の高騰で農業を維持できず、農業ハウスを壊したという話も耳にして、恐らく寂しい思いを強くしていることと思います。
農業が崩壊して一番困るのはだれか。農家と答える人がいるかもしれませんが、そうではありません。農業崩壊で一番困るのは私たち消費者であります。私たちは、長い間、農業は農家の問題だと思い込んでいましたが、農業には新規の参入が難しいという特殊性もありましたし、農林水産省や農協が独占的に取り扱ってきたことも事実であります。
消費者側にも、農家はつくる人、私、食べる人という役割分担を当然とする考えが強かったわけでありますが、しかし、もうこのような考え方は通用しません。農業は、残った農業者と消費者みんな、すなわち県民、国民すべてで取り組まなければならない問題となってきていると思います。
そこで、一つ目として、県の農業に対する認識についてお伺いをいたします。
愛知県には、農業に関して、食と緑の基本計画があることは承知しておりますが、現在の急激な農業環境の変化に対応した計画とは言いがたいのではないか。最近の原油価格や家畜飼料の原料となる穀物価格などの急激な高騰は、農業環境の変化を引き起こしており、食と緑の基本計画の中においても、この点で目標や施策展開が示されていないと思います。こうした農業環境の急激な変化に即した計画へ見直し、再構築はできないか。
また、平成十八年の愛知県の農業産出額は三千百八億円で、前年に比べ五・一%減であり、低落傾向に歯どめがかかっておりません。
農業就業人口もまたしかりであり、こうしたことは、食と緑の基本計画の計画そのものに問題があるのか。はたまた、食と緑の基本計画に挙げる計画の遂行に問題があるのか。
さらに、県として国の農業政策をリードするぐらいの意気込みがあってもいいのではないかと思います。仮に位置づけているなら、具体的に示していただきたい。
農業問題を病気に例えるならば、病状はわかっていても、何をどうするのか適切な療法が処方されていない野放し状態のようにも思えます。
そこでお伺いしますが、愛知県は、農業を県の基幹産業と位置づけているのか、まず、農業に対する県の認識をお伺いいたします。
二つ目として、担い手確保策についてお伺いします。
農産物を大量に出荷できたら価格は均一に下げられ、品不足で出荷すれば高騰する。これでは若い人が農業に魅力を感じず、振り向きもしません。
さらに、県の計画では、担い手確保や育成のための施策に余り新鮮味もなく、従来からの手法を述べているだけで危機感も見られません。
農業従事者の高齢化により、将来の農業に未来が開けない状況を打破する方法を県としてぜひ見つけてほしいと思います。
確かに産出額から見れば、愛知の農業はすばらしいものがあり、平成十八年の農業産出額は、愛知県は全国六位であり、品目別では園芸、畜産が全国の上位を占めております。本県の特徴としては、十アール当たりの生産農業所得が全国平均の二・一倍で、土地生産性が高いことが挙げられます。
このように、全国的にもトップレベルである愛知県の農業だが、さき述べたように、農業の担い手、農業労働力確保についてこそ急務ではないかと思います。
平成十七年二月の愛知県の農業就業人口──農林業センサスによる──は約十万人、平成十二年と比べ一七・九%減少、六十五歳以上は五四・九%で五・二%上昇をしております。
また、平成十九年の新規就農者(三十九歳以下)は百二十九人で、前年度より四十二人減少をしており、これは、ここ数年の本県における農業以外の産業からの求人が好調であったことも理由に挙げられようが、若者たちが農業経営にもっと目を向くような施策の充実を進める必要があると思います。
そこで、現在既に県で実施している新規就農対策はありますが、愛知は農業先進県であり、東三河、西三河、尾張、知多などで、各地で特色ある農業が進められております。その一方、各地域において、課題もそれぞれに抱えているという実情に即し、体系的できめ細やかな施策展開ができないか。また、新規就農以外にも、農業生産の現場等に人材提供のために機能する農業人材バンクの構築に対して県として関与できないか、お伺いをいたします。
三つ目として、時代に合った農業の推進策をお伺いいたします。
農業は、単に食料問題や経済問題だけではなく、自然環境の保全という大切な役割も果たしております。また、近年言われる食料自給率の向上を図る施策とは、農業振興により農業生産力を高める施策そのものにほかならないと思います。
本県は、愛知県環境と安全に配慮した農業推進計画を策定し、平成二十三年度目標値を挙げておられ、環境と安全に配慮したとあるように、これからの農業生産において、環境と安全のどちらが欠けてもいけないという立場で取り組みを進められるのは望ましいことであります。
この計画の中で県の挙げる平成二十三年度時点での目標値が三つあります。
平成十八年を基準として、化学肥料、化学合成農薬を一〇%削減する、県内の主要な産地等(約百産地)について、GAP手法の導入を図る、持続性の高い農業に取り組むエコファーマーを四千五百人育成するの三つであります。
中でも、GAPについては、農林水産省が取り組み推進に動き出したのが平成十六年ごろだと思いますが、全国にどれだけ浸透しているのだろうか。また、本県としては、愛知県版GAPというべき愛知県農産物環境安全推進マニュアルを平成十七年度に策定し、普及を努められてこられました。
GAPについては、国もそのモデルは示しているものの、こうでなくてはいけないということを言っておらず、産地の特徴を踏まえたものを作成するものとしております。
このGAPの県内産地への普及のスピードなどを考えると、普及の推進の仕方に問題はなかったのか。安全、環境に配慮した農業生産を行うことは当たり前のことであり、普及のためにもっと積極的に関与できることがあるのではないかと思います。
例えば、エコファーマーは、これを取得した農家は特定のマークを使用できるなど、一定のPR効果を果たしております。しかし、愛知県版GAPである愛知県農産物環境安全推進マニュアルを取り入れた農家へは、こうした消費者へのアピール材料が用意をされておりません。これでは農家がGAPを導入することの意義は理解できたとしても、積極的に取り組もうという動機づけに乏しく、やややる気が起きません。
ヨーロッパの多くの量販店で導入されているグローバルGAPは、第三者機関による認証を経て、初めて産地、農家はGAPの導入を公表できるものであります。
農業生産における安全・安心は、まず、農家自身の自主的安全管理対策、つまりはGAPの実施に由来し、その上でGAP導入の取り組み体制、チェック体制について問題はないこと、正当性が確認されれば、消費者の信頼は一層高まるものと思います。
そこで、県が認証機関となってGAP認証行為はできませんか。もちろん、認証行為が不可欠となることで農家における負担感は増すことも予測され、既に導入済みの産地への対応の問題もあるかもわかりませんが、結果として県内のGAP普及拡大を後押しすると思います。
また、県によるGAPの認証、認証済み農家には、環境、安全に配慮した愛知県ブランドを示すマークの使用許可の配慮、消費者へのアピールをしていく上で、他県との一線を画したブランド創出にも寄与するのではないかと思います。それについてお伺いをします。
四つ目として、米の価格下落に伴う緊急対策についてお伺いをします。
近年、特に米については、消費量の減少が続く一方、生産調整のふぐあいから供給過剰の傾向にあることなどを背景に、本年産米の価格は例年以上に下落し、生産費割れが懸念されるなど、本県稲作農家の経営は大変厳しい環境に直面をしております。
懸命に頑張っておられます農家の叫びとして、市場価格が生産コストを下回れば、その差額を農家に直接支払いし、農家の経営を安定させ、食料自給率の向上につなげる戸別所得補償制度の創設、水田経営所得安定対策の対象品目の拡大、無利子融資制度の創設、さらにあいち米の消費拡大をさらに推し進めるべく、流通販路戦略の一層の強化を求められております。
そこで、できる限りの不満を解消し、不安を払拭できるよう、きめ細かい農業施策の必要性を強く感じました。米の価格下落に伴う緊急対策として、本県は何をしなければならないと考えているのか、お伺いをします。
五つ目として、原油高騰への緊急対策についてお伺いをします。
現在、世界的な原油価格の高騰が続いており、県内でも、ガソリンや重油、灯油などの石油製品のほか、原材料や資材などの価格上昇が見られます。農業生産においても、園芸ハウスにかかわる燃料代の増加が重くのしかかってきており、生産コスト全体に影響を及ぼしております。
こうした状況を少しでも緩和するため、資金繰りに支障を来した農業者が利用できる農業セーフティーネット資金等の活用促進が図られるような施策はもちろん必要でありますが、まだまだ原油価格は高値推移が続くとの見方が多い中、農家にとっては死活問題であり、行政に求めるものは非常に大きいものがあります。
そこで、庁内に原油高騰対策室を設け、県民生活の影響を的確に把握するとともに、県民や農業を対象とした相談体制の整備、省エネルギー対策の普及促進、さらには、次期食と緑の基本計画をつくり上げていくためにも、行政として、緊急かつ慎重な役割を果たすべきときが来ているが、対策をお伺いをいたします。
六つ目として、農業の情報発信や農工商連携についてお伺いをします。
農業の情報発信方法として、観光・交流型農業経営などが考えられますが、地域振興とも結びつく施策として、都市住民を呼び込む交流・滞在型農業施設の整備が挙げられます。
例えば、田原市では、都市住民を呼び込むクラインガルテン整備構想があるそうです。都市住民を呼び込む交流・滞在型農業施設は、東三河北部、いわゆる奥三河地域では地域振興策としても期待が持てる施策と思います。
そこで、平成二十一年度から施行されるあいち森と緑づくり税の使い道について、水源地を中心に各市町村は注目しているところであります。
目的税であることから使い道はかなり限定されるようにも聞きますが、水源地の地域振興により水源地の住民が定着し、水源地の水と緑を守ることにつながっていくこと、さらには、農業振興は水と緑の確保と深く関連していることを考えると、あいち森と緑づくり税の使い道として、水源地と都市部の住民交流を果たす農業体験施設整備は考えられないのか、お伺いをいたします。
次に、農工商などの異業種交流については、ますます重要性が高まると考えます。特に、地球温暖化対策という点で、新しい技術の導入やリサイクルの輪を広げる異業種同士が連携すべきところが多いのではないかと思います。食品リサイクルの分野は新しいビジネスを創出する可能性も高いと考えられます。
そこで、今後の県の取り組みについてお伺いします。
最後に、七つ目として、農業施設の維持管理コストについてお伺いをいたします。
農業施策としてこれまで農業関係の補助金のばらまきが批判されてきましたが、確かにそういう面がなかったわけではありません。一方、各農家に補助金が直接入るものでは農業施設への補助金制度があります。県が補助した農業施設が県内にはたくさんありますが、地域の農家の意見を伺うと、整備した施設が営農形態の変化によって適切に機能せず、ランニングコストもばかにならない。いわゆる金がかかって役に立たない、無用の長物という声もよく聞きます。
また、最近は、省エネルギーや環境に優しい整備が求められており、行政としてこうした地域の声をしっかり受けとめ、必要に応じた措置を講じていくことこそが結果において農家を助けるとともに、県の補助金も減り、県が進める環境対策にも合致すると思いますが、その考えについてお伺いをいたします。
以上、七点質問をいたしましたが、繰り返しになりますが、農業がグローバリズムの中で崩れていこうとしています。命をはぐくむ土壌や環境、それを守る人々は簡単に切って差しかえがきくものではありません。一度壊し、失ってしまえば、もとにも戻らない可能性のほうが高く、だからこそ大切にし、向上させなければならないと考えます。
農業は、本来楽しくやりがいのあるものであるはずです。どうか、この危機的状況を打破できる夢のある答弁を心から願い、壇上からの質問を終わります。(拍手)
- 23:◯農林水産部長(永田清君) 愛知の農業政策について順次お答えをいたします。
まず、担い手の確保策についてでございます。
農業の現場では、高齢化の進行や担い手不足から、いかに労働力を確保していくかが重要な課題となっております。こうした課題に対応するためには、農業に興味や関心を持っている地域のさまざまな人材を活用していくことが大切なことと考えております。
県では、昨年から新規事業として、農業大学校や各農林水産事務所の農業改良普及課において、新たに農業をやってみようという団塊世代を対象に野菜などの栽培実習による農業入門研修等を実施しており、昨年度は二百八十七名の方に基礎的な技術を習得していただきました。
今後も、毎年二百人から三百人ほどの人を確保していく予定でありますので、こうした農業の基礎的な知識を持った方々について、市町村や農業団体と連携して、地域農業を助けるサポーターとして活躍していただけるよう支援をしてまいります。
次に、時代に合った農業の推進策についてでございます。
本県では、安全な農産物生産と環境の保全を推進するため、平成十七年度に愛知県版GAPであります愛知県農産物環境安全推進マニュアルを作成し、農業者を対象とした研修会を県内各地で開催しまして、その普及に努めてまいりました。
この結果、県内で十四産地にGAPが導入されておりますが、さらに一層の推進を図るため、本年度は新たに十八の重点産地を定め、農家への指導を行っております。
また、本年十月には、GAPに対する消費者の理解を深めるため、GAP推進フォーラムを開催いたします。
なお、GAPの認証制度につきましては、農家にとって、環境と安全に配慮した農業を行っていることを消費者にアピールできるというメリットもありますが、まだ全国に三機関しか認証団体はなく、認証のための書類作成や審査に時間と経費がかかり、農家にとって負担になっていると聞いております。
また、県内の農業団体からも導入要望はありません。
県といたしましては、認証制度を導入するよりも、まずは、GAPを県内全域に広めることが最も重要と考えておりますので、なるべく多くの農業者にGAPが導入されるよう全力で取り組んでまいります。
次に、米の価格下落に伴う緊急対策についてでございます。
米の価格は、消費の減退と生産過剰により、全国的に長期にわたり低下傾向にあります。本県の代表品種「あいちのかおり」の十九年産価格は六十キロ当たり約一万三千円と、五年前に比べ千二百円程度下がっており、県内の稲作農家は大変厳しい状況にあると認識しております。
県といたしましては、特に昨年の十二月からは、これまで以上に国、市町村、農業団体と連携を密にいたしまして、米価安定のため、米から麦、大豆への転換、そして、今年度からは飼料米も重点といたしまして、生産調整に取り組んでいるところでございます。
また、稲作の担い手に対しまして、米の収入減少を補てんする水田経営所得安定対策への加入を促進しているところでございます。
さらに、今年度から農家の経営改善を図るため、無利子の融資枠を拡大いたしました。また一方、米の消費拡大を図るため、学校給食への米粉パンの普及や、御飯を中心とする日本型食生活の推進などにも取り組んでおります。
いずれにいたしましても、米は農政の根幹にかかわることでございますので、国と連携して、生産と消費の両面に係る総合的な対策に取り組んでまいります。
次に、原油価格の高騰への緊急対策についてでございます。
原油価格の高騰は、農家の方々にとりまして極めて深刻な問題であり、農業団体とも密接に連携しながら対策を講じていくことが重要であると考えております。
こうしたことから、農業団体と農林水産部関係課を構成員とします農林水産業原油価格高騰対策連絡会議を庁内に設置し、農家に対する技術指導や省エネ設備の補助事業による経営支援などといった価格高騰対策に取り組んでいるところでございます。
さらに、本年度は、この補助事業の基準を緩和し、省エネ対策の普及に一層努めているところでございます。
また、地域におきましては、各農林水産事務所に相談窓口を設けて、経営や技術、低利の運転資金貸し付けなどに関する相談にきめ細やかに対応しております。
御指摘のとおり、原油価格の高値傾向は続くものと思われますので、農林水産業原油価格高騰対策連絡会議を中心といたします現行の体制をより充実させ、国や市町村との連携も緊密にとりつつ、農家の方々の経営安定に力を注いでまいります。
なお、次期食と緑の基本計画につきましては、原油価格を初めとする本県農業を取り巻くさまざまな状況を十分考慮しまして、計画を作成してまいります。
最後の答弁になりますが、農業の情報発信や農工商連携についてのうち、食品リサイクルに関する県の取り組みについてでございます。
食品残渣を堆肥にしたり、家畜の飼料にする食品リサイクルの取り組みは、循環型社会を構築する上で大変重要であります。
本県では、一部のスーパー、一般廃棄物処理業者、JA、そして農業総合試験場が連携して、スーパーから出る食品残渣を堆肥化し、この堆肥を利用して農家が生産した野菜をスーパーで販売するという食品リサイクルの輪が完成しておりますが、この食品リサイクルは農工商連携の事例でございまして、食品残渣が生み出した新しいビジネスモデルの一つと言えるものでございます。
また、食品残渣の飼料化につきましても、食品製造業者から発生するさまざまな食品残渣が最近の飼料価格高騰で見直されており、畜産農家の中には、鉄工所などと連携しましてプラントを導入し、食品残渣を飼料として利用する動きも見られております。
このような動きを支援するため、農業総合試験場におきまして、食品残渣を豚の飼料として利用する際の生育や肉質などについて試験研究を行っているところでございます。
食品リサイクルは、環境に優しい取り組みでございますので、今後とも農工商の連携を図りながら、その普及に努めてまいります。
以上でございます。
- 24:◯農林水産部農林基盤担当局長(松下栄夫君) 私からも、愛知の農業政策についての御質問にお答えいたします。
まず、農業の情報発信や農工商連携のお尋ねのうち、農業体験施設整備についてお答えいたします。
本県では、従来から、都市住民の方が農山村の自然と触れ合う場として、地域の要望に応じ、県内各地で市民農園等の交流施設や産地直売所などの施設整備を行っており、この十年間で見ますと、四十一カ所で実施しております。
また、最近の例では、豊田市の旧稲武町で滞在型市民農園を整備しており、十二組の都市住民の方々が週末に滞在して、地元の農家と交流しながら農作業を楽しんでおられます。
今後とも、地元市町村の意向を踏まえ、都市と農山村の交流が広く行われるよう取り組んでまいります。
なお、あいち森と緑づくり税を活用した施策の対象は、奥地と公道沿いの山林の間伐や、里山林を再生するための整備、都市の緑の整備、保全となっておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
次に、農業施設の維持管理コストについてであります。
県内には、用排水路や用排水機場など数多くの農業用施設があり、これらの施設の整備に当たっては、従来から、維持管理費や環境への影響を考慮して、最も経済的で効率的な計画を立てるよう、市町村や土地改良区を指導してきたところでございます。
また、用排水機の運転経費につきましては、全国に類を見ない本県独自の管理費補助を制度化し、地元負担の軽減にも努めてまいりました。
県といたしましては、今後とも、省エネルギーや環境に配慮して、経済的で効率的な施設整備や、維持管理コストの低減に努めるとともに、地域の営農形態の変化に対して、きめ細かな維持管理を行うよう指導してまいりたいと存じます。
以上でございます。
- 25:◯知事(神田真秋君) 本県の農業に対する認識はどうだと、このような御質問でございました。
私は、これまでもいろんな機会に、本県の産業について、工業と商業と農業が極めてバランスよく発展しているところに特徴があり、また、これが総合力を高める大きな要因であると、このように申し上げてきたところでございます。その重要な一角を担うのが農業であります。
さて、その農業でありますけれども、お示しをいただきましたとおり、平成十八年農業産出額が三千百八億円でございまして、これは全国の第六位であります。
作物別に眺めてみますと、そのうち花は第一位、鶏卵は第二位、野菜は第五位と常に全国の上位を位置しているわけでございまして、わけても、花卉産業につきましては、昭和三十七年以来四十五年間連続して日本一を維持しているわけでございまして、その意味で、農業は本県の重要な基幹産業の一つであることは間違いのないところでございます。
あわせて、この農業は、食料を生産するというだけではなく、生産の場そのものが水源の涵養あるいは洪水の防止、CO2の吸収など多面的機能を有しておりまして、大変重要な役割を果たしております。
特に、環境面から眺めてみますと、農業は生物多様性の保全という機能もとても重要だと考えております。水田でお米をつくるということになれば、そこにカエルも、あるいはメダカもタニシもアカトンボもはぐくまれるわけであります。ちょうどいよいよ二年後にCOP10を開催するということが決定をいたしました。その意味でも、田んぼも含めたこの農業のさらなる発展、維持というのは、愛知県にとっても重要な政策課題だと考えております。
- 26:◯三番(鈴木あきのり君) 質問に対しましてそれぞれ御答弁をいただきました。
一点、要望をさせていただきます。
先ほど農業は暗いという話をしましたが、知事の御答弁にもあったように、私の地元、昨年、平成十九年、いわゆる花の女王としてバラが第三十六回日本農業賞集団組織の部で大賞を受賞しました。
さらには、このたび、豊川市と合併した御津町でも同じく、イチジクでありますが、平成十年度に同じ賞を受賞し、明るい話題もあるわけでありますが、その地域に住む県民全体で大切にし、応援をしているわけであります。
知事の御答弁にもありました、農業は地域の輪づくりにも貢献をしております。ぜひとも財政が厳しい中ではありますが、知事の御答弁にもありました、力強い御答弁もありました。しっかりと遂行を今後ともしていただきたいという要望を添えまして、私の質問を終わらせていただきます。
- 27:◯副議長(鈴木愿君) 進行いたします。
小久保三夫議員。
〔六十三番小久保三夫君登壇〕(拍手)
- 28:◯六十三番(小久保三夫君) 通告に従いまして質問をさせていただきます。
最初に、夢のある農業の実現についてお伺いをいたします。
パンやめん類、マヨネーズや食用油など食品の値上げが相次いでおります。これは、小麦が干ばつによって不作になったことや、穀物からのバイオ燃料生産が急増し、世界的に食料需給が逼迫しているためと言われております。
こうした状況は、主要先進国の中で最低レベルである我が国の食料自給率の問題をクローズアップさせ、最近では、新聞やテレビでも国内農業の振興策について多く論じられるようになっております。
私は、農業の振興のためには、まず、農業が魅力ある産業となること、言いかえれば、農業者が将来にわたって夢を描くことのできる産業とならなければならないと思います。
そこで、夢のある農業を実現するための施策について、幾つか質問したいと思います。
まず、農産物の輸出についてであります。
今、世界さまざまな国で日本食ブームが広がっております。また、オリンピックや万博を控えた中国を初め、経済発展の著しい近隣のアジア諸国では、高価な食材を買い求める富裕層が増加しており、高品質で安全・安心な日本の農林水産物の輸出拡大の可能性が増大しています。
こうしたことから、国でも、平成二十五年までに輸出額一兆円規模を目指して、官民挙げた取り組みを進めているところであります。
最近公表された貿易統計では、平成十九年の農林水産物の輸出額は四千三百三十七億円と前年比一六%増となっており、最近三カ年でも毎年一〇%を超える伸びを示しております。
本県でも、アジア諸国に向けて数年前から花の卸業者や生産者がシンビジウムなど洋ランを、最近では、豊橋市や田原市では、生産者と地域の関係者が一体となって、カキやメロンのテスト輸出を始めています。
しかしながら、輸出には、輸送コストや輸出先の検疫の問題はもちろん、輸出先には、日本のように品質、鮮度の保持のための保冷車両や倉庫も十分でない国も多く、商慣習の違いなどから代金決済がおくれるなど、まだまだ解決すべき課題も多いと聞いております。
一方、国内市場においては、輸入農産物の増加や産地間競争の激化により販売価格が低迷しており、また、将来的には人口の減少もあり、需要の伸びは期待できず、閉塞感が強まっております。
しかし、私は、こうした閉塞感を打ち破り、全国有数の生産額を誇る本県農業をさらに発展させ、農業者が将来にわたって明るい展望を見出していけるようにするためには、国内市場だけに目を向けるのではなく、農産物の販路を海外に求める農産物の輸出など、新たな視点に立った積極的な農政施策が必要ではないかと考えています。
そこで、まず、農産物の輸出に対し、県はどのような取り組みを行っているか、お伺いをいたします。
さて、次に、農業総合試験場における試験研究について質問します。
私の地元でもあります豊橋市や田原市は、キャベツや白菜、トマト、アオジソ、菊などの園芸作物の栽培が盛んであります。私は、農業者にとって夢のある農業を実現するには、新技術や新品種の開発が非常に重要であると考えております。
農業総合試験場では、これまでに培ってきた技術の蓄積、それぞれの研究員の努力により、トマトの新しい栽培法など新技術や、菊の新品種開発などの成果を上げ、本県農業の振興に寄与してきたものと考えております。
しかしながら、私は、新たな発想を取り入れるとともに、より効率的に研究を推進するためには、産学官の共同研究が重要と考え、大学、民間等と連携した試験研究を一層推進するよう提言してきたところであります。
その結果、私が平成十四年二月議会で、農業総合試験場における大学や民間等との共同研究について質問したときは十三課題ありましたのが、平成十七年度には二十四課題、十八年度は三十一課題、十九年度は三十四課題と着実にふえており、二十年度は四十二課題を実施する予定と聞いております。
そこで、農業総合試験場における産学官の共同研究による成果はどのようなものであるか、お伺いをいたします。
次に、先ほど申し上げましたように、農業総合試験場における共同研究は、年を追うごとにふえ、このことは評価できることであります。
しかし、今後、飛躍的な技術革新を実現するためには、これまでのように農業にかかわりのある大学、民間等との共同研究だけではなく、異分野との交流や連携がぜひとも必要となってくると考え、このことについても申し上げてきたところであります。
愛知県は、物づくり県であります。特に工業分野ではすぐれた多くの技術の蓄積があり、その力をうまく農業に取り入れるべきではないかと思います。
県は、平成十八年十二月に、豊橋技術科学大学と連携実施協定を結んだと伺っております。
農業者にとって魅力のある飛躍的な技術革新のための研究に向けて、私が期待していた農業と工業の連携強化といった基盤ができてきたと感じております。
そこで、県として、農業と工業が連携した共同研究にどのように取り組んでいかれるのか、お伺いをいたします。
最後に、夢のある農業を実現するための施策研究についてお尋ねします。
豊橋市を中心とする東三河地域の農業は、平成十八年の産出額が一千五百六十八億円で全国有数の産出額を誇り、この地域が一つの県であるとすれば、全国第二十位の秋田県、二十一位の兵庫県に匹敵するような産出額を誇っております。
しかし、御多分に漏れず、我が国農業が抱える共通的な課題である後継者不足、遊休農地の増大、輸入農産物の増大による農産物価格の下落等の問題を抱えておりますし、最近では、これに加えて、特に産出額の七割を占める野菜、花、果実などの園芸部門は、原油の高騰もあって、非常に厳しい状況にあります。
冒頭にも申し上げましたとおり、最近、世界的な穀物価格の高騰もあって、食料問題や農業問題がマスコミの注目を集めており、米や水田が農業の象徴としてよく取り上げられるようになりました。
米については、北は北海道から南は沖縄にまですべての地域で栽培され、主な品種も十五程度にまとまっており、また、技術開発もかなり進んでおりますし、米の生産調整や水田作の規模拡大など大きな課題はありますが、問題点が明確で、全国的に共通の土俵で議論がしやすい状況にあります。
その点、園芸産地の問題は、野菜もあり、果物もあり、花もある。野菜や果物を商う商売を「八百屋」と書いて「やおや」というように、種類も数え切れません。また、栽培方法も、ハウス栽培があり、露地栽培もある。さらに、地域性も加わって、問題が複雑多岐にわたり、全国的な議論を難しくしております。園芸産地をどうしていくかということは、それぞれの地域で考えなければならない問題であります。
これまでも、愛知県では、行政や農業団体が園芸産地の活性化についていろいろ検討されてきたことと思いますが、残念ながら、これという処方せんは見当たりません。
そこで、私は、今後の園芸産地の振興策を研究する場の立ち上げを提案したいと思います。
これまでの農業の施策の検討は、行政と農業関係者が中心で、農業者以外では、せいぜい消費者の代表が入るぐらいであったと思いますが、これからの夢のある農業を構築するには、試験研究の質問の中でも述べましたように、農業、農業関連企業、食品産業、研究機関、行政機関、その他異業種が連携し、農業の生産技術、農産物を活用した商品、農産物のブランド化など新しい価値の創造、輸出などの販路開拓による地域農業の振興を検討することが重要であると考えます。
そこで質問をいたします。
これからの農業を考えていくためには、農業関係者だけではなく、商業や工業の関係者も加え、産業分野を横断し、得意とする分野における知識や技術力を相互連携させることが必要であります。
このような観点に立った園芸産地の振興策を研究する場の設置について、県の考えをお聞かせください。
続きまして、三河港に係る建設行政、とりわけ三河港の振興策について、まずお尋ねをいたします。
港湾は、経済活動及び国民生活を支える重要な物流・生産基盤であり、元気な愛知を支えるとともに、我が国の国際競争力の強化、地域の活性化や雇用の創出、生活の安全・安心に大きく貢献しているところであります。
とりわけ、私の地元であります三河港は、全国的にも貿易額や取扱貨物量が伸びている元気な港として、東三河地域だけではなく、我が国の産業や経済活動を支える重要な国際物流拠点となっております。
三河港の平成十九年の貿易額は四兆八百九十四億円、取扱貨物量は三千二百八万トンで、全国の港湾の中でも貿易額において第七位に位置しています。
また、完成自動車では、年間約百五十万台を取り扱い、ベルギーのセーブルージュ港やドイツのブレーメルハーフェン港、そして、名古屋港と並ぶ世界有数の国際的自動車流通港湾として発展してきました。
このように、三河港は、東三河を初め三遠南信地域の海の玄関としてだけではなく、私の地元の発展を支える大切な社会基盤であります。
さて、県は、こうした期待にこたえるため、三河港の長期的な開発に関する港湾計画を改訂することとし、平成十六年に三河港港湾計画検討委員会を設置して検討を進めてきたところでありますが、豊橋市神野地区の埋め立てについては、アサリなどへの影響を十分に検討されるようにと条件が出されたと聞いております。
しかしながら、その後の調査結果に基づき、去る二十年二月十二日に開催された検討委員会において、神野地区の埋立計画がアサリの浮遊幼生に及ぼす影響はほとんどないことが示され、港湾計画の改訂作業を進めるべく関係者の了承が得られたと伺っております。
私は、三河港の整備が豊橋市を初め東三河地域の発展に大変重要な役割を果たしてきたことを確信しておりますし、今後も地域のさらなる発展に大いに貢献するものと考えております。
したがいまして、ぜひとも早急に、使いやすく安全な港になるよう、そして、三河港がさらに発展が可能となる港湾計画の策定を期待しておきたいと思います。
さて、港湾の機能を拡大、強化するためには、港湾施設の整備促進を着実に実施することはもちろんのこと、加えて、その整備された施設をいかに効率よく活用して産業社会に役立てていくかが重要な課題となるかと思います。
こうした中、本年四月、三河港の豊橋国際コンテナターミナル、地域の念願かなった二基目のガントリークレーンが稼働を開始し、新コンテナヤードの整備と相まって、従来に比べ格段の取扱能力をふやすこととなり、さらなる飛躍に結びつくのではないかと思います。
港湾施設の管理運営、中でも、とりわけコンテナターミナルは、近隣港との厳しい競争の中で、荷主や物流事業者に対して、三河港の利用を働きかけることや、海運会社への定期航路誘致などを官民一体となって進めていくことが必要であります。
そうしたことから、県では、豊橋コンテナターミナルの管理に指定管理者制度を活用し、効率的な港湾施設の管理や行政経費の節減とともに、港湾施設の利用促進を図ることとしていると聞いております。
港は港湾施設だけで成り立つものではなく、定期航路や物流業者が定着して事業を行うことにより、背後圏の消費者や産業の社会公共基盤になり得るものと言えます。港湾の整備とその振興や利用促進は密接に結びついているものであります。
そこでお尋ねをいたしたいと思います。
今後、港湾経営という視点から、三河港のより一層の振興、施設の利用促進を図るための施策がますます重要となってまいりますが、県としてはどのように港湾振興策を進めていく所存か、お伺いをいたします。
次に、東三河地域の幹線道路の整備についてお尋ねをいたします。
先般の通常国会では、最大の焦点でありました道路財源の暫定税率に関する税制関連法案並びに道路整備費財源特例法改正法案が衆議院にて再可決され、道路整備に必要な財源についてはとりあえずめどが立ち、一段落したところでありますが、約一カ月半にわたる空白期間を取り戻すべく、工程におくれが生じることがないように鋭意事業を進められていることと思います。
さて、本県は、製造業の盛んな物づくりの県として今日まで発展を遂げてきましたが、引き続き愛知県が今のある活力を維持するためには、円滑な物流システムのさらなる整備が不可欠であると考えます。
豊橋市を中心とする東三河地域は、先ほど触れましたように、自動車貿易では日本トップレベルの取り扱いを誇る三河港を有しており、産業経済活動に関する愛知の優位性に対して大きな貢献をしているところであります。したがいまして、この重要港湾と有機的に結びつく幹線道路の整備が緊急の課題であると改めて申し上げるところであります。
その代表路線となるのが名古屋方面から静岡県境まで延びる一般国道二十三号名豊道路であります。昨年度、蒲郡バイパスの残る区間が事業化され、ようやく全線で事業が進められる状態になりましたが、当地域の骨格を形成する幹線道路であり、供用区間では年々交通量が増加し、暫定整備のため、随所で著しい交通渋滞箇所が見受けられます。
国土交通省にて、豊川橋南交差点とサノ割交差点の立体交差化の工事を鋭意進めていただいておりますが、果たしてこれだけで十分でありましょうか。
豊橋バイパス及び豊橋東バイパスの全区間の開通も急いでほしいところでありますが、渋滞で困っている区間の四車線化についても早急の検討が望まれるものであります。
また、豊橋市及び豊川市の環状機能を担う県道東三河環状線においては、部分的にしか供用していないために環状道路の効果が発揮されておりません。一刻も早い整備が望まれるところであります。東海環状自動車道の整備効果は見てもわかりますように、環状道路の整備は、交通の分散誘導による環状道路内の渋滞緩和だけの効果にとどまらず、郊外の道路沿線における開発誘導など、地域の発展に大きく寄与することは明白であります。
また、平成二十六年度には、豊田から静岡県境まで第二東名高速道路が供用される予定であります。新たな高速広域ネットワークとして、ことし二月に共用した新名神高速道路と同様に、大きく利便性が向上するものと期待されます。
しかしながら、人口約三十八万人の中核市である豊橋市には、高速インターチェンジは一つもありません。このため、現東名高速道路と名豊道路を結び、第二東名高速道路、三遠南信自動車道といった広域幹線道路と三河港地域を結ぶ道路を地元は大変熱望しておりますが、やっとこの二月に地元自治体や経済界で組織される浜松三ヶ日・豊橋道路の期成同盟会が設立されました。浜松三ヶ日・豊橋道路の具体化に向け、一歩近づいたところであります。
豊橋市を中心とする東三河地域は、自動車貿易だけではなく、さきの夢のある農業の実現で触れましたように、農業産出額でも全国トップレベルのバランスのとれた地域であります。にもかかわらず、物流にとって一番重要な基幹ネットワークに欠けております。
まだまだ道路整備が不十分であるこの地域に広域道路網の早期ネットワーク化が東三河地域のさらなる発展につながることは間違いありません。
そこでお尋ねいたします。
東三河地域における道路整備についてどのような方針で整備を進めていくのか、お伺いをいたします。
以上、私の第一問の質問といたします。
- 29:◯農林水産部長(永田清君) 夢のある農業の実現についてのお尋ねのうち、まず、農産物の輸出についてお答えいたします。
農産物の輸出は、海外に新たな販路を開拓する攻めの農業として、本県産農産物の競争力を高め、元気な産地づくりにつながるなど、夢のある農業の実現に向けての取り組みの一つと考えております。
このため、本県では、本年二月に、県、あいち経済連、ジェトロや輸出に意欲のある産地等から成るあいちの農産物輸出促進会議を発足させ、輸出促進に向けた体制を整備したところでございます。
また、本年度新たにあいちの農産物輸出実践モデル事業を実施し、産地みずからが現地に赴き、海外見本市への出展などを通じて、相手国の消費者ニーズ、商慣習などの生きた情報やノウハウを取得する実践的な取り組みを支援することとしております。
この秋、香港で開催されます国際見本市に豊橋産の次郎ガキや田原産のメロンを出品するほか、タイのデパートやスーパーで愛宕ナシやイチゴ、イチジクなどを展示即売することとしております。
このモデル事業の成果を広く県内の各産地に紹介し、県産農産物の輸出機運を高め、輸出の拡大につなげてまいりたいと考えております。
次に、農業総合試験場における試験研究についてのお尋ねのうち、まず、産学官の共同研究による成果についてお答えいたします。
最近の新技術の開発についてでございますが、イチゴについて、空調設備会社との共同研究で、従来より一カ月早い十月から出荷できる新しい栽培法を確立いたしました。通常、イチゴは、十一月から翌六月までが出荷時期で、十月に出回っておりますイチゴはほとんどが輸入物でございます。
この栽培法によりまして、単価の高い時期からの出荷が可能となることから、農家からは大きな期待が寄せられており、本年から現地で試験的に作付が始まっております。
なお、この栽培法につきましては、平成十九年十月に特許を申請したところでございます。
また、新品種の開発では、全国一位の生産量を誇るアオジソやフキにつきまして、あいち経済連との共同研究によりまして、香りがよく病気に強いアオジソや、切り口が変色しにくく鮮やかな緑色をしたフキの新種を開発したところであり、平成十八年、十九年に品種の登録申請をいたしております。
現在、アオジソの新品種は、作付面積八十ヘクタールのうち十二ヘクタールで、フキにつきましても、九十九ヘクタールのうち九ヘクタールで既に作付がなされております。
次に、農業と工業が連携した共同研究についてでございます。
今後の農業経営を支える飛躍的な技術開発のためには、情報通信や自動制御などの最先端の工業技術を積極的に取り入れていくなど、工業を初めとする他の分野との連携した共同研究がますます重要になるものと認識しております。
本県では、平成十八年に、豊橋技術科学大学と連携協定を締結し、革新的な技術開発のため、平成十九年度から施設園芸分野におけるインテリジェントハウスの開発と実証に今取り組んでいるところでございます。
現在、豊橋技科大では、土壌中の温度や土壌pH、肥料濃度を同時に測定できる五ミリ角の小型センサーの開発を進めており、土の中や湿度の高いハウス内に設置し、実際に使用する環境条件での性能試験を実施しております。
さらに、本年度からは、県の産業技術研究所の情報通信の専門家もメンバーに加え、植物の生育状況に応じて、精密に温度、水、肥料を自動制御する技術や、遠隔地からインターネットを使って温室内を監視、制御できる技術の開発にも取り組んでいるところでございます。
今後におきましても、工業を初め他の分野との連携に積極的に取り組み、農家の経費、労力の軽減と収量増を実現する農業技術の開発に取り組んでまいります。
最後に、夢のある農業を実現するための施策研究についてお答え申し上げます。
農業振興策の策定に当たっては、地域の特性に十分配慮していく必要がございます。このため、県内を七つの地域に分けまして、市町村、農林水産業関係団体、消費者団体などで構成いたします地域推進会議を設置しまして、地域の特色や実情に応じた施策を推進するための地域プランの策定や、プラン策定後におけます進捗状況の点検、分析、さらに将来に向けた課題の洗い出しなどを行っているところでございます。
議員御指摘のとおり、輸出など夢のある新たな取り組みに挑戦していくためには、産業分野を横断した連携が非常に重要でございますので、各地域に設置しております推進会議に商業や工業の関係者の方々にも参加していただき、課題に応じてワーキンググループを立ち上げるなどして、地域ごとの振興策を研究する場としてまいりたいと考えております。
これから地域間競争がますます激化するものと思われますので、このような場を活用して、地域の総合力を結集し、地域の実情に配慮した施策づくりに取り組み、夢のある農業の実現に向けて努めてまいります。
以上でございます。
- 30:◯建設部長(湯山芳夫君) 三河港における港湾振興についてでございます。
ことし四月に、二基目のガントリークレーンが稼働いたしました豊橋コンテナターミナルにつきましては、ことし九月から指定管理者制度を導入する予定でございます。
今年度、建設部港湾課の中に港湾振興グループを新設いたしましたので、指定管理者との連携を深めるなど、三河港の振興のため、港湾管理者としての役割をしっかり果たしてまいりたいと考えております。
また、今年度は、荷主や物流企業など港湾利用者のニーズを把握するための調査を実施いたしますが、この調査結果を踏まえ、港の利用促進や競争力の強化につながる新たな振興策に知恵を絞ってまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、港湾施設の整備と整備された施設を最大限活用する振興策、このハードとソフトが港湾経営の車の両輪でありますことから、御要望いただきました三河港港湾計画の改訂作業を進めてまいりますとともに、関係各方面と連携、協力しながら、官民一体となりまして三河港の振興に努めていく所存でございます。
次に、東三河地域の道路の整備の進め方についてのお尋ねでございます。
道路整備は、限られた予算の中で、交通拠点のネットワーク強化、渋滞対策、交通安全、防災対策などの視点に基づき、優先順位の高いものから路線を選定し、整備を着実に進めていくこととしております。
東三河地域においては、自動車産業を中心とし、取扱貨物量が増加傾向にある三河港とのネットワーク強化を図ることが国際競争力を高めるために重要な課題であると認識しております。
このため、まず、この地域の骨格をなす名豊道路の一日も早い整備が必要であり、県としても、国に対して早期全線供用と既供用区間の渋滞対策を要望してまいりました。国は、全線にわたって用地買収や工事を進めており、暫定二車線での早期全線供用に精力的に取り組んでいるところでございます。また、渋滞対策として、豊橋バイパスの一部四車線化についても着手していくとのことでございます。
県といたしましては、名豊道路、国道一号、東名高速道路などを核とする広域幹線ネットワークの形成の必要性から、東三河環状線や田原地区へのアクセス道路であります国道二百五十九号植田バイパスの整備を進めております。特に国道二百五十九号植田バイパスは、昨年度、本線部の用地買収が完了し、早い時期の暫定供用を目指してまいります。
また、東三河環状線は、国道一号との交通の円滑化を図るため、立体交差工事に着手しており、順調にいけば、来年度完了の見込みでございます。さらに、浜松三ヶ日・豊橋道路につきましても、今年度より調査を進めてまいります。
今後も、東三河地域がますます発展できるよう、効果的な道路網の整備に鋭意努めてまいります。
- 31:◯知事(神田真秋君) 東三河の振興策について、私からも申し上げたいと思います。
御質問の中で御指摘をいただいたわけでありますけれども、三河港は本当に大きな発展を遂げてまいりました。お示しにもありましたとおり、自動車に特化した港湾という意味では世界で第四位であります。しかも、その発展の中で今現在も成長を続けておりまして、昨年は取扱量過去最高を記録いたしております。
また加えて、この地域は製造業も大変盛んなところでございまして、一昨年になりますけれども、製造品出荷額五兆円を超えておりますし、また、農業生産につきましても、県内の生産額の約半分がこの東三河であります。
このように、大きな発展を遂げてまいりましたけれども、それは、本来この地域が持っておりますさまざまなポテンシャル、それから、地域の皆様方が懸命に取り組まれた努力ももちろん大変大きな要因でありますが、私は、やはりインフラの整備が大変大きな力になっているものと思います。
水資源の確保も含め、三河港のさらなる整備、そして、広域的な道路ネットワークは、今後も引き続き進めていかなければならないと思っているところでございます。
特に道路はとても重要でありますし、御指摘いただいたように、たくさんの課題を抱えております。これを何としてでも計画的に進めてまいらなければなりませんが、道路特定財源の一般財源化に向けて、今後心配な部分もありますので、地域ニーズをしっかり国に伝えるなどして、こうした道路予算についても確保していかなければならないと思っておるところでございます。
こうしたインフラ整備を引き続き行うことによって、東三河の地域全体の競争力、とりわけ国際競争力を高めていきたいと考えているところであります。
- 32:◯六十三番(小久保三夫君) ただいま知事から東三河に対する珍しくすばらしい、私としては感動する前向きの答弁をいただきました。ありがとうございます。
いつもあるじゃないかという声もありますが、力強くいただきました。
実は、ここ最近、五月でしたか、福島県へ参りました。福島県のいわき市であります。ちょうど豊橋の人口が三十八万、いわき市が三十五万であります。行って驚いたのは、まずもって、港もある。でも、豊橋のこの三河港とは違う。小名浜港、四百三十億円ぐらいの年間取り扱い。先ほど言いましたように、三河港は四兆八百九十四、こういうことでありますが、そういう開きがある中で、あそこには常磐自動車道という道路がある。それから、もう一つ、そのいわき市内にジャンクションがあって、磐越自動車道というのが東北自動車道に向かっておる。この二本のすばらしい道路がある。
そういう中でもあるけれども、一生懸命に、この市も、この地域も企業誘致をしている。その企業誘致の中で変わった企業誘致がある。何か。農業の企業誘致ですよ。二十ヘクタールの土地に十ヘクタールの温室をつくる、こういうことであります。全部それもオランダ製と一部はカナダという世界で最先端の技術力を駆使してつくったものであります。
年間三千トンのトマトを出荷しよう、こういうことでありますし、その温室はLPG、プロパンを使っておりますから、プロパンから出るCO2についても、その構内の中で、要は光合成によって全部きれいにしちゃおうと、こういう環境にも物すごく配慮した、言うならば、トマトの生産工場であります。十ヘクタールありました。
そういう中で、私は、農業も企業誘致並みにする。市が三十三億五千万円の投資があったけれども、そのうちの五億円を助成すると、こういうことをやりながら、これも驚いたことには、工業専用地域に農地としてあったものをそこに誘致をしたということであります。
これは、地域として、私は物すごい決断であっただろう。そして、移動についても、農地を農地として移動していると。要は、賃貸借で移動している。そして、あと、管理等については互譲精神でやっておりましたけれども、そういういろいろのことを駆使して、このトマト工場をつくっておるということであります。
私は、大企業ならではのこういうことだな。でも、農業法人としてきちっと認知をさせて動き出しておる。一千万円の資本金でありましたけれども、こういうことであります。
私のほうの東三河も、一ヘクタール、そういうような二ヘクタールぐらいの温室はありますけれども、一箇所に十ヘクタールという一企業がやっているというのは見たことがありません。
今後、私は、こういうような事業体が進出してくるのではないだろうかな、いろいろな意味で来るのではないかなというふうに思います。
そういうことを考えますときに、やはり農業関係については、まだまだ違った意味での広く使える土地改良事業というものも今後私は必要であろうし、そして、技術力を駆使して施設園芸ということも必要でありましょう。
でも、このトマト工場は来年度にはもう黒字化する。ことしあたりは十三億五千万ぐらいだけど、来年には黒字化する。単年度黒字と、こういうことが出ております。私どもも、農業として、ビジネスとしてやる、こういうこともしっかりと思考していかなければいけない。
農家はややもしますと、朝、日が出て日が暮れるまで働く、これが農家でありますけれども、でも、時間がきちっと短縮してできる農業ということも目指すということがこれからも生きていける、こういうところでありますから、面積、技術力、そういうものをひとつ駆使していただくように、愛知県もそういう政策を実現して、農家をうまい方向で農業経営ができるようにひとつ御指導していただくように期待をいたしまして、私の質問といたします。
終わります。
- 33:◯副議長(鈴木愿君) 進行いたします。
小山たすく議員。
〔一番小山たすく君登壇〕(拍手)
- 34:◯一番(小山たすく君) 民主党の小山たすくでございます。
今回は、後期高齢者医療制度一本に絞り、質問をさせていただきます。
後期高齢者医療制度につきましては、連日マスコミ等で報道がなされ、制度の大枠については理解が進んでおりますので、制度自体の説明は割愛し、問題点のみを指摘いたします。
そもそも、この制度は、医療費の削減を最重要の目的として創設された制度であり、その根底に流れる財政論が示すとおり、高齢者福祉の理念とは全く異なる制度であります。
高齢者福祉とは、今まで社会を支えていただいた皆さんを今度は社会全体で支えていこうという感謝といたわりの気持ちを制度化したものであります。
後期高齢者医療制度は、この理念が欠けております。このことは、後期高齢者医療制度の根拠法である高齢者の医療の確保等に関する法律の中で、その制度の目的を医療費の適正化を推進するための計画の作成と定めていることや、今回の制度設計に携わった厚生労働省保険局国民健康保険課課長補佐の土佐和男氏がみずからの解説本の中で、医療費適正化計画という章を設け、四十ページにもわたり詳細に記述をしていることからも明らかであります。
また、厚生労働省が提示をした資料に基づけば、制度改正前の後期高齢者医療費相当額は十一兆八千七百億円、うち公費負担分は六兆五千三百億円でありますが、制度改正後は、この公費負担分が五兆九千百億円に減り、その差額の六千二百億円を国の高齢者医療費から削減できると試算をしています。
この資料からも、国のねらいが七十五歳以上の高齢者を他の医療保険から切り離すことで、高齢者の医療費を削減しようとするものであることが読み取れると思います。
さらに、制度の根幹である七十五歳以上という加入要件自体、平均寿命の男女差や、七十五歳以上の男女の人口構成比等を考えても、医療保険制度を年齢で区切る合理的な理由には当たりません。
また、病気になるリスクの高い人のみを分離して制度をつくることは、保険の原理にはなじまないものであり、病弱な高齢者を含む医療制度において、世代間の負担の公平を強調すること自体、間違っているのではないでしょうか。
また、政府が制度の必要性の根拠として強調する負担の明確化ということに関しても、この法案が二年前に強行採決された際、我が党の故山本孝史参議院議員が既にその危険性について指摘をしております。
後期高齢者医療に支払われる給付財源は、高齢者が負担する保険料で一割、公費が五割、残りの四割は現役世代の保険料に上乗せして徴収する後期高齢者支援金で賄われます。この後期高齢者支援金は、現役世代にとっては、幾ら払っても自分はその給付対象にはなりませんので、上乗せされた保険料を一方的に取られるだけという印象を与えてしまいます。
こうした仕組みの中では、高齢者の医療費がふえれば当然現役世代の保険料も高くなり、現役世代から、高齢者医療費をもっと削減しろと圧力がかかることは容易に想像がつきます。
山本議員の言葉によれば、高齢者には若い者には迷惑をかけたくないと思わせ、若い者には高齢者は早くいなくなればいい、そのように思わせるような制度がまかり通っていいものでしょうか。
政府は、財政論を優先し、社会保障費の伸びを毎年二千二百億円削減し、五年間で一兆一千億円抑制するとも発表をしております。
税金の無駄遣いや政策の誤りによるツケを最も助けを必要としている人たちに押しつけ、その一方で、受けられる社会保障の水準は下がるばかりであります。政府は、社会保障費の削減目標を国民に示すのであれば、同時に、国が将来にわたり維持する水準もしっかりと示すべきではないでしょうか。
このほかにも、包括払い制による月額診療報酬の定額化による医療の質の低下の懸念や、一般病棟や脳卒中の後遺症、認知症に伴い重度障害を負った方の入院日数が九十日を超えると、診療報酬が最大で約三分の二に減額されることによる早期退院の強制や治療の中止が懸念をされております。
我が党が六月八日に行った愛知県医師会との意見交換会においても、制度変更による医療の質の低下を懸念する声が医師会側からも示されております。愛知県医師会としても、この後期高齢者診療料には反対をしており、県下会員にこの診療料の届け出を行わないよう呼びかけを行っております。
また、市町村で独自に行われていた低所得者への保険料減免制度の廃止や、人間ドック受診のための補助金も廃止され、さらには年金記録問題により、本来受け取るべき年金を受給できていない高齢者がいる中、天引きが開始されるなど、およそ当事者にとっては受け入れがたい問題ばかりであります。
これらの問題は、制度の運用改善で解決されるものではありません。一刻も早くこの後期高齢者医療制度を廃止し、持続可能な保険制度を再構築すべきではないでしょうか。
では、次に、愛知県における制度の問題点を指摘いたします。
県は、この四月から福祉給付金制度を後期高齢者福祉医療費給付制度と名称変更し、従来の対象からひとり暮らしの市町村民税非課税高齢者を外すという制度改定を行いました。
この問題につきましては、さきの二月議会におきまして、我が党の高木ひろし議員も質問を行い、論点がかなり明確になっておりますので、その際の質問、答弁を踏まえ、私からも質問をさせていただきます。
この制度は、昭和五十八年の老人保健法の制定を機に、地方主導で進められてきた老人の医療費の無料化制度が後退する中、その流れを止めるため、愛知県が他県に誇る独自制度として創設した制度であります。
以後、現在に至るまでの二十五年間、ひとり暮らし老人、寝たきり老人、認知症老人等を対象とし、低所得高齢者にとって安心して医療を受けるための命綱としての役割を果たし続けてきたわけであります。
その福祉給付金制度が後期高齢者医療制度導入の混乱に合わせ、給付対象を縮小していることは大きな問題ではないでしょうか。
制度変更により、今後、ひとり暮らし老人の方は、医療費の一割を負担することになります。県平均の老人医療費の年額が約八十万円でありますので、その一割の約八万円を負担しなければなりません。対象となるのは、実に県内で一万八千四百八十五人であります。繰り返しになりますが、対象となるのは市町村民税が非課税の低所得高齢者であります。
知事は、さきの二月議会の答弁の中で、ひとり暮らしであることのみをもって、医療の援助対象とする必要性は相対的に低くなったと発言をされておりますが、しかし、同時に、県としては、対象となる高齢者の生活実態の把握ができていないことを認めているわけであります。
さらに申し上げれば、健康福祉部長は、市町村と協議を重ね、合意を得ているので理解はされているという旨の答弁をなされていますが、制度変更について、理解と合意がなされているはずの県内市町村の実に八七%がこの制度を現在も継続しています。市町村としては、当然この制度が必要不可欠と考えるからこそ、独自財源を投入してまで制度を存続させているのだと思います。
私が幾つかの自治体の担当者に話を伺ったところ、実態を知っている者として、制度を廃止すれば、どのようなことになるのかわかるので打ち切りはできないという意見や、県の補助がないのは厳しいが、だからといって打ち切ることはできないといった意見を多く聞かせていただきました。
県は、この八七%の市町村が独自財源を投入してまで制度を継続させているという事実をどのようにお考えでしょうか。
そこでお伺いをいたします。
さきの議会答弁から三カ月たった今、県としては、こうした制度の復活を望む現場の声や当事者の方の生活実態をどの程度把握をしているのか、また、それを踏まえた上で制度を再びもとに戻す意向があるのか、お伺いをいたします。
また、健康福祉部長は、さきの二月議会の答弁で、ひとり暮らし高齢者の方々に対しては、地域での見守り対策なども含め、総合的な福祉対策としてしっかり進めていくと発言をされておりますが、具体的にどのような対策を講じていくのか、お伺いをいたします。
次に、六十五歳以上の障害者が後期高齢者医療制度へ事実上強制加入させられている問題についてお尋ねいたします。
まず、この事実上の強制加入というものがどのようなものか簡単に御説明いたします。
ことし三月末までの老人保健制度の場合、六十五歳から七十四歳までの障害者の方は、老人保健制度へ加入することによって、医療費の窓口負担が一割に抑えられていました。そして、その一割の窓口負担も県の障害者医療費助成制度がその一割を負担するため、実際には障害者の方の医療費は無料とされてきました。
しかし、後期高齢者医療制度の導入後は、愛知県は、この障害者医療費助成制度の適用条件として、後期高齢者医療制度への加入を義務づけたため、医療費の助成を必要とする方は後期高齢者医療制度へ加入せざるを得なくなりました。
仮に制度に加入しなかった場合、当事者の方にとっては、障害者医療費の助成が受けられず、生活に欠かせない医療を受けるための負担が無料から一気に三割負担へとはね上がるため、現実的には後期高齢者医療制度へ加入せざるを得ないというのが実態であります。
また、制度への加入についても、本人が役所へ行って制度へ加入しない旨の申請をしなければ、自動的に後期高齢者医療制度へと加入させられてしまうため、選択できる制度とは思わずに加入している方もいると思われます。
さらに、この事実上の強制加入については、医療費の助成が受けられなくなるばかりではなく、障害者の方が後期高齢者医療制度を選択すると、次に申し上げるような不利益をこうむることになります。
一つ目は、社会保険の扶養家族となっていた障害者は、今まで保険料負担がありませんでしたが、制度を選択することで例外なく保険料負担が生じてしまうこと。これは、制度加入者は全員が保険料を払わなくてはならないため、障害者本人の保険料分だけ負担がふえるということであります。
二つ目は、社会保険の本人であった障害者が後期高齢者医療制度を選択すると、その扶養家族は社会保険から脱退させられるため、国民健康保険の保険料を負担しなければならなくなること。これは、本人の後期高齢者医療制度の保険料プラス家族の人数掛ける国民健康保険の保険料が新たな負担となるということであります。
三つ目は、国民健康保険加入者であった障害者が後期高齢者医療制度を選択すると、国民健康保険の場合には、障害者への保険料減免が適用されていましたが、後期高齢者医療制度では障害者減免という制度がないため、減免を受けられないということ。
四つ目は、後期高齢者医療制度は、その制度の加入対象とならない世代との間に受けられる医療に差が生じること。これは、後期高齢者診療料という定額の報酬を新設し、外来の重複受診の制限、入院抑制と早期退院、在宅医療の誘導、終末期医療の削減など、年齢により受けられる医療に差が生じてしまうということであります。
以上、簡単に申し上げましたが、この制度が継続されることによって、当事者の方には大変な負担が生じるわけであります。
愛知を含む十道県以外の三十七府県では、後期高齢者医療制度に加入しない方に対しても、従来どおり障害者医療費助成制度が適用されているため、後期高齢者医療制度の保険料負担と医療費の負担を比べ、より負担の少ない制度を選択できる方式となっています。
重度障害者だけがなぜ六十五歳から後期高齢者医療制度を適用されるのかという合理的な根拠が見えない中、県の負担がふえるという理由で障害者の方に負担を押しつけるようなやり方は早急に是正されるべきではないでしょうか。
最後に、県の公費負担について申し上げます。
さきの森井元志議員の代表質問の中で、後期高齢者医療制度において、県が障害者医療費助成制度を継続した場合、県の負担は幾らぐらいと試算しているかとの質問がありました。それに対して、知事は、対象人数には触れずに、後期高齢者医療制度に加入した場合は十七億円、しなかった場合は二十三億円と答弁をされました。
私は、この答弁を大変な驚きと憤りを持って聞いておりました。この答弁では、二十三億円から十七億円を引いた六億円が新たにかかる県の負担であると言っておりますが、当初県が示した額は十四億円だったはずです。私たち議員に対する説明にも、マスコミへの報道資料も、すべてこの十四億円で統一されており、十四億円が県の公式発表の額でありました。それが突如、代表質問の答弁の際には六億円に変わりました。
そのからくりを説明いたします。
そもそも、この十四億円という額は、県内で制度の対象となる四万一千人すべてが後期高齢者医療制度に加入しないと仮定した場合の額であります。制度に加入をしない場合、障害認定を撤回する旨の届け出が必要でありますが、どれだけの方が撤回届を出しているのかという撤回率の一覧が厚生労働省から示されております。
その資料に基づけば、撤回率が一番高い大阪は約三六%、全国平均は一七・七%であります。ちなみに、現在の愛知の撤回率は〇・七%であります。それを県は一〇〇%として見積もりを出していたということです。
実際には、後期高齢者医療制度に加入したほうが負担が軽くて済む方がいるわけでありますので、すべての方が撤回をするということはまず考えられません。そのことを代表質問の三日前、六月十七日に当局に確認をしたところ、六月二十日の知事答弁で新たに六億円という額が出てきたわけであります。
また、この六億円という額の根拠も、撤回率一〇〇%で試算した額に、先ほど申し上げた大阪の例の三六%を愛知に当てはめただけの額であります。
しかし、そもそも、この三六%という率にしても過大な試算であり、なぜ全国平均の一七%で試算をしなかったのか。仮に愛知の撤回率が全国平均並みであった場合、かかる費用は二億五千万円程度で済むわけであります。それを十四億円という額を持ち出し、さもその額すべてが必要かのような説明をし、追及されるとわかるや、その額を変更する。こうした対応自体がこの問題に対する県の姿勢をあらわしているのではないでしょうか。
以下、二つ質問をいたします。
一つ目、当初県が公式発表していた十四億円という額が撤回率一〇〇%を想定したもので間違いないか、お答えください。もし違うのだというのであれば、その根拠を示してください。
二つ目、六月十七日時点で十四億円と言っていた県負担がその三日後に六億円という額に変更されたのは、どのような経緯でいつごろ決定されたのか、お答えください。
以上、明確な答弁を求めまして、私の質問を終わります。
- 35:◯健康福祉部長(小島通君) 最初に、福祉給付金制度についてのお尋ねのうち、ひとり暮らし高齢者への助成についてお答え申し上げます。
県におきましては、この四月に、少子・高齢化の急速な進展など社会環境の大きな変化に対応するため、また、以前より子ども医療や障害者医療の対象拡大につきまして、市町村から強い要望をいただいておりましたことから、福祉医療すべてについて見直しを行いました。
ひとり暮らし高齢者の生活実態につきましては、直接住民に接してみえる市町村が十分把握しておられますことから、その御意見を伺うことが重要であると考え、見直しに当たりましては、市町村との協議の場を設けたところでございます。
今回、限られた財源の中で全体のバランスを考慮しつつ、より支援を必要とする方々にいかに適切に配分するかという観点から、市町村と十分協議を重ね、ふえ続ける寝たきりや認知症の方に対象を特化し、ひとり暮らし高齢者を対象としないことにつきましても、すべての市町村から合意をいただきました。
その結果、県の福祉医療は、子ども医療や障害者医療への拡充が図られ、助成額の総額は昨年度に比べまして約三十億円、一七%の大幅な増額となりました。
一方で、福祉医療の実施主体は市町村でありますことから、今回、県の助成対象の拡大に伴い、市町村によっては、今まで独自に一般財源で全額給付していた部分に県の助成が加わることによりまして、負担が軽減されるところも出てまいりました。
その軽減分の活用につきましては、地方自治の立場で市町村がそれぞれ独自に御判断されたものでありまして、結果として、ひとり暮らしの高齢者への助成を継続している市町村もあろうかと存じます。
いずれにいたしましても、今回の助成制度の見直しは、市町村と十分協議を重ね、御意見を反映した結果、この四月からスタートしたところでございますので、県といたしましては、まずは市町村と連携して、この制度の円滑な運用に努めてまいりたいと考えております。
次に、ひとり暮らし高齢者への福祉対策についてのお尋ねでございます。
今後、高齢化が急速に進行する中、とりわけひとり暮らしの高齢者の増加が著しいと予測されております。
そこで、本年一月に策定いたしました愛知県地域ケア体制整備構想におきまして、ひとり暮らし高齢者の方が介護や医療が必要になった場合でも、住みなれた地域で安心して生活を続けられるよう、訪問介護や通所介護などの介護サービスを一層充実してまいりますとともに、訪問看護や訪問リハビリテーションなど、在宅患者の状況に即したサービスが提供できるよう、介護と医療の連携を図っていくことといたしております。
それに加えて、地域における見守り対策が重要でございます。
現在、多くの市町村において、さまざまな見守りサービスを実施しておりますが、ひとり暮らし高齢者の増加に伴い、今後さらに見守り体制を充実していく必要があることから、地域ケア体制整備構想では、平成二十三年度までにすべての市町村で見守りが必要な世帯を把握いたしますとともに、配食サービスや生活支援ヘルパーの派遣など、各種見守りサービスを地域の実情に応じて適切に組み合わせて実施することを目標といたしております。
地域ケア体制整備構想で盛り込みましたこれらの内容につきましては、本年度策定いたします第四期の高齢者保健福祉計画におきまして、より具体的な施策として打ち出し、市町村と連携しながら、地域で暮らすひとり暮らしの高齢者の方々を積極的に支援してまいります。
次に、六十五歳から七十四歳の障害者が長寿医療制度に加入することを条件としない場合の県の負担増加額についてお答えをいたします。
御質問の負担額の約十四億円につきましては、当初、この制度から辞退する人の割合を判断できる基準がありませんでした。障害者医療に限らず、こうした施策の制度設計を行う際の前提として、明確な根拠となる基礎数値がない場合は、最大の負担を見込まざるを得ないため、約十四億円という額は、平成十九年度の老人保健制度で障害者認定を受けたすべての障害者の方が制度を辞退され、非加入率一〇〇%となった場合を想定いたしまして、十八年度の医療費単価実績に対象者数を乗じて試算した数字でございます。
その後、ことし五月の厚生労働省の全国会議で初めて老人保健制度から長寿医療制度への移行を辞退された方の全国調査結果が示されました。
このため、今回、この調査結果を参考に影響額を算出することといたしまして、推計方法について種々検討をいたしました。その結果、長寿医療制度が導入された際の非加入者の割合につきましては、老人保健に加入していた障害者の人数が本県と類似していると考えられる都市型の府県でありまして、非加入者の割合が全国で最も多かった大阪府の数値を用いまして、長寿医療制度の非加入者数を推計し、これに平成十九年度の医療費単価実績を乗じて試算したものが御指摘の約六億円という数字でございます。
なお、今後、その対象者は着実に増大いたしますし、七十歳から七十四歳の医療費の自己負担額も現在の一割から二割に引き上げられますと、県の負担額はさらに増加することも考慮しなければならない、考慮する必要があるものと考えているところでございます。
以上でございます。
- 36:◯一番(小山たすく君) それぞれ御答弁をいただきましたが、それぞれについて再質問をさせていただきたいと思います。
まず、福祉給付金についてでありますが、先ほど部長から答弁をいただいたものでありますが、私の直接的な質問に対する答弁にはなっていないと思います。
私が伺ったのは、県が制度を廃止することについて、理解と合意が得られていると言っていた県内市町村の八七%が独自財源を導入してまで制度を存続している、そのことについてどう考えているかということを伺ったわけであります。
それに対して、市町村の合意を得ているという答弁をいただきましたが、これでは答えになっていないと思いますので、聞き方を変えてもう一度再質問をいたします。
これらの市町村は、なぜ独自制度を導入してまでこの制度を継続していると考えているのか、その見解をお伺いをいたします。
次に、障害者の強制加入について質問をいたします。
先ほど部長の答弁で、県が出していた十四億円という額が撤回率一〇〇%を想定した試算であったことが確認をされました。県は、今まで財政難を理由に制度の見直しに着手してこなかったわけでありますが、先ほどの答弁にあるように、最大で当初試算していた額の十四億円の約四割、そして、全国平均であった場合は五分の一以下で実施ができるわけであります。
ここまで明らかになれば、県の言っていたような財政難の理由、あるいは財政的な理由からこの制度を見直さないという理屈は成り立たなくなると思います。
そういった中で、そもそも障害者施策というものは当事者にとって何が求められるのかということを問われなければいけないものであって、財政難を理由に制度の選択肢が狭められてはいけないと思っております。
今議会には当事者の方からも請願が出ておりますが、県としては、こうした当事者の声をどう受けとめるのかをお伺いをいたしたいと思います。
私は、一刻も早く制度を変更して、強制加入を撤廃すべきであると考えますが、県の考えをお伺いいたします。
- 37:◯健康福祉部長(小島通君) 福祉給付金についてでございますが、これは、先ほど答弁させていただきましたように、市町村と協議をしてまいりまして、市町村は、いろいろ市町村独自に独自の財源で単独でやられることは、ほかにもいろんな医療をやっておられるわけでございます。その一つとして、ひとり暮らし高齢者の医療について、この四月にひとり暮らし高齢者を外したわけでございますので、その市町村の選択の中でそういうことも市町村の財源を考慮しながら判断されたものであるというふうに考えております。
市町村との間では、これまでも、昨年度もいろいろ協議を重ねてきております。今後とも、市町村と十分な意見交換をしながら、円滑な制度の運用に努めてまいりたいと考えております。
それから、強制加入という、先ほどの数字の御質問でございます。これが、制度を見直す気はないかというお尋ねであったかと思います。
本県の障害者医療につきましては、所得制限とか一部自己負担を導入することもなく、対象も、他県が実施していない自閉症と診断された方も含むなど幅広く助成を実施しておりまして、こういった分野では、全国トップの手厚い制度になっているというふうに考えております。
こうした水準をこれからも維持し、障害者の方々の医療に寄与するため、今後も国の制度をできるだけ活用していくと。そういう制度で県内すべての市町村とも協議をいたしまして、現在の制度となったものでございます。
全国トップの水準を維持するためには多くの財政負担を伴うこととなり、障害者医療の一部の拡大といえども、対象者や県の負担割合などが増加した場合、財政面では、将来にわたり大きな影響を受けるおそれがございます。
従来、障害者医療助成に条件をつけていなかった他県の中にも、今回、長寿医療制度の加入を条件に切りかえたところもございますが、これも制度を末永く持続可能なものにするため尽力された結果ではないかというふうに考えております。
御指摘の六億円という額は、県といたしましては、財政面からわずかな金額とは言い切れない面もございまして、もとより市町村においても同額の負担が必要になってまいりますことから、県だけの意向で軽々に判断できるものでは、できない部分もございます。
また、先ほども答弁させていただきましたけれども、対象者は今後着実に増大いたしますし、七十から七十四歳の医療費の自己負担割合が現在の一割から二割へ引き上げられますと、県の負担額というのはさらに増加いたしますことから、将来はより大きな負担になるものと考えております。
いずれにいたしましても、限られた財源を最大限活用いたしまして、障害者の方々に対して手厚い医療費助成を継続するためには、今後も国の制度をできるだけ活用していく必要があると考えておりまして、こういった趣旨につきまして何とぞ御理解賜りたいと存じます。
以上でございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
- 38:◯三十八番(山下史守朗君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 39:◯副議長(鈴木愿君) 山下史守朗議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 40:◯副議長(鈴木愿君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時五十七分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後三時四十分開議
- 41:◯議長(栗田宏君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
吉田真人議員。
〔二十七番吉田真人君登壇〕(拍手)
- 42:◯二十七番(吉田真人君) それでは、通告に従いまして、順次質問を行います。
「日本は豊かな国で、食べ物の心配は要らない」。以前読んだコラムに半ばそうだろうと感じながらも、本当にそうだろうかと心の隅にひっかかっていた問題、それがここ最近、新聞、テレビなどマスコミで話題になっています。
日本の食料自給率、穀物の国際価格の高騰、世界で起きている農産物輸出規制等、私たちが今直面している問題、それが食料問題であります。
五十年ほど前の日本では、今と食生活は違いますが、ほとんどの農作物は自給率一〇〇%に近かったと言われます。それが一九五五年に関税と貿易に関する協定に加入して以来、他の国々からの食料品が日本に雪崩を打って輸入されてきました。WTO(世界貿易機関)体制の中、FTA、ETAと現在も国際協定の中で多くの国が日本に対して農作物の輸出の拡大を望んでいます。
一方で、日本の農業生産分野では、他国に比べて著しく高い食料生産コストがかかり、国際競争力に乏しいと言われており、日本の食品企業も海外進出を続け、多くの海外の食料原料や農産物への依存を高めています。
食料品が安く買えるということは、消費者からすれば大変ありがたいことであります。しかし、私は、他国に食料を依存し過ぎることは、食料の安全保障という面でさまざまなリスクを覚悟しなければならないと感じています。輸入農産物は、現在のように穀物価格自体の高騰や為替変動により価格が安定しないこと、実際に食料不足の問題に世界が直面した場合、みずからの国益を超えて他国への食料輸出を行う国があるのか。また、BSE、鳥インフルエンザ、中国の冷凍ギョーザ問題、O─157、豚コレラなど、食の安全面から考えても輸入に頼り過ぎていいのでしょうか。
日本は、今後ますます自由化が進み、輸入制限がなくなってしまったら、ほとんどの食料を輸入に頼らなければいけない状況に追い込まれます。私も含めて県民が、また行政がこれまで以上に関心を寄せるべきであると感じ、実際に農業に従事したことがなく、はっきり言って私は素人でありますが、消費者という立場で幾つか質問をさせていただきます。
なぜ食料問題が世界でこれだけ多くの論議を呼んでいるのでしょうか。柴田明夫氏の「食糧争奪」の著書の中で簡潔に説明していますので、ここで御紹介します。
世界経済の牽引力が人口八億人弱の先進諸国からBRICsと称される人口三十億人の発展途上国に移ったことがある。これら人口大国が本格的な工業化の過程に突入し、猛スピードで先進国へのキャッチアップを進め始めたことが最大の原因である。途上国での急速な経済成長は、同時に急速な所得向上をもたらす。所得の向上は食生活を変え、量ばかりでなく質の変化を伴って食料需要の飛躍的な増大を招く。この結果、本来は再生可能資源、すなわち農産物のように毎年太陽エネルギーと水により資源の一部が再生産されるはずの食料も有限資源の色彩を帯びてきたのが最近の特徴ではなかろうか。食料生産に必要な水、土壌、地球環境といった資源が有限性を強めてきたのも一因であると指摘しています。また、食料価格の高騰は、エネルギー、鉱物資源の高騰に続くものであり、近い将来起こるであろう食料争奪戦の前触れであると見ています。食料の国家間の争奪、バイオ燃料のようにエネルギー市場と食料市場が競合するようになった市場間の争奪、また、工業部門と農業部門での水と土地争奪など、今後も注意が必要であります。
特に日本では、隣国である中国の動向が気にかかるところであります。間もなく、中国では北京オリンピックが開催されます。オリンピックを目指し、中国の経済発展は著しいものがあり、五年連続して年率一〇%以上の成長が続いています。
先月の四川大地震では大きな被害がありましたが、中国経済への影響は限定的で、かえって減速傾向にある経済を復興需要が下支えするとの見方も出ています。
所得が向上すると食生活が豊かになり、畜産物の消費量が増加する傾向がありますが、畜産物を一キログラム生産するためには、鶏卵で三キログラム、鶏肉で四キログラム、豚肉で七キログラム、牛肉に至っては十一キログラムの穀物がえさとして必要になり、穀物を中心に食生活を送っていた時代に比べ、穀物の需要が増加します。
中国には、世界人口の二割の約十三億人の人口があり、中国の経済成長は、世界の穀物需要に大きな影響を与えることになります。中国は、二〇〇四年には農産物の輸出と輸入が逆転し、農産物純輸入国に転じています。
一九九五年にワールドウオッチ研究所のレスター・ブラウン氏が、「だれが中国を養うのか?」を出版し、中国で工業化による耕地減少と水不足が進み、食料輸入大国となるとき、世界は大混乱に陥ると警告しました。当時、この本の予測の妥当性をめぐって世界じゅうで大論争がありましたが、出版から十三年が経過した現在、中国の経済成長による穀物の輸入増加に加えて、当時は予測さえされなかったバイオエタノール原料としての穀物需要や、二年連続の世界的な異常気象による穀物の不作が加わって、二〇〇七年末の世界の穀物の在庫量は、過去三十年で最低水準になっています。
このような状況の中で、ベトナム、インドなど十数カ国で農産物の輸出規制が始まっており、輸入に頼っているアジアやアフリカの貧しい国々では、食料を求めて暴動が起こり、今月三日からローマで開催された世界食糧サミットでも問題になりました。
我が国は、多くの食料を輸入に頼っており、食料自給率はカロリーベースで三九%と主要先進国の中で最低の水準にあります。穀物の自給率に至っては二七%しかありません。そうした中で、我が国の食料自給率が低いことを不安に思う県民の皆さんも多く、平成十七年に県が行った県政モニターアンケートでは、九五・六%のモニターが不安に思うと回答しています。今のところ、我が国は、輸出規制による直接的な影響は受けていませんが、これまでのように金さえ出せば世界じゅうから農産物が輸入できる環境は失われつつあります。
我が国の耕地面積は四百六十五万ヘクタールありますが、輸入農産物をすべて国内で生産するためには、さらに千二百万ヘクタールの農地が必要だと言われており、今の食生活を維持したまま一〇〇%の自給率を実現することは困難であります。しかし、一〇〇%は困難であるとしても、少しでも自給率を上げるよう努力を続ける必要があります。
例えば、国民が一日の食事でもう一口御飯を食べると自給率は一%上がり、一日お茶わん一杯多く食べると自給率は一〇%も上がり、現在行われております米の生産調整をしなくてもいいそうであります。
世界的に食料需要が逼迫する中で、県としての食料自給率を上げるためには、生産面では、不測の事態にも備えて、県内の農産物供給力を向上させる必要がありますし、消費面では、県民の皆さんにできるだけ県産品を食べることで農業を応援していただくことも必要であります。
そこで、まず、生産面から質問させていただきます。
農産物供給力を向上させるためには、農業の担い手を確保すること、農地の利用率を向上させること、農業技術を向上させるという、人、土地、技術の三つの観点からの取り組みが重要であると考えます。
第一点目は、人づくり、すなわち農業の担い手の確保についてであります。
県内でも、三河地域では、経営規模の大きな農業が展開され、若い農業者も育っているようでありますが、私の住む尾張地域では、農家の兼業化が進み、農業労働力は高齢者が中心になっており、なかなか農家の子弟の就農が進まず、農家戸数が減少しています。
そのような中でも、農家から土地を借りたり、農作業を受託して、大規模な経営をする農業法人が幾つか育ってきました。例えば、扶桑町で水田三十ヘクタール、畑十ヘクタールで、水稲、麦、野菜を生産する農業法人の扶桑農産は、都市近郊の農業ビジネスモデルとしてNHKの番組「ビジネス未来人」でも取り上げられました。
ここでは、農家の出身でない若者も、農業法人に就職するという形で農業に携わっております。農家の出身でない若者が就農するには、一定規模以上の農地を購入するか借りる必要がありますし、機械や施設などの初期投資に相当な額の資金が必要でありますので、実際には土地と資金が新規参入の大きなハードルになっています。その点、法人に就職するというのも就農を進める上で有効な手段であると思います。
そこでお伺いします。
農業の担い手を確保する一つの方法として、農業に夢を描く若者が農業法人に就職する形で就農する機会を確保することも必要であると考えますが、県としてどのような方策を講じていくのか、お伺いします。
また、都市近郊と同様に、中山間地域でも農家の後継者が育ちにくい状況にあります。そのような中、設楽町においては、地元の酒造会社が地元産の酒米の安定確保を図るために、平成十八年五月に設楽町と協定を締結して農業に参入しています。初年度四・七ヘクタールであった借入面積は、地元農家の信頼を得て年々増加し、本年三月には約十二ヘクタールと、現在では地域でなくてはならない農業の担い手となっています。
また、豊田市稲武町では、平成十九年四月に、地元の建設会社が豊田市と協定を締結して農業に参入し、ブルーベリー栽培に取り組んでいます。同社では、公共事業が減少する中で、従業員の働く場を確保したいとの動機もあったようでありますが、ブルーベリー栽培のために新規の職員を雇用するなど、地域農業の振興のみならず、地域社会の活性化にも寄与しているものと考えます。
そこでお伺いします。
農家の後継者が確保できないところでは、農業法人の規模拡大や企業の参入の事例が見受けられますが、本県における企業の農業参入の現状をお聞かせください。そして、県は、今後どのように企業の参入を進めていこうとされているのか、お伺いします。
農業を産業としてとらえた場合、生産性を向上させるためには経営の大規模化が必要であります。しかし、都市近郊や中山間地域の農業を考えた場合、法人経営が育ちつつあるとはいうものの、大規模化だけで進めていくのは難しい状況があります。農業の中には、高齢者の生きがいであったり、園芸福祉という言葉があるように、福祉に役立っている部分もありますので、規模の小さな農家も取り込んで、地域全体として供給力を向上させる取り組みも重要ではないでしょうか。
そこでお伺いします。
規模の小さな農家に対して、県としてどのような方策を講じていくのか、お伺いします。
第二点目は、土地についてであります。
供給力を向上させるためには、意欲と能力のある人に農地を集積し、農地の有効利用を図ることが重要であります。そのためには、経営規模の拡大を志す人や、これから農業を始めようとする人に、どこの農地が借りられるのかというような農地の情報が届くようにすることが必要であると思います。
そこでお伺いします。
農地の情報提供について、県として今後どのような方策を講じていかれるのか、お伺いします。
最後に、技術についてであります。
世界的な食料不足が問題となっている中、農産物の供給力を向上させるため、生産性が高く、安定して収穫できる品種や、その栽培技術の開発も大変重要なことであると考えます。農業総合試験場では既に研究を進めていることと思いますが、農産物供給力を向上させるため、県として今後どのような技術開発に取り組んでいかれるのか、お伺いします。
次に、消費面から学校給食における地産地消の取り組みについて質問させていただきます。
近年、食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、子供たちの偏った栄養摂取や朝食欠食など、食生活の乱れが指摘されています。現代の飽食の時代、よりよい食事のとり方ができる子供を育てるためには、生活習慣そのものの改善と、一方では、食に対する感謝の気持ちも重要であります。
食を生み出してくれた自然や命、食をつくってくれる人や生産者への感謝の気持ちが大切であります。これをはぐくむためには、食に関する人や物とのつながりを子供たちに感じさせることが必要であり、つながりを最も実感できる一番大きな要素は、自分が生活している地域の存在であります。
地域で生産された農作物に触れ、地元に伝わる豊かな味覚や文化の薫りあふれた食に触れることにより、地域の誇りや、地域や命への感謝の気持ちとともに、豊かな人間性を持ち合わせた子供たちが育ち、望ましい食生活が営まれます。
今国会において、地場産物の学校給食への活用を一つの目標として加えるという学校給食法の改正法案が可決されたところであります。これは、地場産物を学校給食に活用することにより、地域の食文化や食にかかわる産業、自然環境の恵みに対する子供たちの理解を深めるという高い教育効果があることから、法律へ明確に位置づけるものでありますが、学校給食という大きな消費者が地場産物をできる限り利用することは、危機的状況にある自給率の改善にもつながるものであります。
本県では、学校給食の主食として、現在、米飯給食が週三回以上行われており、そこで使用される米は、学校給食会を通じて、本県で収穫される米を使っていると聞きました。本県の米飯給食で消費される米は、年間約五千五百トンになります。また、愛知県学校給食会を通じて供給されるパンや白玉うどんにおいても、県内産の小麦粉を配合しており、年間約五百三十トンの県内産小麦が利用されています。また、学校給食には欠かせない牛乳もすべて県内産を使用しており、年間約一億二千三百万本の牛乳が飲まれ、二万四千六百キロリットルの消費量となるそうであります。これは、生産者から見ると、学校給食は地産地消を推進する上での安定的で非常に大きな消費者となります。
そこでお伺いします。
学校給食における地場産物の使用品目の割合は、現在二七・九%とお聞きしました。あいち食育いきいきプランの目標値に、二十二年度までに三五%以上とすることを掲げられて一年半がたちましたが、この目標値を達成するために、県教育委員会としてどのような取り組みを行っているのか、お伺いします。
また、学校における食育を推進するために、栄養教諭の配置を進めているとお聞きしました。子供たちが地場産物とのかかわりから、食料問題や日本の農業への理解を深めることはまことに大切なことであり、これらのことで栄養教諭の果たす役割は大きいものがあると考えます。
さらに、栄養教諭を配置した学校を中心に、学校給食への地場産物活用の拡大や、地域の生産者と連携した取り組みを行えば、児童生徒の家庭や地域における地場産物の消費拡大にもつながるものと考えております。
そこでお伺いします。
学校から家庭、地域へ食に関する情報発信をするなど、連携が重要であると考えますが、県教育委員会として、この連携を強化するため、どのような取り組みを行っているのか、お伺いします。
ジェームス・シンプソン氏は、「これでいいのか、日本の食料」という著書の中で、次のように日本に対して警鐘を鳴らしています。もし本気で食料の問題に取り組まないと、日本は食料の依存体質が強まり、事実上ほとんどの食料品を海外に頼ることになってしまう。食料の安全性や食料の確保のコントロールを失うことで、日本は食料を持つ国々の言いなりになることをあなたは黙って見ていていいのか。日本は、もっと食料の自給に力を入れるべきである。そして、最後に、あなたの家族が貿易のとりこのままでいいのか。子供たちの食料に不安があってもいいのか。こうした問いに答えられるのはあなた自身だけなのだと結んでいます。
それでは、次に、地域中小企業応援ファンドについてお伺いします。
物づくり県である我が愛知においては、他の地域からは元気な愛知と言われて久しいわけでありますが、その状態を私なりに分析してみますと、経済のグローバル化の中で、自動車や工作機械など国際競争力のある産業の活発な事業展開がこの地域の経済を牽引している結果であります。県内のさまざまな産業、地域がすべて元気であるとは決して言えない状況にあります。
私の地元一宮は、御存じのとおり、毛織物産業の集積地であり、毛織物産業がこれまで地域経済を牽引する役割を担ってきた地域でありました。しかしながら、毛織物も含めた繊維産業は、平成十八年の工業統計表概要版によると、国内シェアに占める割合は全国の一四・二%であり、依然として全国一位であるものの、経済のグローバル化によるコスト競争などにより中国産などに押され、この四年間で一宮市内の繊維工業の事業者は約三割減少、出荷額も二割強の減少となるなど、大変厳しい状況にあります。
では、尾張の毛織物が他の産地のものに比べ品質的に劣るかと申しますと、決してそうではなく、ヨーロッパのブランドと同等あるいはそれ以上の高品質な物であると尾張地域の生産者は自負しているところであります。国内のみではなく、世界にその品質の高さが認知してもらえれば、知名度が増し、必ずや新たな販路が開拓されるものと確信しているところであります。
また、本県は、物づくり県であると同時に、農業産出額が全国第六位という全国有数の農業県でもあり、花卉や野菜を中心にさまざまな農作物が生産されています。先ほどの食料問題でも申し上げましたとおり、食料自給率を高めていくには、農作物の供給力の向上が必要であります。さらには、現代社会の食生活においては、農作物を農作物としてのみ流通するのみではなく、例えば、レトルト食品や飲料などに加工など、農業と工業が連携していくことが重要であります。
このように、地域の強み、特色を生かし、知恵を出し合いながら、地域が主体的に新たな取り組みをしていくことがこれからの地域活性化に不可欠であると考えております。
去る二月議会において、我が党は、中小企業支援策として、地域に存在するさまざまな地域資源を活用して取り組む新事業展開への支援について、その必要性を質問しました。
知事からは、二十年度の新事業として、地域の金融機関の協力を得ながら、総額百億円のファンドを造成し、その運用益で繊維や窯業といった地域に存在する鉱工業品、観光資源など、地域資源を活用した新製品開発や販路拡大の取り組みなどに対し、助成をしていくと答弁をいただきました。
そして、去る六月二十日には、この百億円ファンドの組成に向け、独立法人中小企業基盤整備機構から四十億円の無利息の資金貸し付けが決定され、七月の下旬には、このファンドの運用益による助成事業の公募を行っていくことを県において発表されました。
私としては、このファンド事業は、地域経済の活性化、地域で頑張っている中小企業、農林水産業者に大変期待される支援策であると確信しているところであります。
そこでお伺いします。
このファンド助成事業では、地域資源を活用した新製品開発や販路拡大の取り組みに対して支援するとしていますが、例えば、食品加工分野では、農家、加工業者、農業協同組合といったさまざまな主体が関与することが想定されます。事業に関与するこうしたさまざまな事業者に対して、どのような助成支援をしようとしているのか、お伺いします。
これまでの県が行ってきた中小企業支援策の多くは、県や国からの補助金などを前提とした支援策でした。しかしながら、このたびのあいち中小企業応援ファンド事業は、中小企業の日々の経営に深く関与する地域の金融機関も資金を拠出し、百億円のファンドを造成するというものであり、従来とは異なり、地域の官民が一体となって取り組む新しい仕組みとして大いに期待するところであります。
そこでお伺いします。
今回の施策は、地域の金融機関が重要な役割を果たしていると思いますが、こうした金融機関は、今回の事業を進めていく上でどのような役割を担っているのか、また、県としてどのような役割を期待しているのか、お伺いします。
また、この百億円ファンドの運用益により中小企業の取り組みに支援をしていくわけでありますが、多くの取り組みに対し財政支援をしていくには、少しでも多くの運用益の確保が求められます。このファンドの運用益をより多く確保していくために、どのような仕組みで運用管理していくのか、あわせてお伺いします。
このたびの施策は、ファンド運用益により、頑張る中小企業の新事業展開の取り組みに対して補助金を出すといったものでありますが、昨今の国などの取り組みにあっては、補助金とか融資といった資金的な支援だけでなく、施策目標を実現するため、助成事業が着実に実るよう、技術的なアドバイスなどもあわせて行う事例が見受けられます。
そこでお伺いします。
このたびのファンドの運用益による助成のみでは、中小企業の新事業展開の促進に十分な効果を得ることは難しく、十分な効果を上げるには、中小企業に対していろいろなアドバイスをしていくことが重要と思われますが、県としてどのように支援していくのかをお伺いしまして、壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 43:◯農林水産部長(永田清君) 食料問題についてのお尋ねのうち、まず、農業の担い手の確保についてお答え申し上げます。
農業の担い手を確保する上で、就農を希望する若者が農業法人に就職することも有効な方法の一つであると認識しております。本県では、農業の担い手を養成する中核的な施設であります農業大学校におきまして、平成十五年度に、学生に対する職業紹介を可能とする構造改革特区の認定を受け、平成十六年度から毎年農業関連企業を集めた就職相談会を開催し、農業法人への就職のあっせんを行っております。
この結果、平成十六年度から十九年度までの四年間で三十九名の卒業生が農業法人に就職し、このうち二十五名が農家の出身でない若者でありまして、農業の新たな担い手となっております。
県といたしましては、今後とも、農業大学校におきまして、より多くの農業法人に就職相談会への参加を働きかけるとともに、幅広く新規就農希望者への職業紹介を行っております愛知県農業会議とも連携しまして、新規就農相談会を開催するなど、農業法人に就職できる機会の確保に努めてまいります。
次に、企業の農業参入についてでございます。
本県におきましては、議員お示しの設楽町の酒造会社などを初めといたしまして、平成二十年三月一日現在で、八つの法人が約十五・五ヘクタールの農地を借りて農業に参入しております。参入している法人の組織形態といたしましては、製造業や建設業などの株式会社が三法人、有限会社が二法人、NPO法人が三法人となっております。
こうした企業の農業参入につきましては、平成十七年の法改正によりまして、株式会社等が特例的に農地を借り受けて参入できる制度として創設されたものでありまして、企業の参入には、あらかじめ市町村が参入できる区域を定めておく必要がございます。本県におきましては、六十一市町村のうち三十二の市町村がその区域を設定しておりますが、現在、企業の参入は四市町にとどまっているところでございます。
制度が発足してからまだ比較的日が浅いことなどから、市町村の取り組みに温度差が見られますので、県といたしましては、国とも連携しまして、市町村に優良事例を紹介するなど、制度の導入を促すとともに、参入を目指す企業に対しましては、受け入れ市町村の情報や制度の内容について相談に応じてまいります。
次に、規模の小さな農家への方策についてでございます。
都市近郊地域や中山間地域では、経営規模が小さく、女性や高齢者など多様な担い手によって、その地域の農業が支えられておりますので、このような農家に十分配慮した取り組みが必要でございます。
このため、都市近郊地域におきましては、生産者と消費者が近いという条件を生かしまして、自分の育てた農産物を直接販売できる直売所の整備など、地産地消の取り組みを進めてまいります。
また、中山間地域におきましては、地域の特性を生かしました特産品の開発、直売所や農産物加工施設の整備などに加え、豊かな自然や郷土料理などを都市の方々に体験、体感してもらう都市と農村の交流促進にも力を入れてまいります。
次に、農地の情報提供についてでございます。
農地に関する情報につきましては、これまで農業委員会は農地の所有や貸し借りの状況、農業協同組合は作付状況、土地改良区は基盤整備状況など、それぞれの機関が個別に保有し、利用してきたところでございます。
このため、国におきましては、本年度から農地情報の共有化を進め、関係機関がそれぞれ保有しております情報を地図情報と結合する電子化事業を進めております。さらに、こうした農地情報を活用しまして、全国の貸出農地の所在地や面積、賃借料等の情報をインターネットで提供し、全国どこからでもアクセスできる農地情報提供システムを構築する事業を本年度から実施されているところでございます。
県といたしましては、こうした農地情報の共有化や農地情報提供システムの構築は、担い手の規模拡大や新規参入を進める上で大変有効な方策であると考えておりますので、これらの事業が適切かつ円滑に実施されるよう、市町村や農業団体と連携しまして取り組んでまいります。
最後に、技術開発への取り組みについてでございます。
農産物の供給力を向上させるためには、収量を多くしたり、栽培・生育期間を短くするとともに、気象条件や病害虫の影響を受けにくく、安定的に生産できる品種や技術の開発が必要であると考えております。
農業総合試験場では、これまでにも、水稲の収量に大きな影響を及ぼす縞葉枯病や穂いもち病に強いあいちのかおりSBLなどの品種や、生育のよい親豚の系統アイリスナガラを開発しております。また、田植えをせず、種もみをじかにまく不耕起V溝直播栽培という栽培法を開発しておりまして、この技術は、国の農業新技術二〇〇七にも選ばれ、全国的に高い評価を得て、十四府県に普及しております。
さらに、飼料の供給力を高めるため、飼料米の選定を行うとともに、その品種に合った栽培法を確立し、通常の二倍の収量を目指す技術開発も行っているところでございます。
今後におきましても、米の消費拡大にもつながる、めん類に適した水稲の品種開発や、梅雨前には収穫できる小麦の栽培技術の確立、さらには、ITを活用した温室の自動制御など、愛知の農業の発展の礎となる技術開発に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 44:◯教育長(今井秀明君) 学校給食における地産地消の取り組みについてお答えいたします。
初めに、地場産物の使用品目の割合を高めるための取り組みについてでございます。
県教育委員会では、従来から、毎年一月に設けられました全国学校給食週間を中心に地場産物の活用を促進しておりますが、平成十九年度からは、さらに、食育月間である六月に、本県独自の取り組みといたしまして、地元の食材を使用した愛知を食べる学校給食の日を設定いたしました。その結果、県内すべての小中学校で、一斉に地元食材を使用した学校給食が実施されたところでございます。
また、昨年度、食の先進的な取り組みを行う子ども食育発信校・協力校を各市町村に委嘱いたしまして、学校給食指導やさまざまな学習活動など、学校教育全体を通して食への興味、関心を深めたり、学校給食における地場産物の活用などを促しているところでございます。
これらの学校では、地元農家から農作物を直接購入して、農家の方々と給食をともにする交流給食を実施したり、児童生徒が地元農家の指導のもと、自分たちで育て収穫した農産物を学校給食に使用するなど、地場産物の積極的な活用を進めております。
こうした活動を実践事例集としてまとめまして、県内の小中学校に配布し、地場産物活用の普及を図っているところでございます。
次に、食に関する家庭、地域との連携強化の取り組みについてでございます。
学校における食育推進の中核となります栄養教諭を平成十八年度に小中学校へ十名配置し、地場産物を活用した保護者との給食試食会や生産者との触れ合い給食など、家庭、地域との連携を図ってまいりました。
栄養教諭は、学校内での食に関する指導はもとより、その専門性を生かし、家庭における食習慣の改善や地域とのかかわりに重要な役割を果たしていることから、今年度、県内すべての市町村に一名ずつ配置したところでございます。
また、今年度、地域の食材を使った朝食を中学生本人が調理いたします「季節は秋!食べるぞ朝ごはんコンテスト」を実施し、地域食材に着目した家庭の朝食を考える機会を設けることといたしております。このコンテストの優秀作品を紹介するパンフレットを全中学生に配布し、各家庭においても地産地消を進めるよう啓発してまいります。
今後とも、栄養教諭を中心として、家庭や地域との食に関する連携を強化するとともに、さまざまな機会を通じ、市町村教育委員会や学校に対して、地域の食文化への理解を深めるとともに、より多くの地場産物が学校給食で活用されるよう、指導啓発に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 45:◯産業労働部長(富吉賢一君) 地域中小企業応援ファンドについてのお尋ねに対してお答えをいたします。
まず、事業に関与いたしますさまざまな事業者に対して、どのような助成支援を行うのかとのお尋ねでございます。
助成対象となりますのは、基本的には、地域資源を活用して新商品開発や販路拡大の取り組みをしようとしております個々の中小企業でございますが、バリエーションといたしまして、中小企業が集まる事業協同組合やグループなども対象としております。また、農家や大企業と中小企業とが共同で行う事業についても、中小企業者が分担する部分については助成対象とすることといたしております。
さらに、商工会議所、商工会のような団体が、例えば、中小企業者が開発した新商品を宣伝をする、展示会を開催したり、新商品開発に必要な市場調査を行ったりする場合、これらの事業に必要な費用につきましても助成対象としております。
次に、地域の金融機関の役割についてでございます。
県として地域の金融機関に期待しておりますのは、まず、取引先の中小企業の中から、地域資源を活用して新商品開発や販路拡大を図ろうとしている企業を発掘いたしまして、必要に応じてファンドの活用を勧めていただく役割でございます。さらに、地域の金融機関には、中小企業がファンドの助成を受けて展開する事業を継続、発展させていく際の金融支援などの機能を担っていただきたいと考えております。
新商品開発や販路拡大といったファンドの助成事業は、助成を受けたからといって必ずしもうまくいくとは言えません。その後の経営努力が不可欠であることは言うまでもありません。その努力の過程で、自己資金以上の事業資金が必要になることも多々あるかと存じます。そのときに、日ごろから取引の中で地域の金融機関が有する中小企業の経営内容も踏まえまして、的確な金融支援をしていただくことを期待しているところでございます。
続きまして、ファンドの運営の基本方針についてお答えをいたします。
ファンドの運営に当たりましては、できるだけ多くの運用益を生み出すことを目指す一方で、元本を毀損させないことも必要でございます。具体的には、年間一億円以上の運用益を得ることを目標といたしまして、かつ安全度の高い国債、県債による運用を中心としつつ、元本保証がつく、運用益の高い他の運用方法につきましても、専門機関に相談をしておりまして、このような検討も踏まえ、運用方法を固めたいと考えております。
最後に、中小企業に対するアドバイスなどの資金面以外の支援についてのお尋ねでございます。
議員御指摘のとおり、本事業では、助成金による支援の効果を最大限に引き出すためには、単に助成金を出すだけではなく、さまざまな助言、指導を行っていくことも必要でございます。
このため、ファンドの事業実施主体でございますあいち産業振興機構にさまざまな分野の専門家を配置いたしまして、支援対象企業に対して、経営面、技術面、資金面等で助言、指導を行うこととしております。
加えまして、こうした専門家には、新製品開発や販路拡大に関与するさまざまな事業者との間を取り持ち、各企業が有するノウハウの融合、発展を図りまして、商品開発などを成功させる役割、いわゆるコーディネーターとしての役割を担っていただくことも考えております。
そのほかにも、メールマガジンなどによります情報提供でございますとか、商談会など販売促進のための場の提供など、機構が有します支援機能を生かしまして、地域資源を活用した事業に取り組む中小企業を支援してまいります。
さらに、県民事務所、県民センター、山村振興事務所など県内六か所の事務所ごとに、県の産業技術研究所や各地域の商工会議所、商工会、金融機関などを構成員といたします地域資源活用促進協議会を設置いたしまして、事業の掘り起こしや各機関相互の情報共有、支援の連携を図りまして、地域資源を活用する中小企業の活動を総合的にバックアップする体制で臨んでまいる所存でございます。
- 46:◯議長(栗田宏君) この際、お諮りいたします。会議中時間経過のおそれがありますので、時間を延長することに決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 47:◯議長(栗田宏君) 御異議なしと認めます。よって、時間は延長することに決定いたしました。
進行いたします。
石井芳樹議員。
〔十一番石井芳樹君登壇〕(拍手)
- 48:◯十一番(石井芳樹君) 通告に従いまして、順次質問をしてまいります。
私は、去る五月二十三日から六月一日までの十日間、寺西学団長以下超党派の精鋭十五名から成る愛知県議会海外調査団の一員として、イギリス、フランス、ドイツを訪れる機会を得ました。この視察は、COP10誘致の決定的な瞬間を目の当たりにした感動の視察であり、また、私にとりましても生涯忘れることのできない記念すべき日となりました。
私事で大変恐縮ではございますが、期間内の五月二十六日は四十歳という節目の誕生日でありました。団員の皆様からのお心遣いもいただき、温かい祝福の言葉をいただくのと同時に、その折、あわせてちょうだいいたしました本日着用の思い出の詰まる記念のネクタイをしっかりと締め、団長のお許しを受け、調査団を代表いたしまして、気合いの入った私からの調査報告を兼ねた質問をさせていただきたいと思います。
調査団は、まず、イギリス南西部のコーンウォール州にある巨大複合型環境施設エデンプロジェクトを訪れました。年間来場者は約二百万人で、ここを訪れる人の中で日本の来場者は、個人としては多くの人々が訪れてはいるそうでありますが、議員のグループとしては初めてであるとのことでした。
この施設の発祥は、地元の人々が陶土の採掘された、放置された草も木も生えない巨大な廃坑に森ができないだろうかというアイデアから生まれたものでありました。プロジェクトは、多くのボランティアに支えられながら、イギリスの民間の投資家たちによるミレニアム委員会の出資と、ECからの資金援助を得て進められてきました。
この施設は、地下六十メートル、広さ三十五面のサッカー場のとれる陶土の採掘跡地に幾つもの巨大バイオームと呼ばれる半円型のドームが連なってできており、温室内には、熱帯、亜熱帯、砂漠、湿地等の環境を再現をし、ここを訪れれば、地球上の主な気候帯をめぐることができる施設であります。世界各地から四千五百種、十三万五千以上の展示植物が集められ、普通の植物園とは違い、エデンプロジェクトのテーマとして掲げられている「植物と人間の舞台演劇」と題するように、世界最大級の温室構造で、ドームの最も高いところで高さ五十五メートル、全長一キロメートルにも及び、中には、滝あり、沢あり、農地ありと生きた生態系そのものが演出をされておりました。
また、ザ・コアという施設では、植物と人との関係について見るだけではなく、エデンプロジェクトの中核的なメッセージを伝えるための教育整備や合同の教室、展示スペースなどが設けられ、環境に対し、さらに深い理解と教養が得られるよう工夫が凝らされておりました。
あわせて、施設内のエネルギーにおいても環境に配慮されており、ドーム内の高温多湿な状態をつくり出すための大量の水やトイレの水などは、消毒された雨水が使用され、水道本管から供給される水は、手洗いまたは調理用のみが使用されているそうであります。また、電気に関しても、地域での風力発電で起こした電気から供給を受けており、グリーンエネルギーの電気を使用し、欧州ではほぼ初めての試みであるとのことでした。
エデンプロジェクトの説明員イワン・マーティンさんは、環境保護や持続可能な環境をつくっていくには、さまざまな人が知恵を出し合い、教育ではなく一人一人の意識を高めていくことが大切であるとおっしゃっておりました。
私ども自民党県議団でも、夢あいち21政策提言の中で、そのエデンプロジェクトの理念に触れ、愛・地球博記念公園を拠点とした自然の叡智の成果を発展させるため、環境学習を含めた学びやとしての拠点整備や、市民参加などによる交流の場としての整備を求めております。
そこでお伺いをいたします。
我が党の平成十八年十二月議会での熊田議員の代表質問において、愛・地球博記念公園内のイデアのひろばに関する計画で、エデンプロジェクトを公園内にどのように反映させていくのかの問いに対して、遊びながら自然に環境問題などが学べるような工夫や、市民参加による森づくりなど多様な交流活動を具体化をし、速やかに県の整備計画に取りまとめていきたいとの答弁がございました。
そこで、その後、公園内にはどのような形で県民との協働がなされてきたのか、また、いよいよ具現化するイデアのひろばにおいて、エデンプロジェクトの理念がどのように実現されていくのか、お伺いをいたします。
また、整備計画が進められている地球市民交流センターの位置づけの一つに、公園利用並びに管理運営の拠点と定めてあります。県では、公園マネジメント会議を発足し、対応を予定しているようでありますが、どのような形で県民協働による公園の管理運営が行われていくのかをお伺いをしたいと思います。
次に、私たち調査団は、ドーバー海峡を越え、フランス、パリへと向かい、文化・芸術振興策の視察のため、ポンピドゥー・センターを訪れました。ポンピドゥー・センターは、パリにある世界で二番目の入館者を誇る総合文化施設であります。地上七階、地下一階、床面積十・三万平米で、開館は一九七七年で、パリでは比較的新しい美術館であります。世界で有数の近代美術のコレクションを有しており、昨年、開館三十周年を迎えられ、一年間で六百万人がここを訪れており、三十年間で約二億人の人が足を運ぶルーブル美術館と並んでフランスで最も人気のある文化施設の一つであります。
ポンピドゥーとは、当時の大統領の名前で、大統領は、パリの中心地にあらゆる形式の文化並びに芸術を創造する新しい革新的な文化芸術センターをオープンさせたいとの思いでこの構想を計画をいたしました。建物は、モダンな人目を引く革新的なもので、本来、建物の中にあるべき水や空気等の配管類が建物の外にあり、外観はパイプの森のように配管類が建物の周りを覆っております。そのおかげで、建設当時は、パリでは石油の精製所ではないかと非難を浴び、かなりの物議を醸したとのことであります。しかしながら、機能面で見ますと、配管が外にあるおかげで柱も少なく、内部には広いスペースを設けることができ、あらゆる種類の展示も柔軟性を持った形で組織化することができるようになっておりました。
また、ポンピドゥー・センターは総合文化施設でありますので、美術館のみでなく他分野にわたったさまざまな施設が集約されております。公共情報図書館における書籍、雑誌や、音響音楽研究所では、音楽に関する研究だけではなく、作曲活動や実際にコンサートも行われております。また、映画、演劇、ダンスなどのライブパフォーマンスも常に行うことのできるホールが備えられておりました。
運営に関しては、財源は予算の四分の三に当たる一億一千万ユーロがフランスの文科省からの補助金で賄われており、残りの四分の一の予算をチケット販売やホール貸しによる自主財源によって運営が行われていると伺いました。
本県においても、ポンピドゥー・センターと同じく、美術館、芸術劇場、文化情報センター、図書館の四つの施設が連携し合った国内屈指の総合文化施設、愛知芸術文化センターがあります。ポンピドゥー・センターと愛知芸術文化センターとは非常によく似た哲学、考え方に基づいており、聞くところによりますと、愛知芸術文化センターは、このポンピドゥー・センターをモデルにつくられたとのことであります。
本県では、二〇一〇年に、その愛知芸術文化センターを拠点とした国際芸術祭が行われますが、その内容は、現代美術を基軸として、同センターの複合機能を生かし、舞台芸術部門の音楽、舞踊、オペラなど、あわせて、世界、未来に向けた愛知発の文化芸術の創造、展開を目指すものとあります。
この地域の文化芸術を活性化させ、経済面のみならず文化芸術面でも世界に貢献をし、国際社会から真に尊敬される魅力的な地域づくりにつなげていくためには、残された二年間で、国内外を含めた強固なネットワークづくりを構築していくべきだと私は考えます。
今回、このポンピドゥー・センター視察に際し、調査団の大いなる成果として、本県が行う国際芸術祭に大きな関心を持っていただいたことであります。詳しく知りたいとの申し出をいただき、国際芸術祭の目標、目的、計画案ができ上がったら送ってもらい、その情報をポンピドゥー・センターだけではなく、さまざまなパリ関係者に伝えたいとの積極的な協力を得ることができました。また、ポンピドゥー・センターと将来的な人的交流、施設連携についても非常に好意的な返事をいただきました。
そこで、こうした今回の視察の成果と私の視点を踏まえて、二点お伺いをしたいと思います。
一点目、開館から十五年、当地域の文化芸術の振興に大きな役割を果たしてきた愛知芸術文化センターでありますが、その間、ポンピドゥー・センターを含め、海外文化施設との交流並びに連携の状況はどのようになっているのか。また、今後どのような計画のもと、交流、連携を進めていかれるのか、お伺いをいたします。
二点目、本年四月十六日にソウルで開催された第十一回AAPPAC年次総会にて、二〇一〇年の国際芸術祭の開催期間中に、愛知県でAAPPACの年次総会を開催することが決定をされました。AAPPACとは、アジア太平洋パフォーミングアーツセンター連盟の略で、アジア・太平洋地域の十八か国一地域での舞台芸術の公演を行う五十九団体が加盟をしているもので、アジア・太平洋地域の芸術、文化の発展を目指し、芸術家、観衆育成のための芸術交流プログラムを推進することを主な目的としております。
具体的には、舞台芸術の発展を目指して、作品やノウハウ、スタッフの情報交換などに取り組んでいます。愛知での年次総会開催は九九年に続き二回目でありますが、国際芸術祭との同時期に行うことによって、愛知から世界に向けて文化発信をする力が倍増する絶好の機会だと思います。
今回、この視察を終えて感じるのは、ヨーロッパではポンピドゥー・センターが核となって、現代美術の発展と普及に常に文化発信を行っております。一方、アメリカではニューヨーク近代美術館モマが、二十世紀以降の現代美術の発展と普及に多大な貢献をしてまいりました。アジアにおいては、本県が世界に誇り得る複合的文化施設である愛知芸術文化センターがあり、ここがアジア文化芸術の拠点としての役割を積極的に果たしていくべきと考えております。
そうした中、愛知芸術文化センターでは、二〇一〇年に国際芸術祭並びにAAPPAC総会が開催をされ、節目となるこの年は、この愛知からアジアに向け、文化芸術を大いに発信することにより、拠点としての役割を果たしていく絶好の機会になるものと考えますが、どのような計画で対応していかれるのか、お伺いをしたいと思います。
そして、その後、私たち調査団は、同じくパリにおいて、フランスにおける日本文化と芸術の普及の現状と、日本人とフランス人の交流施策とその成果について、パリ日本文化会館を訪れ、研修を済ませた後、いよいよ最後の研修地としてドイツのボン市を訪問いたしました。同時期に開催された生物多様性条約第九回締約国会議に参加するとともに、開催地であるボン市の取り組みについて、聞き取り調査を行ってまいりました。
生物多様性条約締約国会議、いわゆるCOPについては、二〇一〇年に開催されるCOP10を本県が地元経済界などとともに誘致をしてきたもので、我々が参加した五月三十日は、COP9会議の最終日であり、無事本県での次期開催が決定したことは、皆様周知のとおりであります。
会場での開催決定のその瞬間の感動と興奮が私の文才では到底お伝えできないことがまことに残念ではありますが、産業立県である愛知県が、ともすれば産業と環境との関係は相反するものと思われがちである中、環境を切り口に産業とあわせて世界に貢献をし、県民においても、環境に対する意識の向上を図るすばらしいチャンスとして、成果を大いに期待するところであります。
さて、今回誘致が決定いたしました生物多様性条約締約国会議とは、地球温暖化問題とともに、今日深刻な危機が地球規模で問題となっている生物多様性について、条約の締約国がおおむね二年ごとに集まり、生物多様性保全のための具体的計画やその評価、新たな課題などについて話し合う会議であります。この条約は、一九九二年、ブラジル・リオで開催された環境と開発のための国連会議、いわゆる地球サミットにおいて、気候変動枠組条約とともに採択をされた環境分野における最も重要な国際条約であります。
今回、COP9に参加をして、直接会議の内容や運営、あるいは地元の取り組みなどをつぶさに見聞することができたことは、私ども調査団にとっても、二年後、COP10を成功裏に開催していく上で大変参考になりました。また、あわせて幾つか思うところもございましたので、報告を含め、二〇一〇年のCOP10開催に向けた本県の取り組みについて、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
まず、私たち調査団がボン市に到着後間もなく、ボン市役所内にて、会議参加者の受け入れを担当している組織でありますツーリズム・コングレス有限会社から、COP9開催に当たっての参加者の受け入れ体制についての説明を受けました。伺いましたところ、COP9には世界各国から四千人を超える参加者があったとのことであります。これだけ多くの参加者が快適に滞在をし、また、空港や宿泊ホテル、会場間などの円滑に移動する交通手段の確保は、単に参加者の利便性の問題にとどまらず、環境配慮にもつながる大切な取り組みであります。
その中にあって、会社が実践されておりましたのは、ホテルチケットのシステムであります。COP9開催に当たり、この会社は、ドイツ環境省からの依頼を受けて、開催期間中のボン及びその郊外において、なるべく公共交通機関を使って会場に来ることができるホテル五千室をインターネット、電話、ファクス等により予約受け付けをして確保したそうであります。あわせて、予約をした方々すべてにホテルチケットを発行し、会議開催中は、そのチケットを見せるだけで公共交通機関はすべて無料で主会場まで行けるようにしたとのことであります。こうしたホテルの予約情報についてはデータベース化され、参加者の滞在日程や滞在ホテル、フライトのチェックなどを行うことができ、必要な場合には、データをもとに会社からの送迎バスの手配なども行われていたとのことであります。
また、ドイツ環境省でも、このシステムを利用して、参加者が混雑することなくスムーズに会場まで移動することができるように、臨時バスや臨時接続列車を運行しておりました。まさに、ITを駆使したシステムを整備をし、環境に優しい公共交通機関の利用促進を進めておられ、環境をテーマとするCOP9にはふさわしい取り組みとして深い感銘を受けました。
さらに、このホテル予約情報システムは、参加者のおもてなしにも活用されており、最寄りの空港や主要な駅へのボランティアの配置は、このシステムを使ってスムーズに行われておりました。開催地に不案内な海外からの参加者にとっては、ありがたい支援体制がとられておりました。
また、会場のほうでも、あわせて公共交通機関利用促進の手段がとられており、私が本日首からぶら下げておりますこのカード式の参加登録証は、会場内に入るための許可証としての役割だけではなく、先ほど申しましたホテルチケットと同様に、市内において、地下鉄、市バス、近郊の鉄道等の交通機関の無料パスとしても利用が可能でありました。しかも、この登録証は、現地で聞いた話によりますと、国連の職員に限ってではありますが、このカードを提示することにより、他国の通貨からユーロへは手数料なしで換金できるという優遇措置も実践されておりました。
こうした説明を受けた後、私たち調査団は、会議が行われている主会場でありますマルティムホテルに向かいました。会議は、参加者により大変にぎわっており、会議の議題は、気候変動と生物多様性、森林の生物多様性など二十以上にも上り、その内容は極めて高度で専門的なものでありました。生物多様性の保全とその持続可能な利用は、私たち、そして、次の世代にとっても極めて大切な課題ではありますが、現地でも、専門家でない一般の人たちにとってはなかなか理解しがたいものであったようで、このため、COP9においては、専門家や関係者だけの会議にとどまるのではなく、広く生物多様性についての理解が深まるように、さまざまな啓発やPR活動が行われておりました。
特に、私自身、目を引いたのは、主会場となったホテル周辺至るところに、猿、豚、ロバ、クマなどの巨大ポスターが張ってあり、猿のポスターには、多様性は猿芝居ではない、熊のポスターには、私は多様性のためにうなるなど、キャッチのきいたものが多数張ってあり、これはドイツ環境省が用意したものであるとのことでした。また、市内には、生物多様性は私たちの参加を必要としていると書かれたポスターや横断幕などが数多く掲示されており、公共交通機関や駅にも、生物多様性や環境保全を訴える内容のステッカーが張られ、会議開催の機運の盛り上げの一役を買っていたように思います。
会場内では、ボン市内の生物多様性の保全状況をまとめた生物多様性報告書の概要版を大量に配布をしているほか、子供たちへの環境保全や種の保全について理解を深める努力も行われておりました。
また、調べたところによりますと、メディアを使った広報活動においても極めて積極的に行われており、地元紙に「まちと森の多様性」と題したキャンペーン企画を何十回と掲載したとのことであります。
そのほかにも、食に関してではありますが、グリーンCOPとしての取り組みがなされ、飲み物はリユースのコップを使用し、食べ物は地元食材を使って、農業と生物多様性のかかわりを実感できるよう工夫がなされておりました。
また、会場から出るとすぐに、ホテル周辺各所には、だれでも自由に見学のできる展示ブースがテント状に幾つも用意をされており、そこでは、企業や国際機関と一緒にNGOが生物多様性保全や環境に関する取り組みについてアピールを行っていたことが印象的でありました。
なお、こうした取り組みは、一般の方々が生物多様性について知っていただくよい機会になったような気がいたしましたし、締約国、国連機関等の人々と地元の方々との交流の場として活用されておりました。COP10においても、愛知万博で取り組んだおもてなしの精神を生かし、こうした海外から本県を訪れる多くの参加者との交流の機会をぜひ設けていただきたいものだと感じました。
そこで、本県についてでありますが、COP10開催は決定したものの、生物多様性保全や生物多様性条約についてはまだ余り知られていないのが現状でないかと思います。今後は、さまざまな会議支援の取り組みを着実に進めるのととともに、まずは多くの方々に生物多様性の重要性について理解を深めていただくことが必要であります。そして、この会議の意義をしっかりと理解をした上で、世界各国の人々を温かくお迎えすることが求められているのではないでしょうか。
私たち愛知県では、おもてなしの精神を持って、地域を挙げて環境をテーマとして取り組んだ愛知万博における知識と貴重な経験があります。今回のCOP10を開催する意義の一つに、愛知万博の理念の成果と継承がありますが、愛知万博で培ったその経験をCOP10の開催準備にしっかりと取り入れていくべきであります。
以上を踏まえまして、開催までの本県の取り組みについて、数点お伺いしたいと思います。
一点目は、開催までに生物多様性について多くの人々の理解を深めることが大切であります。生物多様性については、まだまだ県民や企業の間では、その言葉自体が知れ渡っていると現段階では言えません。そうした状況を踏まえ、今後どのようにして県民や企業に理解を深めていただけるよう取り組みを行っていかれるのか。また、愛知万博では、市町村が海外の方をおもてなしをする機会として、一国一市町村フレンドシップ事業を通じて、県下市町村を挙げて盛り上がりの中、成功をおさめました。COP10においても、こうした交流の輪を通じて、参加国のさまざまな生物多様性や環境の現状の違いを相互に理解をし、それが県内各地域での生物多様性の啓発や環境保全活動の促進につながることになれば、大変に意義のあるものと思います。
COP10においては、環境をテーマとしたフレンドシップの交流について、どのような取り組みを考えておられるでしょうか、お伺いをいたします。
二点目は、会議や関連行事の開催に当たっての交通対策を含めた環境配慮と参加者へのおもてなしについてであります。
COP9は、さまざまな環境配慮の取り組みや参加者の利便性を図る取り組みが行われておりましたが、COP10においてはどのような取り組みを検討していくのか、お伺いをしたいと思います。
そして、最後、三点目であります。愛・地球博記念公園の活用であります。
COP10開催の二〇一〇年は、ちょうど愛知万博から五年目の節目となる年に当たります。愛知万博の成果と理念の継承を目指して整備が進められている愛・地球博記念公園こそ、COP10の関連行事の開催場所としてふさわしい場所と思います。この記念公園を国際会議場と並ぶ会場として位置づけをしていただき、公園内の豊かな緑や施設を活用して、県民や企業、NGO等が参加ができ、子供から大人まで気軽にわかりやすく体験型の学びやイベントができる会場として計画を進めるべきと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
以上、明確な答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 49:◯建設部長(湯山芳夫君) 最初に、イデアのひろばについての御質問でございます。
イデアのひろばの中の地球市民交流センターと、その南側の斜面に広がるフレンドシップ広場では、人間生活と植物のかかわりについて、ランドスケープ、建築、アートなどを用いて一つの空間で表現するといったエデンプロジェクトの発想を取り入れ、見て、参加して、楽しく、遊び、学び、交流する場としての整備を進めてまいります。
博覧会の理念と成果を継承、発展させる核となる施設であります地球市民交流センターにおきましては、光、風、緑、水、土などの自然のエネルギーを活用したさまざまな環境技術の導入を図ることで、施設そのものが自然エネルギーを学べる場となるようにしてまいります。
また、施設内には、アート性を持たせた展示や環境への理解と交流を深める展示を行ってまいります。さらに、イベント等が行える屋内広場を初め、体験学習室や多目的スタジオなどは、市民参加や交流活動の用に資するものと考えております。
フレンドシップ広場につきましては、森づくりプロジェクトとして、県民協働により、公園にある地域固有種のフモトミズナラなどのドングリの実を採取し、苗を育て、森をつくっていく、息の長い活動を目指しております。
次に、県民協働による公園の管理運営についての御質問でございます。
愛・地球博記念公園では、博覧会の大きな成果である市民参加、市民協働を継承し、公園の企画から運営に至るまでのさまざまな段階において県民参加を得て、みんなで公園を育てていくことを整備、活用の方針に位置づけております。その実現に向けまして、県民と行政のパートナーシップによる公園マネジメント会議を設置することとしております。
現在、NPO、ボランティア団体、企業、大学、行政等で構成する公園マネジメント会議準備会を設置し、運営ルールの策定や実践活動などについて議論するほか、活動の拠点となる地球市民交流センターについては、設計段階から意見を伺い、反映させております。また、NPO団体と行政との協働の成果として、自然観察会などのプログラムが既に来園者に対し提供されております。
公園内での県民協働の取り組みについては、公園マネジメント会議を中心に、多くの関係者の協働により各種プログラムやイベントを行い、公園利用者へのサービス向上につながる質の高い管理運営に取り組んでまいりたいと考えております。
- 50:◯県民生活部長(石川延幸君) 愛知芸術文化センターと海外の文化施設との交流、連携などについてお尋ねをいただきました。
県議会調査団の皆様がポンピドゥー・センターを視察された折、本県の最重要事業の一つでございます国際芸術祭、このPRをしていただきまして、深く感謝を申し上げたいと思います。ポンピドゥー・センター側では、本県の国際芸術祭に対して大変大きな関心を持っていただきまして、より詳しく知りたいと、こういう申し出があった由でございます。早速、ポンピドゥー・センターのほうへは関係資料を送付させていただいたところでございます。
さて、愛知芸術文化センターと海外文化施設との交流、連携の状況でございますけれども、現時点におきましては、海外の特定の文化施設との交流や連携といったことは行っておりません。ただ、美術館におきましては、これまでの数多くの企画展の開催に当たりまして、必要な調査協力や作品の貸し借りなどを通じまして、海外の美術館と幅広く交流を行っているところでございます。
また、愛知芸術文化センターは、議員お示しの舞台芸術に関する国際的なネットワークでございますアジア太平洋パフォーミングアーツセンター連盟、AAPPACでございますが、このAAPPACに加盟しておりまして、加盟施設から舞踊家の派遣を受けたり、作品の共同制作などを行ってきております。
今後につきましては、昨年十二月に策定をいたしました文化芸術創造あいちづくり推進方針におきましても、国際的なパートナーシップの構築、これを主な取り組みの一つと位置づけておりまして、AAPPACのネットワークを活用いたしまして、舞台芸術面での人材交流やら共同制作などの新たな取り組みを推進いたしますほか、国際芸術祭を定期開催していく中で、さまざまな国際的なパートナーシップやネットワークの構築に努めていくことといたしております。
したがいまして、県議会調査団の皆様に橋渡しをしていただきましたポンピドゥー・センターとの交流、連携につきましては、こうした活動を進めていく中で今後取り組むべき課題であるというふうに認識をいたしております。
次に、愛知芸術文化センターがアジアにおける拠点としての役割を果たしていくべきだと、こういうことについてでございますけれども、AAPPACの年次総会を二〇一〇年に、国際芸術祭の開催期間中に本県で開催することを目指しておりましたけれども、議員お示しのとおり、このたび、その誘致に成功したところでございます。国際芸術祭は、舞台芸術もあわせて展開をすることといたしておりまして、舞台芸術の公演を行っている主要な芸術文化施設のネットワークであるAAPPACと十分に連携を図ることができるものというふうに考えております。
この国際芸術祭と年次総会の同時開催というチャンスを最大限に生かしまして、国際芸術祭における新たな芸術創造という点やら、愛知芸術文化センターの存在、取り組みといったものを、このAAPPACのネットワークを活用いたしまして、広く情報発信をし、アジアに向けて大いにアピールをしていきたいというふうに考えております。
そして、国際芸術祭の定期的開催に取り組むことで、愛知芸術文化センターがアジアにおける文化芸術の拠点としての地位を築くことにつながるものというふうに考えております。
以上でございます。
- 51:◯環境部長(藤井敏夫君) COP10について、三点お尋ねをいただきました。
まず、一点目のお尋ねの生物多様性についての理解促進とCOP10におきます環境をテーマにした交流について、お答えを申し上げます。
初めに、生物多様性の理解を深めるための取り組みについてでありますけれども、議員お示しのとおり、生物多様性、その意義や日常生活、企業活動とのかかわり、県民にとってわかりにくい状況にあります。そこで、まずは県民の方々に生物多様性について理解していただく周知活動を幅広く行っていくことといたしております。
その第一歩といたしまして、今月十四日に、COP10の開催決定を記念をするキックオフシンポジウム及び中部エコライフフェアを開催したところでありまして、大勢の方々に御参加をいただきました。ありがとうございます。今後、さらに、県内の各地域におきまして、講演会、シンポジウム、さらには自然観察会といった体験型のイベントなど、きめ細かく実施をすることとしており、こうした取り組みを通じまして、COP10の開催機運の醸成につなげてまいる所存であります。
次に、COP10におきます環境をテーマにした交流についてであります。
COP10には、世界の百九十を超える国と地域から大勢の方が訪れますので、この機会に市町村がこれまで一市町村一国フレンドシップ事業において交流を深めてきた国々と、例えば、相手国の会議参加者を地元に招くとか、自然を描いた子供たちの絵を交換するといった環境をテーマにしたさまざまな交流を深めること、これは大変意義あることと考えております。
したがいまして、一市町村一国フレンドシップ事業を生かして、こうしたさまざまな交流の取り組みが進みますよう、市町村とも相談をし、検討をしてまいりたい、このように思っております。
次に、二点目のお尋ねのCOP10におきます会議や関連行事開催に当たっての環境配慮や、会議参加者へのおもてなしの取り組みについてお答えを申し上げます。
COP10の会議運営や関連事業の実施に当たって、環境に配慮した取り組みが不可欠と考えております。この取り組みといたしましては、例えば、お示しのドイツ・ボンのCOP9において、調査団の皆様方も注目をされました公共交通機関の利用を促す仕組み、さらには、シャトルバス等へのエコカーの導入、さらには、会議などでのグリーン電力の活用など、CO2削減の取り組みが考えられるわけであります。また、生物多様性の視点も入れましたグリーン購入、廃棄物を抑制するための3Rの徹底なども必要と考えております。
こうした環境の取り組みにつきましては、COP10におきます環境配慮指針として取りまとめ、本県で培われました環境技術も活用しながら、しっかりと実施していくことといたしております。
次に、会議参加者に対するおもてなしについてであります。安心・安全、快適な受け入れ体制を整えることは、地元としての重要な役割であります。具体的には、十分な宿泊施設の確保、快適な移動手段の提供、医療・防災面などでの支援のほか、この地域の自然、産業、歴史、文化を体験していただく機会の提供など、おもてなしの体制を整えたいと考えております。
さらに、こういった体制づくりには、通訳を初めとした各種ボランティアの協力が不可欠であります。県民の皆様方の幅広い参加、協力をお願いしてまいりたい、このように考えております。
三点目のCOP10の開催時に愛・地球博記念公園において体験型のイベントを開催したらどうかというお尋ねであります。
愛・地球博記念公園は、環境をテーマとする愛知万博の会場となったところであり、二〇一〇年にはイデアのひろばの整備も進み、県民が交流できる施設も開設をいたします。したがいまして、COP10開催時には、こうした新たな施設を活用しつつ、もりの学舎、海上の森など、自然を体感できる環境学習施設も利用しながら、県民、企業、NGO等の幅広い参加者が生物多様性について学び、考え、交流する関連事業を展開してまいりたい、このように考えております。
以上であります。
- 52:◯知事(神田真秋君) 議会の海外調査団が精力的に調査をいただき、ただいま報告をいただきました。御苦労さまでございました。
特に、COP9に合流をいただいて、愛知・名古屋開催の決定を直接会場で応援していただきましたことは、大変ありがたいことでございました。それから、大勢の積極的な応援は現地でも評判になっておりまして、大変心強い限りでございました。改めてお礼申し上げます。
私どもは、このCOP10は、あの二〇〇五年の博覧会の理念と成果を引き継ぐものと、そのように位置づけておりますので、きょうお話がありました愛・地球博記念公園でのさまざまな事業は、とても有意義なことだと思っております。ちょうど二〇一〇年の秋には、公園内でイデアのひろばにおきまして、地球市民交流センターが完成する予定でありますので、完成間際の時期に国際的なそういうサイドイベントが開催できるというのは、私はとてもいい機会だと思っております。
加えて、博覧会の原点であり、生物多様性にも大変かかわりの深い海上の森がすぐ近くにありますので、まさにCOP10のテーマにも共通する有意義な場所であると、そのように思っているところでございます。もちろん、COP10は、環境をめぐっての国際的な会議でありますので、メーン会場になりますのは、名古屋市内にあります国際会議場であります。そこへもさまざま参加をしていくわけでありますけれども、広がりを持たせることが必要であると考えておりますので、何としてでも、この愛・地球博記念公園を有効に活用したいと思っておるところでございます。
なお、御視察いただき、きょうも御提案をいただいた国際芸術祭の関係でございますが、これもちょうどその時期に開催できますことは、とても意義があることだと思っております。
せんだって、本県に来ていただきました事務局長のジョグラフ氏も、そうした芸術祭が同じ時期に開催されていることを大変高く評価をしてくれたところでございます。また、期待も寄せていただきました。
こういうものを通じて、国際会議と芸術祭と相まって交流が大いに進展するよう、我々も一生懸命進めてまいりたいと思っておりますので、今後とも、なお一層の御支援と御協力をお願いを申し上げます。
- 53:◯議長(栗田宏君) 以上で質問を終結いたします。
─────────────
- 54:◯三十七番(酒井庸行君) ただいま議題となっております議案は、さらに審査のため、それぞれ所管の常任委員会に付託されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 55:◯議長(栗田宏君) 酒井庸行議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 56:◯議長(栗田宏君) 御異議なしと認めます。よって、ただいま議題となっております議案は、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
なお、議案付託表は議席に配付いたしました。
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日程第二 請願(一件)
- 57:◯議長(栗田宏君) 次に、請願を議題といたします。
本議会に提出されました請願一件については、お手元に配付いたしました請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
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- 58:◯三十八番(山下史守朗君) 本日はこれをもって散会し、明六月二十五日から七月六日までは委員会開会等のため休会とし、七月七日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 59:◯議長(栗田宏君) 山下史守朗議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 60:◯議長(栗田宏君) 御異議なしと認めます。
明六月二十五日から七月六日までは委員会開会等のため休会とし、七月七日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後五時六分散会