県政報告

平成25年2月定例会(第4号)
2013年3月4日
(主な質疑)
- 午前十時開議
◯副議長(澤田丸四郎君) ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
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日程第一 一般質問
- 2:◯副議長(澤田丸四郎君) これより一般質問を行います。
通告により質問を許可いたします。
野田留美議員。
〔十二番野田留美君登壇〕(拍手)
- 3:◯十二番(野田留美君) 皆さん、おはようございます。
きょうは、一番目の一般質問ということで大変緊張しております。今回は、私たちにとって身近な存在である水について、広く大きな視野から考えてみることにいたしました。
それでは、愛知県における集水域管理、河川流域の総合的・一体的管理と防災について、随時質問させていただきます。
愛知県には、一級河川として、木曽川、庄内川、矢作川、豊川、天竜川の五つの水系に百五十九の河川があり、二級河川として、五十四の水系に百四十八の河川があります。
かつて人々は、川を物や人が行き来するところとして使ったり、漁業の場として使ったり、農業用水、生活用水や遊びの場としても使ってきました。多様な自然の恵みがそれを可能にしてきました。
私の地元である守山区は、一級河川である庄内川と、矢田川に挟まれた特色のある地域です。その中で、庄内川流域である志段味地区は、川とともに歩んできた古い歴史のある地域です。庄内川と支流である野添川の合流部には、信玄堤とも呼ばれる霞堤があり、洪水のときには一旦水をためて、水が引いてきたら徐々に流すという方法を先人たちは知恵を絞って行ってきました。
私は、祖父や神社の氏子衆から昔の話をよく聞いております。大日渡しという渡し船があったこと、川で泳いで遊んだことなど、懐かしそうに話してくれたのをよく覚えています。その中で、洪水の歴史があったことも聞いています。
中志段味地区、庄内川左岸には、約六ヘクタールに達する古墳時代から中世にかけての集落遺跡が発見されています。現在でいう字名からとって、天白・元屋敷遺跡と呼ばれています。
昭和五十九年から六十一年の調査では、居住跡や、東濃や瀬戸の山茶わんなど、土器や陶器片が発見されています。調査の結果、東濃や瀬戸の焼き物を庄内川を利用して、尾張地方や伊勢湾地方へ運ぶ川湊で栄えた集落跡か志段味城跡かとも考えられる地点です。
この天白・元屋敷遺跡の天白とは、ほかの地域にも同じ地名が多くあると思いますが、「愛知の地名」という本の中では、水害をたびたび受けたことから、水害から守る神様を祭ったところと紹介されています。
元屋敷という地名は、ちょうど県立守山高校の住所になっている場所です。しかし、上流で窯の燃料として木々が伐採されるにつれて、庄内川の洪水がたび重なるようになり、集落ごと移転をしたと言い伝えられています。その後、河川近くは水田として耕作し、洪水時の遊水地として機能を発揮したと言われております。
このように、洪水の歴史は、河川近くの堤内地において昔の地名からも推測できることが多々あります。
地名の歴史は調べていくと奥が深く、先代の人たちからの地名というメッセージは、最大の厄よけでもあるかのようです。町名変更で地名が変わってしまうのは時代の流れかもしれませんが、もう一度見直してみることも必要だと思います。
さて、平成二十三年九月二十日から二十一日にかけて発生した台風十五号の際に、私の地元の守山区においても、庄内川の堤防が越流、決壊、また、内水氾濫など、志段味地区や吉根地区などで多くの浸水被害が発生しました。
吉根地区については、現在、桔梗平という地名になっておりますが、以前は川や川田という地名で水田でした。下志段味地区の越流による浸水状況や、自衛隊による救助活動、さらには、県立守山高校の浸水被害においては、テレビでも放映されたことから御存じの方もいらっしゃるかと思います。
この被害は、国土交通省中部地方整備局が管理する庄内川が流量限界まで氾濫したこと及び支流河川の氾濫と関連して甚大な被害を及ぼす災害となりました。庄内川の洪水対策は本流だけを見ていればよいわけではありませんし、支流の氾濫も警戒しなければなりません。
私は、先日、庄内川の現地視察をしてきましたが、県管理の河川も市町管理の河川も庄内川に流入しております。
名古屋市中村区の稲西地区では、東海豪雨の関連で、今現在も日本に五台しかないうちの三台の水中ブルドーザーを活用し、川底の河道掘削を続けていました。流すという目的の河川工事ですが、河口へ行けば行くほど、洪水時の水の逃げ場所がなくなっていると実感いたしました。
河川の防災体制は、国・愛知県・市町村の連携、県・市の内部部局間の連携が不可欠です。それなくしては県民の生命、財産を守ることはできません。
管理者を例に言うと、庄内川は国土交通省が、新川や内津川は愛知県が、野添川や長戸川は名古屋市が管理しております。しかし、現状は、水系一体の防災対策が講じられているのか明確ではなく、国、県、名古屋市は、それぞれ所管のところだけが仕事であると考えているように見受けられます。
河川の防災対策は、第一に、国、県、市町村の各河川管理者が一体となって流域全体の情報を共有すること、第二に、被害を最小限に抑えるために緊密な連携をとること、第三に、県民への情報提供や県民からの照会に適切に応える仕組みをつくることが不可欠です。それには、国、県、市の防災関係機関が相互に連携した対応をとる必要があります。
台風十五号の際には、県は災害対策本部を設置し、自衛隊の災害派遣要請もされ、さまざまな防災関係機関が災害対応されたと記憶しております。
先日、私は、本庁舎六階の災害防災センターを視察し、高度情報通信ネットワークシステムや防災情報システムなどのシステムの説明を受けました。非常にすばらしいシステムです。しかし、システムは立派ですが、県民との関係で役立たせてこそシステムの意味があると思います。
台風十五号が愛知県を襲ったまさにそのときに、私自身が市や区の災害対策本部に通報や問い合わせをしても、市役所や区役所の窓口では大変混乱していたのか、私個人の感想では、十分な対応ができない状況でありました。
危機管理の一つである防災対策や復興対策は、県民が国土交通省に聞いても、愛知県に聞いても、名古屋市に聞いても、瞬時にしてどのように対応したらよいか判断できる適切な情報が得られるようにしなければなりません。せっぱ詰まった状況下にある県民の切実な訴えをたらい回しにすることは許されません。
そのような国、県、市のどこに尋ねても適切な情報が得られるワンストップサービスの体制は平常時につくり上げ、危機が迫ったときにも速やかに稼働する状態にしておかなければなりません。それが防災体制整備の基本であると考えております。
そこで、二点お尋ねいたします。
まず、災害時において、国や県、市町村等の縦割りを超えた相互に連携した対応が必要であることから、防災関係機関相互の情報の共有化と連携体制の構築のため、県としてどのような取り組みをされているのかお示しください。
次に、せっかく情報共有のために県が高度情報通信ネットワークや防災情報システムを各市町村や防災関係機関にまで整備したとしても、災害時に市町村の災害対応が混乱し、被害報告することもできない状況であれば役に立ちません。
県としても、平時からの市町村職員の災害対応力の向上と、災害時の市町村の支援体制構築が重要と考えておりますが、現在どのように取り組まれているのか、また、今後どのように取り組んでいくのかお示しください。
次に、愛知県では、愛知県河川情報周知戦略として、水害から身を守るためのソフト対策を作成し、平成二十二年度よりみずから守るプログラムを展開していると伺っております。
近年の水害による被害の実態を見ていますと、河川改修によって一定の成果はあるものの、低平地の市街化や資産集積によって少しの洪水でも被害の程度が大きくなっています。さらに、ゲリラ豪雨の発生や、少雨や多雨の状況も年度によって大きく変動し、予測しにくい状況となっております。
また、都市化が進んだことで地域とのつながりが希薄化し、その土地の水害に対する歴史が伝わらず、結果的に知識の継承がされなくなっているのが現状です。河川整備の進展に伴い、水害に対する無関心層がふえたことも事実です。
しかしながら、防災の基本は、人々の心構えや日ごろの備えです。このためには、地域のコミュニティーをしっかりと構築していくことが必要となります。
しかし、課題は山積しています。生活から遠くなった川に関心を寄せることが難しいのではという意見もあります。また、急激に人口増加する新興住宅地等や資産集中の都市部においては、コミュニケーション型の情報周知には限界があるのではないかという意見も実際ございます。
堤防強化などのハードの対策だけではなく、被害の程度を最小限にするためのソフト対策も必要であり、ソフト対策には、とりわけ都市部、都市近郊部、農村部など地域の実情に合わせた実際に機能する情報周知の仕組みが必要です。
また、自助、共助、公助という言葉が防災対策の中でうたわれておりますが、本当に必要なのは、近所で助けると書いて、近助であると思うのです。自助と共助の中間である向こう三軒両隣が助け合う近助の精神が非常に大切だと考えております。
そこでお伺いいたします。
実際に阪神・淡路大震災のときに、家の近所の人に助けてもらったという確率が非常に高かったと聞いております。みずから守るプログラムでは共助というそうですが、この共助、近助の普及は、今現在どのように取り組んでいるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
また、水防にかかわる点につきまして、河川流域全体の連携は大変重要だと思います。みずから守るプログラムの取り組みにおいて、地域間相互の情報共有の場をどのように考えているのでしょうか、お答えください。
ところで、大村知事は、アイチ・ナゴヤ共同マニフェストの中で、集水域管理をベースに、河川の自然再生を進める事業に取り組むと河川の自然再生をうたっておられます。私は、これは事業のあり方を超えて、欧米での河川政策の転換と軌を一にした、時代を先取りした考え方を示したものであると思います。
私が同僚議員の半田議員とともにオーストリア・ウィーンからお呼びしたEU(ヨーロッパ連合)の環境コンサルタント、アレクサンダー・ジンク氏によれば、いち早く近代化したヨーロッパでは、河川工学者はもはや自然を支配しようとしてはおらず、自然とともに機能するようになってきている。河川政策は大きく変化を遂げつつあると述べております。
アメリカにおいても、近代技術によって河川をコントロールするのではなく、自然とともに機能することを基本姿勢とする統合的な河川管理政策が、二十世紀につくられた多くのダムを撤去し、自然に返す方向への転換を通じて実行されつつあると聞きました。
日本においても、平成九年の河川法改正により、治水、利水に加えて環境という項目が盛り込まれました。これは、長良川河口堰建設反対運動など、当時の河川工事の進め方に対する批判をきっかけとして法律が改正されたとも伺っております。
また、平成十八年には、国土交通省から多自然川づくり基本方針が示され、自然の営みを理解し、生き物の暮らしや風景を損なわないように、地域とともに川づくりを行うこととなりました。本県においても、この方針に基づいた取り組みをしていると思います。
しかし、その河川法改正から既に十五年以上経過しております。木曽三川工事の恩人、デ・レーケ氏の故郷オランダでは、ハーリングフリートの河口堰の開門が行われようとしております。欧米では、自然とともに機能する河川工事の考え方へと転換しつつあります。
まさにそのときに知事は、長良川河口堰開門調査を取り上げられました。愛知県での試みが再び国を動かして、新しい流域治水や水循環の考え方を取り入れた法制度の整備につながっていくものと確信しております。
そこで、大村知事にお伺いいたします。
私は、河川管理の基本的考え方として、近代技術を駆使して川を抑え込むのではなく、自然とともに河川を管理し、日本と日本人の生み出してきた川、日本の原風景としての川を取り戻す方向へ河川政策を行うべきと感じておりますが、知事の御見解を伺います。
次に、その集水域管理についてです。
河川は、集水域全体、河川が大きな影響を及ぼしている湾や海の環境や漁業、生態系まで一体のものとして考え、政策を進めていかなければなりません。このような観点から、私は、知事のお考えに全面的に賛成しております。
私は、先日、矢作川沿岸水質保全対策協議会(矢水協)の視察に行ってまいりました。矢作川の流域管理という点では、利水関係者が「流域は一つ、運命共同体」との合い言葉をもとに、水質の汚濁を解消するべくさまざまな活動に取り組んできた歴史を伺いました。その四十年以上にわたる河川流域を一体とした活動は大変評価できるものであると感じました。
ことし一月に行ったシンポジウムには知事にも参加していただきましたが、このシンポジウムの講師であるアレクサンダー・ジンク氏が、ヨーロッパでは、河川流域のできるだけ多くの関係者が集まり、議論する場所をつくり、行政も利水者もそれぞれの立場に立った人たちが双方に満足できるウイン・ウインの関係を築いていくという画期的な取り組みが始まっているとお話しされました。
愛知県には、矢水協のように四十年以上前から自分たちの水は自分たちで守ろうという取り組みを行ってきた人たちがいたこと、そして、その成果を得ていることに大変な感銘を受けました。水質という限られた分野ではありますが、流域管理、集水域管理をなし遂げてきたと理解しております。
さて、県内の河川や海域の水質状況を見ておりますと、河川についてはかなり改善が進んできており、これは県としても、水環境の改善に向けてさまざまな施策を講じられてきた成果であると思っております。
しかし、海域では赤潮の発生があるなど、水質改善は十分ではありません。このため、県では、今年度、三河湾環境再生プロジェクトと銘打って、同じ閉鎖性水域である滋賀県琵琶湖と連携したシンポジウムや、県民参加の干潟観察会など、さまざまな事業を実施し、三河湾の環境再生の機運を高める取り組みを始められました。来年度においては、三河湾環境再生行動計画を策定し、これらの取り組みに一層推進することを期待しております。
海は、水循環の一つの過程ですが、河川から水が集まる最終的な水域です。私は、森と川、そして海という全体のつながりの中で人々の生活を考えて、河川対策をつくり上げていくことが不可欠だと思います。そこで、愛知県の恵みの海である三河湾について、そこに流れ込んでくる川の集水域全体に目を向け、取り組みの活性化を図っていくことが重要であると考えます。
そこでお尋ねいたします。
三河湾の環境を改善するためには、集水域における取り組みも重視していく必要があると思いますが、県としてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
以上、私は、水とのつき合い方については、治水、利水、環境という側面から考えるだけではなく、さらに、集水域全体の水循環を考えた対応が必要だと考えています。その点を踏まえまして、理事者各位の誠実なる御答弁をお願い申し上げまして、壇上からの質問を終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 4:◯防災局長(小林壯行君) 最初に、災害時の防災関係機関相互の情報共有と連携体制構築に係る取り組みについてのお尋ねでございます。
愛知県では、平成十二年九月に発生しました東海豪雨災害の経験を踏まえ、従来、電話やファクスで情報収集していた体制から、災害時に強い通信インフラである高度情報通信ネットワークを活用した防災情報システムを導入し、迅速に情報収集できる体制といたしました。
高度情報通信ネットワークは、防災情報システムばかりではなく、気象、道路、河川、砂防など、他の防災関係システム情報の基盤となるものでございます。このネットワークシステムにより、これらの防災関係情報は、国、県、市町村、防災関係機関の全ての機関で同時に閲覧することができ、情報共有を図ることができます。
また、防災関係機関との連携体制については、日ごろから自衛隊を初めとする防災関係機関との意見交換や訓練を重ね、顔の見える関係を構築するよう努めております。
さらに、災害時には、状況に応じ、自衛隊、中部地方整備局、ライフライン機関等の防災関係機関の連絡員が災害情報センターに常駐し、その場で関係機関相互の情報共有を図ることといたしております。
次に、平時からの市町村職員の災害対応力向上と災害時の市町村の支援体制についてでございます。
災害時において、市町村では、災害対策業務が急激に増大するとともに、市町村自体が被災して行政機能が低下することも考えられ、市町村における災害対応が混乱することも危惧されます。
県といたしましては、市町村職員の災害対応力向上の取り組みを支援するため、防災情報システムや防災無線等の取り扱いのための研修会、説明会を行っております。
あわせて、市町村災害対策本部の運用訓練には、方面本部を構成する県民事務所等と連携し、できる限り県職員を派遣して、訓練運営の協力などの支援を行っております。
また、災害時にあっては、市町村と連絡がとれない場合や、市町村から支援要請のある場合には、方面本部から市町村災害対策本部へ県職員を派遣するなどの対応をすることといたしております。
議員お示しの平成二十三年の台風第十五号の際には、名古屋市を初め十九市町村に四十一名の県職員を派遣し、災害対策業務の支援や、災害情報の収集、連絡に当たったところでございます。
災害時の県と市町村の連携には、日ごろから顔の見える関係の構築が不可欠であり、引き続き研修、訓練を通じて、市町村職員の災害対応力向上の取り組みを支援してまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 5:◯建設部長(近藤隆之君) みずから守るプログラムにつきまして、二つの御質問をいただきました。
初めに、議員御指摘の近助の意識を高めるための取り組みについてお答えをいたします。
みずから守るプログラムは、自助、共助による水害に強い地域づくりを目指した取り組みでございます。
プログラムでは、まずは、住民の方に水害に関する身の回りの危険に気づいていただき、みずから防災の情報を確認して、適切な判断、行動ができる自助の意識を持っていただくことを目指しております。
さらに、一人でも多くの方が避難できるようにお互いが助け合う共助が必要であり、いざというときに近助の力が発揮されるためにも、日ごろから顔の見える関係を築き、相互のきずなを強めることが大変重要でございます。
このため、地域ごとで住民の皆様がみずからまちを歩き、大雨のときの避難路を地図に書き込む手づくりハザードマップの作成や、そのマップを使い避難する大雨行動訓練の実施を支援しているところでございます。
参加者の皆様からは、町内会の防災の取り組みに協力したい、また、いざ水害が起きたら、地域の水防活動に協力したいなどの御意見をいただいておりますことから、今後もこれらの取り組みをさらに推進してまいります。
次に、地域間の情報共有の取り組みについてでございます。
みずから守るプログラムを実施しております地域間の情報共有の場は、同じ取り組みを行う方々のネットワークづくりに大変重要であると考えております。
今年度は、手づくりハザードマップの作成や大雨行動訓練を実施していただきました地域を対象に意見交換会を開催したところ、各地域間相互の情報共有が活発に図られ、大変好評を得たところでございます。
来年度は、さらに工夫を凝らし、例えば、海抜ゼロメートルに満たない低平地では避難する場所の確保が困難であるなど、共通した課題を持つ地域ごとに意見交換会を開催してまいりたいと考えております。
また、みずから守るプログラムの活動をより多くの方に知っていただくために、プログラムの参加者のみならず、広く県民の皆様や、防災にかかわるNPOの皆様などにも参加をしていただき、みずから守るプログラム・フォーラムを開催し、参加された方を通じまして、地域の防災力の向上を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 6:◯環境部長(西川洋二君) 三河湾の環境改善につきまして、集水域における取り組みも含め、御質問をいただきました。
三河湾のように閉鎖性の海域環境を改善するためには、水環境の視点に立ち、上流域までも含めた集水域における取り組みが不可欠と認識しております。そのため、県では、三河湾を含む伊勢湾の集水域におきまして、これまで一次から六次までの汚濁負荷の総量削減計画を策定し、三十年間にわたり、その取り組みを進めてまいったところでございます。
現在は、平成二十六年度までの第七次の計画を推進しておるところでございますけれども、今後も、工場、事業場の排水規制、下水道整備などによる汚濁負荷の削減対策、河川水の水質改善に資する森林整備、さらには、水質浄化の大切さの啓発など、上流から下流まで集水域全体に広がりを持った取り組みに力を入れていきたいと考えております。
また、これらの取り組みにつきましては、流域全体にわたって一体的に進める必要がございますので、流域ごとに水環境保全のために設置しております行政、民間団体、NPO等関係者から成る地域協議会を通じまして、進めていきたいと考えております。
一方、海域での取り組みでございますけれども、干潟・浅場の保全や造成といった対策とともに、シンポジウムや干潟観察会などの開催、NPO等の環境活動に対する支援など取り組んでまいりましたけれども、来年度はこうした取り組みとともに、行政や学識経験者に加え、NPO、漁業関係者、流通業者、観光業者等も参画いただき、各主体の行動指針、具体の取り組みを盛り込んだ行動計画を策定し、その取り組みを強化していきたいと考えております。
このように、集水域と海域双方の取り組みにより、三河湾の環境改善を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
- 7:◯知事(大村秀章君) 野田議員からの御質問の中で、河川政策、特に川を抑え込むのではなくて、自然とともに河川を管理していくという、そうした河川政策、自然を生かした河川政策について、私からお答えをさせていただきたいと思います。
本県では、広大なゼロメーター地帯に多くの人口、資産が集中するという特性に加えまして、最近の地球温暖化の影響などによる台風の大型化でありますとか、ゲリラ豪雨の多発、そういったことを考えますと、県民の安心・安全を確保していくためには、現在の河川整備の水準は必ずしもこれで十分ということではなくて、これからもしっかりと河川の整備はしていくと、今後も継続していく必要があると考えております。
そういう中で、自然環境の保全というのは大変重要な視点でありますので、全国に先駆けまして多自然川づくりに取り組み、その成果を県独自のマニュアルとして取りまとめておりまして、これを活用し、普及拡大に努めてきているところであります。
私のマニフェストにおきましても、河川の自然再生を進める事業に取り組むというふうにしておりますけれども、地域の皆様の手で川沿いに植樹する水辺の緑の回廊事業などは、多様な生態系を支える水辺空間の創出に有効な取り組みでありまして、今後も地域とともに安全で自然豊かな川づくりを積極的に進めていきたいと考えております。
なお、この水辺の緑の回廊事業というのは、地域住民の手で河川のそういった空間に植樹をするという事業でありますが、ちなみに、平成二十四年度には、逢妻女川、そして、岩崎川、矢田川といった三河川でもやっております。これは、引き続きこれからもしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
以上でございます。
- 8:◯十二番(野田留美君) それぞれ御答弁いただきました。ありがとうございました。
それでは、私から一点要望したいと思います。
先ほども述べましたとおり、私は、水とのつき合い方については、治水、利水、環境という側面から考えるだけではなく、さらに、集水域全体の水循環を考えた対応が必要だと考えています。
河川政策には国や市も関係してきますが、愛知県の利水計画の見直しなど、愛知県が独自にできることがあるのではないでしょうか。
河川の洪水に対する防災についても、点や線で河川を考えるのではなく、面で、この場合、流域全体、集水域全体からの防災対策が必要になると考えています。河川の環境についても同様です。
それには、部局間を超えた横串的な連携や、行政はもちろん、河川問題に係る県民や専門家など全てのステークホルダーがかかわり、議論できる場所づくり、システムづくりが必要になると考えています。
災害で被災しても、復旧はほとんどが自助努力になります。そうならないためには、被災しない方法を模索していくしかありません。県民を守るための予防策として、広く広報すること、そして、人としての優しさを持って対応できる人材を育てていくこと、これらを積み重ねていってほしいと思います。
愛知県は独立した公共団体であるわけですから、県庁当局が広く県民の意見を聞き、透明性と説明責任を果たされながら、今後の河川政策を進められることを要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
- 9:◯副議長(澤田丸四郎君) 進行いたします。
中根義高議員。
〔七番中根義高君登壇〕(拍手)
- 10:◯七番(中根義高君) 昨年十月の岡崎市選挙区補欠選挙により、県議会の末席をいただいております中根義高でございます。初めての一般質問であります。よろしくお願いいたします。
それでは、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
まず、人口減少における地域社会の維持について質問をさせていただきます。
総務省、国立社会保障・人口問題研究所が昨年一月に発表した出生中位推計によれば、将来人口の推計は、我が国は平成二十二年に人口のピークを迎え、既に人口減少の局面に突入をしております。さらに、約四十年後の平成六十年には一億人を割り込み、五十年後の平成七十二年には約八千七百万人まで減少するという推計が示されております。
この数字は、平均すると今後の五十年間で毎年約八十二万人が減少していくということになります。私の地元である岡崎市の人口が約三十八万人でありますので、この岡崎市が毎年二つ以上消えていくという、まさに衝撃的な数字であります。
都道府県別では、全国的に人口減少が広がる中、本県は、強い産業、経済による流入圧力から今のところ人口増加の傾向にあるものの、二年後の平成二十七年にはピークを迎え、以降は人口減少の局面に入っていくとされております。
こうした状況に加え、我が国は、世界一の速さで高齢化が進行しております。総人口に占める六十五歳以上の高齢者人口の割合、いわゆる高齢化率は、平成二十二年国勢調査時の二三%が約四十年後の平成六十年には約四〇%となり、五人のうち二人が六十五歳以上の超高齢社会を迎えるという予測が出ております。
このような長期的かつ急速な人口減少・高齢化は、有史以来、我が国が初めて経験するものであり、間違いなく我が国の社会経済に多大な影響を与えるものであります。
例えば、人口減少は、国内市場の縮小や生産年齢人口の減少につながり、産業、経済の活力を失わせる要因となります。また、高齢化は、医療や介護の需要を増大させ、医療、介護の財政負担が大きくなります。
そのように、我が国の社会経済システムは必然的に大きな見直しを迫られることになると思われます。そして、その影響は私たちが暮らす地域社会にもいや応なく訪れてまいります。
高度経済成長期以降、産業の高度化に伴う農山村から都市部への大規模な人口移動により、農山村では過疎化や高齢化が、都市部では人間関係の希薄化や地域への帰属意識の低下などが進行し、地縁的なつながりによって形成される地域コミュニティーは次第に弱体化しました。
地域コミュニティーの基本は小学校区であります。このことから、小学校を取り巻く現在の状況について、学校基本調査をもとに見てみますと、一学年の児童数が三十人以下の学年を抱える学校は、名古屋市内を除く県下全小学校の二三・三%、約四分の一に上ります。さらに、このうちの構成比率を見てみますと、四六・四%、約半数の小学校が一学年十人以下の学年を抱えております。
つまり、県下四分の一の地域で人口減少による地域コミュニティーの危機を内包しており、そのうち半数においては、地域コミュニティーを維持することができるか否か、既に問題として顕在化し始めているという本県の現実であります。
常に問題は、小さいところ、弱いところ、遠いところから顕在化し、その現象は里下りをしてきます。再来年には人口のピークを迎えると試算されております本県におきまして、これは遠い未来の話ではなく、すぐ足元まで来ている、もしくは既に始まっている問題だと強く認識をいただきたいと思います。
そうした中で、急速な人口減少・高齢化の大波が地域コミュニティーを覆えば、防災・防犯、子育て、高齢者の生活支援、生活環境の整備、地域文化の保全など、これまで住民が共同で担ってきた地域社会を維持する機能がさらに低下し、社会としての持続性が失われる地域が出てくることが危惧されます。
まさに、過疎地域と同様の問題が近い将来全県的な事象となってあらわれてくることが想定されるのであり、問題が顕在化し、深刻化する前に、そうした状況に備え、適切に対応していくことが求められております。
昨年十月、本県の過疎地域に指定されております五つの市町村を会場に、全国過疎問題シンポジウム二〇一二inあいちが「過疎地域でともに歩む~外からのサポートと内なる価値~」というテーマで開催されました。人口の減少が続く過疎地域の活性化に対し、地域を外からの目線でサポートすることが必要であるとの議論がなされたと聞いております。
この外からのサポートということでは、地域コミュニティーの持続可能性について明るい兆しがないわけでもありません。日経新聞社が二十代から三十代の若者五百人に対して行った調査では、約半数の人が田舎暮らしに憧れると回答をしており、総務省が都市住民を対象に行ったアンケート調査でも、全体の約三割が山間地域への交流居住に興味を持っていると回答しております。
この動向に対応するために、本県では、岡崎市を初め三河山間六市町村などとともに、平成二十年度に短期滞在から本格的な移住までのさまざまな田舎暮らしを提案する愛知県交流居住センターを設置し、三河山間地域と都市部の住民とが交流するための機会提供を行うとともに、山間地域への移住を希望する方々への情報提供等を行い、移住希望者と山間地域のマッチングを行っております。
平成二十三年度には、年間延べ九百四十九人の都市部住民が山間地域と交流され、また、実際に七十一世帯百三十三人の方々が山間地域に移住されたとのことであります。
都市部と山間地域は、こうして交流が活発になってきております。今後、このような山間地域での取り組みが周辺地域にも広がっていくことを願ってやみません。
さて、三月で東日本大震災の発生からおおよそ二年が経過をいたしますが、未曽有の大災害は私たちに多くの貴重な経験や教訓を与えてくれました。その一つが地域コミュニティーの重要性についてであります。
東日本大震災では、非常に多くの方々が長期にわたる避難所生活を余儀なくされました。先行きの見えない極限的な状況において、人々が励まし合い、助け合いながら、避難所での厳しい共同生活を続けていく中で、新たなコミュニティーが生まれ、自律的に機能し始める。そうした数多くの事例が人のつながりやきずなの大切さとともに、私たちが忘れかけていた原点としてのコミュニティーの姿とその意義をまざまざと示してくれたものと思います。
そして、震災を機にさらに深まった人々の信頼関係、さらに強くなった地域コミュニティーを基盤として、必ずや被災地の復興がなし遂げられるものと確信しております。
社会学にソーシャル・キャピタルという概念があります。社会関係資本とも呼ばれており、社会の人間関係を社会資本とみなし、人々の協調行動が活発化することが社会の効率性を高めるという考え方のもと、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説くものであります。
本県は、昭和五十二年以来、長年にわたり製造品出荷額全国一位を誇る世界有数の物づくり産業の集積地であり、日本経済全体を牽引する地域でありますが、こうした地域の活力は、安定した地域社会の基盤があってこそだと思います。
つまり、ソーシャル・キャピタルとして地域コミュニティーがしっかりと機能し、人々が生き生きと暮らしてこそ、地域が元気になり、その元気がさまざまな分野での人々の活動を活発にし、地域の活力、競争力を培うものだと思います。
良好な地域コミュニティーの形成には、日ごろから住民相互の交流を盛んにして、地域のつながりやきずなを生み出し、相互扶助の精神に基づく自主的かつ活発な地域活動を継続していくことが重要であると考えます。
そうしたコミュニティーづくりは、本来、住民の主体的な取り組みによって推進されるべきものではありますが、急速な人口減少・高齢化が進行する中で、行政としても必要な支援をしていかなければならないと思います。
そこで質問をいたします。
本格的な人口減少・超高齢社会の到来に向けた地域コミュニティーづくりにおいて、県はどのような役割を担い、どう取り組んでいくのかお尋ねをいたします。
続いて、愛知環状鉄道の今後について質問をさせていただきます。
さきの項目でも触れましたように、本県における本格的な人口減少の到来を見据えると、愛知環状鉄道においても、沿線人口が増加していくことによる利用者の自然増というものは将来的に考えにくい状況にあります。
そこで、二つの視点から質問をさせていただきたいと思います。一つは老朽化対策であり、また一つは利便性の向上であります。
まず、老朽化対策でありますが、愛知環状鉄道は、本年、開業二十五周年を迎えたわけであります。御承知のとおり、路線は、その前身である旧岡多線を引き継いでおります。旧岡多線が開業いたしました昭和四十五年から起算いたしますと、最も古い路線区間では設置から四十二年を経過しており、施設や整備の老朽化への対応が急務のところであります。
一方、愛知環状鉄道の財務状況について、ここ五年間の当期純損益を見てみますと、平成十九年度は約一億四千万円、二十年度は約二億三千万円の黒字となっておりますが、平成二十一年度は約一千万円の赤字でありました。翌平成二十二年度は約四千万円の黒字に回復しつつも、昨年度は約六百万円と、辛うじて赤字を回避したという状況であります。
第三セクターの優等生と言われる愛知環状鉄道ではありますが、ここ数年の当期純損益を見る限り、安穏とはしておれない状況であります。老朽化した施設設備を抱え、収支が伸び悩むという状況の中で、最も懸念されることは、愛知環状鉄道が今後も健全な公共交通として存続し得るかという点であります。
そこで質問をいたします。
愛知環状鉄道の施設・設備の改修及び更新については、本年度、落橋防止のための耐震工事や、コンクリート剥離防止の工事が一部実施されております。さらに、今後十年にわたり、毎年数億から十数億円を要する大規模な施設の改修や設備の更新を行っていくとのことですが、具体的にどれほど大規模な改修や更新を控えているのか、また、愛知環状鉄道株式会社として、その費用を調達する目算やかかる整備に対して、愛知県としてどのような姿勢で支援に臨んでいくのかをお伺いいたします。
その上で、二つ目の視点、利便性の向上について質問を続けてまいりたいと思います。
旧岡多線を引き継ぎ、発足当初四百三万人であった年間利用者数は、昨年度、平成二十三年度は千四百五十六万人、本年度に至っては一千五百万人に届こうというところまで来ており、第三セクター鉄道として一千万人以上の利用者増をなし遂げてこられたことは全国でもまれであり、賞賛に値するものであります。
この背景として、三十分に一本であった運行が二十分に一本になり、さらに、朝夕の混雑時には十五分に一本へ運行本数をふやす輸送力強化があり、利便性の向上が需要を喚起し続けてきた成果であると捉えております。今後におきましても、さらなる利用の拡大に向け、埋もれた需要を喚起し続ける必要があります。
JR東海道本線、名鉄名古屋本線、名鉄三河線、名鉄豊田線、リニモ、名鉄瀬戸線、JR中央本線の七つの路線を縦に結び、沿線には、自動車並びに関連産業を初めとする多くの製造業が集積しております。さらに、沿線四市、岡崎市、豊田市、瀬戸市、春日井市の人口を合計すると百二十万人以上の都市規模を有しており、愛知環状鉄道の持つポテンシャルは非常に高いものがあると確信をしております。
私が住む岡崎市は、朝夕慢性的な交通渋滞を抱えている地域であります。通勤による通過交通が抜け道として生活道路に入り込み、通学児童が危険にさらされている現状や、住民とのトラブルが発生している事例があります。渋滞の緩和並びに交通死亡事故の減少、また、環境負荷の軽減等のために、鉄道を利用した通勤転換に取り組む社会的意義は非常に高いと思います。
また、昼間時間帯の利用についても、新たな需要の喚起に取り組むべきと考えますし、昼間の輸送力には増強する余裕があるのではないかと思います。
愛環の岡崎駅で接続する東海道本線の快速列車は、一時間に四本の運行をしております。同様に、中岡崎駅で接続する名鉄名古屋本線も、一時間に四本の停車電車があります。このことから、一時間当たりの本数を増加し、これらとの乗り継ぎをスムーズにすることで、さらなる利便性の向上を図ることができるのではないでしょうか。
そのほかにも、団塊世代の方々の定年後、いわゆるセカンドライフに関する調査がこれまで数々ございましたが、定年後にやりたいことはの問いに対する回答は、常に旅行がトップでありました。そして、今や団塊世代の方々が定年退職を迎えておられるわけであります。つまり、需要が開花する時期に来ていると言えます。
地方都市にとっての観光戦略は、県内市外並びに近隣他県からの近距離観光が最適だと私は考えております。御夫婦や気の合う仲間でちょっとぜいたくな時間を使う近距離観光に愛知環状鉄道は十分にその機能を果たし得ると考えます。
実際に、愛知環状鉄道沿線四市の観光関係の事業を見てみますと、四月には岡崎の桜まつり、七月には豊田のおいでんまつり、八月には岡崎の花火大会、九月にはせともの祭、十月には春日井まつりなど、多くのイベントが開催されております。
これに限らず、沿線四市の名所や四季折々に開催される催事を調べてみますと、実に枚挙にいとまがありません。既にこれらは愛知環状鉄道利用者の増加に貢献していることと思いますが、まだまだ掘り起こす余地があると考えます。
また、利便性という点から、ICカードシステムの導入についても少し触れさせていただきたいと思います。
全国十種類のICカードの相互利用が、いよいよ今月、三月二十三日からスタートします。岡崎駅と高蔵寺駅では、改札口をJRと完全共用しておりますことから、ICカード利用者は、一旦改札口を出て、再入場しなければならない不便さを抱えております。
JRと名鉄とが改札口を共用している豊橋駅では、名鉄ホームの入り口にICカード読み取り機を設置することでこの不便さを解消しており、愛知環状鉄道においても有効な手法だと考えます。無人駅が多い愛知環状鉄道においては、新たな設備導入の費用を要することになりますが、全国の鉄道の流れにおくれることがないことを願っております。
また、愛知県と沿線四市では、昨年三月に愛知環状鉄道沿線地域活性化ビジョンを策定し、さらなる利便性の向上に取り組み、愛知環状鉄道株式会社と協力をして地域の活性化を図ることとされており、その実現に大きく期待をするところであります。
そこでお尋ねをいたします。
まず、一つ目として、利便性向上の主軸となる輸送力強化についてであります。
三河豊田―新豊田間では、朝夕のシャトル運行を実施してから間もなく丸四年を迎えるわけでありますが、どの程度の増客効果があったのかをお伺いいたします。
また、愛・地球博開催期間中は、一時間に六本の運行をしていたと記憶しております。現在でも、岡崎の花火大会、豊田のおいでんまつりなどの開催時には大幅な増発が実施をされております。朝夕の運行本数、昼間時間帯の運行本数をふやすことが可能なのかお尋ねをいたします。
二つ目として、ICカードシステムの導入について、どのように考えているのかお伺いいたします。
そして、最後に、利便性向上の取り組みも含んだ愛知環状鉄道沿線地域活性化ビジョンの進捗状況をお伺いいたします。
このビジョンには、沿線市の連携、観光というキーワードがございますが、新たな需要を喚起し、沿線市の移動、交流を促進する手だてとして、現在どのような取り組みがなされているでしょうか、また、今後の取り組みの方向性について、所見をお伺いいたします。
以上をもちまして、壇上からの質問を閉じさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
- 11:◯地域振興部長(近藤正人君) 最初に、地域コミュニティーづくりにおける県の役割及び取り組みの内容に関するお尋ねについてお答えを申し上げます。
地域コミュニティーづくりは、人口の構成や流出入の状況など、地域の実情や住民意識によってそのあり方が異なりますため、まずは、住民に身近な基礎自治体である市町村が中心となるものでありますが、県としては、市町村の取り組みを支援する役割を担っているものと考えております。
また、具体的な県の取り組みについてでございますが、県といたしましては、市町村の支援という役割を踏まえまして、二つの方向で取り組みを実施しております。
一つ目は、市町村の職員に対する支援であります。県下全市町村の担当者を集めました地域コミュニティ活性化市町村会議を定期的に開催して、コミュニティー施策に関する情報共有を図り、意見交換を行いますとともに、有識者を招いた勉強会などを実施することで市町村職員のスキルアップを支援しております。
二つ目は、市町村の取り組みに対する支援であります。
これまで県では、地域コミュニティーづくりに関するアドバイザーの派遣や、補助金の交付などを行ってまいりましたが、新年度には、新たに県内市町村の取り組みの経緯や課題等を取りまとめますとともに、県外の先進的な取り組みの事例などについて報告書を作成し、提供してまいることとしております。
厳しい社会経済情勢の中、今後の地域コミュニティーづくりは、基礎自治体である市町村が中心となって、住民団体、NPOなど、地域にかかわるさまざまな主体が一層連携、協力して取り組んでいく必要があると考えます。
県といたしましても、時代の変化に対応する新たな地域コミュニティーづくりに向けて、引き続き努力をしてまいります。
次に、愛知環状鉄道についてお答えいたします。
初めに、施設や設備の老朽化対策についてでございます。
まず、大規模改修及び設備更新の内容でございますが、愛知環状鉄道株式会社では、軌道や橋梁などの施設改修や耐震対策、さらには、信号通信設備の更新など、今後十年間で毎年数億円から十数億円の事業を想定しておりまして、昨年二月に策定をいたしました中期経営計画では、本年度から平成二十八年度までの五年間で約五十四億円の事業費を見込んでおります。
また、この費用調達の目算でございますが、会社では、極力営業力の強化や積極的な経費削減などにより資金を確保することで、経営の健全性に影響しないよう改修等を進めることとしております。
これに対し、県といたしましては、愛知環状鉄道が西三河と尾張北東部地域を直結し、名古屋圏の環状線を形成する重要な社会基盤であることに鑑み、今年度から国や沿線市と協調、連携して、必要度、緊急度の高い設備改修について助成を行っておりますが、今後とも安全・安定輸送が確保できるよう、老朽化対策などに適切に対応してまいる考えでございます。
次に、利便性向上のための輸送力強化についてお答えを申し上げます。
まず、新豊田―三河豊田間におけるシャトル運行の増客効果についてでございますが、三河豊田駅における一日当たりの乗降客数を見ますと、シャトル運行前の平成十九年度では約八千百人であったものが、平成二十三年度では約九千五百人となっております。人数で約千四百人、率にすると一七%の増加となり、シャトル運行による輸送力強化が、利用客の増加につながっているものと考えております。
次に、朝夕及び昼間時間帯の運行本数の増加についてでございます。
まず、朝夕の通勤時間帯における増発につきましては、行き違い設備や複線化、車両の増強などの新たな投資が必要となり、現状の需要から見て、会社としては当面増発は難しいものと判断しております。
一方、昼間時間帯につきましては、お客様サービスの向上を目指し、需要を勘案しつつ、平成二十七年度を目途に、時間当たり三本を四本に拡充する方向で検討を進めているところでございます。
次に、ICカードシステムの導入についてでございますが、昨年度から県、会社及び沿線市で連携し、先行事業者を招いての研究会の開催や、利用者に対するアンケートなど、導入に向けた検討を進めております。
こうした中で、ICカードシステムの導入に当たっては、多額の初期投資や改札業務のあり方を再考する必要があるなどの課題が上がっております。
しかしながら、ICカードシステムの導入は、利用客の利便性向上に資するものでありますから、県といたしましては、今後も課題への対応を含め、会社や沿線市とともに鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
最後に、愛知環状鉄道沿線地域活性化ビジョンの現在の取り組みと今後の取り組みの方向性についてでございます。
愛知環状鉄道沿線地域活性化ビジョンは、本県と岡崎市、瀬戸市、春日井市、豊田市の沿線四市で構成をいたします愛知環状鉄道連絡協議会が、愛知環状鉄道を初めとする公共交通を有効に活用して、安全・安心で活気のある地域づくりを目指して策定したもので、本年度から平成二十八年度までの五年間の取り組みをまとめたものでございます。
取り組みの内容といたしましては、愛知環状鉄道の利便性の向上、利用促進、沿線イベントの開催など多岐にわたっており、具体的には、先ほど申し上げましたICカード導入に向けた検討や、愛環・バス乗りかえマップの作成、配布、ウオーキングイベントの開催など、さまざまな取り組みを実施しているところでございます。
加えて、昨年の七月から八月にかけましては、沿線市の連携や交流を深めるため、低炭素社会をテーマとして、各沿線市において夏休み親子教室を開催するとともに、本年一月には、県、沿線市、会社連携のもと、瀬戸市において、愛知環状鉄道開業二十五周年を記念したセレモニーやコンサート、沿線市の商工会議所、観光協会による観光物産展などを開催し、さまざまな地域から約千七百名の御来場をいただいたところであります。
今後の取り組みの方向性でございますが、当ビジョンでは、愛知環状鉄道を沿線四市の連携軸、生活交通の基幹軸、そして、地域活力の交流軸として位置づけておりますので、これらを踏まえまして、地域のさらなる活性化に資するさまざまな取り組みを進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 12:◯七番(中根義高君) それぞれ御答弁をいただきありがとうございました。
要望でありますが、まず、人口減少に伴う地域コミュニティーが直面する危機に対してであります。
県民並びに市町村への責任ある支援を行っていただけるとの御答弁をいただきました。地域コミュニティーは、それぞれの地域文化に醸し出されたものでありますので、県民、住民がそれぞれの地域の特性を生かした自主的な活動を展開しやすい環境、条件を整えていくことの大切さについては、私も同じ思いでございます。
地域コミュニティーの持続可能性については、地域内でまだまだ問題として顕在化していなくても、強い危機感を抱いていらっしゃる方々がいらっしゃいます。何とかしたいと独自に取り組んでおられる方々や、あるいはどこから取り組んでよいのかわからないという方々にとって、さきに例示をいたしました愛知県交流居住センターの活動、つまり、都市部との交流や、都市部からの移住を促進する宿泊体験や、空き家紹介を行う活動などは、大変参考になるものだと考えております。特に、山か海かの違いはありますけれども、離島地域では抱える問題に共通点も多いことでございますので、活用の可能性があるのではないかと考えております。
しかしながら、現状、愛知県交流居住センターは、山村振興法を背景としておりますことから、その活動エリアは三河山間地域六市町村に限られてしまっております。山間地域以外への移住希望の問い合わせに対して、同センターでは対応が難しかったという事例も伺っております。
サービスを統合し、ワンストップ化した相談窓口の設置は、都市住民にとっても、コミュニティーの維持に悩む地域の方々にとっても、双方にメリットが高いものだと思います。
そこで、当局におかれましては、コミュニティーの持続可能性が懸念される地域の存在について、県下市町村に情報の収集をされるとともに、愛知県交流居住センターのような活動を県もしくは県が支援する団体の活動として広く展開をしていくことができないか、検討を強く要望いたします。
続いて、愛知環状鉄道についてでございます。
施設や設備の老朽化対策について、経営の健全性を担保しながら進めていかれるということでありますので、ひとまず安心をいたしましたが、愛知環状鉄道が今後も安全・安定輸送を確保し、利便性の向上を図りながら発展していくためには、財務面の一層の強化が望まれます。その観点からも、県と沿線市、愛知環状鉄道株式会社が利用客の増加に向け、一層連携して取り組んでいただくことを期待いたします。
また、御答弁にありました一月の開業二十五周年の記念イベントには、私も愛知環状鉄道に乗って出席をさせていただきました。当日は、雪も舞う非常に寒い日でありましたけれども、大変多くの方が御来場されており、熱気にあふれたとてもよいイベントでございました。沿線四市が連携して開催されておりました観光物産展につきましても、とても盛況でありまして、私も来場の子供たちと一緒に八丁みそキャラメルのつかみ取りなどをさせていただきました。
先ほど申し上げましたように、愛知環状鉄道は、観光、特に近距離観光という面で今後大いに期待ができるものと思いますので、観光という面でも一層連携して取り組みを進めていただけたらと思います。
その際には、各沿線市における情報の発信についても連携をいただいて、沿線市の方々がほかの沿線市の情報を容易に入手ができ、相互に観光で行き来することが促進されるよう願っております。
次に、昼間時間帯の運行本数については、平成二十七年度を目途に拡充する方向で検討を進めておられるとのことですので、できるだけ早期の実現をお願いいたしたいと思います。
また、ことしは、あいちトリエンナーレが名古屋市内に加え、岡崎市の町なかも会場として開催がされ、B―1グランプリが豊川市で開催をされます。沿線四市の人口規模は百二十万以上でありますし、全国から多くの来訪者が予想をされます。開催期間中の交通推奨ルートにぜひ愛知環状鉄道を加えていただけるように要望いたします。加えて、両イベントの開催に合わせ、臨時列車の運行をぜひとも実施いただきますように要望いたします。
愛知環状鉄道の利便性向上と利用促進の活動とが相乗効果を生み出せるように、愛知県としての積極的なバックアップを要望いたしまして、以上で自席からの発言を閉じさせていただきます。
- 13:◯副議長(澤田丸四郎君) 進行いたします。
永井雅彦議員。
〔十七番永井雅彦君登壇〕(拍手)
- 14:◯十七番(永井雅彦君) 通告に従いまして、一つ目に、産業空洞化対策減税基金による補助金制度の効果と課題、二つ目に、海外進出に向けた中小企業への相談内容の充実、三つ目に、ITSを活用した交通対策について、順次質問をしてまいります。
まず、一つ目の産業空洞化対策減税基金による補助金制度の効果と課題について質問をいたします。
私は、一昨年の九月議会におきまして、本県が市町村と連携した積極的な誘致活動の推進と、本県独自の思い切った総合的なインセンティブを講じることによる地域経済の空洞化対策に手を打つべき時期にあるとの考えのもと、質問をいたしました。
その背景として、本県は、これまで強みとする物づくりにより日本経済の拡大を牽引し、産業の活性化による経済成長、雇用確保に大きな役割を果たしてきました。
しかし、一昨年の本県を取り巻く情勢は、東日本大震災の影響による厳しい状況に加えて、電力供給問題の長期化や、歴史的な円高による為替動向は、当時の七月時点において、一ドル八十円台を割り込む水準と極めて深刻な状況であり、輸出産業を中心に経営環境が厳しさを増す中、海外移転など、国内産業の空洞化が加速する懸念がありました。
そこで、製造業を中心とする各企業が経営を続けていく魅力のある環境を整える施策を打ち、本県経済の活性化を強力に推し進めるべきと考えたからであります。
それから一年五カ月が経過した現在の本県を取り巻く情勢は、輸出産業に重くのしかかる歴史的な円高と言われる為替水準は、引き続き動向を注視すべきところであります。また、世界的な景気の動向からも厳しい経営環境が続いています。
こうした中、戦後日本の基幹産業の中で中心的な役割を果たしてきた電機産業が中国、韓国との激しい競争によって大変厳しい状況に置かれています。
昨年、シャープでは、社員五万七千人のうち、希望退職などで五千人を削減する大規模なリストラを発表し、ソニーでは、岐阜県美濃加茂市の子会社を本年三月には工場閉鎖するなど、各電機メーカーが厳しい対応を迫られています。
さて、本県は、地域経済を立て直し、産業の活性化を図ることにより、地域の安定的な雇用の維持拡大と、企業収益の改善による法人税収の回復を目的とした総合的な補助制度を、全国に先駆けて昨年四月に創設をしたところであります。
七月には、研究開発・実証実験の補助対象案件を五十九件決定し、続いて、九月には高度先端分野の企業立地と、市町村と連携した県内企業の再投資を含む産業立地の補助対象案件を二十四件、十二月には十八件決定するなど、本県の産業振興策に力を入れて取り組んできております。
私の地元刈谷市に立地する中小企業の皆さんからも、厳しい事業環境の中で設備投資に迷っていたところに、この制度が背中を押してくれてありがたいと、こういう言葉をお聞きいたしております。
そこで、産業労働部長にお尋ねをします。
これまでの補助対象案件について、その投資総額と雇用の維持・創出効果はどうなっているのか、特に、事業環境が厳しいと言われております中小企業の投資総額と、雇用の維持・創出効果はどうなっているのか、また、それらが地域経済に与える影響をどう考えているのかお尋ねをしたいと思います。
次に、この補助金制度の課題に移ります。制度の中で、とりわけ中小規模の投資案件へのきめ細かい支援のAタイプと言われる市町村と連携する県内再投資支援についてであります。
中小企業の社長さんから、この補助金制度を活用しようと立地する市町村の商工部に問い合わせたところ、制度がありませんので申請できませんと返答されたとのことでありました。これを簡潔に申し上げますと、企業が立地する市町村が五%の補助を決めますと、本県が五%を補助し、合わせて一〇%を補助する制度でありますので、各市町村にこうした補助金制度がなければ、そこに立地する企業は申請すらできないことになります。
そこでお尋ねをします。
これまでに、県の制度に合わせて補助制度を設けた市町村はどれくらいあるのか、また、いまだ補助制度のない市町村に対しては、県として具体的にどのように働きかけをしていくつもりなのか、市町村の制度創設の今後の見通しを含めてお尋ねをしたいと思います。
次に、二つ目の質問であります海外進出に向けた中小企業への相談内容の充実に移ります。
私が最近よく聞く声は、新興国への海外進出を検討したいと思っているが、検討するに当たり、どんな情報を事前に把握しておくべきか、また、どこへ行けばそうした現地情報を的確に教えてもらえるのかと中小企業から問い合わせを受けることがあります。
まず、二〇一二年中小企業白書から中小企業の海外進出について調べますと、国内事業を生かし、海外需要を取り込むための事業活動を行う中小企業の海外展開についての分析があります。
一言で申し上げますと、国内の中小企業では海外展開が拡大傾向にありますが、海外展開にはさまざまな課題、リスクがあり、それを見きわめつつ、支援施策等も活用して取り組むことが必要とあります。
その背景には、アジア市場が成長し、国内需要の停滞や、取引先の自動車、家電メーカーがアジア等へ進出し、国内市場が縮小する中、製造業を中心に中小企業も海外展開が拡大傾向にある現実であります。
次に、中小企業の海外投資の動向を見ますと、二〇〇九年に海外子会社を持つ中小企業は七割の五千六百三十社であり、そのうち製造業は二千八百六十九社と五割を占めています。そして、経済産業省の企業活動基本調査では、国内での強みを発揮し、海外展開している生産拠点先は、中国で五八・二%、タイで一二・六%、続いてベトナム、インドネシアとなっています。
白書にあります中小企業が生き残りをかけてタイへの進出を決断した事例を紹介したいと思います。
二〇〇九年にタイの工業団地にある賃貸工場に入居し、新たに金型のメンテナンス事業を立ち上げ、その受注代行業務と、本業でありますノズル生産を含め、三事業の相乗効果によってタイでの受注をふやせば、日本の仕事がふえる仕組みを構築し、日本国内の雇用を維持している事例でありました。
このように、国内外の生産拠点の事業分担では、高度な技術を要する高付加価値、短納期の製品は日本国内での生産が中心との回答が高く、海外の新市場を取り込み、日本国内の事業が活性化される可能性を示していると言えます。
それでは、中小企業が直面する課題、リスクを見ますと、生産拠点先では、人件費の上昇との回答が最も高く、中国やベトナムで大きな課題であります。法制度等の不明瞭さでは、中国、ベトナム、インドネシアが上位に挙げられ、日本国内への資金還流にかかわる規制、障害では、インドネシアや中国と回答する企業が多くなっています。
このように、国、地域によって課題、リスクはさまざまであり、自社の持てる強みを最大限に発揮すること、信頼できるパートナーや支援機関の協力を得て、海外展開に取り組むことが必要であります。
最後に、成長を追い求める企業と海外との結びつきは、今後より一層強くなっていくことが推察されるとまとめられています。
これまで述べたように、二〇一二年中小企業白書から中小企業の海外進出に向けた課題とリスクを調査した上で、実際に海外進出を進めた中小企業を訪問し、進出に向けた準備段階に、何に困ったのか直接話を聞くために、昨年八月にタイの南部に位置する工業団地を訪問して実態を調査してまいりました。
現地調査では、中小企業訪問、日本貿易振興機構(ジェトロ)、日本政策金融公庫、自動車販売店などの調査を行っておりますが、今回の質問に関するポイントに絞り、述べたいと思います。
訪問先企業は、資本金五百万タイバーツ、日本円で約一千五百万円、従業員数十四名、会社設立が二〇一〇年十二月、稼働が翌年五月となります自動車部品の金型メーカーであります。社長との懇談では、タイへの進出理由として、日本国内では得意先からのコスト削減要求が厳しく、生き残れないと決断したとのことでありました。
タイを選んだ理由は、進出した中小企業への聞き取り調査から、タイを拠点にアジア諸国へも受注拡大が可能と考えたと言われており、現在では東洋のデトロイトと呼ばれるように、世界の自動車メーカーが進出するタイで仕事量を確保し、日本国内の仕事も増加する中、雇用も維持している様子でありました。
特に、私が直接確認をしたかった海外進出を検討する際の情報入手について尋ねますと、当時を振り返っていただいて、どこに行けばよいのかわからず、地域の信用金庫頼りで、その都度情報をもらいながらの準備が一番の苦労であったというふうにお話をいただきました。
次に、タイの経済概況を調査するため、ジェトロ・バンコクを訪問しました。自動車産業に特化して聞き込みますと、タイの自動車生産は、東日本大震災の影響やタイの洪水の影響により二〇一一年は前年比一一・四%減少したものの、急速に回復をして、環境配慮型、低燃費の小型車が好調でありまして、二〇一二年は過去最高の二百二十万台に達する勢いであります。雇用情勢も、経済が堅調に推移していることから失業率は一%を下回る水準で、自動車産業を初め人出不足が深刻になっております。
また、現政権のインラック政権は、賃上げを要求し、頻繁にストライキを断行する労働者の処遇改善に取り組み、労働者の最低賃金を約四〇%上昇する大幅な引き上げを二〇一二年四月から実施し、中小企業の収益悪化が懸念される状況であるとのことでありました。
その一方で、タイの魅力として、インフラ整備の整った工業団地、大規模な空港、港湾、広域的な道路網、安定した電力供給と外国投資優遇政策の存在など、自動車産業でいえば、約二千三百五十社、従業員五十二万人規模を誇るほどでありまして、充実したサプライチェーン、低コストの原材料調達、また、日系企業へは、日本大使館、ジェトロなどとの連携した支援体制が整っております。
とりわけ、ジェトロの支援活動として中小企業向けのビジネスサポートセンターが挙げられます。タイへの進出を検討する日本企業に対して、最長九十日間のオフィス無料貸出サービスや、アドバイザーによるコンサルティング、セミナー、融資等の紹介サービスが整えられております。
このように、ジェトロとの連携は、海外進出を検討する日本の中小企業にとって強い味方であると感じました。
そして、次の訪問先であります日本政策金融公庫バンコク支店での聞き込みでは、進出企業が日本国内の生産拠点へ利益をもたらす手段として、ロイヤルティー取得や出資への配当金、借入金の返済、仕事の発注などの方法を活用し、日本国内の雇用維持や事業拡大を図っているとのことでありました。
最後の訪問先であります自動車販売店での聞き込みでは、販売好調な理由として、国策で進められております優遇策を聞くことができました。
それは、二十一歳以上で初めて自動車を購入する際に、物品税を最大十万タイバーツ、日本円で約二十六万円払い戻すものでありまして、この国策が販売好調の下支えになっているとのことでありました。
今回の現地調査を通じまして、訪問先で出会った多くの方々から、中小企業の海外進出が拡大傾向にあるが、これまでの現地企業との競争に加えて、日系企業同士の競争が激化をしており、技術力、強みがなければ、海外進出しても仕事があるわけではないとの実感のこもった現地情報を確認することができました。
今後、海外進出を検討する中小企業は、こうした必要な現地情報を十分に調査した上で慎重な判断が必要であり、本県として、タイを初めとするASEAN諸国に関する賃金上昇の動向や、労務問題を含む幅広い情報をタイムリーに中小企業へ提供することが必要だと強く感じたところであります。
そこで、産業労働部長にお尋ねをします。
中小企業に対するASEAN諸国の情報の収集、提供に当たっては、ジェトロとの連携が不可欠だと思っておりますが、本県では、ジェトロと連携してどのような企業サービスを行い、今後どのように連携強化を図っていかれるのかお尋ねしたいと思います。
三つ目の質問は、ITSを活用した交通対策について、警察本部長に質問をします。
平成二十四年中の愛知県の交通事故情勢は、人身事故件数は減少したものの、交通事故の死者数は二百三十五人と、前年に引き続き全国ワースト一位という極めて残念な状況が続いています。
本県は、平成二十三年六月に第九次愛知県交通安全計画を策定し、その中で、平成二十七年までに交通事故死者数を百六十人以下、死傷者数を五万五千人以下とすることを目標に掲げ、取り組まれているところでありますが、このままでは目標達成が極めて困難な状況にあると考えます。
交通事故の特徴として、交差点事故の比率が高いということがあります。昨年の交差点における交通死亡事故の発生は全体の約四三%となっており、死者数のみならず、交通事故全体を減少させるためにも交差点対策は大きな課題であると考えます。
愛知県警では、交差点対策として、平成二十一年度から本格的に歩車分離式信号機の整備を進めた結果、整備を実施した交差点において、人身事故の発生件数が減少するなど、効果があらわれています。そのほかにも、画像カメラによる歩行者感応化信号を設置するなど、歩行者の安全確保を最優先にした取り組みも進んでおります。
これらの取り組みももちろん効果的であるというふうに考えますが、私は、さらに、ITSを活用した交通死亡事故対策を進めていくべきと考えております。
ITS(高度道路交通システム)は、情報通信技術を用いて、人と道路、そして自動車との間で、情報のやりとりによって交通事故防止を初めとするさまざまな問題を解決するためのシステムであり、VICSを初めとする九つの分野から構成をされております。
その中で、私が特に注目していますのは、安全運転支援システム(DSSS)であります。一般道路を中心とした走行時の自動車周辺の交通状況を道路に設置したセンサーにより把握をして、危険要因をカーナビゲーションに情報提供することにより、追突や出会い頭衝突事故、一時停止標識の見落としなどによる交通事故の防止を図るシステムであります。これ以降、このDSSSを安全運転支援システムと言います。
私は、まず、本県の豊田市内で一般社団法人UTMS協会が実施をしています、電波を活用した安全運転支援システムの実証実験について調査をいたしました。
現地において、このシステムの概要説明を受け、実際に車両走行による体験を行いました。この体験の一部を紹介させていただきますと、交差点を左折しようとする際に、不意に道路を横断しようとする自転車が飛び出してきました。すると、カーナビゲーションから警告音と表示の知らせによりブレーキを踏み、安全に交差点を左折することができました。このような場合、ドライバーの発見がおくれれば、自転車に衝突して、最悪は死亡事故にもつながってしまいます。
こうして安全運転支援システムの効果を確認し、次に、私は、国が推進する安全運転支援システム導入につきまして、昨年二度にわたり警察庁の担当者を訪問して調査を行ってまいりました。
国では、安全運転支援システムを東京、神奈川県の十五カ所において、一時停止規制見落とし防止・追突防止支援システムなどをモデル的にスタートした実証実験を実施し、その効果を踏まえ、交通安全施設整備事業の一環として全国整備を進める取り組みであります。
実証実験結果として、一時停止規制見落とし防止支援システムに関しましては、ドライバーに対する事前の情報伝達から、規制速度を超過している車両の比率が一般車に対しましてモニターの車では約五割減少しています。また、停止線における完全停止率も、モニターの車では約三五ポイント高くなっておりまして、効果はあると評価をしております。
これらの事業は、国が費用の一部を負担する補助事業として全国展開されていくと聞いております。全国で交通事故死者数が一番多い愛知県の交通事故を減少させていくためには、これまで推進してきました歩車分離式信号機、画像カメラによる歩行者感応化信号の設置などとあわせて、このような安全運転支援システムの導入が欠かせない取り組みだというふうに考えております。
そこでお尋ねをいたします。
警察庁が進める安全運転支援システムの実証実験の結果について、愛知県警としてどのように捉えておられるのか、また、愛知県豊田市の実証実験の評価をどのように捉えておられるのかお尋ねをいたします。
次に、安全運転支援システムの導入に向けた課題についてどのように考えておられるのか、また、県警として、安全運転支援システムを初めITSに関するほかのシステムの導入も含め、既に進めているものがあるのかお尋ねをしたいと思います。
最後に、災害発生時におけるITSを活用した交通情報の収集提供についてであります。
二年前に発生をいたしました東日本大震災の際の具体的な事例として、NPO法人でありますITS Japanが、自動車メーカーのプローブ情報を集約した通行どめの実績データと、東北地方整備局、NEXCO東日本などの交通規制情報を一つの地図に統合し、公表した結果、支援物資を初めとする緊急輸送に大きな貢献を果たしたことは御承知のとおりであります。
こうした東日本大震災の教訓から、道路の通行どめ情報を初めとする必要な交通情報をリアルタイムで収集し、県民の避難誘導や、警察、自衛隊などの緊急活動を迅速に行う上で、その情報を共有し、活用していく重要性を認識したところであります。
警察庁においては、警察が収集する交通情報と民間事業者のプローブ情報を、その補完として融合させたシステムの整備を進め、災害発生時に活用していく計画があるとお聞きをいたしております。
そこでお尋ねをいたします。
愛知県警として、警察庁で検討されている計画を踏まえ、災害発生時におけるITSを活用した交通情報の収集、提供をどのように検討されているのかお尋ねをいたします。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 15:◯産業労働部長(木村聡君) お答え申し上げます。
まず、産業空洞化対策減税基金に基づく立地補助制度の実績についてでございます。
減税基金に基づく立地補助制度につきましては、今年度、二十一世紀高度先端産業立地補助金及び新あいち創造産業立地補助金の合計で四十二件の案件を採択いたしました。
これらの案件につきましては、全体で千百四十四億円の投資規模と、一万一千人余の雇用維持・創出効果を見込んでおります。そのうち、中小企業分は三十二件でございまして、全体で二百五十八億円の投資規模と、三千人弱の雇用維持・創出効果を見込んでいるところでございます。
各投資案件の内容はさまざまでございますが、これらの立地によりまして、地域の雇用や所得、取引相手となります県内企業の事業の面で幅広い経済効果が期待できるものと考えているところでございます。
次に、新あいち創造産業立地補助金、Aタイプに関する市町村の取り組みについてお答え申し上げます。
新あいち創造産業立地補助金のうち、市町村と連携して県内企業の再投資を支援するAタイプを御利用いただきますためには、市町村において、これに対応する支援制度を御用意いただくことが前提となります。このため、県では、これまでさまざまな機会を捉えまして、市町村に対し、既存制度の見直し、あるいは新たな制度の創設を働きかけてまいりました。
その結果、Aタイプの適用対象となる地域は、本年二月末時点で全五十四市町村のうち二十二市町となっております。このほか、来年度に向け三市町が導入する予定となっており、それら以外の市町においても、制度導入に向けた検討、準備が進められているところでございます。
県といたしましては、今後とも、いまだAタイプに対応する制度を設けていない市町村に対しまして、個々の実情に応じた制度の導入に向け、個別相談や情報提供にきめ細かく対応することによりまして、Aタイプの適用対象地域の拡大に努めてまいりたいと考えております。
次に、中小企業のASEAN地域への進出支援についてお答え申し上げます。
近年、成長著しい新興国市場の活力を取り込みますため、海外の生産拠点を拡大する企業は増加しておりまして、中小企業も、取引先の求めに応じて海外展開を図る必要に迫られるケースが生じております。
進出先といたしましては、中国プラスワンとして、タイ、ベトナム、インドネシアを初めとするASEAN地域への関心が高く、このところ、それらの地域のビジネス環境や、現地のマーケットに関する情報に対するニーズは大きくなってきているところでございます。
こうした中小企業のニーズに的確に応える上で、ASEAN地域内に九カ所の現地事務所を有しますジェトロとの連携は必要不可欠でありまして、県は、ジェトロ名古屋貿易情報センターの運営を資金面から支援し、その海外ネットワークを最大限に活用しながら、県内中小企業の皆様に対し、貿易、投資に関する情報提供、相談対応、海外販路開拓の支援などの取り組みを行っているところでございます。
ASEAN地域を対象とした取り組みといたしましては、今年度、ベトナム、インドネシア、ミャンマーにつきまして、それぞれ現地の経済情勢や、法務、税務、労務等の実務に関する情報を幅広く提供するセミナーを開催し、延べ五百七十二名の中小企業などの皆様に御参加いただいたところでございます。
さらに、県では、現在の中国、上海に加えまして、平成二十六年度からタイ・バンコクにも、東南アジアを所管エリアといたします新たな海外産業情報センターを開設することを検討いたしております。
同センターのオープン後には、ジェトロとの連携体制をさらに強化することによりまして、ASEAN地域での事業展開を目指す中小企業の皆様に対しまして、従来以上に実践的かつきめ細かい支援を行ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 16:◯警察本部長(沖田芳樹君) 初めに、安全運転支援システムの評価についての御質問にお答えいたします。
首都圏で行われました安全運転支援システムの実証実験では、被験者の八割以上が安全運転への意識が高まったとされるなど、一定の効果があらわれており、私どもといたしましても、交通事故の抑止対策に有効な対策の一つであると考えております。
また、豊田市でUTMS協会が行っている実証実験につきましても、右折時の判断迷いが少なくなるなど、事故防止上一定の効果がありますことから、将来の実用化を目指した取り組みについて、交通事故に関する情報の提供など、協力を継続してまいりたいと考えております。
次に、安全運転支援システムの導入に向けた課題といたしましては、車両や歩行者を検出するセンサーなど、機器の整備に多額の費用がかかることであります。
現在、警察庁では、機器費用の低減や国の補助事業としての整備に向けて検討が行われていると承知いたしております。私どもといたしましても、安全運転支援システムの将来の導入に向け、路線の選定など、検討を進めているところでございます。
次に、ITSへの取り組みについてお答えいたします。
これまで警察庁が推進してきたITSについては、議員お示しのとおり、VICSを初めとする九つの分野があり、愛知県においては、公共車両優先システムや現場急行支援システムなど八分野を導入しております。
これに加え、警察庁では、信号機の情報をカーナビゲーションに提供することにより、急ブレーキによる追突事故防止や走行速度の抑制など、交通事故の防止を目指す事業として、情報収集能力を向上させた次世代型光ビーコン等について、平成二十四年度の補正予算で愛知県を含む二十都府県に整備していくこととしております。
この国の整備事業により、県内では、四百二十基の次世代型光ビーコンの整備と中央装置の新設改修が行われることになります。
また、平成二十五年度には、既存の光ビーコンについても、次世代型光ビーコンへ更新整備することとしております。
最後に、ITSを活用した交通情報の収集提供の考え方についてお答えいたします。
県警におきましては、これまでも交通の流れを監視する交通流監視カメラや、交通情報を提供する交通情報板の配置の見直しを行うなど、交通情報の収集、提供の充実を図ってきたところでございます。
こうした中、南海トラフ巨大地震の発生が懸念されることから、県民の避難、救助部隊の活動、物資の搬送等に必要な通行路を確保するため、ITSを活用した適切な交通情報の収集提供方法について、関係機関、団体と連携し、検討しているところであります。
また、議員お示しのとおり、警察庁では、被災府県へ他府県からの支援を迅速に行えるように、広域的に道路交通情報を集約して、各府県が活用できるシステムの構築を目指して、今後計画を進めていくと聞いております。
私どもといたしましても、警察庁で計画されている広域的なシステムとの連動が図れるよう必要な検討を進めてまいります。
- 17:◯知事(大村秀章君) 永井議員の御質問のうち、産業空洞化対策減税基金に基づく立地補助制度につきましては、その趣旨などにつきまして、私からもお答えを申し上げたいと思います。
永井議員御指摘のように、産業空洞化対策は喫緊の課題だと、こういうふうに思っておりまして、その一環といたしまして、今年度からこの制度を導入いたしました。
これは、これまでの制度を思い切って拡大し、日本一の支援内容にするとともに、市町村の御協力をいただきながら進めているわけでありまして、そうしたPR、周知に努めた結果、県内外の企業から当初の想定を上回るペースで御利用、御活用いただいているというところでございます。
とりわけ、市町村と連携をする新あいち創造産業立地補助金、Aタイプにつきましては、長年、地域経済を支えてきていただきました中堅・中小企業の設備投資、再投資を支援し、雇用、所得の維持拡大につながるものとして、県内企業や市町村の皆様から高い評価をいただいているというふうに認識をいたしております。
かねてから、私は、県の役割といたしましては、地域に産業、企業を呼び込み、雇用をつくり、そして、その県民の皆様の生活を守っていくということが究極の目的、まさに最重要の課題だということを申し上げてまいりました。
県といたしましては、今後もこの減税基金を活用いたしまして、県外企業の新規立地はもちろんでありますが、県内企業の再投資を支援することによりまして、地域経済の持続的な発展、そして、雇用の確保、拡充を通じ、世界と闘える愛知、日本一元気な愛知を実現していくべく取り組んでいきたいというふうに考えております。
以上でございます。
- 18:◯十七番(永井雅彦君) 要望を二点お願いしたいと思います。
ただいま産業空洞化対策減税基金につきまして、大村知事からも答弁をいただきましてありがとうございました。
この補助金もそうでありますし、また、ジェトロと連携した企業支援についても、できるだけ多くの企業に有効に活用していただくことが大切であると、このように思っております。
特に、中小企業の経営者の方々は、こうした県の施策についての情報を必ずしも把握されていない場合もあるかと思いますので、引き続きよく周知、PRしていただくようにまず要望したいと思います。
また、先ほど答弁にありました、二十六年度にバンコクに開設されます産業情報センターについては、ASEANに関心を持っている中小企業にとって非常に有益であるというふうに考えておりますので、今後、ジェトロともよく相談をしていただきながら、周到に準備を進めていただくようにあわせてお願いをしておきたいと思います。
次に、ITSを活用した交通対策についてであります。
誰もが安心して安全に暮らせる愛知とするためには、ITSを活用した交通安全施設整備が非常に有効であるというふうに考えておりますが、先ほど本部長からも御答弁がありましたように、最大の課題は予算の確保にあるというふうに思っておりまして、財政状況が厳しい中で、老朽化した標識などのインフラの更新にもやりくりをしながら取り組んでおられるというふうに聞いておりますが、新たな交通安全施設整備も欠くことのできないものであるというふうに考えております。
本県は、平成十年に全国に先駆けて愛知県ITS推進協議会を立ち上げるなど、ITSの先進県であります。しかし、ITSを活用した交通事故対策につきましては、東京などの首都圏におくれをとっているように見えてきます。本年も既に一月から交通死亡事故が多発をしております。
先ほど警察本部長の答弁にありました、光ビーコンというのは交通事故防止にもつながりますし、また、災害発生時の交通情報の収集にも共通する大事なものでありまして、現状を新たな取り組みで打開して交通死亡事故を減らしていくためにも、国の補助事業が始まるタイミングで整備が進みますように、これは大村知事をトップにした関係部局の皆様の御理解の上、予算確保に向けて適切な対応をお願いいたしまして、質問を終わります。
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- 19:◯三十八番(川嶋太郎君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 20:◯副議長(澤田丸四郎君) 川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 21:◯副議長(澤田丸四郎君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
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午後一時開議
- 22:◯議長(小林功君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
原よしのぶ議員。
〔四十五番原よしのぶ君登壇〕(拍手)
- 23:◯四十五番(原よしのぶ君) それでは、通告に従い、社会的養護についてといじめについての二件を質問させていただきます。
一点目は、社会的養護についてです。釈迦に説法かもしれませんが、改めて社会的養護とは何かをお示しします。
社会的養護とは、虐待など何らかの事情があり、家庭で適切な養育が受けられない子どもを国や社会が家庭にかわって養育する仕組みのことです。平たく言えば、子どもの養育保護のセーフティネットです。また、社会的養護は、子どもの最善の利益のためにと社会全体で子どもを育むを理念として行われています。
さて、ここまでわずかばかりの話を進めるプロセスで子どもという言葉を何回使ったか。
早くも五回使いました。その言葉はこれからさらに重ねられていきます。そして、この質問の中で、「子ども」という表記は、「子」は漢字で、「ども」は漢字を使わずあえて平仮名で書いています。私だけでなく、皆さんもそう使われる方が多いと思われます。特に、児童福祉関係では顕著であります。
なぜなら、「子供」の「供」という漢字が、あるじに対して従属、付随するものという意味だから。つまり、子どもが大人に対して下に位置する意味に通ずるからです。ですから、対等の思いで子どものためを考えながら、話を進めさせていただきます。
また、質問に当たり、さまざまな調査を重ねました。そのときお会いした社会的養護にかかわる一人の方がこう言われました。それは、入所してくる子どもは、生まれてきてよかったと思えるようになってから子どもは自信が持てるようになる。そのために必要となるのが、安心して自分を委ねられる大人の存在です。だから、私はそんな存在でありたい。その言葉が忘れられません。
この質問で課題が少しでも解決できるきっかけになればとの思いも込めて、質問をさせてもらいます。
まずは、社会的養護の現状について簡単に申し述べます。
最初は、社会的養護の役割が変化していることを強調しなければなりません。かつての社会的養護は、親がいなかったり、親が育てられない子どもへの施策でした。しかし、社会情勢の変化とともに対応するための施策は大きく変わることになります。
ここで、児童虐待相談対応件数の数字を示します。
平成十年度の虐待相談対応件数は全国で七千件でした。それが平成二十三年度では全国で五万九千九百件以上と六万件に迫ろうとしています。本県の平成二十三年度の虐待の実態は千四百九十九件で、増加傾向は全国と同様です。
こうした虐待問題などを解決するために社会的に養護を必要とする子どもは全国で四万五千人を超えます。本県に目を向けてみると、乳児院や児童養護施設、里親制度など社会的養護を受ける子どもは千九百人を数えます。
これが示すように、現在の社会的養護がすべきことは、虐待を受けて心に傷を持つ子どもや、障害のある子ども、DV被害の母子支援を行うなどの施策へと社会的養護の役割が変化してきました。
でも、残念ながら、その役割や機能の変化に社会的養護のハードとソフトの変革がおくれていることを指摘しなければなりません。よって、ここからは、愛知県における社会的養護の現状と課題を挙げ、問題提起をさせていただきます。
まず、社会的養護の施設について申し上げます。
本県は、平成二十四年十二月議会で、施設の設備及び運営に関する基準を定める条例を議決しました。実は、これが社会的養護の役割を果たすためのこれからの愛知の姿を示すものとなります。
では、どう変わるのか。
この条例で、国から地方自治体への権限移譲が進みました。これからは、児童養護施設などの小規模化や、家庭養護の推進などの対応を県の責任で、県が独自で考えていかなければならなくなったのです。
ここで問題を指摘します。
問題は、さきに申し上げたとおり、児童養護施設の小規模化が叫ばれるものの、本県の児童養護施設の小規模化が進んでいないことです。県内の二十一児童養護施設の中で小規模を実施している施設は一施設だけとなっています。となれば、二十施設がこれからどう小規模化していくかが課題となってきます。
さらに言えば、愛知県が民間社会福祉施設の運営、整備のため、民間社会福祉施設運営費が補助されています。しかし、その補助は毎年減額され、今後も減額は進むものと聞いています。
このような現状で、児童養護施設が新たな施策に対応するための余力があるとは到底思えません。ともすれば、社会的養護の施設が崩壊する危険が潜んでいるとさえ思えてなりません。ですから、本県の小規模化に向けたかじ取りは大きな大きな課題となります。
次は、児童家庭支援センターの未設置や、里親支援専門相談員の配置が進んでいない現状を示します。
まず、児童家庭支援センターの役割を確認します。
平成九年に、児童やその家庭への指導、助言を行うものとして、児童福祉法の改正で制度化されました。また、平成二十年の児童福祉法の改正では、市町村の求めに応じて助言、援助を行うことも業務に加えられます。さらに、二十三年の実施要綱改正で、里親やファミリーホームの支援を行うことが明記されました。
では、こうした変化でこれからどう考えていかなければならないのか。
里親支援で児童家庭支援センターの役割分担を明確化する必要があります。例えば、里親支援機関の中心を担う目的で新たな児童家庭支援センターの設置を考えていくかどうかなどです。
そこで、現状はどうなっているのか。
児童家庭支援センターは、現在、名古屋に一カ所の設置のみとなっています。まして、県の所管する地域には設置されていません。さらに掘り下げると、はぐみんプランでは、児童家庭支援センターは検討するとされているだけで、今後の方向性はいまだ示されることもありません。また、里親支援専門相談員は、小牧市内の施設に一名の配属がされているのみであります。こうした行政と現場の乖離も解消すべき重要な課題です。
最後は、一時保護所を取り上げます。
一時保護所は、虐待を受けた子どもの保護や育成にはなくてはならない存在です。なぜなら、一時保護所には子どもをアセスメントする観察機能があるからです。つまり、子どもの状態を理解し、必要な支援を考え、将来行動の予測をするなど、大切な観察機能の役割を担っているのです。そして、そのアセスメントを実施してから施設へ入所させるのが児童相談センターの役割です。
しかし、ここでの課題は、その重要な役割を果たせていない現状があることです。その課題は、県の一時保護所を通さずに児童養護施設などに入所する子どもや、一時保護委託される子どもが非常に多いことにあります。数字で示すのならば、平成二十三年度は九百四十六人で、平成二十四年度は九百八十人にも数えられます。
さらに、一時保護所のチェック機能が果たせず、感染症やアレルギーが施設に入所した後に見つかった事例も実在します。
でも、そんな中、来年度には尾張地域に一時保護所が新たに設置されるとされており、大きな期待もしています。
以上、社会的養護について現状と課題を示してきました。
そこでお聞きしていきます。
まず、推進計画についてお尋ねいたします。
これから本県は、社会的養護を必要とする子どもの見込み数や、里親などの委託率の引き上げのペースを考慮しながら、確保すべき事業量を設定した本県の推進計画を平成二十六年度までの二年間で策定しなければなりません。
そこで、県は、将来の県内の要保護児童の見込みをどのように試算するのか、まずお聞きします。
次に、二年間という計画策定期間のスケジュールをどのように考えているのかお示しください。
さらに、計画策定に児童養護施設当事者の意見を聞く場を設ける必要があると思いますが、県の所見をお伺いします。
また、計画策定後、実際に児童養護施設の小規模化を進めていくことになります。その予算をどのように確保していくのか、あわせてお伺いをいたします。
二点目は、里親委託の推進についてお尋ねをいたします。
県は、はぐみんプランにおいて、里親委託率について数値目標を掲げ、里親への委託をふやしていくこととしています。
そこで、これまでどのような取り組みをしてきたのかお伺いいたします。また、これまでの取り組みにより、目標に対する進捗状況と目標達成への見通しについてもお伺いをいたします。
三点目は、児童家庭支援センターと里親支援相談専門員についてお尋ねをいたします。
私は、児童家庭支援センターと里親支援相談専門員の設置はセットで考えるべきと思っています。
そこで、県の児童家庭支援センターの設置と里親支援専門相談員の配置に対する考え方についてもお伺いをいたします。
最後は、一時保護所についてお聞きいたします。
一時保護所が新たに設置されることで、一時保護所を通さず、児童養護施設などに一時保護委託されることに伴う負担はどの程度解消されるのかお伺いをいたします。
また、一時保護所の実態や運営に透明性を持たせるため、さらには、利用者の権利擁護の観点から、行政のみならず関係各位による運営委員会のような存在も必要と思います。その見解もお示しください。
二件目は、いじめについてお伺いしていきます。
少し話がそれます。
子どもの目が輝いていないと我々大人はよく言います。でも、目が輝いていないのは子どものせいだけなのでしょうか。我々大人の問題でもあると思われます。なぜなら、大人の目が輝いていないのに子どもの目が輝くはずがないから。子どもはその時代を映す鏡と言われるように、今ある子どもの姿は大人の姿であると思えてならないからです。今のいじめ問題は、大人社会の縮図なのかもしれません。
さらに、もう少し話がそれます。
サッカーの試合が始まる前、入場する選手は決まって子どもたちと一緒に手をつないで入場します。なぜだか御存じでしょうか。
宣伝のためではありません。子どもの喜びのためでもありません。実は、正式な名前と目的があります。エスコートキッズ、フェアプレーチルドレンと言われ、子どもの目の前で恥ずべき行為をしないように誓う意味が込められています。
そこには子どもの目を気にする自戒があるのです。実際、試合に臨んで気持ちの高ぶっている選手が、子どもの手を握ることで冷静になるといいます。でも、フェアプレーの問題は大人側の問題であり、子どもを飾りにしてはなりません。なぜなら、子どもは大人の姿勢を見ているからです。
何が言いたかったのか。
いじめ問題にも同じことが言えると思えるのです。いじめの多くは、子ども世界である学校で起きています。でも、当然のことながら、その対応は大人の課題であり、大切なことは、大人がいじめを本気でどのように捉え、大人が真剣にどう取り組むかにあるということです。そんな思いでいじめ問題について考えていきます。
さて、今回のいじめの質問については、文部科学省が公表している調査と、いじめ調査の際に、学校現場で先生から聞いた話を重ね合わせながら取り上げていきます。
早速、文部科学省の平成二十三年度のいじめデータにおける数字をお示しします。
平成二十三年度の愛知県のいじめの認知件数は、小学校で四千五百二件、中学校では三千六百四十五件です。全国では、小学校が三万三千件を超え、中学校が三万件以上とされました。その中で、愛知県のいじめ認知件数は全国ナンバーワンでもあります。このように、毎年文科省から多くのいじめがあったことが報告されています。
そこからさらに、社会問題となった大津市のいじめ発覚後、文部科学省は緊急調査を実施しました。期間は、平成二十四年度の四月から八月のわずか五カ月間の緊急調査でした。
短期間でありながら、その数字はさらに膨れ上がります。愛知県のいじめ認知件数は、小学校で四千五百四十二件、中学校で二千八百十一件もの数値に上っています。全国では、小学校が八万八千件を超え、中学校が四万三千件ほどのいじめ認知件数があったと報告されました。
ここから学校の先生の話を紹介します。
いじめは、人が二人以上いる世界で必ず起こる。不満ややきもち、不信感などは、人と人がかかわれば必ず生じるもの。そこから意地悪が始まる。ここで、本人も周囲もいじめという感覚はまだない。でも、これがエスカレートしてくると、冷やかしやからかい、悪口を言われるようになる。これがいじめの芽であり、多くの学校では、この段階で先生や子どもが気づくとその先生は言います。
ここで、文部科学省の調査を重ね合わせてみます。
文科省の調査では、どこでいじめに気づいたかがわかるいじめの態様が示されています。それによると、調査先の先生がいじめの芽と言われた、嫌なことを言われるいじめは、小学校で六五%、中学校で七〇%とされています。このように、いじめの多くが初期段階で気づかれていることがわかります。最も大切なことであります。
先生の話はまだ続きます。
初期段階のいじめから、先生がいじめに気づかないか、子どもが気づいても見て見ぬふりをすると、さらにエスカレートして、無視から暴力などの本格的ないじめに発展してしまう。この段階になると、誰も気づかないということは考えづらい。しかし、この段階で本人がいじめを受けていないと言い切ったり、周囲が受けとめて対策をとらないと、それが深刻ないじめとなる。
いじめは、あるかないかの二択で生ずるのではなく、ささいなことから徐々に進行していく。それを周囲がとめられないとか、問題でないと受けとめなかったり、面倒や厄介だからと無視していると、エスカレートして、最後は取り返しのつかない深刻ないじめになるんだと教えてくださいました。
ここでも、文科省の調査を重ね合わせてみます。
調査では、仲間外れなどの無視が、小学校で二七%、中学校で二〇%、たたかれる、蹴られるは、小学校が四〇%、中学校が三〇%にもなります。そこから、金品をたかられたり、嫌なこと、恥ずかしいこと、危険なことをさせたりするは数%と、深刻ないじめに進展していることが調査から知ることができます。
申し上げたいことは何か。
例えば、初期段階でいじめに気づくために、毎年実施されている調査を教育委員会がどう生かしているのか、また、緊急調査でどう危機意識を持ち、これから危機管理にどう取り組んでいくのかが重要と考えます。でも、現状は、数字の認識だけで調査は活用されていないと聞きます。
一方、文科省の緊急調査での本県のいじめ解消率は、小中高などの全学校で約七九%とされています。まさかこれでよしとしているのでしょうか。
数字だけ見れば、一定の解決がされたことを示しています。しかし、私には、いじめが毎年のように解消されたとしながらも、なぜ毎年同じようにこれだけ多くのいじめ認知件数が繰り返しカウントされるのかが不思議でなりません。いじめが解決されていなかったのではとさえ思えてしまいます。
データがあるのですから、分析と活用を行うべきです。まして、平成二十四年度の緊急調査でいじめの認知件数が増大した実態があるのですから、なおさらのことです。
また、文科省の調査から、いじめの態様やいじめられた児童生徒の相談状況まで明確にわかっているのですから、さまざま対策や対応を考える上で有効に生かすことができると考えます。
また、先日の教育再生会議の一次提言で、いじめや体罰の根絶のため、現在は正式な教科ではない道徳を正式教科へ格上げすることや、いじめ対策法制定などが挙げられていました。
これからは、子どもに対する予防教育の充実も求められることと思われます。なぜなら、いじめ発覚後の対応だけでなく、いじめの未然防止にも努める必要があるからです。
また、五年前から予防教育を導入したフィンランドでは、九〇%の学校でいじめが減るという一定の効果が出ているという報告もあります。
これを言いかえれば、いじめに求められるのが早い気づきだということです。そのためには、スクールカウンセラーだけでなく、いじめられていると言えない子どもの声を聞き取れる教師や保護者のあり方、さらには、子どもがみずからSOSを発することのできる取り組みが求められます。その中でも、特に、いじめ問題に対応するための教師の力量を高めることが重要と考えます。
そこで、二点お尋ねをいたします。
まず、一点目は、二十四年度の緊急調査の結果を踏まえての総括と、今後にどう生かしていくのか。
二点目は、教師のいじめ対応への力量を高めるために、いじめの予防教育、いわゆる未然防止の取り組みについてどのように考え、これからどう取り組んでいくのか、以上、二点についてお伺いをいたします。
私の壇上からの質問は以上とさせていただきます。当局からの積極的で前向きな御答弁を御期待して、質問を終わらさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
- 24:◯健康福祉部長(五十里明君) 社会的養護に関する御質問にお答えをいたします。
まず、都道府県推進計画のうち、要保護児童数の見込みの試算についてでございます。
都道府県推進計画の策定に当たりましては、平成二十七年度から十五年間の社会的養護を必要とする児童の見込み数を試算することとされており、県内の十八歳未満の児童の人口動態や、社会的養護を必要とする児童数の推移などを踏まえまして、今後、具体的に試算する予定といたしております。
また、県計画の策定スケジュールと児童養護施設当事者等からの御意見を聞く機会につきましては、まずは平成二十五年度中に全ての乳児院や児童養護施設の皆様方への説明や打ち合わせを行い、各施設の小規模化に向けた施設整備計画でございます家庭的養護推進計画を策定していただくことにいたしております。この計画を踏まえ、児童福祉施設関係者の方々と十分協議しながら、二十六年度末までに県推進計画として取りまとめてまいります。
次に、施設の小規模化等にかかわる整備費につきましては、国は、児童福祉施設の新設や、小規模化のための施設を整備する次世代育成支援対策施設整備交付金の中で対応するとされておりますことから、県といたしましても、この交付金を活用してまいりたいと考えております。
次に、里親委託の推進についてでございます。
本県では、社会的養護は、できる限り家庭的な養育環境のもとで愛着関係を形成しつつ、養育を行うことが重要であると考えております。
そこで、あいちはぐみんプランにおきましても、社会的養護を必要とする児童のうち、里親委託の割合を平成二十一年度の一〇・八%から、平成二十六年度には一三%に引き上げる目標を掲げているところでございます。
このため、各児童相談センターにおいて、里親制度の普及や里親の積極的な募集に努めますとともに、児童を委託した里親に対して、育児や家事援助などの里親支援を進めているところであります。
こうした取り組みによりまして、本年二月一日現在、社会的養護を必要とする児童千二百七十名に対し、里親に委託した児童数は百六十四名であり、委託率は一二・九%と目標はほぼ達成できる見込みでございます。
次に、児童家庭支援センターの設置と里親支援専門相談員の配置に対する県の考え方についてでございます。
児童家庭支援センターは、児童に関する専門的な相談への対応や里親支援などを行うこととされております。本県におきましては、児童相談センターが十カ所設置されており、全国で二番目に多い設置数となっておりますことから、児童相談センターが中心となって地域に密着した支援を実施しているところでございます。
こうしたことから、児童相談センターを補完する身近な相談機関でございます児童家庭支援センターの設置につきましては、今後の里親委託の推進状況や、里親支援に対するニーズなどを踏まえながら、引き続き設置に向け検討してまいりたいと考えております。
また、児童家庭支援センターと里親支援専門相談員の同時配置につきましても、今後の課題と考えておりまして、本県といたしましては、早期からの家庭的な養護を推進するため、まずはゼロ歳から三歳の児童が入所しております乳児院から優先して配置していくことにいたしております。本年度は、里親支援専門相談員を乳児院一カ所に配置しており、今後は県内の残り三カ所の乳児院に順次配置してまいります。
次に、一時保護所の新設に伴う児童養護施設の負担軽減についてでございます。
一時保護所は、保護者のいない児童や、虐待等により保護者と暮らすことが一時的に困難となった児童などが、その後の処遇方針を決定するまでの間、一時的に生活する施設でございます。一時保護を行う場合は、特別な対応を必要とする児童を児童養護施設や病院、障害児施設等へ一時保護委託ができることとされております。
本県では、児童虐待相談件数の増加により一時保護児童全体に占める児童養護施設などへの委託率が六一%と大変高い状況にございます。このため、今回、一時保護所を増設し、定員をふやすことによりまして、一時保護委託率を全国平均並みの三〇%程度まで引き下げることができ、委託施設に対する負担も軽減できる見込みであります。
また、専門の職員により、これまで以上に児童の生活において配慮すべき点や心理的ケアに時間をかけることが可能となりますことから、一時保護所における児童のアレルギーや感染症などに対するチェック機能についてもさらに改善されるものと、そのように考えております。
最後に、一時保護所の運営の透明化についてでございます。
一時保護所の運営に当たりましては、国の定めた児童相談所運営指針に基づき、児童養護施設の設備運営基準に準じて適切な運営に努めているところでございます。
これまでも、要保護児童の処遇を審議するため、学識経験者や児童福祉施設長等で構成された愛知県社会福祉審議会に設置しております児童措置審査部会におきまして、個別ケースの検討の中で、一時保護所の処遇等についての御意見を伺ってまいりました。
今後は、この部会において、一時保護所の運営全般につきましても意見を伺う機会を設け、より一層児童の権利擁護と一時保護所運営の透明化に努めてまいりたいと考えております。
- 25:◯教育長(野村道朗君) いじめの緊急調査の結果の総括とこれからの対応につきましてお尋ねをいただきました。
大津市での事案を受け、昨年九月に実施をされましたいじめの緊急調査におきまして、本県の小中学校におけるいじめの認知件数は、約半年間を対象とする調査にもかかわらず、平成二十三年度一年間とほぼ同じ件数が報告されたところでございます。
これは、いじめ問題について、児童生徒、保護者、学校、それぞれの意識、関心が高まった結果でもあると思いますが、見過ごされていたいじめの小さな芽がまだ多くあったということでございまして、相談機能の充実など、これまで以上にきめ細かな対応が必要であると再認識をしたところでございます。
また、今回の調査では、市町村教育委員会や学校がいじめ問題に対応する場合に、警察を初めとする関係機関との連携が十分に図られていないという、こういう課題も明らかになりました。このため、愛知県教育委員会では、一月に各学校に対しまして、警察との連絡窓口となる担当教職員を指定するよう依頼をしたほか、学校や市町村だけでは解決が困難な事案に備えまして、来年度から、弁護士、警察関係者等の専門家を加えた支援チームを組織してまいりたいと、このように考えております。
次に、いじめの未然防止についてもお尋ねをいただきました。
いじめ問題への対応として、早期発見、早期対応が基本と考えておりますが、議員御指摘のように、子供たちの中でいじめを起こさせないようにする未然防止の取り組みも大変重要であると認識をいたしております。
このため、県教育委員会といたしましては、子供たちがお互いを尊重できる健全な人間関係の中で、仲間を思いやる心を育むとともに、善悪を判断する力を育んでいけるよう、昨年度作成をいたしましたいじめの起こりにくい学校・学級づくりを進めるための手引きというものを活用いたしまして、市町村教育委員会の生徒指導担当者を対象に研修を実施しているところでございます。
また、いじめを未然に防止するためには、教師が子供のささいな言動から心の変化を捉えることができる、そういう力量を身につけることが必要でございます。
そこで、心の専門家であるスクールカウンセラーを校内研修などの講師として活用することで、自分の目の前にいる子供たちの人間関係や心情を理解しながら、発達段階に応じた指導や支援ができる力を教師に身につけてもらう取り組み、こういうものも本年度から始めたところでございます。
今後も、早期発見、早期対応に加えて、未然防止についての研修を一層充実させ、いじめ問題に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 26:◯四十五番(原よしのぶ君) それぞれ御答弁をいただきましてありがとうございます。
二点の要望をさせていただきます。
社会的養護についてであります。
まず、施設の小規模化について、国の交付金で対応するという御答弁をいただきました。国で対応してもらう交付金は、活用しながら対応していくことはもちろんであります。でも、やはりそれで本当に各施設が対応できるかどうかという見きわめを県のほうでしっかりしていただいて、サポート体制もぜひともお願いを申し上げたいと思います。
そして、二点目は、里親制度についてであります。
目標数値である一三%にはもうほぼ達しているという御報告を受けました。それはいいことだと素直に受けとめさせていただきます。でも、その一方で、さらに一生懸命やっている地方自治体があることも見逃してはなりません。
新潟県では三〇%を超えていますし、福岡市でも二〇%を超えるなど、積極的に取り組んでいる自治体も数多くあります。愛知県も、これから求められる里親制度を見きわめながら、手を緩めることなく、数値をさらに伸ばしていただくことを要望いたしまして、質問を終わらさせていただきます。
- 27:◯議長(小林功君) 進行いたします。
近藤良三議員。
〔七十三番近藤良三君登壇〕(拍手)
- 28:◯七十三番(近藤良三君) 通告いたしました教育行政について、五点質問をさせていただきます。
まず最初に、いじめ問題に端を発し、かつてない批判を浴びている教育委員会制度についてであります。質問に先立って、批判を浴びている教育委員会制度とは何ぞや、少し歴史を振り返りつつ、教育委員会にお尋ねをし、いただいた資料をもとに確かめてみたいと思います。
この制度は、教育の民主化、教育行政の地方分権及び教育の自主性確保という観点から、昭和二十三年、教育委員会法に基づき設けられましたが、昭和三十一年、地方教育行政の組織及び運営に関する法律により全面改正されました。
したがって、現行教育委員会制度は、昭和三十一年制定の地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づくものであり、教育の政治的中立と教育行政の安定、指導行政の重視、行政の調和と連携ということに重点が置かれ、制定されたものと言われています。
一方、本法により、国や地方公共団体の長の教育委員会に対する権限が強化されたということも否定しがたいとも言われています。
次に、性格でありますが、教育委員会は、地方公共団体の教育行政を行う機関であり、いわゆる行政委員会の一つで、常に合議により職務を執行いたします。そして、教育委員会は、通常五人で構成され、教育委員は、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命いたします。また、教育委員会は、ある程度独立性を有し、かつ政治的中立性確保の原則から無党派的機関であります。さらに、教育委員会は、文科省とは対等、独立であり、地方公共団体の議会、首長に対しても一応独立している機関であり、教育委員会相互間も対等、独立の関係であります。
さて、次に、最近の教育委員会制度について指摘をされている問題点や、制度に関する動向についても見ておきたいと思います。
まず、問題点であります。
問題点その一、平成十七年文部科学省中央審議会教育制度分科会まとめでは、教育委員会は、事務局の提出する案を追認するだけで実質的な意思決定を行っていない。
教育委員会が地域住民の意向を十分に反映したものになっておらず、教員など教育関係者の意向に沿って教育行政を行う傾向が強い。
地域住民にとって教育委員会はどのような役割を持っているのか、どのような活動を行っているのかが余り認知されていない。
問題点その二、平成二十一年度内閣官房教育再生懇談会第三次報告では、首長、教育委員、教育長の間で過度の相互抑制が働き、教育行政に関する責任の所在が不明確。
委員が非常勤等なため、名誉職になりやすく、事務局の追認機関と化している等々であります。
次に、最近の動向についても見ておきたいと思います。
平成十九年三月中教審答申、教育基本法改正を受けて必要とされる教育制度の改正についてでは、教育委員会制度については、教育における政治的中立性や継続性、安定性の確保、地方における行政執行の多元化等の観点から、全ての地方自治体に設置する等の現在の基本的な枠組みを維持することが必要である。
平成二十一年十月地方分権改革推進委員会第三次勧告では、教育委員会を引き続き存置するか、それとも、これを存置せず、その所掌事務を長の所管とするかについては、地方自治体の組織のマネジメントの自由度を高める観点から、地方自治体の判断によって任意に選択することができるように改めるべきである。
平成二十四年十二月二十日日本経済新聞文科省教育委員会制度改革案では、今後の議論のたたき台、改革案として、一、教育委員会を残し、首長との連携を強める、二、首長が任命する教育長が教育行政を担い、有識者らでつくる教育監査委員会がチェックする、三、首長が教育行政を担当し、教育監査委員会がチェックするの三つの選択肢を挙げた。
自民党マニフェスト、政権公約では、首長が議会の同意を得て任命する常勤の教育長を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本改革する等々であります。
確かに教育委員会は、言われているように、いじめ、体罰など、児童生徒の命にかかわるような重要な事案に対して有効な対応ができていないのは事実であります。無責任であるという批判にも反論ままならぬようであります。
また、教育委員会委員は非常勤、多くは月一、二回の会合と実質的な活動が少なく、責任の所在が不明確で、委員会審議等も形骸化しているのではないかとも言われています。
しかし、とはいえ、現行教育委員会制度は、曲がりなりにも地方自治及び地方分権の尊重の考えに基づきつくられた制度であり、一定の政治的中立性も備えた制度であります。さらに、教育長初め有能な事務局も存在をしています。
無責任、形骸化、事務局追認機関等々の指摘、批判に対して、教育委員会は十分対応できる組織であると思っていますし、また、対応、改革しなければならないとも思っております。
現状、政治の側から教育委員会制度の見直しが強く求められていますが、私は、政治の直接関与はできる限り抑制すべきと考えています。
そこで、二点質問させていただきます。
質問の一、無責任、形骸化、事務局追認機関等々の教育委員会への指摘、批判に対して、教育委員会はどのように受けとめてみえるのか、まずお示しください。
また、こうした指摘、批判に対し、どのように対処していかれるのかお示しをください。
質問の二、政治の側から抜本的な見直しが求められている教育委員会制度、当事者である教育委員会は答弁しにくいかもしれませんが、政治と教育行政との距離感であります。中立性の確保の観点からも、政治と教育行政の距離感、どう保つべきか、教育委員会の答弁を求めます。
次に、いじめ、体罰にかかわっての質問をさせていただきます。
いじめ、体罰に関する報道が連日なされています。そして、その内容が明らかになってくるにつれ、腹が立つやら情けなくなってまいります。
二月一日には、中日新聞第一面に、「大津中二男子、第三者委員会が報告書、『見逃し』学校に責任」と大見出しで掲載。そして、解説では、「市教委の隠蔽体質断罪」との見出しをつけ、第三者委員会は、市教委がよりどころとした遺族の家庭の事情も調査した。証拠の積み重ねで、父親の虐待などのうわさ話に根拠がないことを突きとめた。逆に、市教委が事実調査より法的対応を優先したことや、組織防衛に走りやすい体質を挙げ、人倫に反するとまで断罪した。報告書は、教員の多忙さや、身分の不安定な講師が指導に当たるなど、いじめを見過ごしてしまう問題にも触れた。越直美市長は、教育委員会のあり方も再検討すべきと主張しており、厳しい目が向けられる中、教育行政の変革が求められる。大津いじめ以降、全国的にいじめ問題の意識が高まった。第三者委員長は、一過性で終わらせてほしくないと話しており、教育現場での意識改革の広がりが必要云々と。
そして、いま一つ、いじめに続いて、今度は教師の体罰事件であります。一月中旬からの各新聞社の記事に目を通しました。
その一例をまとめてみますと、昨年十二月二十三日、大阪市立桜宮高校二年生でバスケットボールの主将を務めていた男子生徒が自宅で自殺していたことが明らかになった。市教育委員会が今月八日になって公表。母親によると、生徒は三十から四十発殴られたと証言。顧問は市教委の調査に、部内での常習的な体罰を認め、部を強くするため必要だと正当化。桜宮高校のバスケットボール部での体罰情報は、二〇一一年九月に市の公益通報窓口を介して市教委に寄せられた。ところが、市は市教委に調査を任せ、市教委は校長に調査を指示、高校は生徒からの聞き取りはしないで、顧問からの体罰なしとの回答を得、市教委に、市教委は校長の報告をもとに市に回答、市も了承し、情報を得てから三カ月余りで解決済みとした。学校現場も市教委も体罰を軽く考え、組織防衛や自己保身の意識が先に立ち、穏便に済ませようと意図したのではないか。いじめ自殺問題で後ろ向きに終始した中学や教育委員会とそっくりの事なかれ主義が透けて見える。桜宮高校二月に予定していた体育科とスポーツ健康学科の入試を取りやめた。市教委が入試の中止を拒否するなら予算を出さない。橋下市長の強硬姿勢が異論を封じ込めた。優先すべきは入試の中止ではなく、実態を調べて、勝利至上主義の風潮を改め、責任を明確にして再発防止につなげることだ。政治的パフォーマンスが感じられる橋下市長に対し、市教委は見識を示せなかったのか等々であります。
さて、長々と新聞の報道を申し上げてまいりましたが、愛知県においても、大津市、大阪市の問題は対岸の火事ではありません。豊川工業、刈谷工業、さらに、三河での自閉症児への体罰を初め、名古屋市を除き、体罰処分件数は、平成二十二年、十五件、平成二十三年、十一件、平成二十五年二月二十日現在、十件ありました。そして、いじめの認知件数は、平成二十三年度、小学校四千三百二十六件、中学校三千五百七十四件、高等学校二百八十九件であります。それぞれ対応はされているものの、依然として多いと言わざるを得ません。
私が申し上げるまでもなく、いじめ、体罰はいじめられる側の、体罰を受ける側の人権を傷つけ、人としての尊厳を損なうことであります。まさしく人権そのものが問われる問題であります。教育委員会は、人一倍人権には敏感であっていただかなければなりません。
そこで質問をさせていただきます。
一連の新聞報道で明らかになってきている大津市いじめ問題、大阪市の体罰問題の学校現場、教育委員会の対応については、先ほど述べたようなさまざまな課題があったと考えていますし、とりわけ教育委員会は、現在まさしくその存在意義が問われています。県教育委員会としては、みずからの問題として、このいじめや体罰をどのように受けとめ、こうした問題に今後どのように取り組んでいかれるおつもりか、県教育委員会を代表して、教育委員長さんに御答弁をいただければ幸いです。
次に、教員の資質向上の取り組みについて質問をいたします。
中央教育審議会は、昨年八月、教員養成を修士レベルで行う必要があるとして、複数の免許創設を盛り込んだ教員の資質向上策を文科省に答申いたしました。確かに教員に求められる必要な知識、技量は高度になってきており、教員の専門職化、高度化は避けて通れない課題であると思っています。
しかし、一方、現場の教師に目を向けてみると、初任者研修、五年・十年者研修、そして、免許更新時受講等、研修を受けるのに忙しく、子供たちと向き合う時間も十分持てていないのが現状ではないでしょうか。
以前、議会一般質問の場において、私は、当初から、教員になりたいという強い教員志望動機を持った学生でなくては六年制の養成課程には挑戦しない。学生は学生生活の中でさまざまな経験をし、進路変更もし、自分自身を評価しながら、改めて教員志望に移る学生も多くいる。人材育成の枠組みは柔軟であることが望ましい。そして、いま一つ、教員は現場で育つものであり、今の教員たちが精神的に健康な形で自分たちの力を十分に発揮できる環境を制度よりも先につくることが必要と申し上げてまいりました。
繰り返しますが、教員の資質向上、まず、教育環境の整備が先決なのであります。
さて、平成二十五年度政府予算案では、財務省と文部科学省の合意により、今後の少人数学級の推進については、習熟度別指導等とあわせ、文科省において、その効果について、平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し、十分な検証を行いつつ、教職員の人事管理を含めた教職員定数のあり方全般について検討するとし、三十五人学級の推進は認められず、先送りとなりました。愛知県も右に倣えのようであります。
一方、国は、現場教員に対し、いじめ、不登校、非行問題への対応はもちろんのこと、子供の学力の向上、さらには資質向上のため、免許更新時における講習受講も求めているのであります。
そこで、二点お伺いいたします。
質問の一、教員の資質向上にとって、今特に必要なことは、教員が子供たちとじっくりと向き合う時間的余裕のできる環境の整備が第一であると考えます。県教育委員会におかれても、現場の多忙さは十二分に御認識されていると存じています。少人数学級の拡充、正規教員の増員が喫緊の課題であります。県みずからの御努力とともに、国に強く働きかけることが必要であります。県教育委員会の取り組みについて答弁を求めます。
質問の二、免許更新制、教員の資質向上を求めるものですが、教員の資格、職を維持するため、強制を伴う制度であります。受講費用及び更新事務手数料等、負担軽減措置を求める声もありますが、そうした声に応えていく必要もあるのではないかと考えます。県教育委員会の見解を求めます。
次に、就学援助にかかわって質問をいたします。
長引く景気の低迷で、子供の義務教育費さえ賄えない家庭が増大しています。本県の就学援助の状況を県教育委員会に尋ねてみました。
学用品等援助を受けた準要保護児童生徒数は、平成二十一年度、五万六千七百二十四人、在学者に占める率にして八・八五%、平成二十二年度、五万九千八百七十七人、九・三九%、平成二十三年度、六万六百人、九・五二%と徐々にふえてきています。全国では、平成二十三年度において、小中学生合わせて、要保護一割を含めて百五十六万人余にも上り、全体の約一六%を占め、過去最大だそうであります。
学校教育法では、経済的な理由で就学が困難と認められる子供の保護者を対象に、市町村は必要な援助を与えなければならないと定めています。そのうち、市町村が独自の基準で要保護に準ずる程度に困窮していると認定した子供を準要保護といいますが、どこまで援助するかは自治体の裁量に任されています。厳しい財政事情から援助枠を切り詰める自治体がふえてきていると新聞報道等で伝えられています。
さて、二〇一三年度政府予算案で生活保護費の引き下げが決まりました。生活保護基準を目安に適用条件が設定されている公的給付なども多く、結果として保護世帯以外の低所得者世帯にも影響が及んでまいります。就学援助もしかりです。国は、就学援助の支給水準が引き下がることがないよう仕組みを考えるとしていますが、まだその具体策は明らかになっていません。
所得が低い世帯で育つと教育を受ける機会などで不利になり、安定した仕事につきにくく、貧困の連鎖につながっていくと言われています。貧困の連鎖は断ち切らなければなりません。日本の社会は競争社会ではありますが、しかし、前提として、そこには公正公平な競争が求められるのであります。
国は、生活保護費を切り下げる一方で、孫一人につき教育資金を千五百万円まで非課税で生前贈与できる制度を新設いたしました。格差の拡大であります。公正公平な競争の前提が崩れてしまいます。
そこで質問をいたします。
国は、就学援助の支給水準が引き下がることがないような仕組みを考えるとしていますが、就学援助は市町村の裁量に任されています。保護基準の切り下げを機会に援助枠を切り詰める市町村が出てくることが懸念されます。
これは市町村の自治事務であるから市町村で取り組まれるものということではなく、公正公平な競争、全ての子供の最低限の教育環境の整備の問題です。県もみずからの問題として考えていただかなければなりません。
こうした問題に対する県教育委員会の認識とあわせて、県独自の対応策も必要と考えますが、その見解を求めます。
次の質問に移ります。
最後の質問になりますが、教育懇談会についてであります。所管は知事政策局ですが、教育行政と密接に関連することから、ここで質問させていただきます。
大村知事は、この教育懇談会の設置趣旨等を、教育については、まさに一人一人皆さんお考えがあるということだと思いますが、私自身も教育委員会と協議しながら、やっぱり選挙で選ばれた首長が、その地域の子供たちの教育、それから、そういった青少年の育成に責任を持つことがあっていいのだろうと思っていますと。そして、この教育懇談会、ありとあらゆる観点で御意見をいただいて、教育の課題を一回全部洗って、そして、具体的なことは専門家といいますか、事務方を含めてやっていただければいいと思いますが、大きな方向性、課題を鋭く御指摘いただいて、それを生かしていければいいというふうに思っていますとも述べられています。
この懇談会、第一回目のテーマは、愛知の教育を巡る現状と課題、二回、社会の成熟化に対応した中等教育のあり方、特色ある高等学校づくりや高校入試のあり方、三回、少子化時代に対応した公立・私立の教育のあり方、四回、愛知の特別支援教育のあり方と、今日まで四回開催されています。
開催された四回の懇談会の議事録に目を通させていただきました。知事のおっしゃっているとおり、教育については、一人一人皆さんお考えがあるということだと思いますが、さまざまな議論が活発に交わされ、貴重な御意見等あり、有意義な懇談会をなさってみえると拝察するところであります。
さて、教育の営みは社会の営みの一つであり、社会を継続していく重要な営みであります。そういった意味から、教育に対して社会からさまざまな要請がなされるのはもちろんのこと、政治からの要請も当然あります。教育のみ唯我独尊というわけにはまいりません。とはいえ、日本には、戦前の教育のあり方の反省を踏まえ、現行法制のもと教育委員会制度があり、ある程度の独立性と政治的中立を保ちつつ、安定した教育行政が行われています。
そうしたことから、いじめの問題の対応等からかつてない批判を浴びている教育委員会制度ですが、選挙で選ばれた首長が教育委員を議会の承認を経て任命するものの、教育行政の方針決定には直接かかわらない仕組みとなっています。
私は、選挙で選ばれた首長がその地域の教育に責任を持つ、このことについて否定するものではありませんし、必要とも思っています。しかし、大阪橋下市長、東京前石原知事の手法はいかがなものかとも思っています。やはり政治との距離感であります。
知事は、教育懇談会において教育委員会と協議しながら、やっぱり選挙で選ばれた首長がとおっしゃっている一方で、懇談会で議論された入試制度については、教育委員会のほうで検討会議を設置しており云々と、いま一つ教育行政との距離間が見えてまいりません。
そこで、二点質問をさせていただきます。
知事の現行教育委員会制度への御認識と、知事の首長と教育行政との距離感について、お考えがあればお示しをください。
質問の二、今後も継続して懇談会は開催されていくものと思っていますが、これからまとまった意見や、あるいは提言はどのように具体化されていかれるのかお示しをください。
また、今後開かれていく懇談会、委員の人選も幅広にと思いますが、委員の人選についてもお考えがあればお示しをください。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
- 29:◯教育長(野村道朗君) 教育委員会制度についてお尋ねをいただきました。
まず、制度に対する指摘、批判への受けとめ、対処についてお答えをいたします。
教育委員会制度に対しましては、形骸化、事務局追認機関など、さまざまな問題点が指摘をされておりますが、教育委員会としては、こうした指摘については真摯に受けとめなければならないと考えております。
このため、教育委員による学校や社会教育施設等の現地調査や、県教育委員と市町村教育委員会、PTAや学校評議員等との意見交換会等を積極的に実施することにより、地域住民の意向や所管機関の状況の把握に努めているところであります。
また、従前から教育委員会会議の開催日や議事録をホームページで公開するとともに、教育委員会の実施する事業等を広報することによりまして、地域住民の県教育行政への理解も図っております。
今後とも、地域の実情や多様な県民のニーズを十分に酌み取りながら的確に判断するとともに、主体的な情報発信にも努めてまいりたいと考えております。
次に、政治と教育行政との距離感についてお尋ねをいただきました。
教育は、個人の内面的な形成に直接影響を与えることから、政治的中立性の確保が求められるものであります。また、子供たちの健全な成長のためには、学習期間を通じて一貫した方針のもと、安定的、継続的な教育が行われることが必要であります。
こうしたことから、教育内容はもとより、学校の管理や教職員の人事などは独立した行政委員会である教育委員会が担うべきであると考えておりますが、一方、地方公共団体のトップでもある首長も、教育委員の任命や予算編成などを通じまして、教育行政に大きな役割と責任を持っているところであります。
また、昨今の教育を取り巻く課題がますます複雑かつ多様になってきている中で、学校はもとより、家庭や地域、産業界、大学など、社会全体が協力して子供たちを育てていくということが非常に大事になってきており、この意味でも、首長と教育委員会が連携して教育行政を推進していくことが重要であります。
そうした考えのもと、本県教育の基本理念や目標を掲げましたあいちの教育に関するアクションプランIIにつきましても、知事部局や警察本部、さらには市町村などと幅広く連携しながら策定したところでございます。
県教育委員会といたしましては、今後とも、首長である知事と協力し合いながら、本県教育の充実・発展に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、資質向上の取り組みについてのお尋ねのうち、まず、少人数学級の拡充や正規教員の増員への取り組みについてでございます。
平成二十五年度の政府予算案では、議員お示しのとおり、小学校第三学年以降の少人数学級の実施は見送られることとなりました。このため、これまで本県が国に先行して実施をしてきた小学校第一学年、第二学年及び中学校第一学年での三十五人学級を他学年に拡大することは、残念ながらできなかったというところでございます。
しかしながら、さまざまな教育課題に対応するため、これまで国の定数改善を最大限活用いたしておりまして、来年度においても積極的な活用を図り、喫緊の課題であるいじめ問題や発達障害等の児童生徒に対応するための教員の確保に努めたところでございます。
今後、少人数学級の拡充や教員の増員には定数改善計画が必須と考えておりますので、国に対しましては、その早期策定と確実な実施について、引き続き強く要請をしてまいりたいと考えております。
次に、教員免許更新制についてお尋ねをいただきました。
現場の教員にとりましては、学校行事や教材研究、生徒指導など、さまざまな業務に追われる多忙な中で更新講習を受講することとなるほか、特に十年を経過した教員は、法定の十年経験者研修とあわせて、更新講習を受講しなければならない場合もございます。このため、受講しやすい環境を整えていく必要があることは十分に認識をいたしておりますが、受講料等の経費につきましては、教員免許は個人の資格であり、個人が負担することが原則と考えられますので、県として軽減措置を図ることは考えておりません。
次に、生活保護基準の見直しが就学援助に与える影響について、県教育委員会の認識と対応策についてお尋ねをいただきました。
就学援助制度は、経済的理由により子供たちの教育を受ける機会が妨げられることがないよう市町村が必要な給付を行うものでございまして、貧困の連鎖を断ち切り、教育の機会均等を確保する上で非常に重要な制度と認識をいたしております。
したがいまして、生活保護費の給付水準の適正化を図るために行われる今回の見直しによる影響を及ぼしてはならないと、このように考えております。
文部科学省におきましても、これまで要保護者として就学援助を受けていた者については、生活保護基準の見直しの影響を受けないよう扱うとともに、準要保護者についても、国の取り組みの趣旨を理解した上で判断するよう市町村に依頼するとの方針を示しております。
県教育委員会といたしましても、国の動向を注視しながら、市町村に対しまして就学援助制度の趣旨に沿った対応をしていただくよう働きかけてまいりたいと考えております。
また、国に対しましては、引き続き準要保護者に対する就学援助制度の水準が維持できる十分な財源措置を強く要請してまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。
- 30:◯教育委員長(平石賢二君) いじめや体罰についてどう受けとめ、どう対応していくのかお尋ねいただきました。
私は、学校は、子供たちが社会で役立つ人間に成長していくためにみずからを高めていく場所であり、その子供たちの成長の支えとなる自己肯定感や安心感、成就感、連帯感など、肯定的な感情が抱けるような心の居場所でなくてはならないと考えております。そのため、学校においては、児童生徒同士、児童生徒と教職員の間に確かな信頼関係が築かれていなければなりません。
いじめ問題に関しては、未然防止に努めるともに、児童生徒の心や体を深く傷つけるような深刻な事態を招く前に早期発見、早期対応することが学校に求められていると考えております。
一方、体罰による指導は、子供の人格を否定し、大人への不信感や疎外感を植えつけるばかりでなく、学校への信頼を大きく損ねるものであり、全ての教職員が体罰は決して許されない行為であるという強い自覚を持つことが何より重要であると考えております。
この観点から、私は、教育委員会会議の協議も踏まえ、教育委員長として、全ての小中学校及び県立学校の教職員に対し、体罰の防止に向けてのメッセージを発信いたしました。
あわせて、研修による教職員の指導力の向上に努めるとともに、スクールカウンセラーの有効活用や、セーフティネットとしての相談窓口を設けるなどの対応策の充実を図っているところであります。
県教育委員会といたしましては、市町村教育委員会とも連携して、各学校において、校長のリーダーシップのもと、全ての児童生徒が自分は大切にされているという実感が持てるような指導や教育活動が工夫され、いじめや体罰のない児童生徒と教職員が信頼関係で結ばれた学校づくりが進められるよう取り組んでまいります。
- 31:◯知事(大村秀章君) 近藤議員のお尋ねのうち、最後にお尋ねいただきました私の教育委員会制度への認識、それからまた、首長と教育行政との距離感、教育懇談会の進め方などにつきまして御質問をいただきました。
まず、現行の教育委員会制度についてということでございますが、私は、教育における政治的中立性や継続性、安定性の確保、地域住民の意向の反映などを目的として導入されたものだというふうに認識をいたしております。
一方で、知事、市長といった首長は、教育委員の任命や予算編成などを通じまして、その地域の教育行政に大きな責任を負っていると、こういうことでございます。
ということでございまして、私はかねてから申し上げておりますが、選挙で選ばれた首長がその地域の子供の教育に責任を持つべきであるというふうにも考えておりまして、知事と教育委員会が大きな教育の目標、方針を共有していくということが何より重要であると考えております。
そうした中で、昨年五月には教育懇談会を立ち上げ、愛知の教育が抱える重要テーマにつきまして、より大きな観点からその課題や取り組みの方向などを議論してきたところでございます。
この教育懇談会で浮かび上がってきた課題につきましては、この教育懇談会で二回目に議論をしたのが高校の入試制度ということでありまして、その議論を受けた形で、現在、教育委員会におきまして、入試制度の改善の検討を進めていただいているわけでございます。
また、来年度、教育委員会と関係部局が共同して特別支援教育推進計画を策定するなど、教育委員会を初め、関係部局におきまして、順次施策の具体化や制度設計など、これを進めていきたいと、こういうふうに思っております。
また、教育懇談会におきましては、これまでも教育関係の学識経験者のほか、経済界、また、シンクタンクの方など六名の固定メンバーに加えまして、その時々のテーマに応じまして、専門家や関係者にも特別参加いただきながら進めてきたところでございます。今後も必要に応じまして、専門家や関係者等をお招きし、幅広く意見を伺ってまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、人づくりというのがこれからの県政の根幹とも言える大変重要なものだと、こういうふうに認識をいたしておりますので、引き続き教育委員会と十分協議しながら、愛知の教育の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 32:◯七十三番(近藤良三君) 時間もありませんので、要望にとどめさせていただきますけれども、教育委員長さんの生の声は、教育委員就任の挨拶以来かなというふうに思っております。これから遠慮なさらずに、この本会議の中で野村教育長に負けずにどんどん発言していただくことを要望いたしまして、終わらさせていただきます。ありがとうございました。
- 33:◯議長(小林功君) 進行いたします。
青山省三議員。
〔四十三番青山省三君登壇〕(拍手)
- 34:◯四十三番(青山省三君) 通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
初めに、海外産業情報センターについてお伺いをいたします。
私も昨年、愛知県議会海外調査団に参加をさせていただき、十月二十一日、成田空港より、世界最大級でエアバス社のA380にて、ドイツのフランクフルトへ約十二時間かけて到着をいたしました。さらに、乗り継ぎの待ち時間は三時間もあり、それから一時間十分もかけてようやくベルリンに到着をいたしました。つくづくヨーロッパが遠いことを実感させていただきました。
最初に、ドイツのベルリンにあるハインリヒ・ベル財団を訪問して、ドイツのエネルギー政策などを説明していただき、続いて、ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全省をお尋ねして、電気自動車等普及促進施策に関するお話をお聞きいたしました。
次の日、ハンブルクに移動して、ハンブルク経済振興公社と三菱パワーシステムズ社で、再生エネルギーの研究開発状況などの説明を聞いて調査させていただきました。そして、フランスのトゥールーズでは、エアバス本社とフランス国立宇宙研究センターにて、航空宇宙産業についての調査をさせていただきました。
ドイツでは、エネルギー政策に関して、目標を二〇五〇年までに発電の分野では八〇%から一〇〇%を再生エネルギーに転換するというものであります。
また、フランスでは、航空宇宙産業事情に関する調査と文化芸術の振興施策に関する調査をさせていただきました。フランスのエアバス社では、今後も航空宇宙産業はますます成長する分野であり、二十年後の二〇三一年には四・七%の成長を見込んでおります。
その中でも、特に二〇三一年までの航空予測では、アジアが一番に伸びると予測をしています。航空機の数も、二〇一二年の一万五千五百五十六機から、二〇三一年には三万二千五百五十一機となり、そのうち、新たな飛行機需要は二万七千三百四十七機と見込んでおります。
エアバス社は、これまでに一万一千八百六十一機を三百四十二社に販売してきましたが、既に今現在受注を受けている航空機の数は四千四百機だそうです。その中でも一番の売れ筋はA320であり、主にローコストキャリアやチャーター機などに使われております。二〇一五年には、A320neoを販売する予定だそうです。
私どもの愛知県内にも、多くの企業が航空宇宙産業や再生エネルギー産業に進出し、海外でも活躍をされているとお聞きします。今後、国際化がますます進む中で、世界と闘える愛知を実現するためにも、航空宇宙産業はもとより、貿易取引や企業の海外進出と、さらには対日投資等、海外との産業交流を一層活発化し、県内企業の海外展開を支える必要があると思われます。
こうした状況に対処するため、愛知県では、海外産業情報センターをフランスのパリとアメリカのサンフランシスコ、中国・上海の三カ国にあるジェトロ事務所内に共同事務所として設置をされ、海外産業情報センターを所管する産業労働部によりますと、海外情報収集等により中小企業の海外活動の支援をするとともに、対日投資や外国人観光客の誘致を行っており、県内産業の活性化をより促進し、世界と闘える愛知にしていくことを目指しているとのことであります。
今回のドイツ、フランスの調査にも、海外産業情報センター、フランス・パリの駐在員による現地の情報や状況を提供していただき、現地では、到着してから帰国するまで一週間も私どもに同行をしていただきました。
しかし、今回の海外調査で、私だけの感想かわかりませんが、愛知県内の企業が海外産業情報センターを活発に利用しているようには感じられませんでした。
そこで、私は、このセンターが実際にどのように活躍をされているのか、事業内容や実績などについて質問をさせていただきます。
初めに、愛知県では、アメリカ・サンフランシスコの海外産業情報センターを二〇一三年度に廃止し、欧州地域を担当してきたフランス・パリの海外産業情報センターを二〇一四年度に廃止するとお聞きしております。そして、新たにタイ・バンコクに海外産業情報センターを開設されるそうですが、今までに海外産業情報センターは、県内の中小企業の海外活動の支援や、対日投資や、外国人観光客の誘致などを行い、御活躍をされてきたとお聞きしております。
これら三カ国の海外産業情報センターは、これまでにどのような取り組みをされ、どれだけの実績を上げられたのかを具体的に教えてください。また、海外産業情報センターの運営管理及び職務権限などはどのようにされているか、職員の教育をどのようにされているかも教えてください。
次に、本県が次世代の核と位置づけしている再生エネルギー開発や航空宇宙産業を促進していくために、欧州やアメリカは大変に重要な国と思われますが、パリとサンフランシスコの海外産業情報センターを廃止されるのはどのような理由なのか。例えば、これまでにこの二カ国の海外産業情報センターは目標を達成して、役割が終わってしまい、必要でなくなったから廃止されるのか、あるいはさきに述べたように、それほど需要が多くなく、成果も上げられなくて必要とされていないために廃止されるのかお伺いします。
また、アジアにおける支援機能強化のため、バンコクに海外産業情報センターを新たに開設されますが、アジアの中でなぜバンコクを選ばれたのか、また、バンコク、上海に次ぐ拠点をどのように考えられているのかをお答え願います。
次に、亜炭坑の陥没についてお伺いします。
今月の初めに、次のような新聞記事が載っておりました。「眠る亜炭坑 陥没の恐れ」。
宮城、岩手の両県で東日本大震災の発生以降、地面が突然陥没する事故が四百件以上起きていることがわかりました。地下に一九六〇年代まで亜炭を採掘していた廃坑があり、地震の揺れで崩落したと見られます。そして、この東海地方も両県と並ぶ亜炭の産地だったことから、多数の廃坑が放置されており、南海トラフ巨大地震が発生した場合、陥没するおそれがあります。
この記事を読んで、ふと思い出しました。私の幼いころ、私の父は亜炭坑で炭坑夫として働いていた覚えがあります。家の近くに亜炭を採掘したときにできたぼた山があり、そのぼた山で良質の亜炭を拾い出し、母がしちりんやかまどで火を起こし、煮炊きをしたり、お風呂を沸かしたりした姿が今でも目に浮かびます。
亜炭はもともと石炭の仲間ですが、この地域では、炭素量が七〇%以下の質の悪い褐炭をいつのころからか亜炭と呼ぶようになりました。また、愛知県の亜炭は炭化が進まず、樹木の姿がそのままのものが多く、イワキとも呼ばれていました。亜炭坑で採掘した亜炭を荷馬車が瀬戸街道を行き来していたことも覚えがあります。
亜炭坑は、明治のころから昭和四十年ころまで採掘され、愛知県では、名古屋市の東部地区、守山志段味地区、春日井、小牧地区が存在しています。
採掘のピークは昭和二十四年ごろで、戦後の混乱期は一種の無法状態が続き、盗掘や侵掘が横行していました。民生の安定化が進み、鉱業法・鉱山保安法の整備が整ったこともあって、その後、正常な鉱業活動が行われるようになりました。
しかし、昭和三十年代半ばには重油が自由化され、エネルギー革命の到来により亜炭産業が急激に衰退をしていき、昭和四十年代の初めには、名古屋通産局管内にあった二百近い亜炭鉱山のほとんどが姿を消すことになりました。
また、このころより高度成長が始まり、名古屋市の東部及び周辺の尾張旭や日進市、春日井市では、土地の開発が活発になり、今までは、単なる雑木林であった亜炭採掘跡にも住宅地が拡大し、造成などによって地下の空洞の環境が変わり、残柱や天盤が風化、劣化して、陥没や不等沈下等の鉱害が各地で多発するに至っております。平成二十二年十月に岐阜県御嵩町で発生した亜炭坑の陥没は、まだ皆様の記憶にも新しいと思います。
亜炭を掘らなくなってから既に五十年以上が過ぎ、空洞が地下にあることすら忘れられてしまっていますが、東北地方のように大震災が発生すれば、陥没のおそれが十分にあり、大災害につながってきます。
私のまち尾張旭でも、私が記憶しているだけでも五カ所の亜炭坑があったと思います。そのうち三カ所の亜炭採掘跡地が住宅地域になっております。
実際に平成四年に市制二十周年の記念に建設された尾張旭の象徴、スカイワードあさひが建設される際、地盤調査の折に地下に亜炭採掘による空洞があることが発見され、設計変更がなされております。このように、多くの亜炭採掘跡での陥没のおそれがある危険箇所が存在をしています。
そこでお伺いいたします。
いつ発生してもおかしくない南海トラフ巨大地震が発生すれば、大災害につながることはわかり切っており、県民の生命、財産が毎日脅かされています。もちろん、亜炭廃坑を管轄しているのは国の資源エネルギー庁でありますが、愛知県当局として、亜炭坑跡の陥没についてどのように対処されているかお伺いいたします。
また、愛知県民の生命と財産、安心と安全を守る愛知県当局としては、現在進められている南海トラフの巨大地震の被害予測調査の中で、亜炭廃坑についてはどのような検討をされているかお伺いいたします。
次に、毎回質問をさせていただいております警察行政について、再び質問をさせていただきます。
初めに、警察施設の老朽化が進んでいるため、愛知県警察本部では、警察施設整備計画を作成し、順次整備を進められております。そして、豊田警察署の建てかえを平成二十七年度の完成を目標に進められております。そして、うれしいことに、来年度より愛知警察署の建てかえの調査費が計上され、また、老朽化した交通安全施設も順次整備をしていくとのことでございます。本当にありがとうございます。
そして、平成二十一年度に作成された警察施設将来構想の中に、運転免許試験場をリニモ沿線に移転する構想があります。平成二十三年度の警察委員会においても、永井議員が警察施設の将来構想を進めていくための予算の確保についての質問をされ、また、愛知県財政の厳しい中で、警察施設の建てかえ及び施設の有効活用についても質問をされていますが、警察本部の警務部長は次のように答弁をされております。
平成二十一年八月に警察施設将来構想を作成し、これらを基本に推進しています。県費で整備等が必要な施設は大小合わせて九百程度あり、毎年度県当局と議論をしています。
次に、天白区平針にある運転免許試験場の整備構想については、リニモ沿線への建てかえを計画しています。この構想においては、年間七十万人以上が来訪する運転免許試験場にあわせ、名古屋市北区にある第一交通機動隊や、その他複数の警察関係施設を集約することによって建築コストを低減することや、跡地の有効利用を考えています。
また、このリニモ沿線への移転建てかえについては、リニモの活性化という観点からも有効ではないかと考えていますと県警本部の警務部長が御答弁されていますが、覚えておられますか。
また、平成二十三年度の六月本会議と平成二十四年度の六月本会議においても、私も運転免許試験場のリニモ沿線への建てかえについての一般質問をさせていただきました。そして、そのときにも県警本部長は同じ答弁をされています。私も、リニモ沿線が活発化するすばらしい構想だと当局を絶賛していました。
しかし、愛知県当局は、何の前ぶれもなく、急遽、運転免許試験場のPFI方式による運転免許試験場の現地建てかえでの計画に調査費を来年度予算計上されました。
私は、リニモ沿線の地元議員でもなく、また、平針運転免許試験場の地元議員でもありませんので、どちらの構想でも、愛知県民が納得していただき、愛知県として有意義で最適な構想であれば何も言うことはありません。
しかし、私は、警察委員会やこの議場での質問に対しての答弁をされてきた案件が、何の説明もなく簡単に運転免許試験場のPFIによる現地建てかえ計画に調査費がついたことに対して理解ができませんので、二、三質問をさせていただきます。
初めに、愛知県警察本部にお伺いいたします。
警察施設将来構想を作成してから四年目ですが、県財政が大変に厳しい折、その後、この構想はどこまで進んでいるか、進捗状況を御説明お願いします。
また、運転免許試験場のリニモ沿線への建てかえする計画も警察施設将来構想の中にありますが、警察委員会での永井議員の質問に対しても、そして、私の二度にわたる本会議での質問に対しても、運転免許試験場のリニモ沿線への建てかえを進められている御答弁をされています。その後、どのように進捗しているか、御説明をお願いします。
そして、警察本部は総務部との打ち合わせなどをいつごろから何度ほど行われ、運転免許試験場のPFIによる建てかえ計画をどの時期にお聞きになったかお教えください。
続いて、愛知県当局にお伺いします。
平針運転免許試験場のPFI方式による現地建てかえでの調査費を計上されました。本県の財政面や今後の運営に対して、私も大変すばらしい構想だと思います。
PFI導入による成功例を挙げられました愛知県森林公園ゴルフ場の施設は、不特定多数の方々が余暇を楽しむための施設で、ゴルフ場の利用をするしないは利用者が決められ、判断をされるため、経営手腕が確かに試されます。それに対して運転免許試験場は、運転をしようとする県民は、必ず決められた料金でその施設を使用しなければなりません。いわば独占的な事業なのです。
だからこそ、運転免許試験場のPFIを導入するための調査研究を行うことは私も大賛成ですが、先日の一般質問に、運転免許試験場のPFI導入による建てかえや施設運営の必要性は質問されましたが、建てかえに対する具体的な時期は質問をされていませんでした。それなのに、まだ調査もされていないこの段階に明確な入札の時期まで答弁をされています。県警本部が四年が経過しても結論が出ない案件になぜ県当局はそんなに急がれるのか、詳しく御説明をしてください。
次に、PFI導入による運転免許試験場の調査をするのであれば、なぜPFI導入によるリニモ沿線での移転建てかえの調査もなされないのですか、また、なぜ現地建てかえでなければいけないのですか、詳しく御説明をお願いします。
また、PFI導入の調査は県当局で進められていますが、どの時点で愛知県警本部に運転免許試験場の建てかえなどをお任せになられますのか、御答弁をお願いいたします。
そして、平針運転免許試験場は、広大な敷地面積を有し、建てかえに最適だと言われますが、私は、狭隘化をしているように思われます。そして、もし調査の結果、仮に現地建てかえとされるならば、関連施設を建設するなどという理由づけをして、敷地不足を解消するために周囲近隣の土地を購入されるようなことはないと思いますが、いかがですか、御答弁をお願いします。
次に、愛知県警察本部に、自治体への警察官派遣の中止についてお伺いいたします。
自治体への警察官の派遣は、自治体からの派遣依頼に基づいて、自治体の人口や犯罪、交通事故等の発生状況と、そして、各種対策の推進状況などを参考にして決められています。
自治体に派遣された警察官は、その自治体において、地域安全対策や交通安全対策を中心に推進するとともに、自治体と警察とのパイプ役を担ってきました。現在、名古屋市を初めとし、十二市に十六名を派遣しているとお聞きします。
確かに警察官派遣のおかげで、各自治体の地域安全対策や交通安全対策への取り組みの状況などを把握していただき、地域住民の安心で安全な暮らしが守られてきたと感謝しております。
警察署のない尾張旭では、平成十六年当時、安心で安全なまちづくりを政策の一つとする「尾張旭市第四次総合計画(平成十六年度~平成二十五年度)」を作成したときに、愛知県警察本部へこの計画を強力に推進していくために、地域安全活動に精通する警察官の派遣を依頼いたしました。
当時の尾張旭の犯罪発生状況などを踏まえて検討していただいた結果、警察官を派遣して地域の安全施策を推進することは極めて有益であると判断していただき、平成十七年四月から警察官を派遣していただけるようになりました。
警察官の派遣が開始されてから八年が経過し、その成果も少しずつあらわれ、犯罪情勢が少し改善され、警察署のない尾張旭にとっては、安全で安心なまちづくりをより一層推進するために、自治体と警察とのパイプ役をしていただいてきたかけがえのない警察官の派遣でありました。心より感謝をしております。
しかしながら、せっかく少しずつ成果があらわれ、犯罪情勢も改善しつつある今、県警本部は警察官の派遣を平成二十四年度末をもって、なぜか警察署がなく、警察官の派遣を一番必要としている尾張旭市と大府市への警察官の派遣を継続しないことを決定いたしました。市民の代表で選ばれた私を初め、尾張旭の安心安全課も寝耳に水で、右往左往しております。市民の安心・安全を守るために今後どのようにしたらよいかさっぱりわかりません。
そこでお伺いします。
警察署がなく、幹部交番の機能も十分でない尾張旭市が最後の頼みとしている警察官の派遣を、なぜこの時期に、どうして継続を打ち切られたのかをお伺いいたします。
そして、もう少し、警察官の派遣を廃止するに至って猶予をいただいてもよかったのではないかと思われますが、県警本部の前向きな答弁をお願いします。
そして、私ども尾張旭は、警察署の誘致を平成五年から十九年間も陳情し続けてまいりました。そのたびに県警本部からは、警察署誘致をするための必要な条件を突きつけられてきましたが、毎年一つずつ条件をクリアしては陳情に伺いました。全ての条件を満たして昨年も陳情に伺いましたが、県警本部は、尾張旭は守山署の管轄で適正であり、予算もないの一言で片づけられました。
それにもめげず、ことしもまた陳情に伺いましたが、幸いにも、県警本部の警務部長も大村知事もにこやかに対応していただき、本当にありがとうございました。今後も諦めずに毎年陳情を続けてまいりますので、よろしくお願いします。
そして、尾張旭では、警察署誘致に向けて、市民の皆様が今も署名活動をしていただいております。何とぞ、昨年に就任されました愛知県警察本部長も、長年の尾張旭の経緯をお酌みいただき、尾張旭の警察署誘致に対する要望に前向きに御検討をしていただきますようお願いいたしまして、壇上からの質問とかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
- 35:◯産業労働部長(木村聡君) 海外産業情報センターに関し、四点の御質問をいただきましたので、順次お答え申し上げます。
まず最初に、海外産業情報センターの取り組みと実績についてでございます。
パリ、サンフランシスコ及び上海に設置しておりますセンターは、現在、県内中小企業等の海外事業活動の支援、対日投資の促進、外国人観光客の誘致の三本柱で業務を行っているところでございます。
これらの業務のうち、まず、最近の対応件数が最も多い海外事業活動の支援についてでございます。
この分野では、例えば、中国におきまして、建設用機械を取り扱う進出企業の市場開拓を支援するため、企業単独では接触が困難な政府機関に対しまして、直接PRを行う機会を設置するなどの取り組みを行っております。
また、最近では、県が主催いたしました愛知フェアin上海の開催に際しまして、上海市当局との事前調整を行いますとともに、県内食品メーカーの展示や商談を支援しているところでございます。
県内企業の中国での事業活動の活発化に伴いまして、このところ、そうした支援ニーズは増加、複雑化しておりますが、駐在員は、現地で築いたネットワークを活用しながら、きめ細かく対応しておりまして、進出企業からは、センターの支援のおかげで現地の政府機関に適切な実務処理をしてもらったといった駐在員の取り組みを評価する声をお寄せいただいているところでございます。
次に、対日投資の促進についてでございます。
この分野では、例えば、イギリスで開催されましたエアショーに参加した駐在員が海外の関連企業等に対しまして、本県の立地環境や国際総合戦略特区の取り組みを初めとする航空宇宙産業の振興策を紹介しながら、本県への進出や県内企業との取引拡大を働きかけたところでございます。
昨年まで続いておりました円高基調の影響などから、対日投資は総じて低調に推移しましたが、そうした中にありましても、駐在員がジェトロ等の協力を得て仲介いたしました結果、米国の自動車部品メーカーや、ドイツのケーブルメーカーが県内に新たな事業拠点を設置したケースもございました。
最後に、外国人観光客の誘致についてでございます。
この分野では、例えば、センターから米国の六百社以上の旅行会社などに対しまして、本県の観光情報を英語で定期的に配信いたしますほか、駐在員が東日本大震災に伴います風評被害対策といたしまして、中国主要都市の旅行会社を訪問し、本県の安全情報や観光の魅力をPRするなどの取り組みを行ってまいりました。
国において徹底した風評被害対策等の取り組みが進められる中、昨年の中国からの観光客は、過去最高でありました大震災以前の平成二十二年を上回っておりまして、先ほど申し述べさせていただきましたセンターの取り組みも相まって、本県への観光客も徐々に回復に向かうことが期待されているところでございます。
次に、海外産業情報センターの運営管理、職務権限、職員の身分等についてお答え申し上げます。
県は、各センターの開設に当たり、ジェトロとの間で駐在員の派遣に関する協定を交わしておりまして、駐在員は県職員の身分を保有したまま、ジェトロの嘱託員として現地の各センターに勤務しております。このため、駐在員は県の人事管理のもと、県の服務関係規程とあわせ、ジェトロの就業規則等にも従うことが必要となります。
また、県は、毎年度、センターの事業方針を策定し、駐在員に対しまして、当該方針に沿って各種事業を計画的に実施いたしますとともに、その進捗状況などを逐次報告することを求めているところでありまして、今後とも、こうした取り組みを通じまして、センターの適切かつ効果的な運営を確保してまいりたいと考えております。
次に、パリとサンフランシスコのセンターを廃止する理由についてでございます。
海外産業情報センターにつきましては、平成二十三年十二月に策定をいたしました行革大綱に係る重点改革プログラムにおきまして、民間機関との連携のあり方を含め、業務等の見直しを総合的に検討し、平成二十五年度までに結論を出すということとされたところでございます。
県では、このプログラムの取りまとめと前後いたしまして、県内中小企業のニーズを含め、センターをめぐる経済社会情勢について総合的な調査を行いながら、そのあり方に関し、幅広く検討を行ってまいりました。
その結果、例えば、今後の海外進出先としては、大半の中小企業が中国または東南アジアを挙げていること。
アジアに進出済みの企業には、必ずしも明確でない現地の法制度やその運用に関し、現地の政府機関に照会してほしいといった公的な支援を求める声が多いこと。
アジアの中で、我が国自体の投資環境の魅力が相対的に低下する中、リーマンショックやその後の欧州経済危機などの影響もあって、欧米企業の対日投資ニーズが減少していること。
そして、我が国を訪れる外国人観光客のうち、欧米からの観光客が伸び悩む一方で、所得水準が上昇するアジアからの観光客は大きく増加していることなどの実態が明らかになったところでございます。
県は、こうした調査結果を総合的に勘案した上で、現在取りまとめ作業中のあいち国際戦略プランにおきまして、選択と集中の観点から新たにタイ・バンコクセンターを設置し、アジアにおける支援機能を強化いたします一方で、パリ及びサンフランシスコのセンターを順次廃止するという方向性を打ち出させていただいたところでございます。
なお、パリ及びサンフランシスコのセンターは将来的に廃止いたしますが、欧米諸国には、本県が特区構想に取り組む航空宇宙分野など次世代成長分野における世界的な企業が多数所在いたしますことから、県といたしましては、今後、ジェトロや関連する民間機関との連携を強化する中で、本県への投資案件の発掘、誘致などの取り組みを一層充実してまいりたいと考えております。
次に、新たなアジアのセンターについてお答え申し上げます。
県が行いました県内中小企業などに対するニーズ調査では、今後の進出先の九割以上はアジアであり、トップの中国に次いでベトナム、タイ、インドネシアといった東南アジア諸国が上位を占めていることが明らかになりました。
とりわけ、タイは、早くから県内企業が進出し、現在では、代表的な自動車メーカーの中核的な生産拠点になっております。
また、インドシナ半島の中心に位置するタイでは、最近注目を集めておりますミャンマーやラオスなど、周辺国の現地情報を収集しやすいといった利点もございます。
県といたしましては、こうした認識に加えまして、昨年七月にバンコク都との間で相互協力に関する覚書を締結したことも踏まえまして、新たなアジアのセンターはタイ・バンコクに設置することが最も適当であると判断した次第でございます。
なお、中国、タイに次ぐ拠点につきましては、今後、県内中小企業のニーズ、関連する民間機関との連携の可能性などを踏まえまして、その形態や機能のあり方も含め、中期的に検討してまいりたいと考えております。
続いて、亜炭廃坑が陥没した場合におけます現在の対応についてお答え申し上げます。
本県では、平成十三年度に、国及び県の補助金によりまして、あいち産業振興機構に約一億二千万円の基金を造成いたしまして、特定鉱害復旧事業としてその運用益を活用しながら、毎年発生する亜炭廃坑の陥没による被害の復旧に取り組んでいるところでございます。
この特定鉱害復旧事業の対象となる地域といたしましては、国が名古屋市守山区及び名東区、尾張旭市、長久手市など九市を指定しております。それらの地域では、地表から五十メートル以内の亜炭廃坑の崩壊等が原因となって、家屋、農地等の使用に支障が生ずる一方で、亜炭の採掘者が特定できないなどの場合におきまして、その復旧工事を実施する当該市に対し、助成が行われることとなっております。
あいち産業振興機構では、平成十四年度の事業開始以降、平成二十三年度までの十年間で合計二十七件、一千六百万円弱の助成を行っておりまして、今年度は、尾張旭市と長久手市で実施された四件の復旧工事を支援の対象とする予定でございます。
県といたしましては、今後とも、こうした枠組みの中で、国、関係市、あいち産業振興機構と連携しながら、陥没被害の早期かつ確実な復旧に努めてまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。
- 36:◯防災局長(小林壯行君) 被害予測調査における亜炭廃坑の検討状況についてでございます。
東日本大震災において、亜炭廃坑に関係する陥没事案が発生しており、国の調査によれば、岩手県、宮城県、福島県などで合計三百二十六カ所が報告されております。
議員御指摘のとおり、本県の名古屋市東部から小牧、春日井にかけて、かつて亜炭が広く採掘されておりましたことから、現在県で進めております南海トラフの巨大地震等に係る新たな被害予測調査でも調査対象といたしております。
しかしながら、亜炭廃坑に関しましては、その位置や深さなどの詳細が明らかになっていない部分が多く、また、地震発生時にどの程度の影響があるのかという点についても調査・研究の段階でございます。
したがいまして、今回の被害予測調査では、東日本大震災での実際の亜炭廃坑による被害状況について、できる限り把握いたしますとともに、あわせて、県内における亜炭廃坑の分布状況に関する既存の資料を収集、整理してまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 37:◯警察本部長(沖田芳樹君) 警察行政につきまして幾つか御質問をいただきましたので、順次お答え申し上げます。
初めに、警察施設将来構想は、平成二十一年八月、老朽化などが課題となっている警察施設の整備を推進するために策定したものでございますが、まず、その概要と進捗状況についてお答えいたします。
警察署について御説明いたしますと、警察署の施設整備につきましては、老朽化や狭隘化などの課題を抱えている警察署の状況を踏まえ、警察署を計画的に建てかえるものでございます。来年度から豊田警察署の建築工事が始まりますとともに、愛知警察署も建てかえに向けたボーリング調査を行うものでございます。
警察署の管轄区域につきましては、限られた人員をより効果的に運用し、治安体制の充実・強化を図るため、本年四月に港警察署と名古屋水上警察署を統合いたします。
また、警察本部の分庁舎について御説明いたしますと、北区にあります名北分庁舎は、来年度実施設計となりますが、自動車警ら隊等六所属を集約し、効率的な整備を進めてまいります。
次に、運転免許試験場に関しての進捗状況についてお答えいたします。
運転免許試験場は、老朽化が著しく、建てかえの必要性が高まっている中、現地建てかえに加え、運転免許試験場をリニモ沿線に移転できれば、リニモ沿線の活性化に寄与するものと考え、検討した経緯がございます。
こうした中、県としてPFI導入による老朽化した県有施設の建てかえについての検討調査を進めていく上で、運転免許試験場がその対象施設の一つとされ、代替地の確保が困難な状況を踏まえ、現地建てかえを前提とした調査が実施されるに至ったものでございます。
最後に、総務部との打ち合わせなどについてお答えいたします。
運転免許試験場の建てかえ計画につきましては、総務部と検討を重ねてまいったものでございますが、平成二十五年度当初予算の編成過程の中で、本年に入ってからPFIによる建てかえ計画について検討をしてきているところでございます。
いずれにいたしましても、本構想の実現によって、警察活動の基盤強化、地域の安全拠点の確立、利便性の向上を図ることにより、県民の安全・安心の確保に万全を期してまいりたいと考えておりますので、引き続き皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
次に、尾張旭市への警察官派遣についてお答えいたします。
初めに、自治体への警察官の派遣につきまして、高い評価をいただいたことに対しまして御礼申し上げます。
自治体に対する警察官派遣につきましては、当該自治体における各種安全対策を的確に推進する上で特に必要があると認められる場合に行っております。したがいまして、自治体における施策の推進状況等から一定の成果があったと認められるなど、派遣の目的が達成されたと判断された場合には、当該自治体への派遣を終了することといたしております。
尾張旭市につきましては、警部の階級にある警察官の派遣を八年間継続してまいりました。その間、平成二十年三月に、尾張旭市犯罪のないまちづくり条例が制定され、市や市民、事業者が連携した取り組みが推進されるとともに、防犯カメラの整備事業を初めとする各種防犯関連事業を計画的かつ着実に推進していただきました。その結果、例えば、平成二十四年中の刑法犯認知件数が、派遣を開始する前の平成十六年と比較して四〇%以上減少するなど、治安情勢が改善してきております。
こうしたことから、県警といたしましては、警察官の派遣について一定の成果をおさめたと判断し、現在の派遣者の任期が満了する本年三月末をもちまして、尾張旭市への警察官派遣を当面終了することといたしました。
今後、守山警察署において、尾張旭市とこれまで以上に緊密な連携を図り、尾張旭市の治安対策に間隙が生じないよう努めてまいりたいと考えております。
最後に、尾張旭市への警察署の誘致についてお答えいたします。
守山警察署は、名古屋市守山区と尾張旭市のほぼ中心に位置し、尾張旭市における事件事故の対応につきましても円滑に行うことが可能であると考えております。
守山警察署につきましては、過去十年で三十四人の警察官を増員するなど、体制強化を図ってまいりましたが、その結果、管内住民の皆様の安全・安心の確立に向けた御尽力もあり、例えば、平成二十四年中の管内の刑法犯認知件数は、十年前と比較して約五六%減少しております。また、尾張旭市につきましても、同様に比較した場合、刑法犯認知件数で約五二%減少している状況にあり、治安情勢は改善傾向にあると認識いたしております。
毎年、尾張旭市から警察署誘致の熱心な御要望がなされていることは十分承知いたしておりますが、現時点におきましては、尾張旭市に警察署を新たに設置するまでの必要性は乏しいものと考えているところでございます。
今後も、住民の皆様の貴重な御意見、御要望を拝聴しつつ、特に侵入盗や自動車盗のさらなる抑止を初め、治安情勢に応じて必要な対策を講じることによって、住民の皆様の安全・安心の確保に努めてまいりますので、御理解、御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
- 38:◯総務部長(中西肇君) 運転免許試験場の関係についてお尋ねいただきました。
まず、運転免許試験場の建てかえ計画についてお答えいたします。
運転免許試験場は、年間七十万人もの県民の皆様が利用される身近で重要な施設でございますが、本館の建設から五十年近くが経過しており、早期の建てかえを必要としているところでございます。
そこで、厳しい財政状況の中、老朽化の進む運転免許試験場の建てかえをできるだけ早期に行うために、県警本部と相談しながら、十ヘクタールの土地を有効利用した現地建てかえを前提にPFIの検討を行うこととし、平成二十五年度当初予算案に関連経費を計上したところでございます。
なお、さきに御質問をいただきまして、御答弁させていただきましたPFIの導入検討のスケジュールにつきましては、一般的なPFIのスケジュールをお示ししたものでございまして、平成二十五年度の検討においてPFIの可能性があると判断した場合は、平成二十六年度の詳細な調査を経て、平成二十七年度以降に実施方針や入札説明書の公表などを行う旨、御答弁させていただいたものでございますので、よろしく御理解のほどお願いいたします。
次に、今回の運転免許試験場の現地建てかえについてでございますが、これは、現在の敷地の有効利用とPFI方式による財政負担の軽減により早期の建てかえを行おうとするものでございます。
現在の運転免許試験場は、二輪及び四輪の技能試験コースなどを擁する約十ヘクタールに及ぶ広大な敷地を有しており、この機能を維持しながら移転する必要がございますが、リニモ沿線に好適地を見つけることが難しい状況にございます。
したがいまして、来年度は現地での建てかえを前提として、PFI方式の導入可能性を調査、検討してまいりたいと考えてございます。
次に、PFI方式を検討する際の県警本部との関係でございます。
PFI方式の導入を検討するため、平成二十五年度には関係部局による横断的な組織を立ち上げ、事業方針や課題の整理を行い、PFI方式の導入可能性を調査してまいります。
また、環境調査センター・衛生研究所もPFI方式の検討を行うことといたしたものでございまして、こうした組織のもとに具体的な作業を行うため、PFI方式全般を所管する総務部と県警本部、環境部等、関係部局をメンバーとする検討組織を設け、一体となって検討を進めてまいりたいと考えてございます。
なお、内容の進度に合わせまして、体制については今後検討してまいります。
次に、現地建てかえに当たっての新たな土地の購入についてでございます。
現在の運転免許試験場は、約十ヘクタールに及ぶ広大な敷地を有してございますので、PFI方式の導入を検討する中では、現在の施設設備を効率的に集約配置し、余剰地を生み出して活用する案など、さまざまな事業計画の可能性を調査してまいります。
具体的な建てかえの計画につきましては、今後の調査結果を踏まえ、最適な方法を決定していきたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
- 39:◯四十三番(青山省三君) 今回、当局のPFIによる運転免許試験場の建てかえ計画は、財政面から見ても公共施設の運営から見ても、確かに新しい手法を取り入れたすばらしい計画だと思います。同時に、県警本部の作成した将来構想の運転免許試験場をリニモ沿線に移転建てかえする構想もすばらしいものでありましたが、今の御答弁でリニモ沿線は消えたような気がしますが。
ただ、そのような計画を構想するに至って、県民に丁重な説明がなかったこと、私たちにも説明が本当に少なかったということは残念でなりません。
最後に、一つだけ再質問をさせていただきます。
確認のため、今のリニモ沿線での協議は今後なされていかないという、決めたということで結構ですか、その答弁と、もう一つ、現地建てかえでも新しい土地は購入しないという核心に触れた御答弁と確認してよろしいか、御答弁をお願いいたします。
- 40:◯総務部長(中西肇君) 平針の運転免許試験場につきましては、年間七十万人もの県民の方々が利用されている施設でございまして、一方、本館の建設から五十年近く経過しており、早急な建てかえが必要と、まず、このように認識してございます。
そうした中で、リニモ沿線の活性化という観点からいろいろと検討したわけでもございますが、関係部局におきまして、なかなか好適地を見つけるには難しいというふうに判断しました。
そのため、今回、現地建てかえということで、その土地を有効に利用した形でのPFI事業でもって建てかえを進めていきたいと思っております。基本的には、新たな土地を購入するということは、現在のところ考えていないという形でございます。
以上でございます。
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- 41:◯三十九番(坂田憲治君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 42:◯議長(小林功君) 坂田憲治議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 43:◯議長(小林功君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後三時四分休憩
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午後三時五十分開議
- 44:◯副議長(澤田丸四郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
広沢一郎議員。
〔二十六番広沢一郎君登壇〕(拍手)
- 45:◯二十六番(広沢一郎君) それでは、二点質問させていただきます。
質問の第一は、公教育のあり方についてであります。
昨年五月末に、ユニセフの研究所が先進諸国における子供の貧困について、国際比較の結果を発表いたしました。これは、相対的貧困率と呼ばれるもので、その国の標準的所得の半分に届かない世帯の子供の割合であります。
この発表によりますと、日本の子供の相対的貧困率は、OECD加盟三十五カ国中九番目に高くなっております。先進二十カ国の中では、上から四番目というゆゆしき結果となっております。また、日本の子供の貧困率は、二〇〇〇年、一二%、二〇〇七年、一四%、二〇〇九年、一五%と年を追うごとに上昇していることも大変憂慮されます。
かつては一億総中流社会と言われた日本ですが、国際競争の激化などにより、中間層の低所得化や失業率の上昇など、雇用状況の悪化が長期にわたり続いております。これに伴い、我が国は、国際的に見ても子供の貧困率が非常に高い国になってしまいました。
貧困は、さまざまな面で子供たちを厳しい状況に追い込んでいます。例えば、子供の学力は、親の所得と非常に高い相関があることがわかっております。二〇〇九年に東京大学が発表した調査によると、年収四百万円以下の家庭では、大学進学率が三一%にとどまるのに対し、一千万円以上の家庭ではその倍の六二%に上ります。
また、貧困家庭の子供は、不登校や高校中退といった割合も高くなっております。このことは、子供たちが大人になってからの就労状況や所得にも強く影響しております。さらには、彼らの子供もまた貧困に陥ってしまうという貧困の世代間連鎖が起こっています。
実際、生活保護世帯で育った成人のうち四人に一人が生活保護を受けているという調査結果もあります。世代間連鎖により貧困層が拡大すれば、納税者が減るかわりに生活保護世帯が増大することになります。納税者に対する社会保障費等の負担は今以上に拡大し、今後進展する超高齢社会の福祉を維持していくことはとても不可能となります。
経済的に恵まれた家庭の子供たちは、よい教育を受け、年収の高い職業につき、恵まれない家庭の子供たちは、能力を適正に伸ばす教育の機会に恵まれず、結果として就職が困難となり、格差が固定されていく、この悪循環を何とか断ち切らねばなりません。
こうした負の連鎖を断ち切るためには、能力と意欲さえあれば、保護者の経済力にかかわらず高度な教育を受ける機会が保障され、貧困から抜け出すことができる社会の仕組みをつくる必要があります。そのためには、とりわけ中学校から高校にかけて、保護者の経済的負担が少ない公立学校の教育を充実させていくことが何より大切と考えます。
文部科学省の調査によれば、子供を私立中学に通わせると、公立に比べ教育に係る出費額が中学三年間合計で約二・八倍に上るという結果が出ております。また、中学受験に際しては、多くの子供が塾に通い、それも家計に大きくのしかかります。
それにもかかわらず、東京を初めとする多くの大都市圏では、かつて学校群制度やゆとり教育導入などに伴う公立学校不信が広がったこともあり、圧倒的に私学優位の状況となっております。
難関と言われる大学に入学するためには、まずは中高一貫教育の有名私学に入るということが一般になっており、これはとりもなおさず、経済的に恵まれない家庭の子供は、その時点、わずか十二歳にして選択肢が限られてしまうということにほかなりません。
私自身、かつて東京で子育てを経験したことがあり、中学受験も二度体験しておりますが、多くの子供たちが小学校低学年から進学塾に通い始め、五年生からはほぼ毎日塾通いの日々になる現実を目の当たりにし、名古屋市内の公立でのんびり過ごした私の小学生時代との余りの違いに驚いたことを覚えております。
その東京においても、かつては都立日比谷高校を筆頭に公立優位が続いておりましたが、一九六七年から八一年まで十四年間続いた学校群制度や、一九八一年から二〇一一年まで三十年間続いたゆとり教育による学力低下を避ける形で私立志向が高まっていきました。
それに呼応するように、有名私立中高一貫校は徹底した大学受験体制をとるようになり、中学・高校六年間のカリキュラムを五年間で終え、最後の一年は大学受験勉強に集中させたり、クラスを学力別に数段階に分け、テストのたびにクラスが上下したり、クラスによって使用する教科書まで変えるなど、公立中学・高校とは授業のスタイルからして大きな違いが生じるまでになっております。
こうした中、東京では、石原都知事時代に公教育の強化が提唱され、その一環として、中等教育学校の新設や都立高校が附属中学を併設するなど、二〇〇五年以降、中高一貫の都立校が十校創設されました。その人気はいずれも上々で、ことしの受験倍率は十校平均で七・二六倍の高さとなりました。
こうして、徐々にではありますが、東京では公立の人気が復活しているようです。また、その流れを受けて、関東圏では、神奈川で三校、千葉、埼玉、茨城でも各二校の公立中高一貫校が創設されています。
さて、本県においては、大都市圏でもあり、また、東京同様に学校群制度やゆとり教育が導入された時期があったにもかかわらず、県民の公立志向が根強く、難関大学への進学実績を初め、さまざまな分野において公立高校がすぐれた成果を上げ、県民からの厚い信頼を得ております。これは、本県が誇るべきことの一つであると私は考えます。
しかしながら、本県においても、徐々にではありますが、中高一貫の私立志向が高まる傾向が見られます。かつては、私立大学の附属校という位置づけで、卒業生の大半がエスカレーター式に大学まで行った学校においても、中高一貫の強みを生かし、より難関とされる他大学の受験を推奨し、その実績により質の高い生徒がさらに集まるという東京と同じ状況も見受けられます。また、ブランド力の高い中高一貫校が附属の小学校を設立したことから、小学校受験、いわゆるお受験熱が高まるという動きも一部では見られます。
また、中学校受験、小学校受験は、名古屋市東部など、一般に高級住宅街と呼ばれる地区においてその受験率が高くなっている点も東京と同様の様相を呈しております。このように、経済格差が地域格差、教育格差へ波及するという格差の三連動とも呼ぶべき状況が静かに本県でも進行していることを大変憂慮いたします。
さらに、現在、どの県立高校においても老朽化が進んでいると聞いております。ほとんどの学校でクーラーも設置されておらず、夏は、猛暑の中、汗を流しながら子供たちは勉強しております。私も県立高校の出身でございますが、三十年以上も前の当時でも、夏は暑さで勉強に身が入らなかった覚えがあります。当時よりも猛暑日も増加傾向にある昨今においては、生徒の夏場の苦労はかなりのものだと思います。
公教育の充実を図るということは、県として大変お金のかかることではありますが、子供たちへの投資は、愛知の、そして日本の未来への投資であります。子供たちが成長して社会人となったときには、税金や社会保険料として戻ってきます。財政難を理由に公教育の充実を怠れば、愛知の活力はゆっくりと後退し、気がついたときには手おくれということにもなりかねません。
本県の公立高校が今後とも県民の信頼を得るとともに、多様化する社会的ニーズに適切に対応していくためには、現状に甘んじることなく、本県としての五年後、十年後のビジョンを持ち、時代に即した学校づくりをしていくことが必要であると考えます。
そこで、教育長にお尋ねします。
これまでの愛知の県立高校の取り組みをどのように評価し、時代のニーズに即した魅力ある学校とするため、どのような策をお考えでしょうか、御所見をお伺いいたします。
質問の第二は、愛知県の交通安全についてであります。
交通事故の抑止に関しましては、本議会におきましても幾度となく議論がなされ、行政、警察、県民の皆さんが総ぐるみでいろいろな活動を推進していただいてきたことと承知しております。
こうした中、愛知県の交通事故統計に計上漏れがあったとして、先日、平成二十三年以前の統計数値に訂正がなされ、多い年で交通事故死者数が七十人も増加するという驚くべき結果が示されたところであります。
統計数値というものは、現状把握と今後の計画の策定等に極めて重要なものであるだけに、同様のミスを二度と起こさないよう、しっかりと管理していただくことをまずは切に要望したいと思います。
さて、統計に誤りがあったという事実もさることながら、私が最も驚いたことは、この愛知県が十年も連続して交通事故死者数が全国ワーストワンであったという実態についてであります。
ただ、十年連続ワーストワンという数字だけを聞くと、さも愛知県は危険で、十年間何の対策もとってこなかったのかなどと批判を受けそうな気もしますので、愛知県警の名誉のためにも、ここで愛知県の交通事情について少し述べたいと思います。
まず、交通事故に関する基本数値を幾つか述べてみますと、御案内のとおり、当県民人口は直近で約七百四十一万人、これは東京、神奈川、大阪に次いで四番目であり、それに比例するように、運転免許保有者数、つまり、運転免許人口は昨年末で約四百九十七万人と、やはり東京、神奈川、大阪に次いで四番目となっております。
次に、道路の長さを示す道路実延長はどうかといいますと、少し古い数字ですが、二十二年四月一日現在で約四万九千キロメートルで、北海道、茨城に次いで三番目に長いのです。
そして、県民が保有する車両台数は、自動車産業のメッカという土地柄からか、二十四年九月末現在で約五百四十四万台と、他の都道府県を大きく引き離して堂々のトップであります。
まとめますと、愛知県は、人口が多く、道路は長く、車の保有台数は極めて多いという状況にあります。
こうした数値をもとに交通事故死者数の割合を出し、他の都道府県と比較しますと、道路実延長百キロ当たりの数値こそワースト九位となりますが、それ以外の人口十万人当たり、運転免許人口十万人当たり、車両台数一万台当たりの数値はいずれもワースト三十九位、言いかえれば、四十七都道府県中ベスト九位となり、比較的いいほうと言えると思います。
要するに、交通事故死者数の絶対数こそワーストワンではあるものの、人口比や交通を取り巻くいろいろな環境から考えると、決して日本一危険な県などではなく、逆に他都道府県よりも交通事故をしっかりと抑止していると言っても過言ではないと思います。
こうした実態があるにもかかわらず、毎年ワーストワンは愛知県と報道をされ続けることは、必要以上に我が県には危険運転者が多いようなイメージを全国に与えてしまうのではないかと危惧いたします。
統計の数値というものは、それが何らかの実態を反映させる数値を用いるべきことは当然であります。
例えば、文部科学省は、全国学力テストの都道府県別正解率を公表しておりますが、この場合、率を用いているために各都道府県の学力差が反映されるのであって、これが正解者の数であったならば、それは単に子供が多い県の順番になってしまいます。
交通事故死者数においても、各都道府県が安全を競うことを目的とするならば、ここはやはり人口比か車両台数比を用いるのが妥当と考えます。
しかしながら、昨年でいえば二百三十五名ものとうとい命が県内で失われた事実については重く受けとめ、一人でも交通事故の犠牲者を減らすための努力を続けていかなくてはならないことは当然で、そのための施策について数点お尋ねしていきたいと思います。
今回質問をさせていただくに際して、インターネットで「愛知県 交通事故」と入力して検索したところ、いわゆるQアンドAサイトにおいて、どうして愛知県は交通事故が多いのかという質問が寄せられており、これに対し幾つもの回答が載せられていましたが、その中でも特に二つの意見が多く見受けられました。
その一つは、愛知県は、他の地域に比べて車の速度が速いからというものです。回答者の方々は、いずれも一般の方々と思われ、統計など裏打ちのない経験則からの意見なのでしょうが、実は私も同感です。私の地元瑞穂区内でも、大きな国道だけでなく、一般の県道や市道、はたまた生活道路に至るまで、一体制限速度を何十キロオーバーしているんだとあきれるほどのスピードで車が行き来しています。
速度が早くなればなるほどとまれる距離が長くなり、視界が狭くなって周囲の安全確認が不十分になる等、交通事故を起こす可能性が高くなることは、運転免許を持つ者であれば誰もが知っていることです。つまり、速度を落として走ることが安全運転、ひいては交通事故抑止の基本中の基本であるはずです。
さて、私も日常的に車を運転いたしますが、速度違反の取り締まり現場に遭遇することはほとんどなく、地元の方と話をしても、速度違反の取り締まりはいつも同じ場所でやっているという意見を耳にします。
取り締まり場所の選定に当たっては、車の速度を測定し、違反者を停止させて切符を切るということを行うため、いろいろな制約条件が伴うことはある程度は理解できます。とはいうものの、いつも同じ場所で取り締まりをやっていては、交通事故を減らすという本来の目的を達成するための効果としてはかなり低下してしまうのではないでしょうか。
そこで、同じ場所での取り締まりは一般道路においてもオービスなど機械に任せ、警察官は、県内のあらゆる道路でゲリラ的な速度違反取り締まりを実施することこそ、交通事故を抑止する決め手になるのではないかと思います。
ドライバーにいつ、どこで取り締まりをやっているかわからないからこそ、速度を落とそうと考えさせることこそが必要であると考えます。
そこで、まず、県警本部長にお尋ねします。
交通事故を抑止するための手法として、県内を走る車の速度を抑制することの重要性についてどのように考え、どのような対策を講じていかれるおつもりかお示しください。
さて、先ほど取り上げた、どうして愛知県は交通事故が多いのかの質問に対する回答の中で最も多かったのは、愛知県のドライバーはマナーが悪いからというものでした。これは、さきに述べたような交通事故死者数ワーストワン報道によるイメージも影響していると思われますが、愛知県内のドライバーは、運転マナーも悪く、モラルも低いというイメージが全国的に定着しているのも事実だと思われます。
十二月補正予算で緊急交通安全対策費として、ドライバーの運転マナー向上のための広報費等を盛り込まれたのも、県民の交通マナーを向上させて、何としても交通事故を減らすという知事の強い決意のあらわれであったと思います。
このような対策はもちろん重要でありますが、一方、五年後、十年後といった将来を見据えた対策を進めていかなければなりません。三つ子の魂百までとのことわざが教えるように、マナーやモラルというものは子供のころからしっかりと教育すべきなのではないでしょうか。
交通マナーといえば、ここ数年、若者が乗る自転車の傍若無人さが問題となっておりますが、彼らが何年か後に運転免許を取得した際に、マナーのよいドライバーになってくれるか甚だ疑問であります。
お聞きしたところ、県警では、警察官が学校へ出向いて自転車教室を開いたり、安全運転を競う自転車大会を開催しているとのことですが、子供たちに交通マナーやモラルを植えつけさせるためには、反復、継続しての教育が必要不可欠ではないかと思います。
そこで、警察本部長にお尋ねします。
交通事故抑止を目的とした子供に対する安全教育の重要性をどのように捉え、具体的にどのように進めてこられたのかお示しください。
また、今後どのように進めていかれるおつもりかについてもお示し願います。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
- 46:◯教育長(野村道朗君) 県立高校への評価と魅力ある学校とするための今後の方策についてお尋ねをいただきました。
本県の県立高校は、県内の高校生の三分の二を受け入れておりますけれども、学力的にも幅広い層の生徒が入学し、その目的意識もさまざまでございます。このような状況の中で、平成十三年度に策定をした県立高等学校再編整備計画に基づきまして、魅力と活力ある学校づくりに努めてきたところでございます。
さまざまな取り組みがございますが、例えば、総合学科の設置を初め、専門学科の学科改編、連携型の中高一貫教育校の設置など、生徒の学ぶ意欲を高めるという面では一定の成果をおさめてきたものと考えております。
また、県立学校の特色づくりを促す取り組みといたしましては、大学と連携した高いレベルの理数教育や、地域の産業界と連携したキャリア教育、部活動等を通した学校の活力づくりなどを積極的に進めておりまして、こうした取り組みが保護者や生徒からも高い評価を得てきたものと考えております。
今後は、来年度から実施をするグローバル人材育成事業など、時代のニーズに即した特色ある学校づくりを一層推進するほか、これまでの実績を踏まえつつ、総合学科の設置拡大や複数部制単位制高校などの新しいタイプの学校づくりも検討してまいりたいと考えております。
このためにも、生徒数の減少や校舎の老朽化等も視野に入れた県立高校のこれからのあり方を整理し直すことが必要な時期になってきているのではないかと考えております。
いずれにいたしましても、こうした取り組みを通じまして、引き続き県民に信頼される県立学校づくりに努めてまいりたいと、このように考えております。
- 47:◯警察本部長(沖田芳樹君) 初めに、車の速度を抑制することの重要性についての考えと対策についての御質問にお答えいたします。
本県の交通事故の実態を見ますと、自動車が関連する死亡事故のうち、自動車と歩行者の事故が最も多く発生しており、次いで自動車相互の事故となっております。
これら交通事故の要因となる自動車の走行速度は、当然のことながら、速度が高くなるほど事故の発生や被害の重大性に大きく影響を及ぼすものであり、規制速度を遵守していただくための対策は、自動車による事故の抑止を図る上において極めて重要であると認識しております。
そこで、私どもといたしましては、速度超過違反を重点に取り締まりを推進しており、取り締まりの時間帯や場所等について適宜見直しを図りつつ、取り締まり場所の拡大に努めているところであります。
その結果、昨年は、速度超過違反で十一万九百九十二件を検挙し、前年に比べまして一万五百六十件の増加となったほか、本年も二月を取り締まり強化月間として取り組んだところであります。
今後も、事故実態の分析等を踏まえた取り締まりを一層強化し、運転者に対する規制速度遵守について注意喚起を図ってまいります。
また、生活道路における安全対策として、最高速度三十キロの区域規制等により速度の抑制を図るゾーン30を引き続き促進してまいります。
さらには、事故多発路線における速度抑制のための信号サイクル調整や、愛知県トラック協会等の交通関係団体に対して、制限速度遵守のペースカーとして取り組んでいただくよう協力を要請しておりますほか、免許の更新時講習や企業等における交通講話、交通イベント等の機会を通じた啓発指導などを推進中のところであります。
今後とも、これらの対策を総合的かつ強力に推進し、速度の抑制を図ることで交通死亡事故の減少につなげてまいりたいと考えております。
次に、子供に対する交通安全教育の重要性と、これまでの取り組み、今後の取り組みについての御質問にお答えいたします。
子供に対する交通安全教育は、幼いうちから交通安全に対する意識を持たせることはもとより、将来、社会の一員として交通ルールを遵守し、責任を持って行動することができるような健全な社会人を育成する上でも重要な意義を有しているものと認識しております。
そこで、私どもといたしましては、子供の成長過程に合わせた段階的かつ体系的な交通安全教育の推進に努めているところであります。
具体的には、児童、幼児に対しては、紙芝居や視聴覚教材等を利用したわかりやすい教育に努めるとともに、子供自転車大会や交通少年団の活動を通じて、基本的な交通知識・技能の習得を図っているほか、保護者や教職員に対する講習会等を開催し、事故事例を紹介するなど、啓発指導を行っているところであります。
また、中学生及び高校生に対しては、自転車の通行ルールを自覚させ、交通安全意識の高揚を図ることが将来の運転者対策にもつながることから、県内の中学校及び高等学校において、スタントマンによる自転車事故の再現や、参加・体験・実践型の自転車教室を開催し、自転車の安全利用の促進を図っております。
これらに加え、特に高校生に対しては、免許取得前の運転者育成という観点から、運転者として必要な交通法規や、自動車の特性、交通事故被害者の心情などに関する交通安全教育を実施することとしております。
今後とも、自治体を初め、学校、家庭等と連携し、次世代を担う子供に対する交通安全教育の計画的かつ継続的な実施に取り組んでまいります。
- 48:◯議長(小林功君) 進行いたします。
石井芳樹議員。
〔五十九番石井芳樹君登壇〕(拍手)
- 49:◯五十九番(石井芳樹君) 今、本県において鉄道行政を語るのであれば、リニアインパクトで総称されるリニア中央新幹線の質問はまさに旬でありますが、これより私が質問させていただきますのは、リニアではなく、リニモを中心とした本県既存の鉄道を含め、未来に向かって違う意味でのリニモインパクトにならないよう、以下数点にわたり質問をさせていただきます。
最初に、愛知県が出資する第三セクターで、鉄道事業法や軌道法の定めるところによる、みずから敷設した路線を使用して旅客の運送を行う鉄道軌道事業者となっている者は、愛知環状鉄道線、名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線──通称あおなみ線と、東部丘陵線──通称リニモの三路線であります。
その中、会社が新たに新交通システムを開通するには、インフラ部にかかわるものとしては、都市計画法の手続が必要なものと、インフラ外部にかかわるものとしては、軌道法に基づく手続が必要なものに分別されます。
その際、最も肝心なのは、新交通の乗客数を予想する需要予測であります。これは、軌道法関連手続の中で行われ、事業者が国に対して行う特許申請の際、添付する需要予測資料として提出が求められることとなっております。
したがって、各自治体では、この新交通システムの開業をするに当たり、上記のように、収支の根幹となる需要予測を行わなければなりませんが、現状、多くの自治体ではこの需要予測が甘いことから、結果、開通後は乗客数が需要予測を大きく下回り、乗客数が伸びない中、会社も下方修正を行いながら経営を圧迫し、あわせて、出資元である地方公共団体も追加出資を繰り返すことによって財政を逼迫させてきたことが、各地域での鉄道行政の大きな問題となっております。
このことは、愛知県においても例外でなく、過去には、平成十八年十月に廃線となった桃花台線ピーチライナーにおいては、開業前の需要予測では一日当たり平均約一万二千人の乗客を見込んでいたところ、実績としては一日当たり約二千二百人であったため、計画から五倍以上の乖離した数値となってしまいました。
あわせて、利用者の大半を占める桃花台ニュータウンの計画入居者数は、当初五万四千人であったのに対し、平成二年の時点では入居者数は一万六千人と、将来人口の予想に大きな誤差が生じたのもその一因であると言われております。
また、現行運行が続いているあおなみ線でも、開業前、需要予測の甘さに対する指摘や、事業計画そのものを疑問視する声もあったにもかかわらず、開業前の需要予測では一日当たり平均六万六千人の乗客を見込んでいたところ、実績としては開業当初一日当たり一万八千人と、計画から三倍以上の乖離した数値となっております。
さらに、リニモに関しても同様で、当初の需要予測は一日当たり三万一千五百人を見込んでいたにもかかわらず、万博終了後の平成十八年度は一日平均一万三千七百人と、こちらも当初需要予測の半分も満たしていない数字であります。
これまで県は、新交通を敷設するに当たり需要予測を行い、沿線市へ出資の要請を行ってきました。私のまち長久手に対しても、リニモ敷設に当たっては、当時、県の説明によると、需要予測どおり乗客は推移し、赤字になることはない、もし赤字になっても県が補填するとの議会答弁を経て、当時の町議会で出資の議決を行った経緯があります。
鉄道インフラはどこでも敷設できるものではなく、各市町にとっては、まちづくりを行うに当たり貴重な資産であり、それを維持するためには、一定の資金投入は理解できるところではありますが、しかしながら、以上述べたように、三路線において予想を大幅に下回る結果の中で、どのような試算を行ってきたのか、大変に疑問が残るところであります。
さらには、県並びに沿線市では、会社運営を維持するための多額の資金、すなわち税金を投入しなければならない現状下で、県と沿線市の信頼関係すら危ぶまれる事態へと発展しかねない状況下にあると思います。
需要予測については、多額の費用を支払って業者に委託をし、その結果を導き出している以上、県は同じ過ちを繰り返さないためにも、需要予測の問題を明らかにし、その結果をしっかりと検証すべきであると思います。
そこでお伺いをいたします。
事業開始時に、旧国鉄から六百六十二億円相当の固定資産をほぼ無償に近い形で資産譲渡を受け、外部インフラについては整備する必要がなかった愛知環状鉄道は別として、残りの全路線において大幅に実績が需要予測を下回っておりますが、どのように予測を行い、また、実績が大きく下回ったことについて、県はどのように考えているのかお伺いをいたします。
次に、このような甘い需要予測が、敷設後、結果として県に対し大きな負担として現在ものしかかってきていることに注視しなければなりません。
例えば、ピーチライナーに関しては、出資金十三億八千万円、貸付金三十八億六千万円、インフラ部事業費六十八億円、インフラ外部建設費が百十五億円となっておりますし、あおなみ線に関しては、平成二十二年七月に事業再生ADRを申請し、事実上の経営破綻をしたときの累積損失は約五百七十億円で、そのうち、県においては出資金約十七億九千万円と貸付金約四十億円で、これが事業再生ADRにより、資本の一〇〇%の減資と貸付金のDES化により大きな負担を強いられております。
また、リニモに関しても同様で、現在行っている第一次経営安定化策終了時には、現金出資約四十八億円と約六十七億円のDES化が行われる予定になっております。
以上のように、当初の見込み違いが後に長期の負担となって多額の税金を投入していかなければならない状況となっております。
その中、私がここでお伺いをしたいのは、同じく会社を設立したときに出資をいただいた民間企業からの支援であります。
過去、この三路線において民間企業による現金による出資は聞いたことがございません。特に、リニモに関しては、第一次経営安定化策終了後の平成二十五年度末に至っても、民間金融機関から有利子による長期借入金残高は約八十三億円に上っております。私の地元であり、リニモ沿線市であります長久手市議会からは、この出資者であります民間企業からの資金援助を求める声が日増しに大きくなってきております。
そこでお伺いをいたします。
過去、本県鉄道行政において会社設立後の現金による負担は、県並びに沿線自治体でその全てを請け負ってきたところでありますが、私は、資本の出資比率に応じて現金による負担を県もしくは会社から民間企業へとお願いすべきであると思いますが、県としての御所見をお伺いいたします。
次に、リニモ第二次経営安定化策の策定に当たってお伺いいたします。
平成二十五年度を最後に、リニモ第一次安定化策が終了いたします。翌平成二十六年度よりは、リニモ第二次経営安定化策が行われる予定でありますが、平成二十五年度とは、すなわち平成二十六年度から始まる第二次安定化策への最終的な詰めを行う年であり、あわせて、県議会並びに沿線市に対しても、その妥当性について説明を行い、理解をいただかなければならない大切な年であります。
さて、その中、現在の会社運営は、詳細に見ますと無駄と思われるところも多く、例えば、株主総会決議による資本金の増加や減少については、登記時に登録免許税がかかってまいります。その費用は、二十三年三月期分で約七百五十万円、二十四年三月期分で約四百三十万円となっており、一気に資本金を増加させることによってその変動をなくせば、これらの固定費は抑えることができると思います。
また、平成二十二年度より行われている第一次支援策においては、毎年のように各議会の議決を行い、毎年二億円以上の金利を支払い、さらには、上記のような諸費用を支払ってきましたが、現状の会社の営業収益では減価償却分を営業利益で賄うことは難しく、沿線開発が期待されておりますが、これもまた成果の出るのに時間がかかります。
今後、会社が最優先で行わなければならないことは、資金が回らなくなることを回避することであります。これも毎年各議会で議決をして出資を受け、資金をようやく確保されている状態である中、第二次支援計画では、毎年度の一過性の対応ではなく、駅務機器と車両の更新及び経年劣化による修繕費等も含めて、長期にわたって計画を行っていくのが肝要であると思います。
また、平成二十六年度以降には百六十三億円というさらなる増資が必要となってくる中で、県並びに沿線自治体は、一次支援のように、利子及び登録免許税を毎年のように支払うのではなく、第二次支援計画においては、減価償却前営業損益は黒字であることから、県並びに沿線各市では、返済のための原資を入れ、一括で平成二十六年度冒頭に無利子借り入れや新株の増資を行い、会社の経営改善に努め、内部留保をふやすことによって、将来かかると予想される駅務機器などの設備更新費を含めた戦略的な返済にかかわる長期ビジョン策定が必要であると考えるが、県の御所見をお伺いいたします。
次に、駅務機器と車両更新及び経年劣化による修繕費についてお伺いをいたします。
会社が試算した第一次経営安定化策の中には見込まれていなかった駅務機器を除く設備更新費でありますが、第二次経営安定化策の中には盛り込んでいく予定であると聞いております。
現在、会社の試算では、自動券売機、自動改札機、自動精算機などの駅務機器にかかわる更新計画では年に約二億九千五百万かかり、平成二十五年から四十年までの期間で合計十七億七千万円の資金が必要と試算がなされております。あわせて、これに一編成約七億円以上と言われる車両の更新費及び駅、橋脚を含めたインフラ部の修繕費が上乗せされてくるものと見込まれます。
その中、平成二十六年度以降に行われる予定の第二次経営安定化策においては、百六十三億円の長期借入金の措置を行っていく予定とお伺いしておりますが、しかしながら、上記に述べた車両などの更新費、修繕費等の費用はそれに含まれていないと思われますが、これにより県では、第二次安定化策の支援額がどのように変わってくると試算をしているのかお伺いをいたします。
次に、リニモ会社の経営支援に際して、第三セクター等改革推進債の活用についてお伺いをいたします。
地方公共団体がかかわりを持つ第三セクターは、経営の規律が緩みがちで、その経営が著しく悪化している場合は、その地方財政に深刻な影響を与えている事例が多いことから、国では、地方公共団体財政健全化法の全面施行を機に、平成二十一年度から平成二十五年度までの五年間の期間において、第三セクター等の抜本的な改革を集中的に行うことができるよう措置された特別の地方債が第三セクター等改革推進債であります。以下、三セク債と呼びます。
起債に当たっては、申請の際、議会の議決を行い、その後、総務大臣の許可が必要になりますが、これにより、出資金、長期貸付金等、当該損失補償に要する債務に対して起債を行うことによって、一括で経費として資金を投入することで、第三セクター等、抜本的な改革を行うことができるものであります。
過去、この三セク債は、愛知県においてもあおなみ線に用いられた手法で、これは債務超過に陥り、経営再建のためにのみ使われるものだけではなく、経営安定化策にも使えるものであります。これにより一括で資金投入ができ、さらには低い利率で起債ができ、しかも、その利息の一部は特別地方交付税として措置ができるものであります。
現在、リニモは、会社が定めた平成二十五年度まで続く第一次経営安定化策の途中であることは重々承知をしているところでありますが、この三セク債の活用期限もまた平成二十五年度までと定めがあるものであります。
今はまさにこの第二次経営安定化策の策定中であると思われますが、この際、期限が迫る三セク債を活用して経営改善を抜本的に行っていくという方法も選択肢の一つに数えられると思いますが、県のお考えをお伺いいたします。
以上、増資を中心とした財務基盤を強化、充実する支援策について申し上げてきましたが、もう一つ、中長期的な視点として、リニモの乗客数を恒常的にふやすための沿線開発並びに活性化についてお伺いをいたします。
過去、地域振興部から県の関連部局にリニモ沿線の活性化案を募集した折には、県警本部から、天白にあります平針の運転試験場を長久手方面に移転する整備構想が提案をされました。年間七十万人もの利用者がある運転試験場の移転構想は、沿線活性化策として大変にインパクトがあるもので、リニモ利用者増に寄与するものとして、私もその推進を期待しておりました。
しかしながら、今般、建てかえに当たり、PFI手法を導入するための調査費用が新年度予算案に盛り込まれ、現地建てかえを前提としての検討が進められているようであります。
そこでお伺いをいたします。
地域振興部は、これまでリニモ沿線の活性化に向けた県警本部の提案をどのように受けとめ、どのように検討してきたのでしょうか、お伺いをいたします。
また、地域振興部では、本年一月に、長久手市に対して農業総合試験場地内にある北側の敷地二十ヘクタールを売却し、芸大通駅から一キロ圏内という立地を生かした住宅地への転換の可能性について問い合わせを行いました。五年後に都市計画決定、市街化編入を行い、約八百戸の住宅が建ち、あわせて千人から千五百人の乗客増が見込めるというものでありました。
今、長久手市では、リニモ活性化の指針でありますリニモ沿線地域づくり構想をもとに、長久手古戦場駅では、駅周辺活性化のため、土地区画整理組合がまさに立ち上がったところでありますし、また、公園西駅ではイケア誘致が決定する中で、今後は市施行の区画整理を行う予定であります。現在、市では、多方面にわたり、できることは全力を挙げて取り組んでいる最中であります。
その中でのこの地域振興部の提案であります。平針の運転試験場の移転が去りつつある中で、農総試の活用は一抹の寂しさを感じるところではありますが、ここで私が危惧をするのは、もし部の検討案どおりに民間開発を行っていけば、一坪当たりの坪単価は、周辺の区画整理によって造成され、売り出された単価に比べはるかに安く売り出されてしまうおそれがあります。
また、今後、この隣接地に計画をされております日進市が行う予定の区画整理事業に対しても大きな影響を及ぼす可能性があるということであります。
リニモ沿線で人口がふえることは活性化につながるものの、その反面、沿線市が進めてきた計画と照らし合わせると、時期を考慮すれば、まずは住宅ではなく公共施設や病院、福祉施設を含めて検討していったほうがよいと思われますが、県の御所見をお伺いいたします。
次に、現在係争中であります愛知高速交通株式会社で起こった横領事件についてお伺いをいたします。
平成二十二年四月に、名鉄からの出向社員による八千九百万円にも上る横領事件が発覚したのは、まだ記憶に新しいところであります。リニモの営業収益の約一割に当たる額が使い込まれ、さらには、県からの出向社員の監視下のもと発覚したこの事件は、会社並びに県の管理体制への疑問と信頼を大きく損ねる事件であったと言えます。その中、現在、資金回収並びに裁判を含めてどのような進捗状況になっているのかお伺いをいたします。
また、この横領金に対する会社決算での取り扱いは、貸借対照表の科目、流動資産の未収金扱いで計上がなされております。流動資産とは、元来一年以内に返ってくる資産をあらわすもので、この横領金には資産性があるとは決して思えないところであります。
あえてよくとるのであれば、損失処理を行わず、未収金扱いでの計上は、会社として一〇〇%横領金が回収できるという確証のもと進めていると思えるところでありますが、裁判の結果次第では、今度は会社の経理への信頼性が問われることとなるような気がいたしますが、県としての御所見をお伺いいたします。
最後に、鉄道利用の利便性向上のためのICカード化についてお伺いをいたします。
一昨年、愛知県では、第三セクター鉄道を地域における観光振興の主たる担い手と位置づけ、交通政策、観光政策、産業政策をパッケージにした新たな施策体系を提案すべく、リニモ・愛環沿線活性化特区として国に対して申請を行いました。
これは、リニモ・愛環沿線の活性化や経営の安定化を目指すものであり、国の補助制度の対象事業の拡大や、民間企業が第三セクター鉄道の株式購入費を同一年度の当該企業の株式売却益から控除できる税制優遇制度の創設や、国補助制度のICカードシステム導入費に対する補助率の引き上げを盛り込んだものでありました。
残念ながら、結果は不採択となってしまったところでありますが、愛環においては、中根議員が先ほど質問されましたので割愛をいたしますが、ICカードシステムの導入は、利用客の利便性を高め、さらには、名鉄、地下鉄との横の連携をスムーズにするため、必須であると思えるところであります。
あおなみ線でも、平成二十三年よりその導入を行い、他沿線でもICカードを共通カード化し、今や標準装備となりつつある中で、未来の乗り物として生まれたリニモでありますから、利用客の利便性のための施策として考えていかなければならないと思いますが、県としての御所見を伺います。
以上、数点にわたり御質問させていただきましたが、私の思う鉄道行政に関するその要諦は、重ね重ね県の需要予測に対する考え方であります。
るる申し上げてきたとおり、需要予測の積算の甘さから、各鉄道には血税である多額の財政支出を行っている現状を、三セクという見えにくい部分ではありますが、私たち議会人は、しっかりとチェックをしていかなければならないと改めて思うところであります。
さらに、その財政支出に際しても、県は、長期借入金の救済スキーム全体については明確に触れておらず、さまざまな要素から、地方公共団体が将来にわたって幾ら負担をしていかなければならないのか明確にされないまま、当面の債務超過を免れるための税金の投入が行われてきたように思います。
県は、今後恐れず、どれほどの財政支出が必要なのか、明確な数字を提示する必要があると考えます。
前述したように、ピーチライナーは、運賃収入の低さからランニングコストが賄えず、廃線となりました。あおなみ線においても、二回の需要予測を行ったにもかかわらず、その数字への大きな乖離から事業再生ADRを行わなければならなくなりました。
また、リニモに関しては、当初需要予測とは大きく乖離し、現在は第一次経営安定化策のもと、減価償却前営業損益はプラスに転じ、ランニングコストはようやく賄える状態にはなっておりますが、長期計画での累積黒字年度が明記されていない中での安定化策であり、さらには、平成三十八年までには毎年決算のたびに純損失が出て、ようやく平成三十九年に純利益に変わる記述がなされております。
その大前提としては、平成二十六年度までには乗客数が二万人を超えていかなければならないことであります。そしてまた、その後も継続的に乗客数が二万人を超えていることを前提としている計画であります。
しかしながら、リニモに関しても、少子・高齢化、名古屋圏への回帰、愛知学院二学部の移転を含め、利用者の半数を占める学生の減少等、社会情勢の変化も織り込んだ需要予測をシビアに行っていただきたいと思います。
実績値が予測値に満たない事例が頻出する愛知県の鉄道行政において、次年度策定される第二次安定化策の長期見通しにおいては、今後、愛知県の鉄道行政を語る上にも、精査に精査を重ねて、信頼を取り戻すものとなるよう最後に強く要望させていただきまして、壇上からの質問を終わります。(拍手)
- 50:◯副議長(澤田丸四郎君) この際、お諮りいたします。会議中時間経過のおそれがありますので、時間を延長することに決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 51:◯副議長(澤田丸四郎君) 御異議なしと認めます。よって、時間は延長することに決定いたしました。
- 52:◯地域振興部長(近藤正人君) 鉄道行政について、何点かお尋ねをいただきました。順次お答えを申し上げます。
最初に、第三セクター鉄道等に係る需要予測についてでありますが、御質問の三路線ともに需要予測の実施時点において、一般的に採用されていた最新の手法により予測がされているところでございます。
具体的には、各路線の沿線地域内及び沿線地域外から流入する人の動き、既存の交通手段やその利用者の経路などをもとに、当該路線を利用する人が何人いるかを予測するものでございます。
実績が当初の需要予測を大幅に下回ったことにつきましては、各路線とも沿線開発のおくれや、自動車から鉄道への交通手段の切りかえが見込みより進まなかったことなどが主な要因と考えておりますが、結果から見れば、見込み自体が甘かった面もあると言えるかもしれません。
なお、リニモやあおなみ線につきましては、その後、経営支援を行うに当たって、需要の見直しを行っておりまして、近年の利用実績は見直し後の需要予測に沿ったものとなっているところでございます。
次に、民間企業への現金による負担の要請についてお答え申し上げます。
議員御指摘のとおり、桃花台線を初め三路線とも会社設立後の経営支援に当たっては、いずれも民間企業からの現金による負担は行われておりません。
しかしながら、リニモにつきましては、それにかわるものとして、民間企業からの出向者の人件費の一部負担や、リニモの車体へのラッピング広告の実施、車内広告の掲出などで民間の支援、協力をいただいております。
なお、今後検討してまいります第二次支援では、こうした点も踏まえ、改めて民間企業からの支援についても議論してまいりたいと考えております。
次に、リニモの二次支援においては、駅務機器などの設備更新費をも含め、戦略的返済に係る長期ビジョンが必要ではないかとのお尋ねについてであります。
現在、愛知高速交通株式会社では、経営の安定化に向けて、将来の需要予測、増収及び経費削減策とあわせ、将来の設備更新費等も含めた経営見通しについて検討しておりますが、議員御指摘のとおり、一括で増資等を行い、その上で経営改善に努め、内部留保をふやすことによって設備更新費を賄うといった視点の必要性は十分に認識しておるところでございます。したがいまして、その点も踏まえまして、会社ともども今後さらに検討を深めてまいりたいと考えております。
次に、二次支援において、車両等の更新費や修繕費などを見込むことによる支援額に関する試算への影響についてお答えをいたします。
現在、会社においては、県や長久手市など出資団体の実務者クラスで構成する経営改善検討会議で、経営の安定化に向けた経営改善策の検討を進めておりますが、その中で、今後の設備更新や修繕に係る費用も含めた将来の資金需要について検討を行っております。
設備更新費等については、原則的には耐用年数を考慮して見込む方針で進めておりまして、二次支援への影響もあわせて検討しているところであります。
次に、三セク債を活用しての経営改善の御提案についてであります。
平成二十六年度以降に想定されます二次支援につきましては、現在、会社において検討されております経営改善策を踏まえた上で、今後、関係者間で具体の議論を進めることになるものと考えております。
リニモにつきましては、平成二十年度に沿線市などとの間で議論を重ねました上で、第一次経営安定化策を策定し、平成二十五年度までの計画で関係者が連携、協調して支援をしているさなかであります。
県といたしましては、二次支援を行うに当たりましても、この枠組みを基本とした上で、御提案の趣旨も含め、幅広に検討してまいりたいと考えております。
次に、リニモ沿線地域における開発及び活性化に向けた検討についてお答えを申し上げます。
リニモの利用者の拡大に向けましては、沿線における市街地整備を進め、住宅地の開発や商業施設などを誘致することが不可欠であります。このため、県では、沿線市が進めている土地区画整理事業に対し、事業が円滑かつ着実に進むよう、全庁を挙げてさまざまな支援に努めているところでございます。
そうした中、県警本部における運転免許試験場のリニモ沿線地域への移転の検討は、リニモの利用者増加につながるものと受けとめておりましたが、今回のPFI方式による検討は、老朽化に対応し、早期の建てかえを行おうとするものと承知しているところでございます。
これとは別に、地域振興部として、県有地を活用した沿線地域の開発の可能性などについて検討しておりまして、その一環として、農業総合試験場の用地における住宅開発の可能性についても事務的に検討した経緯がございます。
しかしながら、こうした住宅開発につきましては、地元市の意向が最重要であり、地元市の意向に配慮することなく進めることはできないということは十分に認識しているところでございます。
県といたしましては、今後とも、沿線市及び関係部局と連携を図りながら、沿線地域の活性化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
次に、愛知高速交通株式会社において発生した横領事件に係る資金の回収と裁判の進捗状況及び横領金の経理上の取り扱いについてお答え申し上げます。
横領事件を起こした元社員により、事件発覚後、横領額の一部は弁済されまして、損害額は、当初の約八千九百万円から約六千四百万円となりました。
しかしながら、全額弁済にはほど遠いため、会社として、平成二十二年十二月に、元社員及び派遣協定に基づき出向元の名古屋鉄道を相手取り、名古屋地裁に損害賠償請求訴訟を提起いたしました。
以降、口頭弁論が平成二十三年一月から二十四年十二月までの間に十五回開かれておりますが、いまだ結審するには至っておりません。
また、横領金は、会社決算において流動資産の未収金として計上されておりますが、これは裁判により回収できるものと見込み、計上されているものでありまして、公認会計士の指導のもと、こうした措置を行っているところであります。
最後に、リニモへのICカードシステムの導入についてお答えを申し上げます。
利用客の利便性向上を図る観点から、ICカードシステムの導入は極めて重要な課題と認識しております。
しかしながら、このシステムの導入に向けましては、駅務機器の更新費を合わせ約二十億円が必要であると見込まれましたことから、議員もお示しのとおり、平成二十三年九月に、沿線市との協議を踏まえた上で、資金調達を有利に進めるための支援措置を盛り込んだリニモ・愛環沿線活性化特区、これを国に対して申請いたしました。
申請につきましては、残念ながら不採択となりましたが、以降も県といたしましては、沿線五市と連携して先行事業者から講師を招聘し、研究会を開催するなど、会社ともどもに導入に向けた具体的な検討を進めているところであります。
私からは以上でございます。
- 53:◯知事(大村秀章君) 私からも、リニモの経営安定化につきましてお答えをいたします。
リニモは、名古屋市営地下鉄と愛知環状鉄道を結びまして、名古屋圏の広域交通ネットワークを形成する重要な路線でございまして、沿線には、多くの大学や試験研究機関、観光・文化施設などが立地をし、年間およそ七百万人の方々に利用されております。
こうした重要な社会基盤であるリニモの必要性につきましては、広く御理解をいただいているところでありまして、経営の安定化に向けまして取り組んでいくことは、県や沿線市などの関係者間において合意をされている、異論ないものと認識をいたしております。
今後の経営支援につきましては、沿線市などの皆様方とともに具体的に検討していくことになりますが、県といたしましては、リニモが後世に誇れるようなこの地域の財産となるよう、しっかりと役割を果たしていきたいというふうに考えております。
以上でございます。
- 54:◯五十九番(石井芳樹君) るる御答弁ありがとうございました。要望をさせていただきたいと思います。
リニモに関しては、調べれば調べるほどいろんなものが出てくるわけでありますが、今、リニモの会社は、八編成車両を所有し、一編成を予備としてとっておきながら、七編成をダイヤに投入しながら、一日運行を行っているわけであります。
その中で、長久手市の中では、まるで都市伝説のように、実はリニモの編成は九編成あったというようなうわさがありました。これを昨年度の地域振興部の委員会で質問をさせていただいたところ、実は本当に九編成ありまして、博覧会開催前、一編成は博覧会協会が購入をしたということでありました。あの万博の際には、臨時便も含めて九編成で運行を行い、万博終了後は、博覧会協会が民間にそれを売却し、今は広島の地にそのリニモ一台があるそうであります。
ですが、私が思うのは、もしあのとき、県がしっかりと見ていていただいたのであれば、その九編成を売らずに一編成をとっていただくことによって、例えば、二〇一五年に行う予定の全国都市緑化フェアの臨時便の際にも、一編成を増便として使えたわけでありますし、また、人件費の要らない乗り物でありますので、片道電気代だけで数千円と聞いておりますから、ダイヤをもっとふやすこともできた可能性もあります。
また、もっと望むのであれば、その売却益を協会の中に入れるのではなく、リニモの会社に損失負担として入れていただければ、税金で賄うお金が少しでも減ったのではないかなとるる思うところがあるわけであります。
このような中、過去には戻ることは決してできませんが、しかしながら、今後、この第二次支援策に関しては、まさにリニモの今後の生死を含めた分水嶺になる大切な計画であると私は強く思うところであります。
願わくは、一括でしっかりとまずは経営の安定化のために各沿線市町で御尽力をいただいて、支払ってもらう。そして、経営を軽くして運営をしていただくことが、最終的にはリニモに対して無駄な経費として支払っていくお金が税金として少ないものと私は確信をしておるところであります。
どうぞその一括返済も含めて考慮に入れながら、第二次支援計画を検討していただきますことを要望いたしまして、私の質問を終了いたします。
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- 55:◯三十八番(川嶋太郎君) 本日はこれをもって散会し、明三月五日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
- 56:◯副議長(澤田丸四郎君) 川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
- 57:◯副議長(澤田丸四郎君) 御異議なしと認めます。
明三月五日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時五十三分散会
